武士道シックスティーン (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 5984
感想 : 766
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167780012

作品紹介・あらすじ

武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 女子剣道家達の青春を描くことで、吉川英治の「宮本武蔵」のある要素をギュッと一冊に濃縮したようなストーリー。やりたいことがわからず、もがいている自分の目を開かされてくれる、爽快・痛快な一冊。
    「やりたいことはやる、やりたくないことはやらない」の精神で、在るがままの自分で選択し、納得・覚悟をして生きていくことを、後押ししてくれる小説。

    自分のミッション、バリューを問い直し、「人生このままでいいの?」を読んでいる中で、好きなことを考えようとしていたが、いまひとつ好きなことを追求することが良いのか、迷っていた自分を勇気づけてくれる小説。「できるかどうか」より「やりたいかどうか」をベースに判断してよいと背中を押してくれる。「失敗したっていいじゃないか、やりたいんだったら、やるしかない!」。本作を通じて、小説が生きる力をくれる、生きやすさを与えてくれるという体験ができた。

    曰く、人生勝ち続けることはできない。勝ったり負けたりするもの。そして勝負は避けられない。では、負けることの不安に打ち勝つにはどうすればよいか。勝負の結果や比較優位だけを求めていては、負ける不安に打ち勝つことはできない。打ち勝つ方法は、それが好きだっていう気持ちを自分の中に確かめ、好きと勝負の不安を天秤にかけること。不安が勝てば、やめておく。好きが勝てば挑戦するしかない。結果は後からついてくるもの。そうした選択を続けていくことが、唯一の解なのだ。
    勝ち負けだけにこだわってしまうのは、そして負けを極端に恐れることは、自分一人だけで強くなったという想いからくるもの。周り全てを敵とみなして勝手に恐れているだけということに気づかされる。そして、その一人よがりから抜け出すうえで、一人では生きてゆけぬことを知り、生きていく上で、世のためを思い、他人を敬い、精進を怠らぬことが大切と説く。

    改めて、自分の好きなこと、夢中になれることが何なのかを考えよう。義務感とかではなく、行為そのものを好きと思える何かを。きっと俺はそうしたワクワクできること、具体的な夢を探し切れていないから、いま、こういう鬱な状態なのだと思う。
    自分の好きを殺さず、きちんと探す努力を怠るな。人生に背を向けていてもしょうがない。一歩ずつでも前に歩もう。この小説を読んで、改めて挑戦するときの高揚感を思い出した。走ることが大好きだった、高校時代。興味に基づき主体的に動いた大学時代。遺伝子流動を研究したいと思った修士2年目、アフリカに行きたくてトライしていたあの頃、アフリカで見た自然との共生に土地利用や生産性の向上が必要と学んだときの、ワクワクを思い出す。
    自分のできることが増えれば、好きなことも増えるし、本当に好きなことなら、力をつけることもできるし、勝っても負けても、歩み続けられる。そして、その「好き」は生きてゆく中で変わることもある。
    常に自分の心、好きをとらえながら、感謝を忘れずにやりたいことにトライしていければという気持ちになった。

  • 初めて誉田哲也さんの作品を読みました。誉田哲也さんと言えば、警察小説とか、結構グロイのを描く人と言うイメージでしたが、実に意外。なんと爽やかな青春スポーツ小説だことか。

    香織と早苗、対局にあるような二人。香織の凄まじいまでの勝負へのこだわり、只ならぬか殺気、生きるか死ぬか、ただ目の前の敵をぶった斬ると、周りが全部敵に見える香織。一方、日舞が続けられなくなり、なんとなく中学から剣道を始めた早苗。おっとり天然で、勝敗にはこだわり無し。そんな二人が中学の最後のマイナーな大会で戦ってから、運命は大きく動き出す。同じ高校に入った二人は、ぶつかり合い続けるが、ある時香織に転機が訪れる、、

    作者は剣道経験者なんだろうか。実に剣道に関する記述が丁寧で分かりやすく説明されている。そしてその剣道の部活を通じて性格の全く違う二人が葛藤・苦悩し、いつしか大事な大事な気付きを得て行く様子が実に鮮やかでスカッと描かれている。最後の方は、大きく成長した二人の様子に感動し、たまらなくジタバタしたい気分になりました^ ^

    武士道、憧れる言葉です。青春時代に全力で取り組み、心が成長していく様は実に爽快。主人公の二人を取り巻く人達との関わり、関係性が変化していく心理描写も見事と言うほかない。次作も必ず読むつもりです。

  • 磯山は先輩・後輩に言い放った言葉で出禁になる。その内容に5分間大爆笑。インパクトありすぎる出だしの展開!本当に「ストロベリーナイト」も書いた著者とは思えません。性格が元気な磯山と、落ち着いた西荻。両者の関係性がとても面白い。この2人の大局的な思考・行動パターンが剣道の面白さや奥深さを引きたてている。磯山を見ていると、自分が楽しくないと辛いだけだよな~ぁと思い、仕事も一緒ですね。これも、続きものですか。積読必須本が増えますね。高校の体育では「剣道必修科目」でしたので、知識的にも楽しく読めました。

  • 題名を見た時から面白そうな本だなと思っていた。
    案の定、本当に面白い青春スポーツ小説であった。
    笑って、ハラハラしてしかもちょっと感動できる。
    言う事なしですね。

    主人公は二人の女子高生剣道部員。
    この二人のライバルを軸にして話が展開する。
    (ライバルと書いたがライバル視しているのは一人だけでもう一人はそんなこと思ってません)
    二人の主人公の性格が好対照で面白い。
    一人は、父兄共に剣道をやっている剣道ファミリーで育った筋金入りの剣道少女 磯山香織。
    剣道に全てを賭け、幼いときから実戦的な激しい稽古を行う道場で鍛錬し、勝つことのみを追い求める。
    心の師匠は、宮本武蔵で「五輪書」を愛読しているという戦闘的な兵法者である。

    もう一人は、中学校に入るまでは日本舞踊をやっていたという異色の経歴を持つ少女 西荻早苗。
    性格はおっとりしており、勝負に勝つよりも自分の技術が向上することなどに喜びを見出すタイプ。
    現在家庭にちょっと問題を抱えており、名字が変わっている。
    家族は様々な才覚を持った人ばかりである。
    父は元町工場の社長の技術者、母は絵本作家、姉はティーンズファッション誌のモデル。

    話はこの二人の主観で交互に語られる形式で進んでいく。
    この構成が本当にうまくいっていると思う。
    性格の全く異なる主人公たちの書き分けが非常に巧みなので、章が変わるごとの雰囲気の変化が面白い。
    同じシーンでも二人の感じ方の落差があって笑ってしまうこともある。

    様々な思い違いやそれぞれの葛藤などを乗り越え、彼女達は人として成長していき、最後は青春スポーツ物の王道の様なエンディングとなる。
    ホント素晴らしいエンターテイメント小説をありがとうと言いたい。

  • 誉田先生の作品は、ストロベリーナイト以降敬遠していた為、全く読んでいなかったが、会社の方が貸して下さったので読んでみた。

    ストロベリーナイトのイメージしかない作家さんだったので、正直びっくり。
    これは面白い!

    痛快 青春剣道小説だが、香織と早苗のキャラクターが際立ち、とても清々しい気分にさせてくれる。

    私のような中年女でも何かを気づかせてくれるような、そんな一冊。

    多感な青春時代を楽しみ、悩みながら謳歌されている若者には響くものがより多いのではないかと思う。

    良書!

  • いや~青春だ~。自分が突き進むべき道...。その目的や目標は?見失うこともあるし、思い悩むこともある...。そんなプロセスが必要な時期もある。次作を早く読みたい衝動にかられる良作でした。

  • 早苗さんのお父さんの言葉「人の一生なんて、いつどうなるのか分からない、不安だらけのものなんだよ。…でもね、お父さんは一つだけ、それに打ち勝つ方法を、見つけたんだ。それが好きだっていう気持ちを、自分の中に確かめるんだよ。その好きだって気持ちと、勝負の不安を天秤にかけるんだ。…不安の方が重かったら、それは、やめといた方がいい。まず勝てないし、負けたら、ものすごく後悔するからね。でも、好きだって気持ちの方が重かったら…そのときはもう、やるしかないんだよ。」胸に響く言葉。剣道だけでなく、人生にも。何度でもやり直し生きられる。

  • たまに欲しくなるスポーツ小説。
    真っ赤な表紙も◎

    西荻早苗の勝負に対する考え方に共感。自分も投手として打者を抑えることより、自分の理想の球が投げられたり投手としての成長を感じられる瞬間に楽しみを見出していた。

    もう1人の主役磯山香織は、なりふり構わず時には怪我をさせてまで勝利にこだわる。このような姿勢は、普通では思い付かないような戦略を編み出したり、独自の技術を習得したりすることに繋がる。自分は基本からあまり派生させる力がないので、見習いたいなと思う。

    剣道では、相手の出方を読むことが多くなる。攻防がシンプルで洗練されているからこその心理戦なのかなと思う。野球や体育でやってきた他のスポーツとはまた一味違う面白さがありそう。投手の時、打者が自分のことをどういう投手と見ているかとか考えたことなかったのでそういうのも考えていたらもっとピッチングも面白かったのかな


    試合の描写を読むとやはりスポーツ観戦がしたくなる。スポーツの生み出す一体感というのは何にも変え難い。

    あと、剣道の先鋒次鋒…っていうのもかっこいいな笑

  • 片手にボロボロな宮本武蔵「五輪書」片手にダンベル。物心ついた頃から剣の道に邁進し全国中学2位香織は、日舞から剣道への変わり者不動心がモットー早苗に小さな市の大会で面を二本決められ完敗。リベンジを誓い同じ高校剣道部へ進学する。 アオハル女子剣道がこんなに熱いとは。

  • コロナ禍の中、再読。
    やっぱり面白くて一気読み。
    ふたりの視点で交互に語られるストーリー。
    お気楽不動心、いいなあ。
    誰かに薦めたくなった。

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著者プロフィール

1969年、東京生まれ。学習院大学卒業。2002年、『妖の華』でムー伝奇ノベル大賞優秀賞を獲得しデビュー。2003年『アクセス』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。2019年『背中の蜘蛛』で第162回直木賞候補。映画化された『武士道シックスティーン』などの青春小説から、斬新な女性刑事像を打ち出した“姫川玲子シリーズ”の『ストロベリーナイト』、『ジウ』シリーズといった警察小説まで、ジャンルを超えて高い人気を集めている。他に“魚住久江シリーズ”や、『ケモノの城』『妖の掟』『もう、聞こえない』等著書多数。

「2021年 『あの夏、二人のルカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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