日本海軍の礎を築いた男 群青 (文春文庫)

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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801137

作品紹介・あらすじ

幕府海軍の設立から、その終焉まで立ち会った男、矢田堀景蔵。幕府学問所で秀才の名をほしいままにした景蔵は、阿片戦争の波及を恐れた幕府の命により、長崎の海軍伝習所に赴任した。そこでは勝海舟、榎本武揚等、その後の幕府の浮沈を共にする仲間と出会う。幕府海軍総裁まで昇りつめた男の生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 名を残すという他者からの評価でなく、日本の国防のために戦わないことをかけて戦った人。廣田弘毅にせよ、鈴木寛太郎、米内光政、井上成美にせよ、後世から正しい行いをした人もその時代に評価されることは少ない。世の中とは常に白と黒が入り混じるが、群衆というのは常にわかりやすいことを望む。いつの世も矢田堀景蔵のように世に知られずも道をまっとうしようとする人がいてくれて、成り立っている。そのことを思い出させてくれる一冊。あと、日本海軍の創設を勝海舟以外の幕府側から描いた秀逸な一冊。
    函館戦争さえ防げていたら後世からの評価も変わったろうに。勝てば官軍、歴史は勝者が作るか…

  • 歴史上知られた勝海舟や榎本武揚だけではなく主人公の矢田堀景蔵をはじめ、歴史に埋もれたたくさんの無名な人々の努力の上にいまの日本があることを実感する本です。
    今よりずっと海外が遠くて危険だったころ、オランダやアメリカに渡った江戸時代の人々の努力に圧倒されるます。
    また、幕末、武力を背景にしたアメリカやイギリス、フランス、ロシアなどの外交に対して海軍力を持って必死に抗おうとするさまはいまの東アジアにも繋がると感じます。結局独自の武力を持たなくては国の独立は守れないという本質がこの本を読むと理解できるという意味でも日本人は必読の書です。最後に分かるタイトルの意味にも考えさせられます。日本はもっと教育にお金と時間と人を充てるべきです。

  • 矢田堀景蔵の話。昌平黌に入り、学んだ人間だ。昌平黌は、誰かに何かを教えてもらうところではなく、自分で考える場所だ、と入学式の時に教授助手の岩瀬忠震(ただなり)から言われたことがぐっと胸に響いた。岩瀬は続ける。出藍之誉(しゅつらんのほまれ)をどう解釈するか。青は藍より出でて藍より青し。昌平黌でいうと、師を越えるぐらい弟子が優秀であることか。矢田堀は違う解釈を考えた。それは、師を誉める言葉だと。自分を越える弟子を育てた師こそ偉いというわけだ。岩瀬は言う。私を越えて世にでてゆけ。私の誉れになることが、お前達の使命だ、と。しかし、本当の解釈は違った。出藍之誉に続く言葉は、氷は水これを成して、しかも水より寒し、と続く。人は努力次第で、もって生まれた資質よりも、優れたものに変わりうる、という例えだ。いくらでも変わり得るということを忘れるなと。
    幕末から明治にかけて、日本海軍の原形というべきものができたが、その顔ぶれを見ると、一人として矢田堀の影響を受けなかったものはないだろう。矢田堀は藍であり、海軍創設時のメンバーは青であり、それが群れをなしているということだった。

  • 明治維新の混乱のなか、国を創るために貢献した人々がたくさんいる。今の世に名前が残っているもの以外にどれだけ多くの人間が複雑にかかわり、志をもち、生きていたかを考えさせる作品。
    矢田堀鴻という人物を知らなかったが、努力を重ね、深い思慮があり、将来の日本のためを思い、生きていく姿勢に心を動かされる。日本海軍の礎を築いた、信念のある人物の生きざまに頭が下がる。

  • 幕府海軍を立ち上げ、幕府最後の海軍総裁となった矢田堀鴻の話。明治維新を経て幕府海軍は日本海軍となりますが、その礎を築いた人です。幕末、維新物は多く読んでいますが、矢田堀鴻については知りませんでした。

    維新後は能力の高さを恐れられ、閑職をたらい回しにされるという不遇の後半生。新政府に矢田堀を使える度量があれば、もっと多くの人材を残せたと思うので残念です。矢田堀の防衛海軍思想、艦を捨てても生き残れという思想が昭和へと受け継がれていれば、と詮無い事ですが考えてしまいます。

    幕府海軍ということで同時代を生きた勝海舟とはライバル関係にありましたが、勝は能力・技術力では矢田堀に遠く及ばないので、矢田堀と競うことを避けていたようです。ただ、政治力が矢田堀には欠けており、これは勝の独壇場でした。このあたりが、歴史に名を残すものとそうでないものとの違いなのかなと。

  • 面白かった。
    維新をかざる人物の陰にこういう男がいたとは全然知らなかった。
    歴史は声の大きい者たちによって語られていくから、個々の人物の評価は平等では無いんだな。

  • 後半からがぐっと面白くなる。
    群青というタイトルに込められた意味がわかったとき、一人の海の男の生き方にとても共感した。

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著者プロフィール

歴史小説家

「2019年 『梅と水仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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