私の男 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年4月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784167784010

みんなの感想まとめ

物語は、家族の欠損を埋めるような不安定で不可思議な関係性を描き出します。40歳の男性と彼の養女との間に秘められた感情が、冒頭から引き込まれる美しい描写で展開されます。直木賞を受賞したこの作品は、複雑な...

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞作

    『私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。‥‥傘盗人なのに、落ちぶれ貴族のようにどこか優雅だった』

    40才になる腐野淳悟
    結婚直前の養女、花
    この2人には何かある
    そう思わせる冒頭の文章
    もうここから引き込まれていく
    凄い話なのになんだか
    美しささえ感じてしまう

    以前「赤朽葉家の伝説」を読んで
    すっかり好きになってしまった
    桜庭一樹さん
    でもこの小説はまた違った
    魅力がある
    最後まで謎があって
    想像が止まらないのも良い
    今後の2人がどうなるのかも
    謎!
    腐野 (くさりの)なんて名前も
    ふざけてるし‥

    『おまえが、濡れるといけないと思って。花』
    このセリフにもう心は
    持ってかれてます

  • 物語の始まりから、漂う、不安定さ、不穏さ、嫌悪感。
    血縁の繋がりで、家族の欠損を補おうとし、何よりも信じすぎる不可思議。

    海で家族を失った少女と彼女を引き取り育てる男性。彼女の結婚から時間を遡ってふたりの関係性を濃密に厭世的に語られる。ふたりに関わった人達の視点も織り交ぜながら。




    小説の雰囲気は、すごく好きなのです。

    なのですが、BLが受け入れられないおじさま達がいる様に、近親系は苦手です

    • moboyokohamaさん
      いいねをいただいたので、流れでかつて自分の書いた感想を読んでみました。
      あの頃は暗くじめっと作品が好きだったんだなあ。
      近親系が駄目ですか。...
      いいねをいただいたので、流れでかつて自分の書いた感想を読んでみました。
      あの頃は暗くじめっと作品が好きだったんだなあ。
      近親系が駄目ですか。
      私も得意ではありませんが姉と弟っていう線だったらありかもしれない。
      特に小説や映画ならば。
      2023/08/08
    • おびのりさん
      コメントありがとうございました。
      ちょっと、ばたついてまして、ブグログへ向かう時間がなくて。

      はい、この小説の雰囲気は好きです。が、流石に...
      コメントありがとうございました。
      ちょっと、ばたついてまして、ブグログへ向かう時間がなくて。

      はい、この小説の雰囲気は好きです。が、流石に、本当の父娘となると、依存し合うのは充分に小説的なのですが、そこまでやっちゃうと、どーも。
      実際、離れて暮らしていたからという設定としても、無理かなって。

      まさか父と息子なら大丈夫だったとかでは、ないです。m(_ _)m
      2023/08/09
    • moboyokohamaさん
      そういえば父と息子という線は聞いた記憶がありませんね。
      そりゃあそうだろうなあ。
      私が姉と弟ならばと考えたのは、自分に兄弟が(姉が)いないと...
      そういえば父と息子という線は聞いた記憶がありませんね。
      そりゃあそうだろうなあ。
      私が姉と弟ならばと考えたのは、自分に兄弟が(姉が)いないという状況からの夢想に近い者だと思います。
      姉を持つ友人からはその存在は女性と認めることさえできず、むしろ敵対関係になりがちな対象らしいですね。
      年頃の女性が男親に嫌悪感を持ちがちなのは近親相関を防ぐための自然の摂理だと聞いたことがありますが、まさにそういう事なのでしょうか。
      2023/08/09
  • ……川端康成の小説に『眠れる美女』という作品がある。薬で眠らされた全裸の少女と添い寝するという、退廃的な遊戯に耽る老人の話だ。老人は複数の少女を相手にするが、ある少女と寝た時に、ふと、あることを思い出す。……

    『私の男』という扇情的なタイトル。〈私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた〉と冒頭から退廃的な空気を匂わせる。10頁もいかないうちに、語り手・花が「私の男」と呼ぶ男が、婚約者ではなく養父のことであると判明し、物語は加速度的に背徳の色を濃くしてゆく。追いうちをかけるように明かされる、過去の殺人と近親相姦の事実。そして物語は、この父娘の罪と転落の歴史を、語り手を変えながら少しずつ遡って行く。

    ここまででも十分に暗澹たる内容であるが、章を追うごとに次々と衝撃の事実が明らかになり、物語はほとんど絶望的になっていく。そして終盤のどんでん返し。ここにいたって、この父娘の悲劇性は、真のテーマは、近親相姦という特殊な問題ではなく、人間存在の根幹に関わる普遍的な問題らしいと気づかされる。

    ……『眠れる美女』の老人は、少女の体臭に「これは、母の匂いだ」と思い至る。十代の少女の裸体を前に、還暦を過ぎた老人は、在りし日の母の姿を思い起こす。……

    花の養父・淳悟の内面は、最初はほとんど描かれない。物語の終盤になって、初めて彼の魂の叫びが洩らされる。求めても得られないものを求めずにはいられない幼児の叫び。それは、鏡と鏡を合わせたように、花に反射して増幅し、共鳴する。親子の役割が逆転する。

    ほんとうの問題は、性的倒錯というより、母性剥奪にあるのではないだろうか。物語の中でしばしば、海が象徴的に描写される。生命を生んで育む海。一方で、荒れた時には、あらゆるものを呑みこんで奪いつくす海。海は羊水、即ち子宮であり、「母」の隠喩なのかもしれない。抜け殻のように座りながら一心に海を見つめる花も、死ぬときは必ず海に還るのだと言う淳悟も、求めても得られなかった母性に対する憧憬を、無意識に海に求めているのかもしれない。

    孤独な魂には、善意の人々の言葉も届かない。養父の「生きろ!」という叫びも、自分だけ置いていかれたという恨みしか呼び起こさない。老人の命がけの説得も、空ろな心には響かない。事の深刻さも理解できないまま、善悪の彼岸をやすやすと超えてしまう。そうして、母に見放された孤児たちは、偽りの幸福に溺れながら、閉じたループを描いて、いつまでもさまよい続ける。

    淳悟が去って、残された花はつぶやく。
    〈わたしは、これから、いったい誰からなにを奪って生きていけばいいのか〉。
    遺憾ながら、心理学のセオリーに従うかぎり、答えはひとつしかない。自分の子供から奪うのである。淳悟の母が淳悟から、淳悟が花から、順に奪ってきたように。

    健康な母性を花に期待できるだろうか。明るく輝く南国の海を「バカみたい」としか評せない花に? 淳悟の攻撃性が花に受け継がれてしまったことは、第一章の最後、花が小町に暴力をふるうシーンとして描写されている。花の子供もまた、求めても得られないものを求めてあがく空洞になるのだろうか。負の連鎖をとめることは不可能なのだろうか…。

    とにかく最初から最後まで呑まれっぱなしだった。私の中ではベスト100に入る傑作だ。

  • 直木賞受賞作。
    人によっては、いや、大多数の人がこの2人の関係に嫌悪感を抱くであろう始まり方。

    しかしながら、現代から過去に触れていく中で、その禁忌の愛の繋がりに共感は出来ないながらも圧倒される。
    新しい気持ちになる読書体験をさせて頂いた。

  • 《赤朽葉家の伝説》に続き2冊目。
    文章は読みやすいのに、こんなに読むのに時間がかかった本もない。兎に角自分には合わないなと思った。
    この中に出て来る大塩のおじいさん、小町さん目線の自分から抜け出せなかった。

  • 直木賞受賞作なので読んでみました。とても面白く桜庭さんの実力の確かさを感じますが、内容的には結構すごい事だと思います。そう、嫌悪感を感じてもおかしくない内容なのに文章の美しさに捕らわれてしまう。いっきに読んでしまいます。

  • 上映時間も何も見ずに
    その中で時間帯の合う映画を見た。「白紙で」
    それがこの映画だった。

    もちろん桜庭一樹の作品とも直木賞作品とも
    何も分からずー
    今でも鮮烈にそれぞれの場面が鮮烈に浮かぶ
    とにかく怖かった、暗かった。
    登場人物も限られた中
    雪深い
    氷の世界、
    ただただ逃げていく場面
    息ができなかった、どうなる
    主人公「男」を信じられなかった
    どうなる?どうなる?息もつかず場面に釘付け
    苦しかった、悲しかった

    映画館をでて、ずっと後も残ってる
    「あれはなんだったのだろう?」
    深い深い愛
    こんな二人の出会い方でなければよかったかもしれない。
    彼女に「花に」
    まともな「何がまともかは別にして」結婚生活はできない。

    そして今ならわかる。、
    人間、追い詰められると怖い。


    本当は
    映画と比較するためにも
    もう一度
    この作品を読むといいけど、前の記憶は忘れてる、
    好き嫌いは別にして秀逸だろう。

  • これから結婚式を挙げる花と、淳悟という男の関係は、冒頭からなにか異様なものを感じさせます。読んでいくと花と淳悟の過去の出来事を、それぞれ登場人物の視点から追うことができます。

    お互いを惹き付ける力と求める力が凄まじすぎて、世でいうところの「愛」から、かなりはみ出た愛し方をしています。でも描写が美しいので、嫌悪感なく、むしろ世界観にうっとりとしてしまいました。好き嫌いは分かれそうですが…私はとても楽しめました。

  • 狂気すら感じる歪んだ愛と性。読み終えてから、第一章を読み返すと、あまりにも息苦しい。

  • 淳悟と花の歪んだ愛の形を遡っていく。
    歪んだ?本当にゆがんでいるのか?わからないけど
    これも真実の愛の形では?
    最初は何か気持ち悪くて⭐︎2だなと思っていたが、読み進めるうちに2人の愛の深さに共感はできないが感動させられた。
    忘れられない一冊になった。

  • 愛し合う父娘が養父養子でよかった、でなければこの物語がとたんに読めなくなってしまう。と思いながら読んでいたら…えっ…
    禁断の愛を貫くためには邪魔者を殺さなければならなかったんだろうと思ったものの、やはり普通の感覚の人間ではないと思った
    人を殺してすぐに押し入れに隠す...そこまでは百歩譲って理解してもそのままセックスできるか?絶対できない
    現在から過去へ遡っていく展開が過去になにが起こったのか気になり読む手が止まらなくなった
    愛とは..考えさせられる物語だった

  • 上野千鶴子さんの「女ぎらい」を読んで、そこに引用されているジェンダーに関する本をたくさんチェックした中の一つ。もちろん本書は良くない意味で引用されていた。「桜庭一樹」というペンネームでさえも、「女が男装したような名前」と書かれていた(←うろ覚えなのでちがっていたらごめんなさい)。私は桜庭一樹さんはあまり読んだことなくて、本屋さんにはたくさん並んでいるからもちろん名前は知っているけど男性だと思っていた。

    ここからネタバレ注意です。

    この小説は、父と娘の近親相姦のハナシです。セックスシーン(いわゆる挿入)は描かれていないけど、養父の淳悟と娘の花は、性的な関係にある。第1章では花がやっと、養父の呪縛から逃れ、結婚しようとするところ。その先どうなる?と思いきや、続く章は過去にさかのぼっていく。
    2章は花と結婚しようとしている男が、二人をどう見ているか。そして彼の生い立ち。彼は裕福で厳格な家庭に育ったが、父親との関係は良くない。厳格で、「男とはこうあるべき」という考えが強く、息子が自分のようではないことに不満を抱いている。ここにも「父と子」の関係が描かれる。
    3章は養父の淳悟が主体。娘と二人で、「キタ」から逃げたきた理由が分かる過去の回想や、再び罪を犯してしまう経緯が描かれる。
    4章は再び花が主体で、花の、北海道での高校時代。養父の淳悟と二人、寄り添って(性的な関係で結ばれ)て生き、それを人に知られてしまう。
    5章は淳悟の恋人の一人だった女性の話で、花がどんな女の子だったのか客観的に描く感じになっている。
    6章は花が主体で、さらに過去にさかのぼって、津波で家族を失くし、淳悟の養女になる経緯が描かれる。淳悟が、孤児になった花を体育館で見つけた時点で、二人は強く、運命的に結びつけられているように読み取れる。実は花は、淳悟の「親戚」ということになっているが、淳悟が親戚に預けられていたときにそこの奥さんを孕ませた(?)子どもで、実の父娘であり、淳悟はそれが分かっているようなのだ。淳悟は震災で孤児になった花を見つける前から、彼女を想っていた。避難所の体育館で出会った瞬間から、二人はお互いを選び取る。
    しかしそのことと、孤児の花を引き取った淳悟が、彼女を性的欲望の対象とすることをどう解釈すればよいのだろうか?
    淳悟は花を「血の人形」と呼び、花は淳悟を「私の男」と呼ぶ。
    淳悟は父を海で失くし、残された母に異常に厳しく育てられた。それまでは優しい母だったのに、父親の代わりになろうとする母が、豹変したのだ。(母も精神を病んでいたのだろう)。母の愛に飢え、その母も失くし、預けられた親戚の家で母親代わりの女性を犯した…?そしてその女性が産んだ娘を、更に自分の愛の対象とする…血の人形として…?
    出生に秘密をもち、家族のなかで浮いていた花は、淳悟に「見つけてもらっ」て、救われた、と感じる。淳悟は自分のために何でもしてくれる。救い出してくれる、「私の男」。
    予備知識なしでこの小説を読んだとして、自分がどう感じたかわからないけど、先に上野千鶴子さんの批評を読んでいたので、最初からずっと、気持ち悪くてグロテスクな小説だと感じてしまった。
    花が結婚してどうなるのか、過去の罪とどう対峙するのかわからないまま、小説は過去にさかのぼって終わる。あぁ、未来を描いてほしかった。花はどうなるの?・・・と、気になりすぎるのだから、やはり素晴らしい小説なのだろう。

  • すごかった。何かが違う何かが漂ってるような雰囲気が終始あった気がする。こんな愛の形が存在するのか、そう思わせてくれた小説だった。ずっと暗い雰囲気で私の好きなタイプの本だった。再読1年ぶりにした。1回目では理解できなかった表現が理解でき、またこの素晴らしい作品にどっぷり浸れた。花の感情はたくさん描かれてるのに淳吾の感情の表現は避けられてるっていう説明を最後解説で読んで、それでも、伝わってくるこの違和感、禁忌桜庭先生の力を感じた。何回でも読み返したい。

  • 花の結婚式前夜から物語は遡っていく。
    花と淳悟にしかわからない、わかりあえない精神的に閉ざされた世界の中がそこにはある。
    唯一無二の存在。
    言葉にしてしまえばたったこれだけに集約されてしまうけれど、二人が寄り添って壊れていくようすは怖いような哀しいような、胸にくる物語である。
    もともと壊れかけていた二人が出会い、共にゆっくりと溶けあっていく。
    約束した時間を過ぎても結婚式に現れない淳悟。
    時間も迫り父親が不在のまま結婚式を始めようとする周囲。
    花はうろたえながら叫ぶ。
    「だって、おとうさんがいないもん!どこにも、どこにも、行けないわ…」
    生きるために、幸せになるために、淳悟から逃げようとする花。
    縛りつけるわけでもなく、縋りつくわけでもなく、淳悟は淡々とそれらを受け入れる。
    誰と結婚しても、どこへ逃げても、結局は逃げ切れるはずなどないと知っていたのだろう。
    引き寄せられるように禁忌を超えた二人は、ひとつの魂が歪に割れたもの同士だったのかもしれない。
    他の誰とも合うことはない。
    ピッタリと自然にひとつになれる相手は、互いしかいなかったのだろう。
    描かれている場面だけを切り取れば、重く背徳の匂いが立ち込める物語になってしまう。
    けれどそれらを押し退け、圧倒し、上回る孤独と切なさが全編に漂っている。
    刹那的な二人の生き方が胸に迫る物語だった。

  • 個人的にはとても良かった。桜庭一樹は4冊目だけど1番好き。ただ近親相姦の話だし読み手によっては淳吾をロリコンだと言う人もいると思うので、好みが分かれる作品である事も理解出来る。

    結婚間際の主人公花と40歳の淳悟から物語が始まり、二人の関係性を軸として年月を遡っていく形で話が進む。2人の未来を先に知ってるからこそ、お互いがお互いを想いすぎてる描写が出てくる度に苦しくなった。(特に花が9歳の頃と高校生の頃)

    読み終わってから数日経ってるけどこの2人が頭から離れない、本当に良かった

  • 父親と娘の歪んだ愛♡血の繋がりが引き付け合うものがあるのかなぁ〜???共依存な関係であまりよいとは言えないけど、似た境遇で、お互いを慰め合って生きていたのね。結婚したあとが気になる…

  • あの男。私の男。養父で、罪人。

    花の、私の男、淳悟に対する複雑な想いがみえる第一章。
    離れたい、離れられない、そばにいたい、嫌悪感、こみあげるいとしさ。
    そんな花が結婚する24歳の時から遡って記憶を見ていくような構成、文章に一気に惹きこまれた。

    時間を遡るごとに、結婚するという考えに至ったことが信じられないくらい、子どもの花は淳悟の手をずっと離さない、骨になっても一緒なのだと、淳悟に囚われている。花と淳悟の執着、歪な愛、呪いのような血のつながりの気配がどんどん強まっていく。

    善悪の彼岸。
    大塩さんが、自分が殺されそうになっているのに、花の状況をいけないことだと、諭し否定する姿は苦しい。
    花と淳悟の関係に気づいても、いきなり糾弾するでもなく、事情も聞かずに花を引き取ってくれるような花の次の居場所を用意する大塩さんは良い人で、正しく大人だった。
    けれど、あたりまえに超えてはならない一線を身につけて育って来た人が、それを身につけられずにここまで育った花に、おかしいのだと否定することの正しさの暴力も感じる。
    花が心から淳悟を求め、自分から選んでるのだとしても、大人は花を可哀想な子どもだと哀れむ。
    花は子どもだから淳悟を受け入れるよう育ってしまっただけ、奪われてきた存在。正常なところに引き戻すのが大人としては正しいのか。
    けれど花と淳悟の関係は、小町がグロテスクな光景だったというように、肯定されるものではない。

    きっと歪んだ花を世の中の正しさへと救うのならば、過去の淳悟まて遡らないといけない。けれど、淳悟のことは、過去や心情がほんの少しみえるだけで、どうして花を求め奪わずにはいられなくなったのかはわからない。
    大人になった淳悟を救うには、もうすでに後戻りができないところまできてしまっている。

    結婚しても、離れても、花の中に淳悟がいる。
    花は淳悟に囚われたまま、離れていてもきっと二人は絡まりあったまま。

    二人の関係を肯定できるわけでなくとも、最後まで惹きつけられる物語だった。

  • 冒頭から惹きつけられる作品。
    町田そのこさんは、私の男を最初から最後まで一言一句すべてタイプしたらしい。
    その気持ちも分かるぐらい一言一句無駄な表現がない作品。読み終わったあと呆気にとられる。

  • いまいち?!
    第138回直木賞受賞作
    「禁断の愛」「切なくも美しい、究極のエンターテイメント」とありましたが、どろどろっと暗く切ないストーリ。
    「利休にたずねよ」同様に、過去にさかのぼって事実が明らかになっていく語り方。

    なので、ストーリを語るのは難しいですが、主人公「花」が結婚するところから始まります。
    その花が語る「私の男」がその花の養父である「淳悟」。
    花と淳悟の関係は?
    花の過去とは
    淳悟の過去とは
    隠された事件とは

    と言ったところが、過去に遡り、明らかになっていく物語。

    ぶっちゃけ、二人は親子の関係を超えた肉体関係なわけですが、淫靡な関係でもあり、切ない関係でもあります。
    結局のところ、花は淳悟の実の娘で、その実娘でありながら、淳悟が花に求めたものは、母親。
    また、花が求める家族像、男像。

    そんな世界観なわけですが、そもそも、9歳の実娘にそういうことする?
    ちょっと受け入れがたい。

    さらに、そんな二人は殺人事件も起こしています。
    しかし、その殺人事件については、二人の関係性を物語るエピソードとして描かれていると思いますが、それでいいの?って感じ。殺人だよ..

    インモラルな世界観とそこで生きる男と女を描いているのだと思いますが、ちょっといまいちでした。

    好きか嫌いかでいうと嫌いな部類です

  • 2日で読み終え、そのあと二回読み返しました。
    1回目はそのまま読み、2回目はもう一度初めから読み返し、3回目は最終章から前の章へ、時系列を逆にして、、、。それくらい衝撃的な話でした。自傷をするような感覚で読み返しました。

    (以下自分語りになってしまいますが、、)
    私も父子家庭、不完全なDV家庭で育ち(性的虐待はなかったが)歪んだ愛というものを痛いほど思い出しました。
    日常的に手をあげていながら、機嫌のいい時には「お前は俺の嫁だよ」「お前のことは命に変えても守るからな」と言う父でした。覚醒剤依存で何度も捕まり、睡眠薬のオーバードーズで自殺未遂をするなど、不安定で依存しやすい性質の父を思い出し、なんとも言えない気持ちになりました。7年前に首を吊り、失敗して植物人間になり、5年前に息を引き取りました。
    父と過ごした時間は辛く、苦しい時間でした。
    しかし良いところもあり、誰よりもまっすぐでストレートに愛情表現をする人でした。愛情を感じていました。私は花のように、父親を最低で、最高だと思っていました。不安定で、不器用で、寂しがりやの父との記憶は、辛いのであまり思い出さないようにしていましたが、この作品を読んで思い出しました。

    淳悟と花の間にも、歪んでいながらも確かにそこに互いへの愛情はあったのだと感じ切なくなりました。
    花は、竹中の家では居場所がないことを子供ながら感じていて、一方淳悟は、父を失い、母が父の役割も担った時に、母を失った。2人とも家族に飢え、擁護者からの愛に飢えていた。互いが互いの傷を、寂しさを癒すような関係で、うまくピースがはまったのではないかと。

    作品の感想を調べると皆さん賛否両論で、なんなら気持ち悪いという意見の方が多く見受けられましたが、私には2人の関係がとても美しく見えました。一章を除いて、終始物寂しく、仄暗い作品。2人の絆は血というとても深いところで繋がっているものの、儚く、今にも壊れてしまいそうな脆さも感じました。分身のような、鏡のような、一蓮托生のような関係が、花の結婚で壊れてしまうのは健全なはずなのに、なんだが残念に思ってしまいました。

    こんなに思える、一心同体のような相手に出会うことってなかなかない。会えない人の方が多いであろうに、、と、、。
    2人の生い立ち故の愛への渇望、共依存があってこそなのは分かっていますが、どうしても2人は歪んでいながらも本当に美しく、私は羨ましく感じてしまいました。

    私は、淳悟を最初に癒したのは、竹中家の花の母親だと思っています。淳悟は竹中家で暮らしていたあの地域に関して「飽きた」という表現をしていましたが、地域ではなく、花の母親に母性は感じつつも、血縁でないから気持ちが冷めたのではないかと、、。

    花を引き取る前までは、淳悟は明るかった。
    きっと自分の傷から目を逸らし、周りの友人や多くの女たちと時間を共にしていたのではないかと思いました。
    花を引き取り、血の人形と感じるほどの血縁というある種呪いのような繋がりを目の当たりにして、閉じ込めていた暗い感情が溢れることを止められなくなってしまったのではないかと思いました。(花の前だけで)
    花は花で、今までになかった家族に必要とされること、その安心感を知り、共依存の沼に2人は沈んでいってしまったのではないかと、、、。

    余韻を残すのも小説の良いところだと知っていながらも、一章の後、淳悟は死んだのか、花とは会えるのかどうかが気になりました。

    柴田淳さんの曲を聴きながら読んでいました。
    「愛をする人」がまるで小町さんの心をそのまま歌っているようで、切ない。
    「雪の音」は淳悟視点かなぁ、と、、、
    もし良かったら聞いてみてほしいです、
    冬のオホーツク海、2人が暮らしていたあの街がよく合う曲です、

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば・かずき):1971年鳥取県出身、小説家。1999年、「夜空に、満天の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞し、翌年デビュー。『GOSICK』シリーズが注目され、さらに04年発表の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。07年に『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、翌08年に『私の男』で第138回直木賞を受賞。おもな著書に『少女を埋める』『紅だ!』『彼女が言わなかったすべてのこと』『名探偵の有害性』など、またエッセイ集に〈桜庭一樹読書日記〉シリーズや『東京ディストピア日記』などがある。

「2025年 『読まれる覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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