- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167796037
作品紹介・あらすじ
十三年前に札幌で起きた殺人事件と、同じ手口で風俗嬢が殺害された。道警の敏腕刑事だった仙道が、犯人から連絡を受けて、故郷である旧炭鉱町へ向かう表題作をはじめ北海道の各地を舞台に、任務がもとで心身を耗弱し休職した刑事が、事件に新たな光と闇を見出す連作短編警察小説。第百四十二回直木賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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主人公は、過去の事件によるPTSDで休職中の刑事。心療内科を受診しながら、いささか暇を持て余している。そんな彼の元へ、過去何かしらの事件で関わりをあった人達から、相談の形式で事件解決の依頼が入る。それぞれの事件を扱った、6編の連作短編。
休職中という立場から事件に関わるので、捜査の主体とはならず、依頼者の話から事件周囲の人間関係、その背景を探りながら、真相に近づく。
推理する構成にもなっているけど、一緒に流れを読みましょうという感じ。緊迫感ばかりの刑事物よりも、好きかもしれない。
「廃墟に乞う」は、犯人の男の少年時代の家庭背景と過去と現在の事件が悲しい結末となった。 -
1 本書は佐々木讓氏の作品です。佐々木氏は、北海道シリーズや「警察の血」等の警察小説を得意にする作家です。本書は、主人公の仙道刑事が活躍します。6編からなる短編連作の警察小説で、直木賞を受賞してます。
2 この「廃墟に乞う」の犯人である古川は、極貧の中で育ちました。母親は、体を売って金を稼ぎ、2人の子供を育てるという生活でした。そうした中で、主人公は、“母親が食うに困って、幼い妹をダムに投げ込んで殺そうとする異常な光景”を目撃する。さらには、子供を残したまま、失踪した母親を許せず、同じように体を売って生活している、風俗嬢を殺してしまう。最後は、犯人がダムに投身自殺して、物語は終わります。
3 心に留まった書中の記述について、私見を加えて書きます。
・「衰退した旧炭鉱町で、極貧の生活を送っていた」「家には、洗濯機はなく、古川は汚れ放題の服を着せられ、小学校に通った」「父親のいない、母親にも捨てられた子供」 ◾️私見⇒
このような環境で育った人にかける言葉が見つかりません。誰もが口にするのは、福祉の充実でしょう。残念ながら、私には他の術が分かりません。しかし、貧しさを理由に犯罪を犯すことは許されません。
雑談です。私の知人で、母子家庭で育ち、奨学金とアルバイトで、大学を卒業し、弁護士として、弱者を支援している人がいます。環境克服は困難ですが、前向きに生きる事です。人間は弱いので、良いアドバイザーに出会うと良いですね。
4 まとめ:
本書は、警察小説と言いながら、社会問題にも言及しています。警察小説としては、犯人特定が単純で、ハラハラ感がありません。そして、犯行動機は、極貧生活としています。ストーリー展開の複雑さが欠如し、人間の心の深読み不足も否めません。佐々木さんの小説は他も読んでいます。それらと比べても、突っ込みが足りないと思います。興味が湧きませんでした。文庫本40頁強の分量なので、限界があったかもしれません。しかし、私の好きな、清水さんの短編集は読みごたえがあります。直木賞の選考基準に疑問ありです。
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H31.4.1 読了。
休職中の刑事の事件簿。連作短編集。格闘なし。銃撃戦なし。そのためか警察小説にしては、読んでいて物足りなさを感じた。 -
第142回直木賞受賞作品
でも、ちょっと物足りない
短編連作の警察小説です
ストーリとしては、PTSDとなった刑事の仙道が休職中にプライベートとして携わる6件の事件の物語
ドンパチはありませんが、一つ一つの事件の裏側にある人間臭さ、どろっとしたところ、ほわほわした仙道が明らかにしていきます。
■オージー好みの村
ニセコで起きた殺人事件。その容疑者としてあるオーストラリア人があげられます。その容疑者の容疑を晴らしてほしいという女性の願い。
殺人事件の真相と、このオーストラリア人が守ろうとしていたものとは?
そして依頼人の想いとは?
■廃墟に乞う
13年前の事件と同様の手口でデリヘル嬢が殺害。
容疑者は13年前の犯人。
その容疑者の過去、住んでいた町を訪ねる仙道
そして、今回の事件の結末は?
このストーリはあまり好みではありません
■兄の想い
漁港で起きた殺人事件。
容疑者の兄が事件の真相解明を依頼
容疑者は手は早いが、凶器で殺害するような人物ではない。
その場でいったい何があったのか?
これは哀しい物語ですが、好きな部類の物語
■消えた娘
失踪した娘を探してほしいという依頼
娘の遺留品は死んだ婦女暴行犯の部屋で発見されます。
娘はどこにいるのか?すでに殺されているのか?
このストーリはちょっといまいち
■博労沢の殺人
牧場のオーナーの遺体が自宅寝室で発見
様々な人から恨まれていた被害者
犯人は身内か?外部か?
その真相は?といった展開です。
これ、ちょっと動機が読み取れなかった。
■復帰する朝
仙道がPTSDとなってしまった事件が明らかに
一方で、妹が参考人として召集されている事件で妹を守ってほしいという依頼
妹を調べるうちに明らかになる真実
そして、姉の依頼の真の意味
この物語が一番好きです。
それぞれの事件の背後にある人間関係と闇
ハッピーエンドとなる物語はありませんので、読み進めるとちょっと気分が暗くなる(笑) -
休職中の刑事が事件解決。…そんなのアリ?
とはいえ面白かった。
事件の捜査員の捜査はもちろん、彼らのプライドを傷つけることなく事件解決。本当に仙道孝司は出来た人間だ。
それぞれの事件も背景に良くも悪くも人間らしいものがあり、事件解決もホワッとした何か考えさせるような締めくくりで、そこが仙道とリンクしてるようでよかった。 -
短編集。
仙道さん、1話読む度に復帰が遠くなるような気がするのですが…… -
佐々木譲の刑事物短編集。
あれほどワクワクさせてくれた大戦3部作の勢いは影をひそめ、静の刑事物だった。
刑事物のミステリーは読者が多く売れるとは思うが、また大戦物、スパイ物を書いて欲しい。 -
登場する北海道の町々の姿が,その独特の空気感をも感じさせてくれる。地元を舞台にした小説のありがたさ。今現在、その描写は、古くなっていない。
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休職中の刑事にプライベートを通じて捜査依頼が来るというのはなかなか考えにくいのですが、日本では不倫調査ぐらいしかしない私立探偵の代わりにと考えれば若干リアリティーは有ったりします。
或る事件に関わってPTSDになってしまい、それを癒すための休職なのですが結構逆効果になりそうな内容も有ったりで、大丈夫か?仙道?と心配になる事もちらほら。
表題作がとにかく面白いのでお勧めではあるのですが、一番PTSDに悪いのではないかと思うような話でもありました。
表題作の題名は本の題名でもあるのである意味リーダートラックなのでさすがの出来で、廃墟と貧困と殺人が絡み合ってやるせない気持ちになりました。
僕にとっては「警官の血」で受賞出来なかった時点で直木賞に不信感が有ったりしたのですが、佐々木譲さんが受賞したのは単純にうれしかったです。でも、なんでこれやねんと読みもしないでぶーたれていたのは内緒です。
読んでみたらば十分に面白かったので特に異論も無いのですが、やはり受賞作を中心に読んでいく人達にはこの作品よりも「警官の血」から入って佐々木譲の豊饒な魅力にはまって欲しかった。これ読んで分かった気になって欲しくないというのが偽らざる正直な気持ちでした。
今野ファミリーの仲間入りしたいけど笑
京極堂に手出しちゃったし( ̄▽ ̄)
今野ファミリーの仲間入りしたいけど笑
京極堂に手出しちゃったし( ̄▽ ̄)
狭い日本 そんな厚さで どこへ置く
狭い日本 そんな厚さで どこへ置く
ベタですが「隠蔽捜査」シリーズから読んでみてはどうでしょう(^^)
ベタですが「隠蔽捜査」シリーズから読んでみてはどうでしょう(^^)