ポーカー・レッスン (文春文庫 テ 11-24)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (668ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167812218

感想・レビュー・書評

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  • ディーヴァー流
    投げっぱなしジャーマンスープレックス
    リンカーンライムを読み慣れた方にとっては
    「一捻り加えて、さらに一捻りの…終わった!」
    と叫びたくなる様な、放り投げ方をします。

  • ジェフリー・ディーヴァー ポーカー・レッスン

    最後の解説で、作者自身が自分の考える「恐怖」について、5つのテクニックを惜しみなく披露しているのだがそれが白眉。これだけでも読む価値アリアリアリアリ!アリーヴェ・デルチ!(これでわかったひとはあたしと親友になってください)
    と、さよならじゃなくて進みましょう。

    ここで語られる5つの要素は
    1. 未知に対する恐怖
    2. 他人に生殺与奪権を奪われる恐怖
    3. 自分をコントロールできなくなった他人と言う恐怖
    4. 自分がコントロールを失う恐怖
    5. 恐怖のシンボルのちらみせ

    そうしてリッチにも丁寧にも、この5つの要素がどう使われているのかを、この短編集の1つをピックして丁寧にあてはめてくれちゃいます。うーん。フルコースを味わったあとにその料理を丁寧に調理方法から見せてもらっているくらいに手取り足取り腰取りの慇懃さ。最高のカタルシスです。ぼー。

    ちなみにこの解説を読んだあとにもう一度短編集を振り返ると、ガイドブックつきでゲームをしているみたいに作者の意図が見えて楽しい。あたしは昔から完全にガイドブックを見ながら全部味わいつくすゲームの仕方が好きだったので、この手法ぴったりで。短編としても1つ1つとてもうまくできていて、今回は誰がだまされるのか、誰が最後にほくそ笑むのか、なかなかわからなくてよかった。

    ライムものはボーンコレクターで、主人公の鬱屈した性格に「面倒くさい・・」と思った記憶しかなく遠ざかっていたのだけれど(そうしてこの短編集でもライムの登場してるのが一番つまらなかった)、この短編は面白かったな~。くるぞくるぞと思って身構えてやっぱり来るんだけど、そのお約束感ふくめてよかった。最後に解決されないまでも必ず落とされる。ジェットコースターカタルシス?とも思ったがこの感じ、ちょっと逆水戸黄門という感じだ。

  • これぞ だまされる快感!
    ドンデン返し16連発!!
    リンカーン・ライムが難事件に挑む「ロカールの原理」ほか巨匠が腕によりをかけて読者を罠にかける傑作短編集!

    ドンデン返しの魔術師があなたの度肝を抜く!
    大人たちにポーカーの大勝負を挑む少年の秘策とは?(表題作)
    電車内で携帯電話を使っていた男を待ち受ける悲運。(「通勤列車」)
    秘宝を盗んだ大泥棒に迫る追手。(「ウェストファーレンの指輪」)
    暑い夜に男が訪れた家には不穏な空気が充満して…(「36・6度」)
    ほか全16編を収録。

    どの収録作も「ドンデン返し」にこだわった作品である。
    唯一おぼろげながら展開が読めたのは「のぞき」くらいだろうか。
    読み終えてみれば何てことないのだけれど、実に鮮やかに違った景色を見せてくれる。
    あと、「ウェストファーレンの指輪」はなんとパロディものでもある。ディーヴァーはこういうものも書くのだなあ。

    特に印象に残ったのは、「通勤列車」「生まれついての悪人」「動機」「36・6度」「遊びに行くのは最高の街」

    ミステリ :☆☆☆☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆☆
    人物 :☆☆☆☆
    読みやすさ:☆☆☆☆☆

  • ジェフリー・ディーヴァーの作品を初めて読みました。大変面白かったです。どの話もビックリするようなどんでん返しがあって、読み終わった後に「あーそうだったんだー」と感心してしまいました。

  • どんでん返しがあると分かっていてもゾクリとする短編集。ライム物は一作だけ。

  • More twistedの名の通り、捻りの効いたディーヴァー節の短編集。いずれも絶品。

    最近読んだ翻訳推理小説で、ストーリーはいいのに過剰な描写で後味の悪さが残ることが続いたのですが、ディーヴァーの小説にはそれがない。
    あとがき「恐怖について」を読んで納得した。以下引用(663〜664頁)
    「…サスペンス作家としての私の仕事は、読者を恐怖に震え上がらせながらも、嫌悪や不快感を抱かせないようにすることという事実を消して忘れないことだ。度を越した血みどろの描写や、子供や動物に対する暴力があると、読者をいやな気持ちにさせてしまう。サスペンス小説の恐怖がかきたてる感情は、カタルシスや爽快感でなければならない。読者に手に汗握らせ、夜に部屋の明かりを消すのをためらわせる。それは大いにやって欲しい。しかし終点では、読者が無傷でジェットコースターから降りられるようにすることが肝心だ。」

  • 面白かった~。
    短編集なのだから、キリのいいところでやめればいいのに、ページを繰る手が止まらなくて読み終わったのは今朝の6時。
    いつもより1本遅い電車で通勤することになってしまった。

    中学の時に星新一を読みまくり、高校でフレドリック・ブラウンにドはまりした私にとって、短編小説の一番の醍醐味は、ひとひねりの着地。
    長編のプロットではなく、切り取られた断面でもなく、ひねりのある結末。
    それを見て、ニヤリ。

    この短編集は、どれもこれも読み始めに見えていた景色が、気づくとどんどん変わって行って、この辺に着地するのではという予想はことごとく横滑りしていって、いっそのことすがすがしい。

    必ずしも勧善懲悪ではないけれど、不快感はなく、却って気持ちよくだまされているくらい。

    「通勤電車」と「生まれついての悪人」が、なかでも面白かった。
    特に「生まれついての悪人」は、もう一度最初から読み直して齟齬がないか確認してしまったほど。
    家族小説のアンソロジーとかに入っていたら、ショックのあまりトラウマになってしまうかも。
    そのくらい折り返し点からの畳み掛けがすばらしい。

    作者が仕掛けてくるはずと注意して見れば見るほど、気持ちよくミスリードされてしまう。
    ずっしりと読み応えのある長編もいいけれど、すこーんと気持ちよく視点を転換させられる短編で、頭の中が少しほぐれたような気がします。

  •  ショーモデルとして活躍し、引退後もファッションデザイナーとして成功をおさめたマリッサ・カッレフィーリオ。しかし、家業を継いでいた兄がリタイアしたため、楽しかった仕事からも手を引き、やむなく家業である美術品とアンティークの店を継ぐことになってしまう。
     そんな失意のマリッサの前に、裕福な実業家アントニオが現れ、いつしか2人は心を許しあう中に。しかし、アントニオが気まぐれに彼女を誘い出したドライブで、マリッサは予想だにしない出来事に巻き込まれてしまう……「恐怖」ほか15編

     原題は“More Twisted”で、前作『クリスマス・プレゼント』(“Twisted”)の第2弾といったところ。twistは文字通り「どんでん返し」ということで、今作もアッとびっくり!の短編がこれでもか、これでもかと続いて至福の時を過ごすことができました。(…にしても、この厚さ!)
     国も登場人物も全く違うシチュエーションで、犯人と思われていた人が善人とか、だましていたと思ったら、実はだまされていたとかいう話の連続で、こちらの予想を裏切られる感がなんとも言えないのですが、中でも、↑で紹介した『恐怖』は、ロマンス→サスペンス→ホラー→?と続く逸品。怖さもハンパなくて、映画のように場面が浮かんできて叫びそうになりました。
     一気に読むのも楽しいけれど、おいしいワイン(中高生はチョコレートなんぞ)を少しずつ味わうように読むのもおすすめです。

  • 前作クリスマスプレゼントでも感じたが、
    ディーヴァーは短編がうまい!

    話が残酷というか陰惨になればなるほど、
    そのあとのどんでん返しが冴えるので、面白いかな。

    実はこの人が犯人でしたの、「トンネルガール」。
    プリズンブレイクを思い出す「36.5度」。
    ベストは、まさかまさかの話の展開となる
    「生まれてついての悪人」かな。
    最後の別れをしたあとの、余韻の残し方が
    感動的です。

  • 短編ミステリって、物足りなさを感じて、やっぱりある程度のページ数がないと難しいなという感想が抱くことが少なくなかった。
    でも、これは大満足!
    「クリスマス・プレゼント」も読もうかな。

著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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