いのちなりけり (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 354
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167781026

作品紹介・あらすじ

あの時桜の下で出会った少年は一体誰だったのか-鍋島と龍造寺の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。"天地に仕える"と次期藩主に衒いもなく言う好漢・雨宮蔵人と咲弥は、一つの和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが、幕府・朝廷が絡んだ大きな渦に巻き込まれていってしまう。その結末は…。

感想・レビュー・書評

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  • 無骨ながら歌を愛する蔵人という主人公には似合わない表紙でびっくり。これでもいいのかと思ったら脳内イメージが吹っ飛んだ。


    ※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

    いのちなりけり (上下)

    葉室麟さんの小説には(読んだ限りですが)厳しい時代の中にも何か甘い抒情が漂っていてほっとするところがある。読みやすいのでつい何冊か手を出す。

    続編「花や散るらん」があるそうでまた休日用に積もうかな。

    備前小城藩ゆかりの咲弥は才色兼備の評判の女性だった。藩内の変事の後、佐々木宗淳(通称介三郎・・助さん)の後見で水戸藩江戸屋敷に預けられていた。光圀の側室との願いも断る。咲弥には待っている人がいた。二番目の夫間宮蔵人である。歌を返さなかった夫のことが次第に分かってきていた。
    最初の夫がなくなり、蔵人が夫に決まったとき、格下の家柄が問題になった。周囲から蔵人の従兄弟の右近なら申し分ないのだがという声に、父親の行部は彼の人柄を見込んでいた。
    だが祝言がすみ、床入りの前になって咲弥が蔵人に尋ねた、「あなたの心を表す好きな歌を一首」
    しかし無骨者で素養のない蔵人は答えられず、それ以後寝所に近づくことがなかった。

    小城藩の本藩佐賀鍋島藩は、キリシタンの動きを禁じる江戸幕府とともに、原城攻めを開始した。だが信綱の命を無視して不意に夜攻めを行い、先駆けをした。
    信綱もそれに続かざるをえなかったが、大きなしこりが残った。
    鍋島藩では後の世に伝わるような内々の紛争が続いて、小城藩でも跡を狙う行部の暗躍があった。

    蔵人に舅の行部を討てと命が下った。彼は引き受け、多少の迷いがあったものの、討たなくてはならない窮地に追い詰められる。行部は死んだ。藩外に出ることが出来ない決まりを無視し、彼は山越えで出奔した。
    そして、彼は「心の歌」を求め続ける。
    途中で知り合った牢人に世話になり教えを受ける。

    湊川で咲弥と会うことになったが、原城責めの折から遺恨のある果し合いを挑まれ、同行していた右近は腕を落とされた。蔵人は彼を縁のある伏見の円光寺で看病する。傷が癒えた右近は世を捨てて出家する。
    円光寺は由緒があり格式の高い寺で、京都の内裏と和歌の道で繋がっていた。右近は祐筆を賜る。 蔵人は、放浪生活で様々な辛酸をなめ、生来の豪放でまっすぐ心をさらに深くしていく、自分の生き方を定め、人にも言い、生きる指針にする。

    「歌はつまるところ、雅とはひとの心を慈しむ心ではあるまいか」
    「わしは桜も好きだが、ひとは山奥の杉のように人目につかずに、ただまっすぐに伸びておるのがよいと思う」
    と右京改め清厳にいう。
    「ひとが生きていくということは何かを捨てていくことではなく、拾い集めていくことではないのか」
    「わしは祝言の夜、すきな和歌を教えてくれといわれて答えられなかった。それで、たったひとつわかったことがある。それは、わしには咲弥殿に伝えたいことがある、ということだ。わしの生きた証は咲弥殿に何かを伝えることだ」

    再び約束の両国橋に向かうと、執拗に遺恨を晴らしたい侍に囲まれる。蔵人は咲弥に向かって命がけで血路を拓いていく。

    解説でも「蝉しぐれ」を引き合いに出している。どことなく雰囲気が似ている。
    佐賀藩は非常に複雑な内情を抱えている。前半まではその藩制やごたごた、江戸屋敷で光圀の「大日本史」編纂の話など長い。だがあの時代の地方と江戸のつながりは、葉室さんの得意の分野かも知れず、面白い。

    一方そんな時代に、制度や窮屈な武士の世界切り拓いて、武芸で生きるおとこがすがすがしく、武術に秀でているために自分を救うがそれで他を傷つけてしまう時代に、人に仕えず天地に仕えるという生き方を通した男と、それを信じた女の純愛物語だった。こういった時代小説の純愛というのは生々しくなくていい。
    冒頭にある咲弥に送った、一行だけの西行の歌。

    春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり

  • 8月-18。3.0点。
    水戸光圀が歴史編纂した時代の物語。
    大男と、夫を亡くした女性の恋物語。夫婦となるが、妻の宿題に答えられず、且つ別々に暮らすことになった主人公。

    政治とか、説明文章が多く、本筋が進まない印象。
    面白いのに惜しい気がした。

    3部作。次作に期待。

  • 84

  • 登場人物が多くて名前も難しくついていくのが大変。
    蔵人が色々な人の意見を聞いたり教えをこうたりして、いのちって何だろうと考えていく過程で一緒に何だろうと考えさせられた。
    敵役の黒滝五郎兵衛が陰謀を企むことだけを目的に生きるようになっている気がして憐れな感じだった。

  • 三部作

  • 面白かった!
    もののふの純愛物語!
    けど、読みにくくて、なかなかページが進まない!(笑)
    登場人物が多く、入れ替わり立ち替わりで、登場人物の名前が読めず、さらに年とともに名前が変わっていくので、人間関係がつかみにくい。
    しかし、その中でも、主人公 雨宮蔵人の生きざまは熱く感じることが出来ました。

    ストーリとしては、水戸光圀が藤井紋太夫を殺害するシーンから始まります。
    ググってみると、これは史実なんですね。その殺害の真相は不明とのこと。本書では、この事件に絡んで雨宮蔵人と咲弥の純愛の物語が語られていきます。
    咲弥に好きな和歌を聞かれて、答えられなかった蔵人。
    そこから、二人は夫婦ではありながらも、別々の道を歩みますが、光圀の事件から再び二人は再開することになります。
    朝廷と幕府の争い、光圀と綱吉との関係、と当時のさまざまな思惑、陰謀に巻き込まれていきます。
    そんな中、命を狙われている蔵人は命がけで咲弥の元へ。
    二人は再び再開することが出来るのか?
    そして、その中で語られる蔵人の生きざま。
    最後のシーンは熱くなります。

    お勧め!

  • 続編の「花や散るらん 」の方を先に読んだので、蔵人と咲弥がずっと離れ離れで、しかも初めの頃は咲弥は蔵人に、かなり塩対応をしていたのは、意外でした。
    藩、幕府、朝廷の思惑等、背景が複雑なので、“政争モノ”の色が強いですが、蔵人の咲弥に対する一途な思いがグッときますし、ラストで咲弥の前に満身創痍で蔵人が現われる場面を読んだときに、“ああ、これはラブストーリーだなぁ”としみじみ思いました。
    葉室さんは、時々ハッとするほど美しい描写をされるのですが、本書で個人的に好きだったのは、醍醐寺の桜吹雪の中で、蔵人と清厳(右京)が語り合う場面です。美しい情景が目に浮かぶようでした・・。

  • 三部作の第1編

  • 直木賞作家の葉室麟さん、惜しい人をなくしました…。この作品のなかでは、たくさんの人が死んでゆき、普段の自分なら少しついていけないと思うかも知れませんでしたが、きっと御本人も命をかけて作品に取り組まれていたのだろうと思います。

  • 2014.4/30 葉室作品2作目。うーん、徳川綱吉治世の謀略にまみれた話題が、役職と幼名と改名で語られ物覚えの悪い私には非常に読みにくい(;-_-) 話の筋になるプラトニックな男女の愛情が霞むほど。もう少し読みやすいといいのだけど…

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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