漱石の長襦袢 (文春文庫 は 43-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801939

作品紹介・あらすじ

夏目漱石の悪妻として聞こえていた妻、鏡子。しかし実際の姿はどうだったのか。全国にあまたある文学館の中に漱石文学館がないのはなぜか-漱石夫妻の長女として生まれた筆子を母に持つ著者が"やさしくて厳しいリアリストの目"で綴った35篇のエッセイ集。漱石誕生百年に際して発表された筆子の原稿も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「半藤末利子」が祖父「夏目漱石」について語った歴史エッセイ『漱石の長襦袢』を読みました。

    夫である「半藤一利」の『漱石先生お久しぶりです』、『漱石俳句探偵帖』、『漱石先生大いに笑う』に続き「夏目漱石」関連作品です。

    -----story-------------
    孫娘が語る「夏目漱石」と「鏡子」

    「夏目漱石」の悪妻として聞こえていた妻「鏡子」。
    しかし実際の姿はどうだったのか。
    全国にあまたある文学館の中に「漱石文学館」がないのはなぜか ― 「漱石夫妻」の長女として生まれた「筆子」を母に持つ著者が“やさしくて厳しいリアリストの目”で綴った35篇のエッセイ集。
    「漱石」誕生百年に際して発表された「筆子」の原稿も収録。
    -----------------------

    歴史探偵「半藤一利」の妻「半藤末利子」が、祖父「夏目漱石」や祖母「鏡子」のハラハラドキドキの事実を綴った作品、、、

    「夏目漱石」の、没後100年[2016年(平成28年)]、生誕150年[2017年(平成29年)]の記念読書第4弾です。

     ■この本の登場人物と著者との関係
     ■夏目漱石と岡田啓介の親戚関係
     ■第1章 ロンドンからの手紙
      中根家の四姉妹、ロンドンからの手紙 ほか
     ■第2章 漱石の長襦袢
      まぼろしの漱石文学館、漱石の長襦袢 ほか
     ■第3章 子規の庭
      ソーセキ君、子規の庭 ほか
     ■第4章 漱石山房の復元
      漱石山房の復元、漱石の修善寺 ほか
     ■第5章 呉の海軍墓地
      『星の王子さま』の会、昭和史散歩 ほか
     ■あとがき
     ■文庫本のためのあとがき
     ■初出一覧
     ■解説 池内紀

    「夏目漱石」がイギリス留学からの帰国後の一時期に神経を病んでおり(神経衰弱)で家族に手をあげるまでの状況だったことや、妻「鏡子」は度が外れて豪胆な性格だったが、世間から言われているような悪妻というような存在ではなかったことは、初めて知りましたね、、、

    また、木曜会等を通じて「夏目漱石」にべったりだった門下生たち(特に古参の門下生)の、借りた金を返さない、戦災から守るという尤もらしい理由で蔵書を持ち出す等、恩を仇で返すような所作を生々しく名前入りで批判する等、はっきりと自己主張したさばさばした文体は、或る意味、心地良かったですね… ここまで描いて大丈夫なのか、ちょっと心配になりましたけどね。

    著者が「夏目漱石」の孫ということもあり、この見方が正しいのかどうかはわからないので、全てを鵜呑みにはできませんが、新しい発見があり愉しめた作品でした。

  • ラジオで小川洋子さんが紹介されていました
    漱石の孫 お母さまが長女筆子 
    重いでしょうね

    やはり親族ならではのエピソードが面白かった
    後半は著者のエッセイ

    ≪ 虫干しが厄介なのよ長襦袢 ≫

  • うーん、なんか、思ったより感情的な表現が多くて少し苦手でした。残念。

  • 前半が漱石にまつわる文、後半はエッセイ集。
    漱石に関しては、著者の母親(漱石の長女)の著作や、聞き書きの中から、家族のみが知る漱石像が描かれている。
    巻末には、母親・筆子自身の文章も収録。
    漱石の住まいだった『漱石山房』の保存についてのいきさつは、父親で漱石の弟子でもあった松岡譲氏の著作をもとに、こちらも、家族のみが知る込み入ったいきさつが描かれている。

  • 夏目漱石の孫である著書の、「漱石裏話」エッセンスが効いたエッセイ。
    大変面白くて興味深い内容だった。
    知ってる名前、知らない名前、近代史に出てくる作家や著名人の名前に「ほっほ~う」とか「へえ~」とかなりながら、野次馬根性で読了。
    先日読んだ「文人悪妻」にも出てきた漱石の妻、鏡子のキャラクターが大変気に入った。身内にいたら大変そうだけど・・・。

    巻末、漱石の長女で著者の母である松岡筆子の原稿で、夏目家の様子が存分に垣間見れる。なんともお得な一冊。

    この夏は、夏目漱石を読もう!という気になった。

  • 夏目漱石の長女筆子の子であり、半藤一利夫人でもある著者によるエッセイ集。鮮やかなデザインのカバーに惹かれて手に取り、漱石の孫娘の書いた文章という興味本位で読み始めたが、丁寧に練られた文章が心地良く、行間から著者の感性の鋭さが滲む。読者の期待に応えるかのような夏目家の裏話的な内容も多いが、むしろ著者の日常生活を綴った部分が素晴らしく、覗き見趣味を煽るような帯の文句があざとく感じられるのが玉に瑕である。

  •  「これじゃ漱石におかま趣味があった、と思われるじゃないか。・・・(中略)」と、事実の検証をしないまま想像や憶測がひとり歩きしてしまう(カバー写真にあるのは著者の個人蔵)という表題作「漱石の長襦袢」ほか、子規が漱石から借りていた十円が百二十年の時を経て子規のお孫さん(養子)から送られてきたエピソードや、「漱石」というペンネームの謂われなど、漱石門下である父を、漱石の長女・筆子を母に持つ著者が、綴った35のエッセイ。

     本書には様々な登場人物出てくるが、夏目漱石の縁戚関係やら家系図が添えられているので有難い!
     『坊ちゃん』が喜劇として書かれていたのではなく、実は悲劇だったとする話は目から鱗(@_@)。最後に著者の母・筆子による生誕百年を記念した“夏目漱石の「猫の娘」”の一文が収録されていて、『吾輩は猫である』のネタばらしがちょろりと語られたり、父親として家庭人としての一面が窺える実に興味深い内容となっている。

  • まるで、今、同時代を生きている人の噂話を聞くように、生身の漱石の息遣いが聞こえる。
    全体は、たまたま先祖に漱石がいた一族の身辺雑記。だが、折り目正しい文章に、日本がまだ溶け出す前の、懐かしい時代・・昭和の光が溢れており、そこにまるで何でもないかのように、漱石が、彼に関わりあいをもつ人が、確かにそこにいた、ということを感じさせてくれる。

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著者プロフィール

半藤末利子(はんどう・まりこ)
エッセイスト。1935(昭和10)年、作家の松岡譲と夏目漱石の長女筆子の四女として東京に生まれる。1944(昭和19)年、父の故郷である新潟県長岡市に疎開、高校卒業まで暮らす。早稲田大学芸術科、上智大学比較文化科卒業。夫は昭和史研究家の半藤一利。六十の手習いで文章を書きはじめる。夏目漱石生誕150年の2017(平成29)年に新宿区立漱石山房記念館名誉館長に就任。著書に『夏目家の糠みそ』『漱石夫人は占い好き』『夏目家の福猫』『漱石の長襦袢』『老後に乾杯! ズッコケ夫婦の奮闘努力』『老後に快走!』がある。


「2021年 『硝子戸のうちそと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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