小銭をかぞえる (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.65
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本棚登録 : 635
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167815011

作品紹介・あらすじ

女にもてない「私」がようやくめぐりあい、相思相愛になった女。しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は緊張をはらんだものになっていく。金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、女が溺愛するぬいぐるみが悲惨な結末をむかえる「焼却炉行き赤ん坊」を併録。新しい私小説の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 本の帯で町田康さんが「激烈におもしろい」と特大フォントで謳っていて、そのことがなんだか面白く手が伸びた。

    「焼却炉行き赤ん坊」というショッキングな題名の一編から始まるが、内容は題名から想像される悲惨さはなかった(焼却炉へ行くのはぬいぐるみだった)

    それにしても主人公のダメダメなこと。しかし主人公(賢太と呼んだ方がむしろよいのか)と同居している女の人が、人形に惑溺していて、そののめり込み方に賢太が押されているのがなんか面白かった。ぬいぐるみ女凄し。ちょっと笑ってしまうぐらいである。

    「小銭をかぞえる」のだめっぷりも凄い。なんでそこまで藤澤清造の本出版にこだわるのだ… 思わず藤澤清造の文庫まで買ってしまったではないか。

    しかしなんだか面白いといえば面白い。ちょっと他のものも読んでしまいそうな勢い。

    • 美希さん
      こんにちは。
      西村賢太さん好きでいろいろ読んだのですが、声を出して笑ってしまったのは「二度はゆけぬ街の地図」です。「焼却炉行き赤ん坊」も女の...
      こんにちは。
      西村賢太さん好きでいろいろ読んだのですが、声を出して笑ってしまったのは「二度はゆけぬ街の地図」です。「焼却炉行き赤ん坊」も女のままごとぶりと賢太のきれっぷりが面白くて好きです。
      2012/12/20
    • 花鳥風月さん
      美希さん

      コメントありがとうございます。「苦役列車」だけ読んどけばいいかなーと思っていたのですが、賢太ちょっと面白くなってきました。

      次...
      美希さん

      コメントありがとうございます。「苦役列車」だけ読んどけばいいかなーと思っていたのですが、賢太ちょっと面白くなってきました。

      次は「二度はゆけぬ街の地図」にします! 笑えそうで楽しみです。
      2012/12/21
  •  第4創作集。表題作と「焼却炉行き赤ん坊」という2つの中編を収めている。

     内容は、相変わらず。『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』同様、絵に描いたようなサイテー男である主人公(作者の分身)と、同棲中の恋人(「女」とだけ表記される)とのすさんだ暮らしの一コマがスケッチされたもの。
     そしてその中に、いつもの「清造キ印」ぶり(著者が「没後弟子」をもって任ずる大正期の私小説作家・藤澤清造の全集制作に傾ける、異様な情熱)がちりばめられていく。

     もはや、西村賢太の小説は『水戸黄門』のごとき味わいに達している。マンネリ上等。『水戸黄門』のファンが十年一日の「いつもの展開」を求めて番組を観るように、読者の多くも「いつもの展開」を期待しているのだ。

     黄門様が印籠を出す瞬間に相当するのは、主人公がブチキレて「女」を罵倒しまくる瞬間である。本書の収録作2編とも、期待どおり、主人公がキレる瞬間がクライマックスに置かれている。
     そんな場面に「カタルシスを感じる」といったら私の人格を誤解されそうだが、読みながら、「カタルシス」としか言いようのない感情が湧き上がる。

     「こんな陰惨な私小説が、なぜこんなに面白いのだろう?」と自分でも不思議になるくらい、本書も相変わらず面白く、一気読みしてしまった。

  • 主人公は胸糞の悪さをも感じてしまうクズさ加減なのですが、なにがすごいと言うと主人公は著者西村氏自身なのである。私はこんなクズだと言い切ってるようなものである。それは太宰や往年の作家がしてきた、自己憐憫などとは違う。純粋なクズである。

    ただ物語りとしては、なかなかに身に詰まる。恋人とはなんだろう、という歯の浮くような、でもそれでいて我々が必ず直面することを、決して押し付けずに提示している。なぜこうも寂しい気持ちになってしまうのだろうか。男は都合よく生きる。それでいてプライドだけは立派にある。女は強い。強いが、わからない・・・。

  • ぬいぐるみがかわいそうな結末。

  • いやーびっくりするほど自己中心的で、もう実生活では絶対に関わり合いになりたくない人物。
    これだけハッキリ欠点をさらされると、「だからお前は」と指摘する気にもならない、というかコイツに指をさして欠点をあげつらえるほど自分は偉いのか、と自問自答に陥ってしまったりする。

    これで私小説というのが恐ろしいっす。ここまで自分の中の身勝手な感情を包み隠さずに描写できるのがすごい。
    自分を卑下しているように見せかけて、自分以外の全員を見下してるんだもん。
    もしかして自分含め人間誰しも多かれ少なかれこんなことを考えたりしているのかと思ったりしてぞぞっとしたり。
    そんなこんなで色々こちらの感情をザワザワさせて、文学作品としては面白く仕上がってしまってるのが特異というかなんというか。
    でもやっぱアカン。この人(作者自身じゃなく一応主人公が)アカン。

  • 賢太の小説は若い頃の話と中華レストランでウエイトレスとして働いていた、その親から300万円借りた女性との同棲していた頃の話があるが、今回は後者。
    まあ、ほんと、今回も最低な男の話です。芥川賞の受賞コメントで、自分よりもダメな人間がいると思ってくれればといったことを話していましたが、もうこれはなんというか、普通の人にとって自分よりダメなやつがおると思えるようなレベルじゃない。次元が違う。それでも面白く読めるのは、自分を笑ってやろうという客観的な視点があるから。
    毎回毎回書いていることは同じだけど、毎回笑える。

  • クズ男視点の生活の話。
    やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
    朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。

  • 文学

  • <blockquote>つまり、西村氏の小説は、体裁を整えないよい小説、という稀な小説なのである。</blockquote>という町田康(NOT 町蔵)の解説には「うん」と唸ってしまった。

    まったく体裁の悪い、ダメを抉らせた男の私小説。

  • どうしようもない屑男のどうしようもない話なのに、絶妙な可笑しさがある。屑男の思考の流れの中に、ごくごくたまに愛おしさを見出だしてしまうのも、なんだか癪だけど認めざるを得ない。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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