交渉術 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 523
レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167802028

作品紹介・あらすじ

外交官として北方領土交渉の第一線で活躍した著者が、実体験をもとにインテリジェンスの技法を明かす。各国のスパイが繰り広げるカネやセックスを用いた交渉術、霞が関官僚と政治家の交渉術、国家間の交渉に臨む首相や大統領の孤独-メモワールとして読んで面白く、ビジネスマンの実用書としても役に立つ、第一級の教科書。

感想・レビュー・書評

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  • 異能の外交官佐藤優氏が実際のインテリジェンス現場で使用したというテクニックの数々。ビジネス書としても一人の外交官の失敗の記録としても貴重な一冊になります。追録された「東日本大震災と交渉術」も必読です。

    この本を一人の若い外交官の失敗の記録と読むか?それともビジネス書として読むのか?はたまたインテリジェンスの記録として読むのか?いろいろな読み方が存在しますが、どれとして読み始めても一筋縄では読み終えることのできる本ではなく、骨の折れる本ではありますが、富み終えたあとの達成感はひとしおでしょう。

    この本は『交渉術』を用いて自分(自国)に有利な条件をいかに引き出していくかということについて、かつて外交の一線で活躍していた筆者がつづるだけに非常に濃密で、実際に役立つであろうテクニックや、筆者が仕えた橋本、小渕、森の歴代総理大臣や鈴木宗男氏の『知られざる素顔』についても必読であると思います。

    特に森元総理大臣が当時、プーチン氏との会談の前後あたりで俗に言う『加藤の乱』があった時に筆者と二人きりになった際、
    「俺はもうダメかもしれない。しかし、君は加藤政権になっても、俺に仕えるのと同じ気持ちで加藤にも仕えてくれよ。(中略)加藤を支えてくれよ、頼む」
    と筆者に頭を下げて頼んでいたというエピソードが印象的で、僕の中で森元総理大臣や鈴木宗男氏の評価がいかにマスコミによって「情報操作」されていたのかということと、こういう「知られざる話」が彼らのことを間近で見ていた筆者の手によって明らかになるのは貴重な記録であると感じました。

    そして、筆者の真骨頂である外務省のウラ話もこれまた秀逸で、この場では実名を出しませんが鈴木宗男と「アルマジロ大使」のエピソードは「人間追い詰められるとここまでするのか…。」という意味では貴重な記録だと思いました、筆者いわく、こういう行動原理は動物行動学に照らし合わせると納得がいくというようなことを記していましたが、近いうち本格的に専門書でも紐解いてみようかしらと、そんなことを考えている自分がいるのでした。

    最後に、筆者はこの本をこのまま真似すると、必ず失敗すると書いておりますので、「佐藤優のような失敗を犯さないためにはどうすればいいのか?」という観点で本書を読んで欲しい、と書いておりました。

  • 『交渉に絶対勝利することができる確実な技法を身につけることはできないが、交渉術のある種の原則と具体的な事例を研究すれば、交渉に勝利する可能性はかなり高くなる。

    この点について、これからアルコール、セックス、カネ、ポストなど人間がもつ欲望を分析して、交渉能力を強化する方策について考えてみたい。』

    交渉術を「交渉をしないための交渉術」、「暴力で相手を押さえつける交渉術」、「取り引きによる交渉術」に分類して、特に取り引きによる交渉術について分かりやすく説明している。綺麗事やロジカルな話ではなく、人間の感性に働きかける視点での説明は興味深く面白い。

  • 外交の裏側が垣間見れて面白い。こんなに書いていいのかと思うくらいだ。読み物として面白く、ためになる。

    交渉には3つあるという。
    交渉しないという交渉。
    暴力で押さえつける交渉。
    取引による交渉。

    また、取引を行う上でのシナリオ、物語の描き方、登場人物の動かせ方、情報の取り方などなど勉強になる。
    そういう交渉術の一方、最後は人間力なんだなとも思わされる。首脳同士の相性によって国家関係はかなり変わってくる。

    また、度々出てくる「職業的良心」という言葉が気になった。民間企業でいえば受注確保、利益増大のために奉仕する、ということになるだろうか。
    佐藤優の職業的良心が強く感じられる本であった。

  • タイトルは交渉術でも、これは
    ほとんど佐藤優の経験が詰まった実社会の
    お話、もしくはハードボイルドのような
    読み物です。

    ロシアでは殺人以外のたいていの犯罪は、秘密警察で
    もみ消すことができることや、
    世間でイメージされているハニートラップなどは
    現実にないことなど、情報も満載。

    何より、外務省として働いている雰囲気が
    ビシビシ文面から感じられてきます。
    一国の総理大臣に対して説明をすること、それで
    国の流れが変わるのですから、その緊張感や
    正確性の必要さなどは相当なものでしょう。
    自分の仕事を顧みると、こんな状況下になることなど
    ありませんからね。
    男の仕事とは、を考えさせられる優れた
    自己啓発書と言えるのではないでしょうか。

    佐藤本でおなじみの、外務省の西村課長が
    どういう状況でアルマジロになったかも、
    リアルにわかります。
    嘘を突き通そうとしても、上司(鈴木宗男)に
    見破られたときにアルマジロのように転がる。
    実は、これも立派な逃げ方(!)だったのですね。

    個人的には、佐藤本のベストです。

  • 交渉のノウハウというよりも、外交官の活動記録(裏対応含む)という内容だった。
    魂を込めて仕事をしていた人だけにリアリティー満載で冒険活劇のように楽しむことができました。
    自分に寄せて考えると、普段の仕事が妙にドラマチックになりすぎてしまいそうなのでどうかなと思いましたが、企業でサラリーマンとして生きていくためにも役立つ術を得ることができました。

  • 外務省での事例に学ぶ『交渉術』です。応用が効く人なら活用できるだろうが、簡単に適用できるHow to本のつもりで読むと目的とは異なるだろう。
    純粋に外務省の外交交渉を垣間見る本としては読みやすく楽しいです。

  • この本を読むと、日本のインテリジェンス(スパイ術)も結構なものがあるなと思える。ただそれが、外務省にあるのが意外であり、また、主にその力を外交ではなく、自省の権益確保と自らの昇進に消費してしまっているところが残念であった。この本は2009年の本だが、いまでもこのインテリジェンスは保持できているのだろうか?目に見えないことから、意外と保持できているのかもしれない。というか、そう思いたい。

  • レビュー載せたつもりで載せてなかったー。

    のっけから面白い。西洋で交渉とかロジックが発達したのは、神と交渉する必要があったからだ、とか。異文化圏の人との交渉のためには、(当たり前と言えば当たり前かもだが)相手の文化やそもそもの考え方を知る必要があるので、相手国の宗教経典、神話、国語の教科書を研究するといい、とか。諜報関連のプロはそういうことを考える研修もしたりするんだ、と。
    交渉というのは、交渉を行うことによって、こちら側の利益の極大化を図ることが目的なので、こちら側の利益が損なわれることが明白な場合は、そもそも交渉を行ってはならない。
    ハニートラップは、工作してくるから怖いんじゃない(まぁそういうのもあるけど)。なるほど!と思ったのは、そもそも、まず、普通の恋愛が先なんだ、と。で、ロシアとかの場合、有力者の子どもだったり有力者本人だったりすると、トラブル巻き込まれ時のもみ消しが可能だったりするので、そこでもみ消し行動を行うことで、そういう関係があることが秘密警察等に感づかれ、そこからコンタクトが取られ始める。
    賄賂を渡すなら、毎月定額、もしくは、情報に対しての対価、というやり方ではなく、あくまで日常の友人に対してのプレゼント、もしくは、助けるための資金提供、という形が最も有効。前者の場合、初めは、買った、など、金銭的匂いは一切させず、空港でスッゴいあなたに似合うと思うものがあったので手に入れちゃった!的に渡す。これをイベントごとに繰り返し、どこかで最後に、あ、もらいすぎたと思わせることがポイント。後者の場合、特に医療費など生命に関わることを助けるのが効果が高い。
    いやぁ、ほんと、事実は小説より奇なり、とはよくいったもので、面白いし、勉強になる。自分も戒めなきゃね。

    そして、政治家の実情や性格、実は(メディアに見えてこないけど)すごいところとか、ちょっと(ちょっとだけ)世界の見え方は変わったかもね。

  • 元ロシア外交官の佐藤優による回顧録。

    とかく政治家や官僚に対して潔癖であることを求めがちであるが、実際のインテリジェンスの世界は一筋縄でいかないことがよくわかった。

  • 佐藤氏の実体験を交えた外交官時代の交渉術を解説した本。とはいえ、交渉術よりも外交の事情や、佐藤氏の過去の事情の詳細という面が強く、多くの一般人の役に立つ交渉術ではないという印象は強い。
    しかしながら、外交や官僚の世界の一端を垣間見ることが出来るのは本書の魅力であり、文体も読みやすく楽しんで読み進めることが出来た。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、専門職員として外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。
帰国後、外務省国際情報局で主任分析官として活躍。
2013年、『国家の罠』で毎日出版文化賞を受賞。

「2019年 『世界宗教の条件とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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