- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167781019
作品紹介・あらすじ
寛政期、西国の小藩である月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、名家老と謳われ、幕閣にまで名声が届いている松浦将監。幼なじみで、同じ剣術道場に通っていた二人は、ある出来事を境に、進む道が分かれ、絶縁状態となっていた。二人の路が再び交差する時、運命が激しく動き出す。第十四回松本清張賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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本当に良いお話でした。絶対、一度は出会ったほうが良い作品です。
読んでいる途中はハラハラしたり、涙がでたりと、すこし忙しい感情の変化もありましたが、読み終わった後は、なんともいえないすがすがしい気持ちでいっぱいになりました。
登場人物3人の身分の違いを超えた友情が時がたっても崩れず友情は友情のまま硬い結びつきだったことに感動しまくりでした。友というのはこういう関係をいうのだと思い知らされました。作品の時代背景もあるかもしれませんが、3人の友情とそれぞれの人生が絡み合い、それぞれが思い描く人生の中で生き抜いていく様が、映像として頭の中に現れ、心に響いてくる感じを受けました。この時代の男同士の友情に熱くなりました。
藤沢周平さんに似ていると感じる型もいるかと思いますが、読んで見ると、また違う読後を味わえます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
清々しい気持ちになれる物語。
第十四回松本清張受賞作。
身分の違う三人の友情の物語です。
月ヶ瀬半の郡方の日下部源五、名家老と謳われ幕閣まで名声が届いている松浦将監、数十年前に処刑された農民の十蔵。
この三人の幼少のころからの付き合い、思い、志が熱く感じられる物語でした。
そして、本書のタイトル「銀漢」は三人の男たちの友情のシンボルとして扱われています。
ちなみに「銀漢」は天の川のことで、本書の表表紙に3人と一緒に描かれていますが、本書の中では、さらに別なメッセージとしても語られています。
ストーリとしては、幼いころから仲良く、支えあっていた3人。
大人になると、十蔵は農民一揆を指導する立場に。
一方、その一揆を鎮圧し、その勢いで、父親の仇を追い落とした将監。その功績が認められ、藩の実権を握るようになりますが、十蔵は処刑されることに。
十蔵の犠牲の上で築き上げられた「名家老」の名声。
十蔵を踏み台にしたことから、源五は将監と絶縁状態になります。しかし、源五は余命1年と言われた将監に再び力を貸すことになります。
その余命を藩の安泰を実現するために使おうとする将監は脱藩して、江戸に向かう事へ。その脱藩に手を貸す源五。
将監は無事脱藩して、江戸にたどり着き、藩を救う事ができるのか?
藩からの刺客に対峙する源五の剣の技が光ります。
将監の藩を思う志を十蔵の友情と源五の友情が支えます。
脱藩を計画している時に源五が語った言葉
「十蔵は、お主の友だったのだ」
そして、脱藩時の刺客との戦いの中で、将監が語った言葉。
「夕斎は失脚した時、ただ一人だけだった。しかし、わしには友がいた」
三人の熱き友情の物語でした。
お勧め! -
江戸時代後期、徳川吉宗の時代。町道場で知り合った身分の異なる3人の若者は、「銀漢」と呼ばれる天の川の下で友情を誓い合う。なんとなく三国志の桃園の誓いを思い出すが、3人の生き様は劉備・関羽・張飛とは全く異なる。
時は流れ、3人は成人し、藩の不正問題に巻き込まれる。その後、1人は農民一揆の首謀者として死刑に処され、それをきっかけに藩の役人である2人は意見の対立から絶交。さらに年月が経ち、再び藩に不正問題が持ち上がる。
2人の死をかけて藩を救おうとする武士道が美しい。その決意を買い物でも行くかのように、あっさりと受け入れるのは、友と話し合えたからだろう。長い絶交時代があっても、幼い頃の友情はすぐにもとに戻るし、亡くなった友を笑いながら思い出せるのも友情があるから。
老いてからの友のありがたみを痛感し、清々しい読後感。 -
三人の男の友情を清冽に描いた良作です。
源五、将監、十蔵。それぞれ身分や立場も異なり、年を重ねるにつれて疎遠になってしまったり、結果的に友を死に追いやってしまう事になったりしつつも、根底に流れるお互いへの思いが清々しく爽やかな気持ちにさせてくれます。
銀漢とは天の川の事であると、本書に出てきます。そして主人公の源五は“頭に霜を置き、年齢を重ねた漢(おとこ)も銀漢なのかもしれない”という思いを抱くのですが、そういう解釈がなんとも素敵だな、と感じました。 -
最初の方は時代がいったりきたりするし、読みにくかったけど、最後の方は結末が気になって一気読み!読後感爽快!私のためではなく公のために命を使う潔さ。男3人の友情に胸が熱くなる。
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心に染入る良い物語だった。
藤沢周平原作の時代劇映画をを見ている様な清々しさを感じた。
(藤沢周平さんの時代小説を読んでいないもので・・・)
三人の男たちの友情にまつわる物語。
名家老と呼ばれるまでの地位に上り詰めた小弥太こと松浦将監。
郡方の日下部源五、そして数十年前に処刑された農民の十蔵。
50才を過ぎ人生の終盤に差し掛かった彼らが、藩内で密かに進行している大きな事件に命を懸けて立ち向かう。
人物の描写が秀逸で登場人物たちのそれぞれぞれ想いが切ないくらいに伝わってくる。
幼少時代から語られるエピソードは詩情豊かで、人間というものの根本のところは幼少期に体験したことにより形作られると感じさせる。
ただ美しいだけでなく、時代小説と呼ばれるにふさわしく手に汗握る激しいチャンバラのシーンもある。
葉室さんは藤沢周平の正統な後継者と呼べるだろう。 -
如何にも時代劇らしい物語でした。全てがハッピーエンドですっきりしましたが、それでも友人の娘とできちゃうってどうなの?
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拙者不覚にも通勤電車にて落涙す
樅の木.....原田甲斐を思い出す
信念の為には、清濁あわせ飲む。 -
久々の葉室さん、やっぱりイイ。
身分の違う3人の男の深い友情。それぞれのキャラクターも上手に描かれていて、じっくりと読み進められました。
この時代の人達の、言葉通り命を懸ける生き様や覚悟は、読んでいて身の引き締まる思い。
潔く凛とした姿に、日本人であることを誇らしげになれるほど。
読後感も爽やかで気持ちいいです。 -
葉室麟の文体は、「蜩の記」の時にも感じましたが、煽らない、くどくない、硬質なリズム感でサラサラとしているようで、主人公達の生き様と共鳴しています。また、武士と百姓との身分を超えた交流も特徴的ですね。将監の母の死については、如何にもな時代劇風のプロットです。あそこはもっと違ったプロットが欲しかったです。
著者プロフィール
葉室麟の作品






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