小銭をかぞえる (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1121
感想 : 133
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167815011

感想・レビュー・書評

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  • 10年ぶりにできた恋人との生活を書いた二篇。
    傍から見ると健気で可愛い彼女なのだけれど、とことん酷い扱いをされる。
    前半の「焼却炉行き赤ん坊」はタイトルはギョッとするものの、まだ惚気話にも解釈できて微笑ましい場面もいくらかあった。
    でも後半の「小銭をかぞえる」は本当にどうしようもない話で、彼女側からしたら金を搾り取られているのと同じだった。
    人間のクズと言っていいような主人公が、どこまでも独りよがりに周囲の人間と付き合っているさまが読める。
    これが冷静に書かれた私小説であり、癖があるのにとても読みやすい文章で構成されていることが、二重に複雑な気持ちにさせる。
    思い切り怒りをぶちまけたあと必ず不安気になるところなんか、その性質をよく表している。こんなに嫌なのに、この先この二人はどうなったのだろうと気になってしまう。

  • 男としては最低。
     作家としては最高。
      間を取って星3つ。

  • どう考えても主人公のオッサンが悪いのだが、屈折した性格と幼児性故に間違った選択ばかりしてしまう、まともに生きられない人間を上手く描いていると思う。少し分からなくもない自分もやはりダメ男の素因を持っているという事なのだろう。

  • 筆者の作品を数冊読んでいるが、相変わらず非道い内容だなぁと思うがおもしろい。包み隠さずすべてをさらけ出して書いてる作品だと感じました。

  • 感想
    お金と愛情の両立。人格者でなければその両立は難しい。人格者であっても困難。お金に執心している者は愛情や信頼を失っていることに気がつかない。

  • 面白い。

    完全な私小説。私小説というより現実を克明に記すという姿勢で書かれたという意味で、夏休みの宿題で書いた作文を小学生ばりの真面目さで描かれている。
    ただし、内面の描写が鋭く、えげつないが、読んでる僕らも心当たりがあるだけに目を背けたくなる居心地の悪さが全くない。寧ろゲラゲラわろてまう。
    たぶん、えげつなすぎるという隙与えているという作者の優しさがあるからやと思う。

    面白い、そして女性にはけして薦めれない。

    2022/05/31 再読

    もう西村賢太のやり口は充分にわかっている。
    だから二度目は気の抜けたコーラがパーティ感を一気に無くしてるように、ウキウキ感はない。
    しかし、無様さの描き方はまだ充分に立派であり、健在である。

    町田康の解説も今回は面白く読めた。

  • 久しぶりに西村賢太作品を読んだ。読んでて辟易とするくらいのダメ人間なのに、何故かまた読んでしまった。。
    周りを異様に気にするカッコつけの小心な男がここまで赤裸々な私小説を書く、という矛盾に満ちた感じが不思議です。
    健気な彼女さんのモデルが現在どうされてるのか気になりました。

  • 2020.4.22-298

  • クズ男視点の生活の話。
    やってることはめちゃくちゃなのにそのロジックは妙な筋が通っていて余計に胸糞。
    朝の通勤時間に読むもんじゃなかった。それくらいリアル。

  • どうしようもない屑男のどうしようもない話なのに、絶妙な可笑しさがある。屑男の思考の流れの中に、ごくごくたまに愛おしさを見出だしてしまうのも、なんだか癪だけど認めざるを得ない。

著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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