小銭をかぞえる (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 633
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167815011

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は胸糞の悪さをも感じてしまうクズさ加減なのですが、なにがすごいと言うと主人公は著者西村氏自身なのである。私はこんなクズだと言い切ってるようなものである。それは太宰や往年の作家がしてきた、自己憐憫などとは違う。純粋なクズである。

    ただ物語りとしては、なかなかに身に詰まる。恋人とはなんだろう、という歯の浮くような、でもそれでいて我々が必ず直面することを、決して押し付けずに提示している。なぜこうも寂しい気持ちになってしまうのだろうか。男は都合よく生きる。それでいてプライドだけは立派にある。女は強い。強いが、わからない・・・。

  • ぬいぐるみがかわいそうな結末。

  • クズ男視点の生活の話。
    やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
    朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。

  • 他愛もないクズ男の話という意味合いで面白い。
    私小説ということもあり著者の顔を思い浮かべながらだとより楽しめる。
    解説を町田康が書いてるんだが、解説文読んでいたらまた町田作品が読みたくなった。

  • 二編続けて同棲中の恋人を攻撃(口撃)していたのでちょっと食傷気味です。

    あまりに身勝手な動機(自己中心的な思考)は滑稽でもあるものの、ただの未成熟なオヤジの文学的な日記になっているのが残念かな。

  • 犬のぬいぐるみを猫かわいがりする女へのいらだちと、不妊。
    金策に駆け回る。

  • 芥川賞作家西村賢太氏の作品『小銭をかぞえる』を読了。2編の短編が収められている作品だが、2編とも私小説である。作者のことはご存知の人も多いかもしれないが最近では珍しい無頼派だ。定食につかず、志だけは高く、また男女関係ではとてもクラシックな亭主関白系であるという絶滅危惧種のような男性らしい(メディアにでている情報なので本当かどうかはわからないが。。)二つの作品はそういった著者の無頼ぶりが赤裸々に描かれている。読者は主人公=著者のとんでもないだめだめぶりを読まされる訳だが、これが不思議にダメージが残らない。普通あまりにワイルドすぎる人の情報に接すると結構疲れるのだが、西村賢太作品を読んでも倦怠感はないし驚くぐらいにすっきりした読後感が残る。なぜだかはわからない。かれの人間性な訳はないだろうし、その辺りが知りたいからこれからも彼の作品は読んでしまうかもしれないとも思った。そう意味では不思議な作品だ。

  • 「小銭をかぞえる」は藤澤清三の自費出版のために金策に右往左往する貫多の姿が印象的だ。作品を通して一貫しているのは貫多の自分本意な態だ。筆者も敢えてそうしているであろうほど、清々しいほどのクズっぷりだ。書店店主を恫喝し酒の力を借りて曾て旧友を訪問し借金を迫り同居人を自分勝手な論理で捻じ伏せる。しかも金策をしているわりにはこの男に本質的な危機感はなく無駄遣い甚だしい。悲劇も突き詰めれば喜劇になるが、まさにその味わいである。

    しかし「焼却炉行き赤ん坊」は頂けない。従前の作品は、実体を超越した自己として「貫多」を描き出し、私小説ながらリアリティが欠如した大正~昭和初期のような香りが漂っていた。本作は貫多と秋恵の日常風景に照準が置かれ生活感が前面に出ている。そのため病床に臥す同居者に暴挙を働く場面などは妙に棘がある。これまで貫多の小市民的で且つどこか他人事風な描写がユーモラスを生み出し、どこか愛らしさや親しみを齎していたが、単に短気で暴力的な男に成り下がってしまっているのが残念だ。「小銭をかぞえる」も同様。筆者の筆力の向上と私小説というのが裏目に出て、何か秋恵に異様なまでの悲壮感と同情心を抱いてしまう結果になった。

  • 相も変わらぬ私小説。
    主人公が俗悪で矮小で薄っぺらい。しかし汚いもの見たさでつい読んでしまう。奇妙な魅力。

  • 町田康の推薦帯にひかれ買ったけど、読めた。
    ちゃんと文章の「芸」で勝負する気を隠さない、いまどき意外な作風だ。うっかりした安易な言葉の選択が驚くほど少ない。しかし、あと一歩ものたりない読後感は、何ゆえだろう。
    日常に兆す危機、こちらじゃない世界、それを垣間見せることに成功しているのだが、その媒介物が「女」であり「金銭」である、という使い古し感が、それか。
    いずれにせよ面白かったので、近々別作品を読んでみよう。

著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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