交渉術 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167802028

作品紹介・あらすじ

外交官として北方領土交渉の第一線で活躍した著者が、実体験をもとにインテリジェンスの技法を明かす。各国のスパイが繰り広げるカネやセックスを用いた交渉術、霞が関官僚と政治家の交渉術、国家間の交渉に臨む首相や大統領の孤独-メモワールとして読んで面白く、ビジネスマンの実用書としても役に立つ、第一級の教科書。

感想・レビュー・書評

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  • 異能の外交官佐藤優氏が実際のインテリジェンス現場で使用したというテクニックの数々。ビジネス書としても一人の外交官の失敗の記録としても貴重な一冊になります。追録された「東日本大震災と交渉術」も必読です。

    この本を一人の若い外交官の失敗の記録と読むか?それともビジネス書として読むのか?はたまたインテリジェンスの記録として読むのか?いろいろな読み方が存在しますが、どれとして読み始めても一筋縄では読み終えることのできる本ではなく、骨の折れる本ではありますが、富み終えたあとの達成感はひとしおでしょう。

    この本は『交渉術』を用いて自分(自国)に有利な条件をいかに引き出していくかということについて、かつて外交の一線で活躍していた筆者がつづるだけに非常に濃密で、実際に役立つであろうテクニックや、筆者が仕えた橋本、小渕、森の歴代総理大臣や鈴木宗男氏の『知られざる素顔』についても必読であると思います。

    特に森元総理大臣が当時、プーチン氏との会談の前後あたりで俗に言う『加藤の乱』があった時に筆者と二人きりになった際、
    「俺はもうダメかもしれない。しかし、君は加藤政権になっても、俺に仕えるのと同じ気持ちで加藤にも仕えてくれよ。(中略)加藤を支えてくれよ、頼む」
    と筆者に頭を下げて頼んでいたというエピソードが印象的で、僕の中で森元総理大臣や鈴木宗男氏の評価がいかにマスコミによって「情報操作」されていたのかということと、こういう「知られざる話」が彼らのことを間近で見ていた筆者の手によって明らかになるのは貴重な記録であると感じました。

    そして、筆者の真骨頂である外務省のウラ話もこれまた秀逸で、この場では実名を出しませんが鈴木宗男と「アルマジロ大使」のエピソードは「人間追い詰められるとここまでするのか…。」という意味では貴重な記録だと思いました、筆者いわく、こういう行動原理は動物行動学に照らし合わせると納得がいくというようなことを記していましたが、近いうち本格的に専門書でも紐解いてみようかしらと、そんなことを考えている自分がいるのでした。

    最後に、筆者はこの本をこのまま真似すると、必ず失敗すると書いておりますので、「佐藤優のような失敗を犯さないためにはどうすればいいのか?」という観点で本書を読んで欲しい、と書いておりました。

  • 佐藤氏の実体験を交えた外交官時代の交渉術を解説した本。とはいえ、交渉術よりも外交の事情や、佐藤氏の過去の事情の詳細という面が強く、多くの一般人の役に立つ交渉術ではないという印象は強い。
    しかしながら、外交や官僚の世界の一端を垣間見ることが出来るのは本書の魅力であり、文体も読みやすく楽しんで読み進めることが出来た。

  • 『交渉に絶対勝利することができる確実な技法を身につけることはできないが、交渉術のある種の原則と具体的な事例を研究すれば、交渉に勝利する可能性はかなり高くなる。

    この点について、これからアルコール、セックス、カネ、ポストなど人間がもつ欲望を分析して、交渉能力を強化する方策について考えてみたい。』

    交渉術を「交渉をしないための交渉術」、「暴力で相手を押さえつける交渉術」、「取り引きによる交渉術」に分類して、特に取り引きによる交渉術について分かりやすく説明している。綺麗事やロジカルな話ではなく、人間の感性に働きかける視点での説明は興味深く面白い。

  • 外交の裏側が垣間見れて面白い。こんなに書いていいのかと思うくらいだ。読み物として面白く、ためになる。

    交渉には3つあるという。
    交渉しないという交渉。
    暴力で押さえつける交渉。
    取引による交渉。

    また、取引を行う上でのシナリオ、物語の描き方、登場人物の動かせ方、情報の取り方などなど勉強になる。
    そういう交渉術の一方、最後は人間力なんだなとも思わされる。首脳同士の相性によって国家関係はかなり変わってくる。

    また、度々出てくる「職業的良心」という言葉が気になった。民間企業でいえば受注確保、利益増大のために奉仕する、ということになるだろうか。
    佐藤優の職業的良心が強く感じられる本であった。

  • タイトルは交渉術でも、これは
    ほとんど佐藤優の経験が詰まった実社会の
    お話、もしくはハードボイルドのような
    読み物です。

    ロシアでは殺人以外のたいていの犯罪は、秘密警察で
    もみ消すことができることや、
    世間でイメージされているハニートラップなどは
    現実にないことなど、情報も満載。

    何より、外務省として働いている雰囲気が
    ビシビシ文面から感じられてきます。
    一国の総理大臣に対して説明をすること、それで
    国の流れが変わるのですから、その緊張感や
    正確性の必要さなどは相当なものでしょう。
    自分の仕事を顧みると、こんな状況下になることなど
    ありませんからね。
    男の仕事とは、を考えさせられる優れた
    自己啓発書と言えるのではないでしょうか。

    佐藤本でおなじみの、外務省の西村課長が
    どういう状況でアルマジロになったかも、
    リアルにわかります。
    嘘を突き通そうとしても、上司(鈴木宗男)に
    見破られたときにアルマジロのように転がる。
    実は、これも立派な逃げ方(!)だったのですね。

    個人的には、佐藤本のベストです。

  • 交渉のノウハウというよりも、外交官の活動記録(裏対応含む)という内容だった。
    魂を込めて仕事をしていた人だけにリアリティー満載で冒険活劇のように楽しむことができました。
    自分に寄せて考えると、普段の仕事が妙にドラマチックになりすぎてしまいそうなのでどうかなと思いましたが、企業でサラリーマンとして生きていくためにも役立つ術を得ることができました。

  • 交渉術 (文春文庫)2011/6/10

    橋本、小渕、森・・各時代の外交裏舞台が面白い
    2019年5月20日記述

    佐藤優氏による著作。
    2011年6月10日第1刷。
    単行本としては2009年1月文藝春秋刊
    初出「文藝春秋」2007年7月号~2008年12月号

    佐藤氏が現役外交官時代を振り返っている。
    特に橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、各氏が総理大臣時代の裏舞台が見えてくるようで面白い。

    またこれまで著者が他の本で紹介していたエピソードも具体的な上司名などがわかる。
    引用が多くなりがちな著者の他の本以上に個人的には
    面白く読むことが出来た。

    印象深い点を記載してみたい。

    「貴様、嘘をつくな!」といえば、相手も「なに!」といって喧嘩になる。
    ところが、「お互い正直にやりましょう」といえば、誰も嫌な思いをしない。

    東郷氏は、橋本行政改革のとき、日本の有力政治家を巧みに活用し、外務省を外政省に名称変更し、大使の3分の1を民間出身者にするという原案を一晩で覆した。
    もっともこのとき行革の嵐から免れたことが、外務官僚に
    「われわれは特別なのだ。官邸の意向でも覆すことができる」という特権意識をもたせ、その後の外務省不祥事への道備えをしたことも間違いない。

    インテリジェンスの専門家は、対象国や民族の神話、宗教経典、義務教育で使用される歴史、国語の教科書には必ず目を通す。
    交渉術においても、相手の内在的論理を捉える研究は不可欠である。

    広義の交渉術には3つのカテゴリーがある。

    交渉をしないための交渉術
    交渉を行ってもこちら側が損をすることが明白な場合はそもそも交渉の土台に上がってはならない。

    日常生活に引きつけてみても、ストーカー的に声をかけてくる者、悪質出会い系サイトによる架空請求などについては一切相手にしないという交渉術が有効である。
    もっともこの種の事例の場合、ストーカーとは思わずにちょっと付き合ってしまったとか、実は全くの架空請求ではなく、出会い系サイトを使ったことは事実なんだけれど、数十万円もの請求をされるとは思っていなかったという、こちら側にも若干の瑕疵があることが多い。
    その場合、「交渉をしないための交渉術」の応用問題になる。
    自らがこのような筋の悪い相手と直接交渉しないことは大前提だが事態を放置しておくと問題が面倒になる。
    このような場合は、迷わず弁護士を代理人に立てて、法的措置を臭わせつつ交渉することだ。

    暴力による交渉術は論理整合性や善/悪という基準よりも快/不快、楽/苦を基準にして動く人に対しては有効な手段である。
    「嫌がらせを加える」「評価されない仕事を増やす」というようなやり方で、人為的に障害を作り出し、それをやめることを取引材料にするのだ。

    第3カテゴリーの「取り引きによる交渉術」の場合、交渉に絶対勝利することができる確実な技法を身につけるということは、そもそも不可能なのである。
    交渉とは、関係者全員が俳優、演出家、シナリオライター、観客の役割を持ち、その役割が頻繁に移動するという不思議な劇場なのである。

    小さいことでは約束を守り、信用させて、最後に1回大きく騙すというのはインテリジェンス交渉術ではよく使われる技法だ。

    ロシア人に言わせれば、騙す方が悪いのではなく、
    騙される方が間抜けなのである。

    「交渉術は、善でも悪でもない、価値中立的な技法」

    現役外交官時代、私は、キャリア、ノンキャリアを問わず、ロシア人女性とトラブルを抱えた外交官の問題を処理したことが何度もある。
    この種の恋愛系問題の処方箋はたった一つ、当該外交官をできるだけ早く帰国させ、恋愛関係を潰すことだ。
    この種の話が聞こえてくると、私は、その時の特命全権大使、特命全権公使、政務担当行使のうち、私が人間としてもっとも信頼する
    幹部に相談し、できるだけ早く帰朝(外務省用語で帰国すること)させた方がよいと進言した。

    「ハニートラップ」でも、基本は、困った状況に陥った対象者を「助けてあげる」のだ。

    対象者は、脅してくる者には最低限の協力だけして逃げようとし(自殺も逃亡の一形態)、助けてくれる者には自発的に協力する。

    ハニートラップの要諦は、ほんものの恋愛に介入し、恩を売り、工作対象者が自らが所属する組織の誰にも相談できないような状況を作り出すことだ。
    逆に言えば、工作対象者が、不利益を覚悟してでも
    自分が所属する大使館、会社などに相談すれば、工作は終わりになる。
    自分の会社に相談するのはどうしても嫌だというサラリーパーソンの場合、匿名で国際電話を日本の警察にかければよい。
    この種の話に警察は親身になって相談に乗ってくれる。

    ちなみにインテリジェンスや外交に従事する者の裏切りを防ぐためには「飴と鞭」を使い分ける必要がある。
    秘密警察に協力したと裏切りを申告した者に不利益な取り扱いをしないというのは「飴」の部分である。
    それでは「鞭」とは何か。
    裏切りが内部からの調査で発覚した場合は、厳罰に処するということだ。

    インテリジェンスの世界は性悪説の原理で動いている。
    夫婦関係に介入し、協力者い仕立て上げることが国益と考えるならば、秘密警察は私生活にいくらでも踏み込んでいく。

    そもそも外交の世界に純粋な人道など存在しない。
    常に「人道」は名目で、自国の国益の保全、機会があれば増進を狙っているのだ。

    一方が他方に供与するカネや物が極端に大きくなると、
    相互扶助から贈与に範疇が変化する。
    相互扶助ならば、「お返し」しようという意思が相手に働くが、これが贈与になると相手は一方的に受け取るだけで、「お返し」の必要はないと考えるのである。
    過ぎたるは及ばざるが如しなのである。
    この点で失敗したのが鈴木宗男氏だ。

    インテリジェンス交渉術の観点から情報提供者や工作対象との関係において、理想的関係はどのようなものか。→友人

    なぜ友人であるという表象が重要かというと、
    相手がカネで雇われているという認識をもつと、
    「報酬の範囲内で協力すればよい」という態度になり、
    情報提供における積極性が失われるからだ。
    友人ということになれば、積極的にこちら側の意図を忖度して相手が情報収集に従事するというのが私の経験則だ。
    人間の認識は非対称的である。
    六対四の関係を維持するために、例えば、食事の際に
    総額が1万円で、こちら側が6千円、相手が4千円払っても相手は六対四の関係とは認識しない。
    八対二とか九対一くらいの比率になったところではじめて六対四くらいの関係であると認識するのである。

    どのような状況でカネを渡すかについても技法がある。
    直接、カネを渡すよりも、相手が必要とするサービスに対して費用を肩代わりするというのが、案外効果がある。
    特に医療支援である。

    通常ならば、500万円、1000万円などという巨額なカネを受け取らない相手でも、配偶者や子供が難病にかかり、手術を受けなくてはならないという状況ならば受け取る。
    命を助けてくれるために協力してくれた人に対する恩義はたとえ手術が失敗しても忘れない。
    従って、熟練したヒューマン・インテリジェンス
    (人間関係によってとる情報)の専門家は名医とのネットワークを必ずもっている。

    外務省を含む霞が関の若き官僚諸君!
    仕事をやり過ぎてはいけない。
    たとえ滅私奉公型で、自分の金を仕事につぎ込む形であっても、公私の線を越えてはならないのである。
    人間は弱い存在なので、よほどの信念をもっていないかぎり、仕事が評価され、将来多額の公金を任されるようになると、知らず知らずのうちに犯罪に手を染めていくことになる。
    あるいは強固な信念をもっていると、それを根拠に政治犯にされてしまう。

    もっともインテリジェンスの仕事を行うためには、
    通常の組織で必要とされる指導力(リーダーシップ)だけでは不十分で、状況によっては生死をともにしていいという感情を部下たちにもたせることが不可欠だ。
    だから、宗教指導者に近い資質をインテリジェンス機関の工作部局の指導者は求められる。

    西村六善欧亜局長が「この紙は橋本総理と鈴木大臣しかもっていません」と鈴木宗男氏に嘘をつき、事態が紛糾した話
    →じゅうたんの上で屈み込んだあと、身体を横にして、アルマジロのように丸くなってしまった

    このような恥知らずで「死んだふり」をするような、恐ろしい人物には重要な仕事を頼まない。
    重要な仕事を与えられないのだから、
    否定的な評価をされることもない。
    また、規格外の反応をする
    可能性があるので、譴責されることもない。
    組織文化が減点主義の場合、恥知らずで死んだふりをする人物は確実に出世する。

    永田町の言語は、一般社会の日本語と異なる。
    永田町特有の業界用語もあれば、有力政治家の個性と結びついた特殊用語もある。
    小渕氏の「西村、御苦労!」は、後者の特殊用語にあたる。

    小渕氏は、政治家や官僚をねぎらうときに「お疲れ」と言う。
    「御苦労」と言うのは強い不満の表れで、「西村、御苦労!」を日常用語に翻訳すると「西村さん、あんたはクビだ」ということだ。

    永田町言語を日常用語に訳すと次のようになる。

    「俺はきにしていないぞ」(永田町)
    →「俺は気にしていないということは、お前の方で反省して謝りに来いということだ」(日常)

    「行儀が悪い」(永田町)
    →「ゴリ押しをする。自分の管轄分野以外に手を突っ込む」(日常)

    「近く俺があいさつに行くから」(永田町)
    →「すぐに来い」(日常)

    「俺は聞いていない」(永田町)
    →「この件は俺に事前に相談していないので、絶対に認めない」(日常)

    「他の先生を大切にしてください」(永田町)
    →「他の国会議員と比較して、俺を軽く見ているな。
      今に思い知らせてやる」(日常)

    「忙しそうだな」(永田町)
    →「お前は何を画策しているんだ」(日常)

    外務省だけでなく、他の省庁、そして民間企業においても、あるポストよりも上に行くと適用される論理やルールが異なってくる。

    霞が関(中央官庁)の掟では、政治家に呼びかけるときは、その政治家が過去に占めた最高ポストの公職名を使う。
    従って、総理経験者は「総理」で、閣僚経験者は現役でなくても「大臣」となる。

    ノンペーパーとは、本来は口頭で伝える性質のものだが、正確を期すために渡すメモだ。

    政治家には「スイッチ」がある。同じ話をしても、スイッチが入っている時といない時では、政治家の反応は全く異なるのである。
    スチッチが入っていない政治家に、官僚がどんなに重要と思う事項を話しても、政治家は聞き流すか、「もういいよ」と言って
    最後まで話を聞かずにさえぎる。

    霞が関の若手官僚諸氏に、政治家のスイッチを見抜くためのよい訓練法を伝授したい。現役外交官時代、私が実践した方法であるが、動物園に行って、鷲、鷹、ハゲタカなどの猛禽類を観察することである。

    トップは、孤独に耐えなくてはならない。むしろこのことは裏返して表現すべきだ。
    孤独に耐える資質がある者でないと、トップには
    なれないのである。

    渡邉幸治特命全権大使、東郷和彦特命全権公使の時代は中露日本大使館の黄金時代だったということは、当時、モスクワに勤務していた新聞記者から、今でも言われる。

    トップとして重要なことは、「ここでの主人は自分だ」という認識を組織に所属する人々に徹底することだ。
    当然、このような行動を取れば、部下はトップの恣意を恐れる。裏返すと、部下から恐れられない
    ようではトップではない。

    語学力が貧弱なことが中途半端な専門家の特徴である。
    ちなみに外国の大学で博士論文を書いているから、語学力があると考えるのは早計だ。
    下手くそな英語やロシア語で、わけがわからない
    草稿を書いても、きちんとカネを払えば、博士号が取得できる論文に仕上げてくれる業者が外国の大学や研究所周辺にはいくらでもいるからだ。
    語学力を見極めるためには、当該専門家に翻訳書があるかどうかをチェックすればよい。
    そして、原文と照らし合わせてみれば、どの程度の語学力があるかよくわかる。
    裏返して言うならば、翻訳の業績が一つもないような地域研究家や外交評論家の語学力は相当怪しいと考えたほうがいい。

    語学力について、英語の場合、日本人のほとんどが基礎知識をもっているので、うまいか下手かはすぐにわかる。
    ドイツ語、フランス語、中国語ならば、大学の第二外国語で履修した経験を持つ人が多いので、これらの地域の専門家も語学能力については、一応、第三者から評価される。
    これがロシア語になると、理解できる人が極端に少ないので、外部の目にさらされないのである。

    外務官僚であると、語学力に長け、地域事情に通暁しているように思えるが、それは幻影だ。
    私が外務省に入省したのは1985年のことで
    具体的に7名の駐露大使を知っているが、そのうち、通訳を介さずにロシア語で仕事の話をすることができたのは都甲岳洋大使ただ一人だけである。
    現在、外務省全体でも本省局長年次以上の幹部や大使で、辞書を用いずにロシア語の新聞社説を読むことができる者は一人もいないと思う。
    現役外務省職員で、ロシア人と同じように流暢かつ正確なロシア語を話すのは、ノンキャリアから年次が落ちるキャリア扱いの「特別専門職」に登用された川端一郎サンクトペテルブルク総領事だけ
    であるという評価に異論を持つ外務省関係者はいないと思う。
    もっとも、外務省の通訳は、正確さを要求されるので、発音で日本訛りやイギリス訛りがあっても、意思疎通ができれば、特に問題はない。

  • 読み応えあった。通勤往復の車内のみで読んでいたが、丸々1か月間かかってしまった。交渉術というタイトルだが、ハウツー本というよりは、著者の外務省在勤中のエピソードが中心になっており、一連の佐藤優の自叙伝の一つ。改めて、すごい仕事をしてきたことに圧倒された。



  • 外交官として北方領土問題の第一線で活躍した著者。
    外交官時代の実体験をもとに交渉術が綴られる。

    鈴木宗男氏ってのは熱い男だったんだな。

    佐藤氏の著作は初めて読んだが、外交官というのは凄まじい仕事なんですね。北方領土問題関係を読んでた流れで手に取ったわけだが。

    ここに記された交渉術。一般人がhow toものとして気軽に利用できるものではない。外交交渉を覗き見るという意味では楽しい読み物でした。

  • 私達が気軽に使える交渉術を披露する、という本では決してない。ただ、人間というのは、特にインテリ層はどういう生き物で何を考えているのか、ということを知るには最適な書籍。いつもながらではあるが、著作の、読む人をグイグイ引き寄せる文章力はさすが。
    人間を知るには、司馬遼太郎か佐藤優か、というのは確実に言い過ぎだろうが、そのように感じてしまった。

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著者プロフィール

佐藤 優(さとう・まさる)
1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省し、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、2009年6月執行猶予付有罪確定。2013年6月、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『人をつくる読書術』(青春出版社)、『勉強法教養講座「情報分析とは何か」』(角川新書)、『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)、『調べる技術 書く技術』(SB新書)など、多数の著書がある。

「2022年 『世界史の分岐点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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