- 文藝春秋 (2010年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784167780012
作品紹介・あらすじ
日本舞踊をやめ、中学から剣道を始めた西荻早苗。重心を下にした柔らかい動きでみるみる成長するが、楽しさを求め「勝敗」については固執しない性格。一方、三歳から剣道を始め、パワー、スピード、勝負勘のすべてに秀で、勝敗がすべての剣道エリートでしかも武蔵オタク(愛読書は『五輪書』と『武士道』)の磯山香織。深い意味はなく出た中学最後の区民大会個人戦で、香織はなぜか早苗に負けてしまう。そんな二人が高校で一緒になった。
敗れた悔しさを片時も忘れたことのない香織だったが、早苗がそのときの相手だとは気付かない。というのも、早苗の苗字が両親の離婚によって「甲本」から「西荻」に変わっていたため、胴着の垂れ幕の名前が違っていたのだ。部活で香織は先輩を次々と撃破。早苗は香織の無類の強さに驚き、香織は早苗の構えをみて自分を破った相手だと気付く。それ以降、香織は早苗は目の仇にして練習。香織の猛攻と練習態度に辟易した早苗は部活を辞めることを考える。関東大会団体戦を前に香織は早苗の剣道を「チャンバラダンス」と揶揄。口論になった二人だったが、その最中に香織が捻挫。片腕でも試合に出場したのだが……。
全く価値観の違う二人が、剣道を通し深く繋がっていく。一気読みの青春エンターテインメント。
感想・レビュー・書評
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青春剣道小説。
女子高校生選手の話であるが、私も剣道をしている人間として、「この時女性はこういうことを思っているのか」と感じるところがあって面白かった。
続編の話を読む予定は今のところないが、細かな所作や、剣道あるあるが入っていて、人気作品たる所以を感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
青春とは、こんなにも眩しく、切ないものだったのか。
青春小説は、私の好きなジャンルのひとつです。
若者が何か一つのことに夢中になり、汗を流しながらひたむきに努力する姿。
それほど美しいものはないと、私は思っています。
けれども、そんな時間はほんの一瞬。
30代、40代になると、体力も気力も、そして自由に使える時間さえ、どんどん減っていきます。
だからこそ、学生のうちに夢中になれるものを見つけ、全力で打ち込めた人は、本当に幸せなのだと思います。
…自分がそれをしてこなかったぶん、余計にそう思ってしまうんですよね。
この小説は、剣道に打ち込む高校生の女子ふたり――香織と早苗を描いた青春小説です。
驚くほどに恋愛要素は皆無。にもかかわらず、いや、それだからこそ、読んでいてとても爽やかな気持ちになれる一冊です。
けれど、これはスポーツの世界。つまり「勝負」の世界でもあります。
いくら剣道が好きでも、試合をすれば必ず勝ち負けがついてくる。
性格も剣道への向き合い方も正反対の香織と早苗。
それでも「剣道を愛する気持ち」は同じであり、彼女たちはライバルであり、同士でもあります。
そんなふたりが、互いを意識し、ぶつかり合いながらも成長していく姿が描かれています。
私は剣道の経験も知識もまったくありません。
それでも文章を追っているだけで、道場の緊張感や気迫がビシビシ伝わってくるのです。
これは、主人公・香織というキャラクターの存在感によるところが大きいと思います。
彼女はまるで戦場の女兵士。ページ越しにも、身体から放たれる“殺気”が伝わってくるようでした。
この小説のもう一つの魅力は、二人の関係性をはじめとする“人との関わり”の描き方にあります。
それぞれの家庭環境、部活仲間との付き合い、師弟関係……。
さまざまな立場の人たちとの関係性が丁寧に描かれ、物語に厚みを持たせています。
人は人との関係の中で成長していく――。
作者はそんなことを伝えたかったのではないか。そう感じずにはいられません。(深読みしすぎだったらごめんなさい)
香織が早苗の剣道を「技」としてだけでなく、「存在」として認めたとき、彼女は真の意味で強くなれた気がしました。
ちなみに、この小説を書いたのが男性作家なんですよねぇ。
女子同士の微妙な距離感や、思春期ならではの心の揺れ動きが、あまりにもリアル、、、。
なぜこんなに女心がわかるのか?!
それだけで、尊敬です!! -
剣道にあまりいいイメージは持っていなかったけどこの本を読んで大きく変わりました。
全く性格の違う二人の主人公それぞれの視点で交互に物語が進行していきます。
お互いが刺激しあい少しずつ心境の変化が生まれ、よきライバルとなっていくような青春の物語。
面白くて一気読みでした! -
誉田氏の本は吸血鬼と女刑事の話しだけ読んでいたので、ミステリーかと思って読んでみたら良い意味で裏切られた。
最初の方は二人の女の子が自分の視点で書き進め、それに加えて親の離婚で苗字が変わってもいたので誰が誰やらわかりづらかった。内容は正反対の考えを持つ二人の成長を描いた青春物語。行く道に迷ったり、親との関係を見つめ直したり、それが剣道を通して語られて行く。最後もいいお終わり方をしている。続編もあるようなので早めに読みたい。 -
心情描写とか素敵
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タイトルと表紙でわかるとおり、16歳の剣道少女物語。
良い意味でも悪い意味でも想像通りの内容。
一気に読めてしまうが、後には何も残らない。
読んでいる間は楽しめます。
シリーズ物の第一弾ですが、続きを読みたいかは微妙。
もっと若いうちなら楽しめたのかなー。 -
女子剣道家達の青春を描くことで、吉川英治の「宮本武蔵」のある要素をギュッと一冊に濃縮したようなストーリー。やりたいことがわからず、もがいている自分の目を開かされてくれる、爽快・痛快な一冊。
「やりたいことはやる、やりたくないことはやらない」の精神で、在るがままの自分で選択し、納得・覚悟をして生きていくことを、後押ししてくれる小説。
自分のミッション、バリューを問い直し、「人生このままでいいの?」を読んでいる中で、好きなことを考えようとしていたが、いまひとつ好きなことを追求することが良いのか、迷っていた自分を勇気づけてくれる小説。「できるかどうか」より「やりたいかどうか」をベースに判断してよいと背中を押してくれる。「失敗したっていいじゃないか、やりたいんだったら、やるしかない!」。本作を通じて、小説が生きる力をくれる、生きやすさを与えてくれるという体験ができた。
曰く、人生勝ち続けることはできない。勝ったり負けたりするもの。そして勝負は避けられない。では、負けることの不安に打ち勝つにはどうすればよいか。勝負の結果や比較優位だけを求めていては、負ける不安に打ち勝つことはできない。打ち勝つ方法は、それが好きだっていう気持ちを自分の中に確かめ、好きと勝負の不安を天秤にかけること。不安が勝てば、やめておく。好きが勝てば挑戦するしかない。結果は後からついてくるもの。そうした選択を続けていくことが、唯一の解なのだ。
勝ち負けだけにこだわってしまうのは、そして負けを極端に恐れることは、自分一人だけで強くなったという想いからくるもの。周り全てを敵とみなして勝手に恐れているだけということに気づかされる。そして、その一人よがりから抜け出すうえで、一人では生きてゆけぬことを知り、生きていく上で、世のためを思い、他人を敬い、精進を怠らぬことが大切と説く。
改めて、自分の好きなこと、夢中になれることが何なのかを考えよう。義務感とかではなく、行為そのものを好きと思える何かを。きっと俺はそうしたワクワクできること、具体的な夢を探し切れていないから、いま、こういう鬱な状態なのだと思う。
自分の好きを殺さず、きちんと探す努力を怠るな。人生に背を向けていてもしょうがない。一歩ずつでも前に歩もう。この小説を読んで、改めて挑戦するときの高揚感を思い出した。走ることが大好きだった、高校時代。興味に基づき主体的に動いた大学時代。遺伝子流動を研究したいと思った修士2年目、アフリカに行きたくてトライしていたあの頃、アフリカで見た自然との共生に土地利用や生産性の向上が必要と学んだときの、ワクワクを思い出す。
自分のできることが増えれば、好きなことも増えるし、本当に好きなことなら、力をつけることもできるし、勝っても負けても、歩み続けられる。そして、その「好き」は生きてゆく中で変わることもある。
常に自分の心、好きをとらえながら、感謝を忘れずにやりたいことにトライしていければという気持ちになった。 -
性格は真逆な早苗・香織の2人を中心とした青春物語
題材が剣道であることに目新しさにを感じましたが、きっちり王道の青春ストーリー
序盤は香織の尖ったキャラクターが先行し、香織中心なのかと思いました。しかし2人の関係性が変化すると共に早苗のキャラクターも活きてきて、物語の中心である「青春」という柱を支える存在に。
心を通わせるまでの紆余曲折を剣道との向き合い方を通じて描かれている素晴らしい作品だった
続編も読みたいと思います -
2022/05/08読了
#誉田哲也作品
剣道を通じた女子高生青春小説。
ただ勝つことだけを目標とする剣道エリートの
香織(全国2位)が中学最後の大会で無名の選手
に敗れる。
雪辱を晴らすために同じ高校に進学を決めるも、
そこにはただ剣道を楽しみたい、剣道始めて間もない
「お気楽不動心」の早苗がいた。
全く色の違う二人がともに刺激を与えあい
成長していくストーリーがありきたりながらも
ぐっと熱くなれて良い。 -
青春小説
たまに出てくる古い台詞をJKが使うとこにギャップがあったし昔やってた身からしたらめちゃくちゃ懐かしく話も面白かった
因むと磯山みたいな剣道バカはいる(たぶんそっちの人の方が多い)し経験してきた者しか分からない事も書かれてたからたぶん普通の人からしたら理解難しいだろうなと思う事もあった
もちろん剣道の話だけじゃなくヒューマンドラマが爽やかで気持ちよかった
気持ちが乱れた時は気剣体一致よな
好きなフレーズ引用
なんてったって竹刀袋に般若ですから
ドーナツ奢ったときもそんなこといわれた覚えはない
世のためを思い 他人を敬い 精進を怠らない -
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青春スポーツ小説の決定版。学生時代に読んだ記憶はあれど、正直どんな話か忘れていたので読み返してみたら当時の記憶が蘇る蘇る!悩みに悩んで、それでも大好きな剣道に向き合う二人の主人公。その成長と葛藤がもうベタベタに面白い!
自分の娘もこれから勉強やスポーツ、習い事に挑戦し、本気で打ち込みたいと思うものに出会うと思うんですが、その時にもし壁にぶつかり、好きという気持ちを忘れそうになったら、スッとこの本を差し出したい。そんな素敵な一冊でした。 -
誉田先生の作品は、ストロベリーナイト以降敬遠していた為、全く読んでいなかったが、会社の方が貸して下さったので読んでみた。
ストロベリーナイトのイメージしかない作家さんだったので、正直びっくり。
これは面白い!
痛快 青春剣道小説だが、香織と早苗のキャラクターが際立ち、とても清々しい気分にさせてくれる。
私のような中年女でも何かを気づかせてくれるような、そんな一冊。
多感な青春時代を楽しみ、悩みながら謳歌されている若者には響くものがより多いのではないかと思う。
良書! -
題名を見た時から面白そうな本だなと思っていた。
案の定、本当に面白い青春スポーツ小説であった。
笑って、ハラハラしてしかもちょっと感動できる。
言う事なしですね。
主人公は二人の女子高生剣道部員。
この二人のライバルを軸にして話が展開する。
(ライバルと書いたがライバル視しているのは一人だけでもう一人はそんなこと思ってません)
二人の主人公の性格が好対照で面白い。
一人は、父兄共に剣道をやっている剣道ファミリーで育った筋金入りの剣道少女 磯山香織。
剣道に全てを賭け、幼いときから実戦的な激しい稽古を行う道場で鍛錬し、勝つことのみを追い求める。
心の師匠は、宮本武蔵で「五輪書」を愛読しているという戦闘的な兵法者である。
もう一人は、中学校に入るまでは日本舞踊をやっていたという異色の経歴を持つ少女 西荻早苗。
性格はおっとりしており、勝負に勝つよりも自分の技術が向上することなどに喜びを見出すタイプ。
現在家庭にちょっと問題を抱えており、名字が変わっている。
家族は様々な才覚を持った人ばかりである。
父は元町工場の社長の技術者、母は絵本作家、姉はティーンズファッション誌のモデル。
話はこの二人の主観で交互に語られる形式で進んでいく。
この構成が本当にうまくいっていると思う。
性格の全く異なる主人公たちの書き分けが非常に巧みなので、章が変わるごとの雰囲気の変化が面白い。
同じシーンでも二人の感じ方の落差があって笑ってしまうこともある。
様々な思い違いやそれぞれの葛藤などを乗り越え、彼女達は人として成長していき、最後は青春スポーツ物の王道の様なエンディングとなる。
ホント素晴らしいエンターテイメント小説をありがとうと言いたい。 -
単純に面白い。読みやすい。2人の女子高生の剣道を通しての成長譚。ライトノベル系のノッペリした話かと思ったが、2人の心のひだを丁寧に描いていて好感。
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これ、本当に、ジウ、姫川玲子を書いた誉田先生の作品?って思ってしまう笑
性格が全く違う2人の女子高生を描く最高の青春小説。続編、即読みしなきゃ。 -
いや~青春だ~。自分が突き進むべき道...。その目的や目標は?見失うこともあるし、思い悩むこともある...。そんなプロセスが必要な時期もある。次作を早く読みたい衝動にかられる良作でした。
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勝ちに拘る兵法オタクの磯山香織と、勝ち負けを嫌うおっとりタイプの西荻(甲本)早苗。二人の高一剣道女子を巡る青春物語。
マンガを読んでいるような感覚でサクサク読める。剣道の防具とか解説した手書きイラストもいい。 -
攻撃的な戦い方と、日本舞踊仕立ての柔和な戦い方をする剣道女子の青春小説
誉田哲也と聞いたらストロベリーナイトやジウなど警察小説のイメージが強いけど
スポ根やってます。
対極にあるふたり、磯山のキャラクターが武士っていうよりも、中二病感あって最初はやや引いてました。
だんだん読むうちにタイトルの意味が理解できるようになってきて
二人が成長して支え合う姿は、良いです。
キャラクター構成に、ほんのりと漂う
ジウ臭 -
青春終わって四半世紀経った私でも、読んでて爽やかな気持ちになれた。
自分が真剣に向き合っているものの本質を知ることで、より成長できる。若い時に味わえる挫折と葛藤は、誰がいつ読んでも清々しい気持ちになれるものです。続編も全部読破予定。
著者プロフィール
誉田哲也の作品
