いのちなりけり (文春文庫 は 36-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167781026

作品紹介・あらすじ

あの時桜の下で出会った少年は一体誰だったのか-鍋島と龍造寺の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。"天地に仕える"と次期藩主に衒いもなく言う好漢・雨宮蔵人と咲弥は、一つの和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが、幕府・朝廷が絡んだ大きな渦に巻き込まれていってしまう。その結末は…。

感想・レビュー・書評

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  • この本も上町63のマスター佐々木さんのお薦め。
    いやあ、面白かった。蔵人、魅力的。一途。こんな風に思いつづけてもらえたら女冥利につきます。ストーリーも素晴らしかった。
    付箋
    ・七息思案 いらずらに迷わず、さわやかに、凛とした気持であれば決断は七度息をする間にできるということ。
    ・命に仕えるとは死すべき時に死に、生きるべき時に生きる命を受けとめること
    ・毎朝、顔を洗った後、おのれは死んだと思うと体も心もすっと軽くなる
    ・離れ離れになり、生涯会うことができなくとも心で添うことはできる
    ・武士とは死んで生きるもの
    ・雅とはひとの心を慈しむこと
    ・伝えたいことがあり、聞きたいことがあるのを恋というのでしょう
    ・生涯一度の純愛を貫き得た者は、永遠の青春を手に入れることができる

  • 面白かった!
    もののふの純愛物語!
    けど、読みにくくて、なかなかページが進まない!(笑)
    登場人物が多く、入れ替わり立ち替わりで、登場人物の名前が読めず、さらに年とともに名前が変わっていくので、人間関係がつかみにくい。
    しかし、その中でも、主人公 雨宮蔵人の生きざまは熱く感じることが出来ました。

    ストーリとしては、水戸光圀が藤井紋太夫を殺害するシーンから始まります。
    ググってみると、これは史実なんですね。その殺害の真相は不明とのこと。本書では、この事件に絡んで雨宮蔵人と咲弥の純愛の物語が語られていきます。
    咲弥に好きな和歌を聞かれて、答えられなかった蔵人。
    そこから、二人は夫婦ではありながらも、別々の道を歩みますが、光圀の事件から再び二人は再開することになります。
    朝廷と幕府の争い、光圀と綱吉との関係、と当時のさまざまな思惑、陰謀に巻き込まれていきます。
    そんな中、命を狙われている蔵人は命がけで咲弥の元へ。
    二人は再び再開することが出来るのか?
    そして、その中で語られる蔵人の生きざま。
    最後のシーンは熱くなります。

    お勧め!

  • 「七息思案」とは?小説「いのちなりけり」より考える|白田|雑記note @srtmsr https://note.com/srtmsr/n/n79d120550d31 #note

  •  設定が細かい、佐賀の鍋島家、龍造寺家、天源寺家、その分かれがどうのこうのと、読み終えてすぐ忘れてしまった。まあ武士というのもこんなことが一大事では、とても長くは持つまいと思う。
     うまく中身になじめなかった作品。

  • 読み応えのある作品だった。
    人ではなく天地に仕えるという言葉は、この時代の武士としてはすごく斬新なものだと思う。
    蔵人と咲弥の関係も、長く離れているからこその美学を感じました。
    黄門様のイメージと異なる水戸光圀像は、どちらが本来の姿に近かったのだろうか?

  •  ストーリー前半でギブアップ。
    水戸徳川家の光圀、介さん覚さん、鍋島家、天源寺家、佐賀藩、小城藩等の親戚やら格がどうとか、更に歴史小説なので誰それの系譜やら何藩の役職者の何とかやら、、、全く頭に入らない上に何がこの後のストーリーに必要なのか意味不明。

  • 男前中の男前だと思った。

  • 惚れた女のために、ひとりの武士が十七年に渡って、求め続けた答えとは.......
    幕府と朝廷に翻弄され、引き裂かれてしまったふたりの行方は、どうなってしまうのか。
    いのちとは、男とはどうあるべきかを問うた作品。

  • 無骨ながら歌を愛する蔵人という主人公には似合わない表紙でびっくり。これでもいいのかと思ったら脳内イメージが吹っ飛んだ。


    ※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

    いのちなりけり (上下)

    葉室麟さんの小説には(読んだ限りですが)厳しい時代の中にも何か甘い抒情が漂っていてほっとするところがある。読みやすいのでつい何冊か手を出す。

    続編「花や散るらん」があるそうでまた休日用に積もうかな。

    備前小城藩ゆかりの咲弥は才色兼備の評判の女性だった。藩内の変事の後、佐々木宗淳(通称介三郎・・助さん)の後見で水戸藩江戸屋敷に預けられていた。光圀の側室との願いも断る。咲弥には待っている人がいた。二番目の夫間宮蔵人である。歌を返さなかった夫のことが次第に分かってきていた。
    最初の夫がなくなり、蔵人が夫に決まったとき、格下の家柄が問題になった。周囲から蔵人の従兄弟の右近なら申し分ないのだがという声に、父親の行部は彼の人柄を見込んでいた。
    だが祝言がすみ、床入りの前になって咲弥が蔵人に尋ねた、「あなたの心を表す好きな歌を一首」
    しかし無骨者で素養のない蔵人は答えられず、それ以後寝所に近づくことがなかった。

    小城藩の本藩佐賀鍋島藩は、キリシタンの動きを禁じる江戸幕府とともに、原城攻めを開始した。だが信綱の命を無視して不意に夜攻めを行い、先駆けをした。
    信綱もそれに続かざるをえなかったが、大きなしこりが残った。
    鍋島藩では後の世に伝わるような内々の紛争が続いて、小城藩でも跡を狙う行部の暗躍があった。

    蔵人に舅の行部を討てと命が下った。彼は引き受け、多少の迷いがあったものの、討たなくてはならない窮地に追い詰められる。行部は死んだ。藩外に出ることが出来ない決まりを無視し、彼は山越えで出奔した。
    そして、彼は「心の歌」を求め続ける。
    途中で知り合った牢人に世話になり教えを受ける。

    湊川で咲弥と会うことになったが、原城責めの折から遺恨のある果し合いを挑まれ、同行していた右近は腕を落とされた。蔵人は彼を縁のある伏見の円光寺で看病する。傷が癒えた右近は世を捨てて出家する。
    円光寺は由緒があり格式の高い寺で、京都の内裏と和歌の道で繋がっていた。右近は祐筆を賜る。 蔵人は、放浪生活で様々な辛酸をなめ、生来の豪放でまっすぐ心をさらに深くしていく、自分の生き方を定め、人にも言い、生きる指針にする。

    「歌はつまるところ、雅とはひとの心を慈しむ心ではあるまいか」
    「わしは桜も好きだが、ひとは山奥の杉のように人目につかずに、ただまっすぐに伸びておるのがよいと思う」
    と右京改め清厳にいう。
    「ひとが生きていくということは何かを捨てていくことではなく、拾い集めていくことではないのか」
    「わしは祝言の夜、すきな和歌を教えてくれといわれて答えられなかった。それで、たったひとつわかったことがある。それは、わしには咲弥殿に伝えたいことがある、ということだ。わしの生きた証は咲弥殿に何かを伝えることだ」

    再び約束の両国橋に向かうと、執拗に遺恨を晴らしたい侍に囲まれる。蔵人は咲弥に向かって命がけで血路を拓いていく。

    解説でも「蝉しぐれ」を引き合いに出している。どことなく雰囲気が似ている。
    佐賀藩は非常に複雑な内情を抱えている。前半まではその藩制やごたごた、江戸屋敷で光圀の「大日本史」編纂の話など長い。だがあの時代の地方と江戸のつながりは、葉室さんの得意の分野かも知れず、面白い。

    一方そんな時代に、制度や窮屈な武士の世界切り拓いて、武芸で生きるおとこがすがすがしく、武術に秀でているために自分を救うがそれで他を傷つけてしまう時代に、人に仕えず天地に仕えるという生き方を通した男と、それを信じた女の純愛物語だった。こういった時代小説の純愛というのは生々しくなくていい。
    冒頭にある咲弥に送った、一行だけの西行の歌。

    春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり

  • 8月-18。3.0点。
    水戸光圀が歴史編纂した時代の物語。
    大男と、夫を亡くした女性の恋物語。夫婦となるが、妻の宿題に答えられず、且つ別々に暮らすことになった主人公。

    政治とか、説明文章が多く、本筋が進まない印象。
    面白いのに惜しい気がした。

    3部作。次作に期待。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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