私の男 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 5902
レビュー : 756
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167784010

感想・レビュー・書評

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  • 複雑に絡み合った鎖のように重く、暗いものだけれど、こんなにもお互いを必要とし合える、愛し合える関係は、いっそ羨ましいと思えるほど。

  • この、読後の悪さを何と表現したら良いものか…。
    まず、日本語の扱いのうまさに脱帽した。「美しい日本語」とはまた少し違うのだが、語感が良く、表現も豊かなのである。こんなに文章がうまくなかったら、ここまで読後が悪くもなならなかっただろう。

    離れなければいけないと分かっているのにどうしても離れられない。世の中にはそんな恋もある。そんな恋ほど、とてつもなくいやらしい。ここまでいやらしく描けるのは、女流作家ならではだと思う。男性にはこんなグロテスクな性描写はできまい。

  • エロといえば桜庭一樹さんの「私の男」直木賞受賞作なのにめちゃくちゃエロくて切ない。癖になってしまう。
    養父との娘の行為を目撃され、口塞ぎに目撃者を襲って二人で逃避する。秘密が色々明らかになっていき、娘が大人になった時に父は手を離す。父である自分では叶わないことがあるから。

    幼い娘が父の母に姉になって恋人になる。関係性の逆転。

    読み手として憧れてしまうけど、幼さを強制放棄させられた側としてはどうなのか。
    映画の配役は浅野忠信と二階堂ふみでそこに歪みはあれど双方に愛はあった。
    フィクションとして秀逸だった。

  • 映画をやっていた頃から気になっていて、最近時間が出来たので読んだのだけど、もっと父親が老けててズブズブのグロテスクな話だと思っていたら、たったの16歳差でわりとイケメン風な父で、2人の関係も、花が25歳、淳悟が40歳までという、なんだかそんなにぬめっとしてなくて、いや物語自体は父子相姦だし人が2人も殺してるし背徳的(というか犯罪ですから…)なんだけど、文がサラッとしてるので漫画のようにあっさり読めてしまうところが凄い。花と淳悟が実際に睦みあってるシーンより、ふとした接触の描写が物凄く淫靡だったりして。

    ロリコンとマザコンが大なり小なり1人の男性の中で併存し得ることは、古典からも描かれてきたし、近親相姦という題材そのものも普遍的なものです。でも、この『私の男』は、その普遍的題材を単純な性嗜好として落とすので無く、その行為のはじまりが、淳悟も花も2人とも、「お母さあん」「お父さあん」と求めあっている、何処かお互い孤独で満たされない想いからだったということを、現在から過去を遡るという構成をとることによって際立たせている、そんな作品だと感じました。

    言うまでもなく、子は親にとって所有物ではないのですが、花から「健全な」家族関係を搾取していた淳悟も、淳悟の母から搾取されていたという事実は虐待の連鎖から言えば、想像のつきやすい事ですが、やはり暗い気持ちになってしまいます。
    淳悟は母=女性にコンプレックスがあり、「竹中」の妻と姦通してしまった。ただ淳悟と「竹中」の妻との不実によって生まれた花が、竹中の家で孤立感を感じていたーつまり竹中の家での花の孤立は淳悟(と「竹中」の妻)が元凶だーとしても、花にとっては「淳悟の為だけに生まれてきた」と妄信するには十分に値したのだと思う。
    花にはその生まれから健全な家族関係は望めなくて、わからなくて、ただ「竹中」の家族の中で自分だけが欠損していた血を本能的に嗅ぎ分けて、純正な存在として淳悟を求めたんだと思う。それはもう本当に、彼女が生きていくために。だから淳悟に血の人形として搾取されたとしても、花の欲していた血を淳悟は持っていた。だから「私の男」。父でもあって、息子でもあって、恋人でもある。共依存と呼ぶにはやはり同情し難いけれど。

    さて物語が最終的にはじまりに辿り着いても、現在時点ではそれは時の流れによって、「理由」では無くなっているのがこの物語の妙で、大人になって花は、自分が淳悟から淳悟以外を搾取されていたことと、自分も淳悟から花以外を搾取していたことを自覚して、淳悟を養ったり、自分も結婚によって淳悟から離れようとしています。

    淳悟の視点が一切出てこない点も特徴的だけど、淳悟も花との関係を何処かで終わらせようと思う気持ちーそれが父性なのか別のものかはわからないーがあったのではと想像してみると、花は自分のもの、と言いながらそれでも彼女の幸せを願う気持ちもあったのかなあ。20代から40代になれば、淳悟も自分と亡くした両親への気持ちも変わるでしょうし。恋はいつか冷めるもので、子供はいつか離れていくもので、披露宴で花が「ありがとう」でなく「さようなら」と言った、それで2人は終わったんじゃないかなあ、と思いました。

    ところで私は、花と美郎はあの出会い方で、どうやって結婚まで漕ぎ着けたんだろう?と興味深く思う一方、都会育ちで都会的な競争は知ってるけどスマートで苦労知らずな美郎が、花みたいな真逆の匂いのする人間に惹かれてしまうところになんだか哀しみを覚えてしまって、さらに、小町さんの言葉を借りれば花は本当に「ずいぶんうまいことやった」んだなあというか、淳悟を「私の男」にしたことと言い、花って「女こども」で打算的だったんだなあみたいに感じられちゃうのが。勿論お話としての建前もありますが、美郎くらいのレベルじゃなくちゃ淳悟から離れて結婚しないよ〜みたいなところが。そして申し分ない相手なのに、上手く行かなそうなところが……少しだけ残念だなあと思いました。
    花が今後搾取するのは、淳悟や自分にはないものを沢山持っている夫か、はたまた血で繋がった実の子どもなのでしょうか。それとも「これからだって、二人きりで逃げる」んでしょうか。花が喪失感をどう抱えていけるか、「取り返しのつかない」ことをどう克服していけるかが問題だと思います。

  • 娘と父の禁忌と犯した罪を、過去に遡ることによって描いた作品です。性描写と二人の歪な親子関係が圧倒的な表現力で示されていて、文章だけでここまで表現できたのはすごいとただ感嘆しました。

    最後の最後に明らかになる、父が娘の中に見ていたもの。
    そしてそんな父を受け入れた娘。第三者視点からは狂気としか言いようのない愛情がそこにはありました。

  • 「直木賞を取るような作品を、一冊くらい読んでみよう」と選んだこの本。
    著者の名前がなんとなく好きだから、なんとなくこれにした、ただそれだけの出逢いでした。

    文字が映像に見えました。
    雨、狭い部屋、暗い海、小さな唇、実際に見せられているかのような錯覚に陥ります。

    花とおとうさんの関係は、 狂っているし、初めから壊れているし、信じ難いけれど、
    それなのに二人から目が離せません。
    時を遡る物語から頭が離れませんでした。

    普段、私は本を読むとき、登場人物の誰かにたまらなく感情移入したり、恋をしたりすることが多いのですが、 今回はまるでそういうのがありませんでした。
    ただただ狂おしい、けれどどこか美しいモノを見た、という感じ。
    普段とは全く違うジャンルに挑んで、また新しい「本」を知りました。
    「本を読む」って果てしないですね。
    直感で選んだけれど、この本を手に取ったことに後悔はありません。
    忘れないでね。

  • 私は父子家庭で、父親と娘の禁断の愛と銘打ったこの本を読むことがなかなかできませんでした。
    しかし今回の映画化で読んでみて、気持ち悪いなんて思いより、切なさやこの父娘の屈折した愛情が胸にきました。‥ん?愛情なのかな。
    互いが互いの心臓みたいに、お互いが存在しなければ生きていけないふたり。家族なんてみんなどこかしら欠損しているものだと私も思う。
    結末を序盤に知っているだけに余計に胸が苦しくなってくる。
    桜庭さんの描写がこの話のえぐい、どろっとした雰囲気をうまく醸し出している。
    最後の最後まで共感はできなかったけど、男でひとつで育ててくれた父のことを今一度考えさせてくれた。

  • ドロドロしてる…ようでいてそうでもない気もする。淡々とした語り口だから。爛れてるのは確かだけれど。流氷浮かぶ北の黒い海のおどろおどろしさと、女の匂いが香り立つように、あちこち漂っている本。不思議と男の匂いはしない。微かに煙草が臭うだけ。

  • 無理。読めない。
    ひさびさリタイアしました。
    女子中高生向けのエロ本としては文句ない設定・描写だと思う。
    こどもの頃に天涯孤独になって若い浅野忠信に拾われて、この世にふたりきりで、いつもじっくりと見つめてくれて、性愛の場面でだけは私があの人のお母さんがわりなの!って、いいよねー憧れるよねー(棒)ってかんじ。
    近親相姦というテーマが嫌なのでは決してなく、文体から漂う「この暗い恋愛、素敵っしょ」かげんが苦手です。
    例えて言うなら不倫自体はべつにいいと思うけど、女子などに現在進行形の不倫のつらさ・苦しさ・「でも好きなの!本当の愛なの!」みたいな話を聞かされてるときのスーパー眠いかんじに似てる。

  • ああ、これはなかなか 久しぶりにねっとりと
    からみつくような、からみつかないような、

    女流作家なら誰かが書いていそうで、意外にない感じ。
    表面的な題材からいえば、そりゃあ、何人も書いてるけど
    このインパクトはなかなかなかったなぁ

    これはしかし、描く方向が非常に決定的ですね。
    妙に読後感が絵画的で 屈折したほのぼの感。。。

    楽しませていただきました。

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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