- 文藝春秋 (2010年10月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167795016
感想・レビュー・書評
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空港内を走っている男の姿が表紙。APOとは空港をあらわす業界用語らしい。で…あぽやん——それは空港で旅客を送りだす仕事をしている人とのことだ。
旅行会社の企画課から 成田空港の現場へと左遷されてしまった主人公。
ヤル気の出ない仕事のはずが、パスポートがない、発券ミスが起きた…そんな空港のカウンターで起こるトラブルに立ち向かい、だんだんと成長して仕事の達成感を見出してゆく。お仕事小説は結構好きな分野だなあ。
本社と空港支店勤務、カウンター職、正社員と契約社員…様々な状況を含め、いやに空港業務に精通しているような内容だったので、新野剛志さんという作家を調べたら、元JALパックの社員で空港で実際に働いていたこともあるらしい…経験に基づき書いていることもきっとあるにちがいない。
小説を読んでいたら、何かテレビドラマがあったような気がして調べてみたら2013年に伊藤淳史主演でドラマ化されていた。(一話か二話、見たような気がする)
空港関係の仕事をしている方が読むと、『あるある〜』なんて思うのかなあ。 -
この年末、会社の方針で多くの先輩同僚が会社を辞めることになり、そのせいで私も新しい仕事に変わった。
年末の最終日、笑顔で去る人たちを送り出しながら、彼らと一緒に仕事をした日々と会社生活の残りの時間を思いとても複雑で泣きそうになった。
一日の大半の時間を会社で過ごす中で、仕事とそれに対する向き合い方は、私にとっては人生を大きく規定しているとも言える。
さてこの本、最近出た「2」が面白そうだったので、最初から読んでみようと思い、一緒に並んでいたこちらから買って帰る。
ツーリスト会社に勤め空港で働く、通称“あぽやん”。会社の中では閑職のようで、若くしてそこに飛ばされてきたと自覚する遠藤クンが主人公。
TVドラマになるみたいで帯に伊藤淳史が写っているけど、主人公の孤軍奮闘の空回りと暑苦しさは確かにピッタリという気がする。
成田空港から飛び立つお客に絡ませて、色んなトラブルが起こり、それに対処して行く内に徐々に空港のエキスパートとしての心構えが出来ていく。
ありきたりではあるけれど、“笑顔”とか“いってらっしゃいませ”という言葉の陰にある接客業に携わる人たちの心意気というものが垣間見える。
彼らのようにその一言に自分の仕事に対する自負を込めてお客様に向き合いたい。住田所長のように、仕事と部下のために、大事なものを壊さずに持ち続けていたい。
多くの人が去った中、もはや年嵩になる身を思い、新しい年を前に、新しい仕事に対し、今までやって来た仕事への自負も含めて、心を新たにする。 -
私には全然なじみがない空港が舞台だけど、とても楽しく読めた。旅行会社の中でも日陰部署とされている空港に配属された主人公29歳、最初はふてくされていたのが、仕事をこなすにつれ責任と自覚が芽生えてくる様子が応援したくなるお話。いろんなお客さんがいて、スタッフも個性的、毎日が笑顔とトラブルに彩られた職場・・・でも、そこが特別に刺激的で作り話っぽいという印象はない。主人公も転んだり力みすぎたりへこんだりと、全体的に身近な感じ、等身大に思えるところが良かった。
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あぽやんとは旅行代理店が空港に配置するお客様窓口にして空港エキスパートのことだそうだ。かってはあぽやんは空港業務の花形だったらしいが、いつしか旅行代理店の閑職となり、そこは左遷を意味する配置場所になってしまった。そこに若くして「飛ばされた」若者の職業成長物語。
空港で発生するトラブルにこんなものがあるのかっていう驚きが中心で、そこにどのように対処していくか、それが人間模様なのか、少々不思議な感じがした。軽妙で、多少人間関係にひねりがあり、ふてくされた若者が成長していく姿は読んでいて気持ちがよい。すらすらと読める。シチュエーションも初めてのなので新鮮だ。
しかし、物語としての奥行きのようなものはあまり感じない。へー、といっておしまいのような。まあ、たまには肩の力抜いて次々読みたいときもあるので、そんなときにはすらすら読めてよいかな。 -
上司に反抗して左遷され、空港業務通称あぽやんになり、
さらには恋人にマザコンと指摘されてわかれてしまう。
そんなやる気のない主人公が、空港業務に目覚め、
恋に仕事にと打ち込んでいく姿を描いている。
同僚、先輩、部下、上司、関係会社の社員、様々な旅行客。
とにかく登場人物たちは多彩で、色々な人たちとのやりとりが
出てきます。
なんだか一緒にあぽやんになったような気分になれる
作品でした。
でもこれってシリーズ化したら面白くはないのかもしれません。 -
空港で働く旅行会社の社員のお仕事小説。APOとはairportを指し、あぽやんは空港で働く社員を指すそうで。旅行会社を通じて旅行することもあるが、こちらには分からないが、もしかしたら、時にはこんな風に一生懸命動いてくれているのかも、と思うと、旅行会社だけでなくて、空港で働く人たち全体への好感度が上がる。
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本書のタイトル、あぽやん。
何のこっちゃ?と思って読み勧めると一章の中で説明があった。
あぽとは空港のことだ。航空業界、旅行業界では、かつてテレックスを使っていた名残で、アルファベット三文字で事物を表すことが多い。旅客はPAX、航空券はTKT、ホテルはHTL、そして空港はAPO。それをそのままローマ字読みにしたアポは、普段の会話の中でもよく使われる業界用語だ。
本書は、空港勤務のエキスパート「あぽやん」を目指す青年の物語である。
いわゆる「お仕事」小説である。
「お仕事」小説......心ならずも「その仕事」に就くことになった主人公が、様々なトラブルに立ち向かいながら、その仕事の面白さ・やりがいを見つけ、成長していく(たまに恋愛も絡む)ってのが、一つの王道パターンだけど、本書は、その王道パターンのど真ん中を描いてる。
30歳目前の遠藤君、大手旅行会社で企画などの仕事をやっていたのに、空港勤務を命じられる。渋々、空港勤務に赴くわけだけど、そこでは個性的な先輩や気になる女性が...。トラブルもたびたび起こり...。これ、「お仕事」小説の典型例だな。
空港という、ある種「非日常」の世界を描いてるとこが目新しい。空港での仕事って、なかなか想像しづらいけど、軽妙なタッチで分かりやすく書いてる。
主人公の遠藤君、カッコイイと思ったな。不本意な空港勤務とはいえ、目の前の仕事に一生懸命、向き合ってる。ふて腐れたり、逃げたりしない姿勢は読んでいて好感だ。
欲を言えば、もう少し空港の仕事を掘り下げて書いて欲しかった。スラスラ読める文章だし、読んでいて気持ち良いけど、後に残らないというか...。主人公の心情ももっと書き込んで良いと思うけどなぁ。好青年ってのは伝わってくるけど、仕事や恋に悩んでる心情が、チョット書き足りないような...。
☆3個
背表紙~
遠藤慶太は29歳。大航ツーリスト本社から成田空港所に「飛ばされて」きた。返り咲きを誓う遠藤だったが―パスポートの不所持、予約消滅といった旅客のトラブル解決に奮闘するうちに空港勤務のエキスパート「あぽやん」へと成長してゆく、個性豊かな同僚たちと仕事への情熱を爽やかに描いた空港物語。
作者の新野 剛志、たしか「八月のマルクス」で江戸川乱歩章を受賞してるんだけど、こんな軽妙な小説も書くの!?って、ちょっと驚いたな。続編も出てるようなので読んでみたい。 -
ドラマを見てから読んだので、語りの部分は全て伊藤淳史の声が浮かぶ。今泉と森尾も、ドラマのイメージどおり。特に今泉。
理不尽な客の要求にも笑顔で応じ、組織を代表して自分のミスでないミスにも頭を下げ、次々に起こるトラブルに対処していく。日々の仕事の中での様々な出来事や人間模様を、軽快な語り口で描いていて、読みやすい。 -
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新しいジャンルで面白かった。
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空港での旅客のトラブル対応をする部署に異動になった遠藤。エキスパートのあぽやんを目指す!
頼もしいけど個性的な仲間に囲まれながら、様々なトラブルに対応し、恋愛もする。
楽しいお仕事小説。
2015.7.12 -
旅行業界って、サービス業だよねぇ・・・。大変だろうなぁ。私なんか昔の人だから、国際線は2時間前、国内は1時間前には空港に、って信じ込んで早め早めに空港に行ってるけどなぁ。人任せの旅行ってどうなの?楽しいの?不安だから、旅行会社に頼むのか。
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ドキドキしながら物語を読ませる本。
読了まで時間がかかったが、読み始めたらあっという間だった。
それくらい、ページを進ませてくれる。なぜか、文字がスーッと入ってくる感じがした。
飛行機好きがたたってこの本を買ったが、飛行機は全く出ず、空港の話である。
そんな仕事があったのか、と言う感想。あと、そんな組織・体制でやってるモノなのかと、一種の勉強のような感じもあった。
今後の空港の人を見る目線が変わりそう。空港はただの通過場所ではなくて、ひとつの目的地として見てみよう。そうすると、受付の人、保安検査の人、誘導する人、たくさんの人が浮き上がって見えてくるんだろうな。おもしろそう。
第2弾も発売されている。
ちょっと落ち着いたら買って読もう。
楽しく読めた。評価は☆4つ。 -
ドラマは見ていないのだけれど、前から気になっていた作品。空港で働く主人公(あぽやん)が空港で起こる様々な問題に対処し解決していく。ひらひらさんのお話が好きだった。続編も借りてみようかなぁ。2013/069
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昔の直木賞候補に挙がったらしいよ、っていうことで読んでみた。
あぽやん。
空港で頑張るツアーカウンターの人たちのお話。
そういう職業についてあまり考えたことがなかったので、まぁ純粋にnew worldという感じで面白かったかな。
ミスが絶対に許されないツアー会社。
もちろん、システム上、なんとか二重にも三重にもミスを防ぐ仕組みは作ってあるだろうけれども、自分にはやれない(やるべきじゃない)かも、と思った。恐ろしいミスをしでかしそうだからね。
まぁ、そんなこんなで。
特別大ドラマがあるような話ではないけれど、さくっと仕事って何だろうね、ってぼぉーっと思いながらハートフルストーリー短編を読む感じ?で、悪くはなかったです。
あとがき読んだら、この作者は実は堅い話を書く人なんだ、って書いてあってびっくりしましたとさ(笑)。 -
空港で活躍するアポやんなかなか良かった
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50
空港勤務のエキスパート、あぽやんを痛快に、最後にほろっと描いた本著。
我々が期待に胸膨らませて降り立つ空港には客にも、グランドスタッフにも、誰にでもいろいろなドラマがある。
空港という非日常の中で日常に働く若きあぽやんの活躍に心動かされること違いない。 -
職業小説というらしい、仕事場での出来事がメイン。しかも、空港。華やかなパイロットなどではなく、旅行会社の空港所勤務で、出世には役立たないところ、らしい。
でも、生き生きと働く人たちは素敵だ。こちらが元気になる。
サービス業をやっていればよくある、ほぼ理不尽としか思えないクレームや明らかなミスともいえるクレームがあって、それをおさめるために頭を下げて…すごく身近に感じた。普段は冴えない上司が本社にやり返してくれたり、守ってくれたりって、嬉しいよね!わかる!とひとりで頷いてしまった。
この小説は特に、人物描写が素晴らしく、魅力的。いるよね、こういう人!的な、その人を簡単に想像出来てしまう。なんだか、夢中になって読んでしまった。
どうやらシリーズの2と3があるらしいと知り、これから読んでみるつもり。面白いといいなー。
著者プロフィール
新野剛志の作品
