旗本退屈男 (文春文庫 さ 55-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801502

作品紹介・あらすじ

愛する妹・菊路の恋人が突如行方不明と聞かされ、早乙女主水之介の「退屈の虫」が鳴きだした!時は元禄、春の宵の色里吉原仲之町、旗本退屈男の異名をもつ主水之介が「この眉間の三日月が承知せぬわ」と大暴れする第一話を含め、東は仙台、西は京を舞台に全十一話を収録。時代小説、幻の代表作が待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • ところどころ「古いなぁ」と感じる部分も多いが、なかなか面白い。機会があれば、映画版もぜひ観てみたいものである。

  •  名前は当然聞いていたけれど読んでみるとまたこれは徹頭徹尾調子のよいエンタメ時代劇だ。筋書きもなにもあったものではなく、ただ退屈を持て余す主人公の旗本早乙女主水之介が、面白そうな事件に首を突っ込んでは引っかきまわすというだけのもの。水戸黄門ばりに額の三日月傷が見えないかと恐れ入らせるだけではさすがに底が浅いので、たとえば同じ旗本相手には策を弄する場面もあるが、それとてあまりに安易でご都合主義丸出し。などと欠点をあげつらうのは野暮というもので、細かいところなどすっとばして、単純にこのぶっ飛んだ殿様の活躍を楽しめばよいのだ。昭和初期という時代でもありさすがにこれ以上のシリーズ化は気が引けたのかこの1冊に収録された11篇で終わりのようだが、現代の泡沫作家ならこのレベルでもどんどん書きなぐって売りだせそうではある。

  • いつの間にか復刊してゐた『旗本退屈男』。全11作を一冊にまとめたお徳用であります。
    旗本退屈男とは、徳川直参旗本・早乙女主水之介のあだ名といふか、別名といふか、通り名みたいなものですね。
    元禄の太平な世の中、腕が鈍つてしようがない、事件があれば「退屈の虫」が騒ぎ出すのであります。
    年齢は永遠の33歳。浅見光彦と同じ(彼は満年齢だが)ですが、当時の33歳は今よりもおつさんのイメエヂでせうね。

    剣の奥義は篠崎竹雲斎の諸刃流、「青眼崩し」なる技を会得してゐます。トレードマークは額の中央にある、「天下御免の向かふ傷」と称する三日月形の傷であります。この傷だけで相手を圧倒することさへあるのです。
    17歳の菊路といふ妹がゐて、その菊路と恋仲の霧島京弥なる若い侍が屋敷に出入してゐます。京弥さまは外見は優男風ながら、剣術の腕もなかなかのものであります。

    その主水之介が、退屈の虫に誘はれるままに、京・三河・身延・仙台・日光へと足を向けます。まあストオリィ的には、特筆すべきほどのものはありません。すべからく退屈男の豪快かつ痛快なるけれん味が魅力といふべきでせう。
    せりふ回しも独特で面白い。わたくしは読後しばらく「ヘゲタレよ喃」「わははは、ずんと面白いぞ」「ひとねぢりねぢ切つてつかはさう」など口癖になりました。

    さて、その旗本退屈男を当代一の当り役としたのが、市川右太衛門。北大路欣也さんの父君であります。文庫カヴァーの表紙も、(おそらく)あへて右太衛門に似せてゐないのですが、それでゐて右太衛門を連想させる容貌の侍が描かれてゐます。なかなかうまい。

    手許に『東映時代劇ビデオのすべて』なる小冊子があるのですが、その中で右太衛門本人が「旗本退屈男」について語つてゐます。
    その証言によると、近鉄上本町の書店で本書を見つけて即購買した右太衛門は、仕事場のある奈良あやめ池までの電車の中で読みふけり、直ちに自ら映画化を決めたのださうです。

    これほどの痛快娯楽剣戟小説、もし右太衛門の目に留まらなくても、別の誰かが映像化したでせうが、これほど国民的人気を得るまでの存在になつたかどうか。
    実に幸福な出会ひであつたと申せませう。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-168.html

  • 旗本退屈男がこんなに面白かったとは

  • 佐々木味津三の原作にたいし、 市川 右太衛門が演じる映画の退屈男が、予想以上に原作に忠実である事に驚きます。
    特に、額の三ケ月傷の超常的なパワーが、右太衛門演じるところの退屈男で見事に表現されているのは、全くもって感動ものです。
    (最終話:第11話はもっちないので?残しておきます)

  • 本書が書かれたのは昭和初期、10年代ということで流石に設定やセリフ回しに現在の時代考証を入念に行う時代小説とは違うものを感じるが、大仏次郎「鞍馬天狗」シリーズのものと同様にスイスイと読み進めるテンポが心地よい。古典と呼ばれるものは時代背景・価値観・考え方が現代とかなり異なっており読み返すと結構シンドイものがあるのだが、こうしたエンタメ系であれば問題は無い。やはり読んでみないと判らないよね。それにしてもTvでは「旗本退屈男」って随分長くやっていた気がするが実際にはこの文庫に収められた11編きりだったとは知らなかった。

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