美術探偵・神永美有 天才たちの値段 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167782016

みんなの感想まとめ

美術品の真贋を瞬時に判別できる特異な能力を持つ青年美術コンサルタントと、美術講師が織り成すミステリは、五つの連作短編から構成されています。作品にはボッティチェッリやフェルメール、江戸時代の涅槃図など多...

感想・レビュー・書評

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  • 門井氏の本は「家康、江戸を建てる」を先に読んだので、時代小説の作家と思ったら、推理小説でのデビューとのこと。この本のタイトルに惹かれて読んでみたが、膨大な美術の蘊蓄が書かれていて読み飛ばしながら読んで行った。本物かどうか、見た瞬間に味で分かるという、特異体質の青年美術コンサル(神永)と美術専門の短大講師(佐々木)が繰り広げる真贋論争。表向きは短大講師が勝つのだが、その裏でひっそりと神永が勝っているというパターン。神永のせいで仕事を無くした学芸員がライバルとして何度も立ち塞がる。政治家の親と子や佐々木講師の伯母との遺産問題も何となく最後は良い話しで終わる。もっと素人も分かる美術論争だったらとも思うが、多彩な人物像や筋としては悪くない。続編に手が出るかどうかは?

  • 一枚の絵が
    "もし贋作なら、見た瞬間苦みを感じ、本物なら甘味をおぼえる"という
    天才美術コンサルタント・神永美有と、短大の美術講師・佐々木昭友の二人が
    美術品の鑑定に纏わる五つの難題と挌闘するミステリ。

    美術品は、ボッティチェッリやフェルメールといった馴染み深い作品から
    江戸時代の涅槃図までとさまざま登場しますが、神永氏のキレのよさには
    とにかく感服します。目から鱗が落ちまくり。

    五つのお話のうち印象に残ったのは
    ・早朝のねはん
    ・遺言の色

    清水純太郎氏!!
    もうほんとやってくれますよね!
    一度なりともこの人いい人...?と思ったことがほとほと悔しいです!(笑)

    ウイスキーを使った投票というのはよくあることなんでしょうか
    なかなか洒落た演出だなと思いました。^^

  • 美術品の真贋を舌で瞬時に判別できる神永美有と、女子短大で美術講師をしている佐々木昭友のコンビによる、美術品にまつわる連作短編集。神永は舌で判別というオカルトチックな能力はありながらも、理路整然とした思考を持ち魅力的な探偵役となり、語り手となる佐々木は、はちょっとおとぼけもある名助手役。言わば定番スタイル。
    そんな設定の上で取り扱われる美術品については、ボッティチェリ、古地図、涅槃図、フェルメール、アールヌーボーのガラス工芸品と幅広い。どれも含蓄が豊富でいてそれだけでも楽しめるのに、物語としても完成度高し。シリーズ化されているので次作にも期待。

  • 主人公の美術講師が、ある古本屋の息子である、じきに美術コンサルタントとなる男と出会うところから始まる。
    主人公の講師としての知識もさることながら、コンサルタントの男は真贋を舌で感じる変態な上、頭も切れる。メインの知識は講師、それを補填するコンサルタントの男の関係は、この美術ミステリーをより楽しく感じさせる。まさに美術探偵と言える。
    構成はいくつかの美術品に関する事件が各話で描かれていく短編型。個人的に好きな話は早朝ねはん。
    続編も出ているので非常に気になる。

  • 解説で『大漢和辞典』について触れられていましたが
    怏々として、とか
    巧言令色少なし仁、とか
    気になってピックアップした言葉でした
    (両者とも高校国語の教科書で出てきているので)



    表紙
    《アンドロス島のバッカス祭》1523-1526
    イタリア ルネサンス期のヴェネツィア派巨匠
    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

    酒の神ディオニュソスの話、バッカス祭の話、興味深かった

  • 無味乾燥な文体で、美とそれを利用する人たちを延々語られるとただただ味気ないなあ…という印象でした。…申し訳ありません…。

    私は美術に関しては全くの素人でちゃんと習ったこともなく美術展に行っても「この絵なんか好き」レベルですし、読んでいると作者の美術知識が豊富なのはわかるのですが、美への賛美が根幹にあるというよりは、破綻ないトリック(というのかな?)のために古今東西様々な美術品の成立年代や時代背景なんかを利用したかったのかなあ…とばかり思ってしまいました。

    ある登場人物の特殊能力設定から、美術品の真正論(本物だから価値があるのかそれ以外の価値があるのかという意味で)という永久的課題にきりこむ心意気があるのかと思いきや、ちょろっと述べただけで設定も活かしきれてない感じもしましたし…。「真に本物が偽物かは2の次で、理論説明が誰かを説き伏せる役に立ったならまあいいか」というスタンスに思えてしまいました…。

    せめて登場する美術品(架空含む)が美しい文体で美しく描写されていたら嬉しかったのですが、主人公たち2人が美の専門家という設定の割りには、文体も言葉も俗っぽくて優美さはなく…。その割りに美に関係ないところで、小難しい非日常用語が散りばめられていて読みづらいです…。

    これは買ったけど、続刊は買うことはしないかなあ…。

  • 面白くない訳ではないのだが、微妙に読みづらい。無理に会話してるので、高田崇史みたいに蘊蓄に振るとかキャラ立てるとかがもう少し欲しい。

  • R7/8/9

  • 新作を目にすると舌が甘さを、贋作を目にすると舌が苦さを感じる美術探偵・神永美有。彼が持ち込まれた難題をバッサバッサと解決という設定かと思いきや大学の美術講師・佐々木が相棒的な役割にして語り手。直感の神永、理論の佐々木というタッグで、ボッティチェリ、フェルメール、涅槃図、ガラス工芸、モラエスの古地図などをお題に、持ち込まれた難題に取り組んで解決していく連作短編集。奇抜を芸術と履き違えた自負と傲慢と猪突の申し子、佐々木の教え子のイヴォンヌがまたいい味を出す狂言回し的な役割で。◆「ギャラリーフェイク」が好きな身としては、美術品にまつわる連作ミステリなんて読まずにいられようか。その期待を十二分に満たしてくれた。贋作は苦く、真作は甘く感じるという舌、という仕掛けも面白く。美術探偵と美術講師というホームズとワトソンばりの相補う関係、また絶妙な距離感もよくって。◆人間の審美眼なんか、もともと誰とも共有し得ないものなんだ。p.39◆根源的な疑問なんてのは最も厳格な哲人か、ただの甘ったれのどっちかが持ち出すものだ。その中間に位置するすべての良識ある大人はな、それを無視するところからしか仕事をはじめられないんだよp.40◆天才はたしかに存在する。それに対して凡人がとるべき態度は一つしかない。心ゆくまで嘆賞することだ。p.60◆

  • 舌で真贋が分るという特殊設定なので、鑑定にまつわるといっても、こっちが本物で終る、単純な話は当然ない。美術品やその鑑賞にまつわる蘊蓄をベースに、凝った話が続く。細かいところのまで神経が行き届いた美術ミステリとして完成度は高いが、重点はそこにはなく、人間ドラマの方のようだ。きちんとした、と形容されるような話が好きな人には合うと思う。

  • 歴史小説の人の認識だった門井慶喜さんに、美術系ミステリーが何冊かあると知り、早速読んでみた神永美有シリーズ。
    美術品を見たときに、贋物なら苦味を本物なら甘味を感じるという天才目利きが活躍する短編集。

    個人的に今年は美術ミステリーにはまっている。原田マハさん、北森鴻さん、深水黎一郎さん。探せばたくさんあってうれしくなる。

    舌で本物が絶対的にわかる天才の無双ストーリーかと思いきや、なにをもって本物なのかの解釈により、ストーリーは二転三転。最後の話などは、舌鑑定でてこないし。
    ボッティチェリ、バーン・ジョーンズ、フェルメールからモラエス、涅槃図、三彩まで東洋西洋問わず次々と展開されるさりげない蘊蓄にほえーっとなる。続編も読みたい。

  • 美術作品を“舌”で観る男、神永と主人公の佐々木が挑む作品絡みの謎の物語。

    短編集で読み易かった事もあり、スラスラと読むことができました。ミステリー要素のお陰で先の展開が常に気になった事もページを捲る手が止まらなかった要因の一つです。

    作中に登場する作品は絵画、掛け軸、ガラス陶芸など様々ですが、どれも概略が分かり易く書かれており素人でも理解する事ができ軽く教養がついたかなという感じです。勿論、専門的な事が書かれているわけではないので「知る」という意味では物足りないですが。

    「銀河鉄道の父」を読んで知った門井さんですが、他の作品も読みたいなと思って手に取りました。神永シリーズも読み進めたいと思います。

  • p.41 「ひとりの人間を知るのは一つの図書館をまるごと買い占めるに等しい。」
    「十二夜」トレヴァー・ナン監督
    「日本通信」モラエス

  • 作品が贋物なら見た瞬間苦味を感じ、本物なら甘みをおぼえるという天才美術コンサルタント・神永美有。短大美術講師の私視点で二人が上手く絡んで美術品にまつわる謎を解く連作短編でした。設定も謎解きも悪いわけではないのですがなぜか読みにくく入り込めず読み終えるのにやたら時間がかかってしまいました。神永の舌がもっと生かされてもいいと思いますし、特殊能力なのでキャラの魅力をもっと押し出したらもっと読み易くなるのではないかとも思います。美術品の薀蓄やミステリ要素は楽しかったのでとりあえず二作目も読んでみます。

  • 美術界のシャーロックホームズとワトソン
    美術が好きな人にはオススメ。

  • 天才肌の神永と理論派の佐々木が問題のある美術作品の真偽を見極める。専門的知識満載ながら、ストーリーとしても面白い。脇役も活躍し、対決形式でのやり取りには思わず見入ってしまう感じがした。佐々木さんの家族に関わる最終話が特に面白かった。

  • 軽く読めて、実はけっこう考えどころの多いのではないかと思わせるミステリー小説。楽しく読みました。(2018年4月19日読了)

  • かなり凝った仕掛けとストーリーと感じた。絵画をネタにするライトミステリー。

  • 美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。

    美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。

    この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。

    単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まらず、その品に関わった人たちのさまざまな思いや心の動きが明らかになっていき、視点を変えると見事に一転した真実が見えてきて思わずカタルシスを憶えるという、素晴らしい構成になっています。

    ホームズ役の神永とワトソン役の佐々木のコンビの推理合戦も楽しいわ、知的好奇心も刺激されるわ二転三転する構成も楽しいわで、文句のつけようの無いほど面白かった!
    悪い人が一人も出てこないというのも読みやすい一因だと思いました。

    ラストもいいんですよねー。
    頼りないと思ってた佐々木の成長ぶりがグッときます。

    鮮やかな謎解きと美術の世界の奥深さが味わえる、贅沢な一冊でした。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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