作品紹介・あらすじ

誰にも好かれ、真っ当に生きている自分をさしおいて彼と結婚するなんて。クレアは村の富豪の心を射止めた美女ヴィヴィアンを憎悪していた。だがある日ヴィヴィアンの不貞の証拠が…。巨匠クリスティーが女性の闇を抉る「崖っぷち」他、人間の心の恐ろしさを描いて読む者をひきつける世界の名作を厳選したアンソロジー。夢も希望もなく、救いも光明もない11の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 厭な気持ちになる物語を集めた短編集。でもホラーじゃないよ。

    これを読んで幸せな気持ちになる方は、自分が異常であると自覚してください、……というくらい、笑えたり、暖かかったり、幸せだったりする物語はありませんので、「わざわざ厭な気持ちになる物語をなんで読まなきゃあかんねん」という方は、この本のことは忘れて結構。厭な話は嫌いだけど何故か読んでしまうという方は、手に取ってみては(ちなみに、どの作品もグロいわけではありませんので、そういうのが苦手な人でも安心です)。

    本書には11の物語が収録されていますが、個人的なおすすめをいくつか紹介。


    モーリス・ルヴェル『フェリシテ』。フェリシテという女性の掌編。孤独しか知らなければ孤独には耐えられるけれど、人の温もりを知った後の孤独には耐えられない、というド直球テーマ。厭な物語のアンソロジーに収録されているが、どう考えてもこれは純文学。人間心理をストレートに描いています。

    ジョー・ランズデール『ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ』もかなり厭な気分になる。たったひとつの選択ミスが決定するバッドエンドへの直行便。南部アメリカに根付く黒人差別の行き着く果ては。

    リチャード・クリスチャン・マシスン『赤』。たったの4ページ。タイトルの『赤』の意味に気づいたとき、あなたは間違いなく鬱々とした感情の渦になすすべもなく放り込まれる。4ページしかないので、本書が気になっている方は、『赤』を立ち読みしてから、買うか買わないかを決めてみてはどうでしょう。

    が、個人的には何と言っても、シャーリィ・ジャクスン『くじ』。村という集落で起こる一年に一度の大イベント、くじ引き。ナゼ?もドウナル?も語られないまま進むくじ引き。ページの終わりに向けて、不安な感情と厭な気持ちがじわりじわりとせりあがってくる、厭な物語の傑作。ジャクスンと言えば『たたり』とか『すっとお城で暮らしてる』が代表作ですが、この『くじ』も短編の古典的名作だったんですね。無知でした。


    ……こうして厭な物語を読んでみると、ふと気づいたことがあります。幸せな結末の物語は、「なんじゃこりゃ」とか「サイコーに感動した!」とか人それぞれの感想になりがち。多分それは幸せの尺度(カタチではなく)が人それぞれの価値観によりものが大きいからではないかと思います。しかしながら、「あ、これはイヤだ」という感想は、みんながある程度同じように感じるのではないか。人として生きる上で、イヤだと感じる物事は、人である以上同じなのではなかろうか。本書を閉じたあと、そんなことを考えました。


    ちなみに、フレドリック・ブラウン『うしろをみるな』も、厭な物語といえば厭ですが、他の作品とは後味が全く異なりますので、ご注意を。必ず最後に読むこと。

  • いやぁな読後感ばかりの作品を集めた短編集。

    表紙はキューピーちゃんっぽい可愛い表紙だけど、
    中身は、まぁここまで読後感悪い作品を集めた事!と脱帽モノです(笑)

    クリスティーの「崖っぷち」は、
    上品な語り口ながらも、女性同士のドロドロした関係が描かれていて、
    すごく面白かったです。オチが最高です~^^

    ウラジーミル・ソローキンの「シーズンの始まり」も好き。
    最初はごく平凡な狩猟のシーンに思えるのだけれど、、、恐ろしいね。
    「青い脂」読みたい!

    リチャード・クリスチャン・マシスンの「赤」は、
    短いながらも強烈な印象を残す作品でした。赤い、赤い…

    シャーリイ・ジャクスンの「くじ」は再読でしたが、やっぱり面白かった!
    何故村人達は毎年くじを引くのか…そして当選した者は…??
    背景が詳しく語られていないだけに、恐ろしさも増しますね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「脱帽モノです(笑)」
      読まれましたか、、、
      実は買ったのですが眠らせてます(ブクログ始めて読みたい本が増えて、積読が増えてます←何言い訳し...
      「脱帽モノです(笑)」
      読まれましたか、、、
      実は買ったのですが眠らせてます(ブクログ始めて読みたい本が増えて、積読が増えてます←何言い訳してるんやろ)
      2013/04/01
    • ななこさん
      nyancomaruさん♪
      コメントありがとうございます!

      嫌~な読後感のお話ばかりで、すごく面白かったですよ(*^_^*)
      最初のクリス...
      nyancomaruさん♪
      コメントありがとうございます!

      嫌~な読後感のお話ばかりで、すごく面白かったですよ(*^_^*)
      最初のクリスティーのお話が上品な厭らしさ(笑)なので油断していたら、
      「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」でうわぁぁとなりました^^;
      2013/04/07
  • 『古今東西の名だたる作家たちが贈る、不快感抜群のイヤミスアンソロジー! 不貞を働いた恋敵への制裁、古くから村に伝わる慣習、妹を殺した殺人犯への復讐劇などなど。登場人物のたどる、最悪の結末とはいかに?』

    ムカデのように這いずり回り、蜂のようにグサリと刺す。そんな悪意と不快感が、本を通じて全身に感染するように感じました。これこそ"毒書"体験!

    印象的だった作品をいくつか……。

    『くじ』
    何が起こるのか、なぜそれをやるのか、何も説明せずに淡々とコトが進んでいき、ラストで不快感は頂点に。
    何なんだこれは! という叫びが、この残酷な短編に対する感想です。

    『赤』
    たった4ページの物語が、これほどまでに怖いなんて! 抽象的な説明が実像を結んだ瞬間、あまりの残酷さに身の毛がよだつ思いをしました。

    『言えないわけ』
    話の展開は読めていたのに、それでもこのオチは予想できなかった! この短編集の中では、悪意が最も色濃く現れた作品だと思います。

    その他の作品も、救いようのない絶望感たっぷりの作品ばかりです。
    特に最後の最後の作品、「うしろを見るな」は、絶対に最後に読んでください。

  • クリスティやカフカと様々な作家の厭な話を集めたアンソロジー。
    シャーリイ・ジャクスンの「くじ」が断トツ!見事!
    以前から聞いていた傑作という評判はその通りだった。
    しかし本当にどれもこれも厭でしたねぇ…。

  • 58冊目『厭な物語』
    (アガサ・クリスティー他 著、2013年2月、文藝春秋)
    読者の心を抉るような、読後感の悪い短編小説を纏めたアンソロジー。
    アガサ・クリスティー作「崖っぷち」、フランツ・カフカ作「判決 ある物語」など全11編収録。
    歴史にその名を残す文豪から、現在でも活躍中の人気作家まで、幅広い人選。
    収録されているのは海外文学のみである。
    孤独や嫉妬、復讐心といった人間の心の闇が、嫌というほど描かれる。
    スラッシャー・ホラーのような作品もあり、夏の読書にうってつけである。

    「後ろは見るなよ。」

  • この邦題のセンスは 
    ちょっと アレですが・・・

    これまでにもう、数え切れないくらい
    読み返している 翻訳物の短編集。

    昨今流行りの「イヤミス」なるジャンルが
    子どもの遊びに思えてくるほど
    底力を感じる作品ばかりです。

    「読者を驚かせてやろう」という
    技巧的な意図ではなく

    もっと本質的な恐ろしさ。

    善行と正義の皮を被った利己主義
    アガサクリスティ の『崖っぷち』。

    真の絶望というのは
    もしかしたら こんな風に 
    とても 静かに
    訪れるものなのかもしれない
    『フェリシテ 』。

    慟哭。
    それ以外の何物でもない『赤』。

    この後も、きっと何度も何度も
    読み返すと思います。

    人は どれほど残酷になれて
    運命は どれほど不条理なものなのか。

    そして その先に見えてくる
    希望の微かな光ー。

    大好きなアンソロジーです。

  • 収録作は著名な作家のものばかりなので、読んだ事があるものもいくつか。アメリカの作家が多いけど、せっかくアンソロジーなのだから、もう少しバラエティが欲しい。
    クリスティの「崖っぷち」は初読。この一編だけで値段分の価値があると思えるので、まあ満足。

  • 本当に救いのない形で終わっていく物語ばかりでして、正直読んだ時の感想が「えー…」というね。これで終わっちゃうの!? 一片の救いも与えずに…? という感じでしてまあ、海外の人と日本人って感覚が違うのかもしれませんねぇ…。

    ↑まあ、日本の作品でも救いのない物語なんてたくさんあるんでしょうけれども…それにしたってこの作品に収められている短編は容赦がない、と思いましたねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    海外ミステリってか、海外の作品って土地やら場所やらもカタカナだし、僕の貧困な想像力じゃ想像しきれない部分があって苦手だったんですけれども、不思議とこれはどんな結末になるんだ!? と先が気になる感じでぐんぐん読めましたねぇ…。

    なんでも続編とかあるみたいですし、うーん…そちらもぜひとも読んでみたくなりましたねぇ…おしまい。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 全部が読後「厭な」気分になるかと言われると微妙だけど、この値段でいろんな作家の作品が読める点ではお得。これを導入部に好きな作品の作家を読んでみるといいのかも。
    パトリシア・ハイスミス「すっぽん」やシャーリィ・ジャクスン「くじ」は有名すぎて、いろんなアンソロジーに入ってるので、今さらな感じ(名作ではあるけれども)。
    やっぱりアガサ・クリスティーの「崖っぷち」が秀逸だった。あとフラナリー・オコナー「善人はそういない」もかなり救いのない話。

  • この種の厭ミス・奇妙な味と言われる小説はたまに読むと面白いのだが、あまり続けて読むべきではない。早川の「キス・キス」と続けて読んだら気分が悪くなってしまった。

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