夏のくじら (文春文庫 お 58-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801373

感想・レビュー・書評

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  • 息子が小学生の頃、地元のよさこい祭りに参加して、汗だくになり真剣に踊っていた。そんな思い出からこの本を読み出した。熱気はたしかに伝わった!真夏の土佐の暑さも、踊り続ける渇きもみんな伝わった。
    良い小説だった。


  •  『〝クジラ〟強調月間始めました!』3

     第3回は、大崎梢さんの『夏のくじら』です。
     本書の「くじら」は、舞台の高知土佐湾が鯨の生息域で、捕鯨文化が栄えていたという事実そのまま。また、主人公が「鯨井町踊り子隊」チームに所属するという設定です。
     よさこい祭りの高揚感と関わる人たちの群像を綴った、まさに灼熱の夏物語です。
     物語の進行と同時に、よさこいの歴史、準備から本番までの説明が上手く取り込まれていて、勉強になりました。
     チーム表現がもたらす快感や魔力、よさこいに取り憑かれ、練習や本番が苦しくてもやる喜び、完全燃焼、躍動感あふれる描写から〝夏を刻む〟心意気が伝わってきます。
     よさこいの陰の努力に裏打ちされた華やかさに加えて、主人公の「憧れの女性を探す」別視点が、更に華を添えています。4年前にある女性と交わし果たされなかった約束が…。
     もう、青春ですねー。爽やかー。これは読んでのお楽しみ…。

  • 青空に舞う纏。 曲に合わせて振り鳴らされる鳴子。
    ぴったりと動きを揃え、最高の笑顔で舞う踊り子たち。
    年に一度のよさこい祭りに懸ける思いの熱いこと!

    有川浩さんの小説、『県庁おもてなし課』や『ゆず、香る』
    ドラマ『遅咲きのヒマワリ』などで、ここのところじわじわと高まっていた
    「高知に行きた~い♪」熱が、さらに急上昇してしまいました。

    東京近郊で育ったにもかかわらず、ひょんなことから中三の夏
    祖母や従兄弟の住む高知で、よさこい祭りのチームに参加することになった篤史。
    審査員から、素敵なパフォーマンスをした踊り子だけが貰えるメダルを
    祭りの最終日に交換しようと約束した女の子が、いつのまにか姿を消して。。。

    初恋の夏から4年。
    彼女にもう一度逢いたい一心で、関東からはるばる高知大を受験し
    晴れて大学生として高知に戻ってくるとは! 青春ですね♪

    彼女との再会を果たすため、しぶしぶ参加したはずのよさこいなのに
    チームの一員としてコンセプトの決定から衣裳や音楽選び、
    メンバー募集のためのHP作成、踊りの練習、地方車の飾りつけまで関わるうち
    どんどん燃え上がる、よさこいへの情熱。
    遠い昔、学園祭に向けて狭い教室にぎゅうぎゅう詰めになって
    模擬店や仮装行列の準備をしていた時のときめきが、懐かしく甦ったりして。

    最終日に向けてどんどん白熱していくよさこい祭りそのままに
    地道な準備作業に始まって、厳しい練習、汗と笑顔が飛び交う祭り本番へと
    一気に加速していく物語。
    祭りの喧噪も過去のわだかまりもすべて遠のいて
    切り取られたようなラストの一瞬、爽やかな風が心を吹き抜けます♪

  • 高知「よさこい祭り」をめぐって繰り広げられる青春小説。
    進学を機に高知にやって来た篤史が、従兄弟の多郎とチームスタッフをしながら自らも踊ることになる。

    こんなに自由度があって味わい深いお祭りだったとは、初めて知りました。
    友情、恋、それぞれが胸に抱くよさこいへの思いや情熱。淡い恋の行方も気になるけど、私としては本番のパフォーマンスやそこまでに至る過程の方が気になった。
    よさこいを踊っている場面では、その様子を頭に思い描いて気持ちが高揚した。

    祭りの熱気に当てられて心も身体も熱い“よさこい”の夏の物語。
    本書を読んだことで「よさこい祭り」を見る楽しみが増えました。
    やっぱり読書は世界を広げてくれますね♪

  • よさこいカメラマンとして前から読んでみたかった1冊。
    東海・北陸のよさこいしか見たことはありませんが、街ぐるみで開催されている高知のよさこい祭りを見に行きたくなりました。

    途中、チームのセンターである伝説の踊り手・カジさんが他のチームからも誘われ、指導などもしていたという場面。
    入賞を目指して自分のチームが必死に頑張っている中、他のチームに塩を送るような行動に主人公が怒る場面でしたが、僕の中では長年疑問に思っていたことが納得できたような気がしました。

    いろんなよさこい祭りに行っても各チームが仲が良いというのが前から疑問でした。一応は入賞や大賞を目指して各チームが競うのが目的なので。

    ただこの本によれば、よさこいは各チームの歌、振り付け、衣装などを同じ人が手掛ける例も多く、各チームがライバルというよりは兄弟や仲間という感覚が強いこともあるそう。
    さらに言うと「一緒に祭りを作り、盛り上げる」という意識が強いらしいのです。
    その一方で自分たちのチームの入賞を狙って切磋琢磨するということも忘れずにやっているそうです。
    ここによさこいまつりに行って感じる清々しさと熱さの根源があるのだなと納得できた気がしました。

    祭りを作り上げるものとして、いろんなチームが協力して盛り上げ高めあいながら、自分のチームのレベルを引き上げるため必死に努力する。ある意味、「競争」というものの本質を見た気がしました。

    この本は主人公の「初恋の人探し」という側面も持っているので、よさこいを知っている人はよさこいの背景も含めて楽しめ、初めての方も恋愛青春小説の側面からよさこいの世界に入りやすい1冊だと思います。
    よさこいカメラマンとしては、ぜひ多くの方に読んでいただきよさこいに触れてもらえると嬉しいですね。

  • 初恋の甘酸っぱい青春と、夢や絆の心熱くなる青春がよさこいの夏の中で描かれている。
    王道でやや恥ずかしい感じもあるけど、夏らしくて良かった。三雲さんと志織さんの恋が自分的にヒット。

  • ここしばらく、大崎梢氏の旧作を連続で読むことにした。

    いつもながらに…細やかな描きこみに心打たれた。人によれば、ひと夏の祭と淡い恋…の取り合わせをありきたりのテーマだと思うだろう。でも私は、大崎さんが描く限り、上っ面を舐めただけで終わる青春ドラマにはならないだろうと確信していて、まさに期待通りだった。

    登場するのは、それぞれの人生の輝きの中でそれぞれの思いを抱え、時に壊れそうになりながらも歩き続けるたくさんの主人公たち。互いが時に重なり、繋がり、反発しあい、強く結びつき、それぞれの夏を完結させてゆく。

    篤史もそのひとり。篤史にしかわからないこだわりと思いを胸に、因縁のよさこいに加わる。

    チームの絆は、互いを思いやり労わるだけでは生まれない。なぜなら、それぞれが目指すところは向きも高みも異なっているからだ。それはそれぞれの生きる道の違い。だから、ばらばらなメンバーを結びつけるものはそこにはない。ただ、チームの踊りが最高の瞬間を極めることを刹那の願いとして集う。ひとつのことに全員で打ち込み、成し遂げたという実感と揺るぎない自信、はじける笑顔と爆発する喜びをお互いに認め合った時、それこそが絆となる。

    絆は刹那。そのような強いものは、人の一生を貫き続けることはない。でも確かにそこにあった。みんなではじけた。輝いた。それこそがそれぞれの人生をやがて動かしていく力になる。

    賞を獲ったチームの後夜祭、それにそのあとのチーム解散が描かれていないところにこそ、綿密な取材を通じてきっと生まれたに違いない、作者のよさこいへの愛を感じた。描きたくなかったのだと、私は思う。

    強い力と清々しさに、私もひととき酔わせてもらった。

  • 青春、熱、夏が文章からしっかり伝わってきて、一気に読み進めたし、とても良い作品だった

  • 季節は夏にはまだ遠いけれど、夏をしっかり感じました。

    高知で行われているよさこい祭を舞台にした話。
    うわー生で見てみたいなぁ。
    お祭り女の私としては読んでいるだけで血が騒ぐような気がします。
    これは楽しくない筈がない!
    月島、いい男だなー。

    風邪をひいて体はグッタリしているのですが、気持ちは元気になりました。

  • 夏に読んだら、よさこい祭りの熱気がもっと伝わってきただろうなー。こんなにも大掛かりなものだと初めて知りました。でも思ったより話にハマれずに読了。題材はいいけど登場人物にあまり魅力を感じなかったのが原因。特に篤史にはほとんど共感できなかった(主人公なのに)。初恋の人を探すっていうのも、そんなに好きなように見えなくて「ふーん」としか思えなかったです。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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