終点のあの子 (文春文庫 ゆ 9-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167832018

作品紹介・あらすじ

プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。

感想・レビュー・書評

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  • 『うちらが卒業するときになっても、ずっと工事してそうだよね』、『工事が終わったら、まずい理由でもあんのかな』と、いつまで経っても終わらない駅の工事。”永遠に未完の工事”とも揶揄される駅の工事。

    1885年に開業し、乗降客数世界一としてギネスブックにも認定された”新宿駅”。1882年から始まった工事が未だ続いているスペインの”サグラダ・ファミリア”にも例えられるように、”新宿駅”は135年以上にも渡って延々と終わりのない工事を続けています。『何年も作っては壊すを繰り返している』というその工事は、何かしら目的を持ってはいても最終的な完成図を持ちません。それは、乗降客数世界一だからこそ、終わらない、終われないものなのかもしれません。

    さてここに、そんな”新宿駅”のように終わりのない工事がいつまでも続く、とある駅の最寄りの高等学校に通う女子高生たちを描いた物語があります。いつまでも続くそんな工事の風景を見て『工事は永遠に終わらないのかもしれない』と考える女子高生たち。この作品は、そんな彼女たちの思いの先に、学校のクラスでの日々を、そして彼女たち自身の人生を重ねてゆく物語です。

    『一体いつ終わるのだろう』と通学する私立女子校の最寄り駅の工事を見て思うのは立花希代子。そして、『やる気あんのかなー』と言うのは中等部から同じグループだった森奈津子。『工事が終わったら、まずい理由でもあんのかな』と話しながら、高校の入学式に向かう二人。そんな時『完成しないというところに良さがあるんだよ』といきなり背後から声がして振り向くと『丈の短い青色のワンピースを着た』、『見知らぬ女の子が立ってい』ました。『スペインのサグラダファミリアみたいにね…』と言い残し『スキップせんばかりの足取りで希代子たちを追い越して行った』女の子。『「はあ?」というふうに半笑いで首を傾げた』森ちゃんに対して『知らない人にいきなりしゃべりかけ、言いたいことを言うなんて、なんだかすごい』とひそかに感動した希代子。『新しい担任は、世界史の名村洋子先生だった。なっちゃんこと名村先生』という高校のスタート。『森ちゃんとまた同じクラスになれたことはラッキーだ』と喜ぶ希代子。教室を見渡すと『外部から入ってきた女の子たち十数名がそれぞれ緊張した面持で席に座っていた』というその中に『朝の青いワンピースを着た女の子がいるのに気がついた』希代子。『全員グレーの制服を着ている中、当然のことながら彼女はものすごく目立っていた』という彼女。そして『皆さん、出席番号順に自己紹介をしましょう』という先生のかけ声で自己紹介が始まりました。当たり障りのない挨拶が続く中、『奥沢朱里です』という『ちょっと舌っ足らずな甘い声に』顔を向けた希代子の目に『あのワンピースの子』が立ち上がったのが映ります。『皆、制服着てるから驚きました。入学式って、好きな格好しちゃいけないんだね。高校からの入学です。よろしくね』というその挨拶に『一瞬静まり返った後、遠慮がちにくすくす笑いと、ささやきに満ちた』教室。『ちょっと変わった子が空気を読まずに何か言い、皆がひく。自分がしくじったような気持ちになる』と、いたたまれない気分になる希代子。そしてそんな高校生活も一カ月半を過ぎた頃、『ねえねえ、立花さん、そのメロンパン、私のメロンパンと交換しない』と話しかけてきた朱里は『よければ一緒に食べようよ』と希代子を誘います。『半月足らずでお弁当のグループはしっかりできあがっていた』こと、そして『突然お昼によく知らない子をゲストに迎え入れることができるほど、柔軟ではない』というグループのことを気にして『ええーと、その。二人で食べよっか』と朱里を廊下へ連れ出した希代子。『私と一緒だと、皆とはだめなの?』と訊く朱里に『この子はKYだ、と少しうんざりした』希代子。『誘われた希代子がなぜこんなに気を回さねばならないのだろう』と不満に思う希代子。しかし、それをきっかけに『希代子と朱里は急速に親しくなっていった』という展開を辿る二人の関係。そして、その先にまさかの大波乱が待ち受けているとはよもや思わない二人のその後の高校生活が描かれていくこの短編。六つのグループからはみ出ることを良しとしない学校生活の息苦しさを見事に描き出した好編でした。

    四つの短編から構成される連作短編の形式を取るこの作品。柚木麻子さんのデビュー作として、まず一編目の〈フォーゲットミー、ノットブルー〉が”オール讀物新人賞”を受賞し、編集者からの勧めを受けて残りの三編が書き下ろされたという経緯をたどります。そんな〈フォーゲットミー〉について、『完全に加害者の立場に感情移入しちゃって、いじめられる朱里への愛おしさと憎らしさで喜々として書いてしまったんです』と語る柚木麻子さん。そんな柚木さんが描く物語は、『よければ一緒に食べようよ』と朱里が希代子をランチに誘ったことからスタートします。すでに高校スタートから一カ月半が経過し『クラスには六つのグループが存在する』という中での突然の朱里の誘いに戸惑う希代子。グループの関係性にも気を配り、二人で食べることでその場を凌ごうとする希代子に対して『私と一緒だと、皆とはだめなの?』と不満に思う朱里。『この子はKYだ』と感じる希代子ですが、そんな二人のランチの時間を過ごしてみて、『休み時間が、もっと長ければいいと心から思』い、『この子のことをもっと知りたい』と気持ちが変化していく希代子。一方で、朱里との時間が『森ちゃんたちとお弁当を食べながらする会話の百倍楽しい』と、グループの関係性と比較してしまったことから物語は大きく展開し出します。女子ほどではないにせよ、男子にだってグループは存在します。そもそも学校を出て就職したって会社内で何かしらのまとまりは存在するでしょうし、政治の世界に派閥が生じるのだって、その行き着く先とも言えます。人は何かしら自分の寄る術を求め、何かに属することによって心の安定を求めるところはどこまでいっても、どんな集団に入っても変わりません。これはもう生物としての性なのだと思います。そんなクラスの中で形成されるグループについて、柚木さんはそのグループ間に存在する格差に次の二編で焦点を当てていきます。

    『高校に入ってから突如、階級制度が発生した』と感じている森奈津子が主人公を務める二編目〈甘夏〉。一編目で希代子の中等部時代からの友人として登場したものの、どこか目立たない存在である奈津子。そんな奈津子が『自分の階級が低いことを日々実感していた』と内に秘める複雑な感情が起点となって物語は進みます。そんな低い階級に位置する自身の立ち位置の変更を目指して大胆な行動をとる奈津子。その行動は、奈津子にとって全くの予想外な結末へと彼女自身を向かわせます。また、それに続く三編目〈ふたりでいるのに無言で読書〉では、クラスの中で『所属する華やかな軍団』の頂点に立つ菊池恭子と、見下し対象の『オタクグループ』に属する保田早智子の夏休みの偶然の出会いから生まれた小さな交流の行方が描かれていきます。『あんなに綺麗な人が、私の話を楽しそうに聞いてくれた』と喜ぶ早智子に対して、『こいつ、ブスだけど結構可愛いかも』というその関係の始まりは、やがて『二学期までに保田を変身させるのだ。恭子のグループの一員は無理としても、どのグループにも自由に出入りできるくらいの地位に引き上げたい』と考えるようになる恭子の気持ちの変化、その心の内が見事に描写されていきます。自分のクラス内での地位向上を目指した奈津子と、早智子の地位の引き上げを目指した恭子。女子校のクラスの中という極めて狭い世界の中での微妙な力関係、それはまさしく”スクールカースト”という言葉で語られる世界です。この作品から三年後に、柚木さんは「王妃の帰還」という”スクールカースト”をマリー・アントワネットが生きたあの時代、フランス革命前夜の人々が熱く燃えたそんな時代に重ね合わせて描く傑作を送り出されます。この作品で描かれる学校世界はまさしくその前夜を見るかのようでもあり、それぞれのカーストに所属する面々が感じる”スクールカースト”に思い描く率直な感情を垣間見れたようにも感じました。

    そして、作品は四編目の〈オイスターベイビー〉で時計の針を大胆に進めたその先の未来へと読者を誘います。それは、『奥沢朱里が高校を卒業してそろそろ四年が経過しようとしている。あの駅の工事はまだ終わっていないらしい』という、駅の工事だけが同じように続くものの、まさかの四年後、すでに大学の卒業年へと至った朱里視点の物語でした。小・中・高・大と進んでいく中で、次の段階に進んだ自分がそれ以前の段階を一気に幼い時代、遠い過去のように感じることがあると思います。それぞれの時代を精一杯生きる中では、過去の段階に思いをはせる余裕などなく毎日は過ぎていきます。柚木さんが四編目で設定した大学四年という時代は、その次の時代の自分を見据える段でもあり、良い意味でも悪い意味でも前の段階である高校時代はすでに遠い過去となった、そんな時代でもあります。苦い記憶を封印したいという意識からか『共学の美大に入ってからは、できるだけ異性と接するようにしてきた』という朱里。しかし『この四年間は迷いだらけだった』という朱里は『カメラを触っているだけで、自分の居場所が確認できるようで、心が温かくなる』とついに自分の居場所を見つけます。しかし、『この駅来ると、いろいろ思い出しちゃう』と、『空気を読め。皆に合わせろ。私たちの気持ちを逆撫でするな』と苦しめられたあの時代の辛い記憶も蘇ります。そして、そんな大学生活を送る中で、『朱里にとっての終点は、向こうにとっては折り返しの始発駅に過ぎない』ということに思い至る結末が描かれていきます。それは『いじめられる朱里ちゃん側を書く必要があった』と語る柚木さんが導き出したこの連作短編の結末に相応しいもの。いじめた側の希代子のことを『私のことを、知りたかったのかな』と漠然と朱里が思い出すその先に光を見るその結末は、そこに四年という年月を経て、高校時代の複雑な思いを決着させた朱里が次の時代へと向かう姿を垣間見るものだと思いました。

    『希代子が朱里になれないように、朱里も希代子にはなれない』という、言わば当たり前の結末を見る物語。それは、高校時代という多感な時代にあって、『あの時はああするしかないって思っていた』と、その時々で出した最善の結論を繰り返す日々を生きた結果でもありました。永遠に終わらないかのように続く駅の工事、それは学校での日々の中でも、学校を卒業しようとも、そして就職して大人になろうとも、どこまでいっても完成することのない人間関係のあり方を、そして答えのない自分自身の人生を模索し続けながら生きる人の人生をそこに見る物語でもありました。

    高校時代を生きる少女たちの細やかで繊細な心の内を鮮やかに描き出したこの作品。「終点のあの子」という書名から受ける寂しそうな印象が、読後に一気に力強いものに変化した、そんな風に感じた作品でした。

  • お嬢様学校の女子高生達の、三遍の高校時代と卒業後の一編の連作短編集。
    同じ時間の三遍は、クラスの中を別の少女の目線から描くので、女子高生を俯瞰して読めます。
    それぞれ少しずつ無理をしながら、学校に溶け込もうとしている。その無理した部分で摩擦がおきる友人関係。
    青くて痛くて脆いけど、思いの外、彼女たちの強さがあります。
    ちょっとした女子の持ち物や所属するグループで彼女たちの立ち位置を。関東圏の各私鉄路線の雰囲気で彼女たちの家庭を 上手くイメージさせています。

  •  何年も前から工事が続く駅。永遠に終わらないかのように見え、すっきりとした完成形が想像できないその情景は、常に発展途上である、人物それぞれと重なる。

     どんな自分でありたいのか。どんな自分として人から見られたいのか。

     中等部からの内部生である希代子。高等部から、有名な写真家を父に持つ朱里が入学してくる。希代子は朱里の奔放な行動に魅かれる。急速に親しくなっていく二人だったが、朱里のノートに書かれていた希代子に対する言葉を見てしまったことで一変する。
     他の3編は、もともと希代子と親しかった森ちゃん、クラスで目立つ存在の大人っぽい恭子さんとサブカル好きの保田さん、大学生になった朱里の物語。視点が変わるとそれぞれがいろいろな思いを抱えていることや、思いがけない面を持っていることに気づかされる。
     希代子にとっては、時々学校をさぼって「急行片瀬江ノ島行き」に乗り、ひとりで海を眺めるのだと言う朱里が、自由できらきらしているように思えた。でも、きっとその海は「フォーゲットミー ノット」の青だったんだろうなと思った。

    • naonaonao16gさん
      よんよんさん

      お久しぶりですー!
      この作品、読みたくて買ってみたものの、活字に触れるエネルギーがなく積読中…
      早く読みたいもんです。
      ちょ...
      よんよんさん

      お久しぶりですー!
      この作品、読みたくて買ってみたものの、活字に触れるエネルギーがなく積読中…
      早く読みたいもんです。
      ちょっと疲れそうな内容だから、元気のある時に!
      2024/03/16
    • よんよんさん
      naonaoさ~ん
      お久しぶりです♡
      naonaoさんがお疲れモードなのを、レビューを読ませていただいていて心配していました。ゆっくりお休み...
      naonaoさ~ん
      お久しぶりです♡
      naonaoさんがお疲れモードなのを、レビューを読ませていただいていて心配していました。ゆっくりお休みできるといいですね。
      私のほうも慌ただしくしていて、久しぶりに本を読みました。あ~このままブクログやらなくなっちゃうかなぁ なんて思いながら…。naonaoさんがまたエネルギーを蓄えて書かれるのを、のんびり待ってます。
      2024/03/17
  • いつも電車や街中でみかける女子高生は存在だけでキラキラ輝いて美しいと思うけど、そういえば当事者の時ってこんなに悩んでグルグルしてたわ…と思い出しました。
    憧れの存在がいたり、社会に出ようとしてみたり、裏切ったり裏切られたり…いまでも美化できない苦くてしょっぱい思い出を昇華してもらったように思います。
    「王妃の帰還」も舞台は似てるけど、より現実的だから世界に入り込みやすいです。

  • 四篇からなる連作短編集。
    中高一貫のプロテスタント系女子高を舞台にしたもので、高校一年生の同じクラスの色々な人物が主人公となっていくので、様々な視点から一つのクラスを眺めているようで立体感があって楽しかった。
    短編四つのうち三つは同じ時間軸だけど、最後の一つはその四年後、大学四年の時のストーリー。

    私も中高一貫の女子校に中学から通っていたため、女子同士の憧れや嫉妬やその他色々混ざった複雑な気持ちがよく描かれているのが分かるし、当時を思い出したりした。
    色々なグループに属するそれぞれの女の子の心の内というのが主軸なので、ちょっと苦しいような切ないような気持ちになったり、共感したり。。
    朱里のその後や希代子の大学生活も気になる。

  • 痛くて切なくて、熱っぽくて恥ずかしくて、懐かしくて苦しくて、自意識過剰で可愛くて。
    女子高校生の話です。

    狭い世界での一生懸命。
    タイプの違う女子高校生たちが、それぞれ自分の居場所を探して、もがく様子をリアルに。
    典型的なタイプのようで、ちょっとずつ意外な面も持っている。
    さわやか、というとちょっと違うけど、基本は前向き。甘さもないではない雰囲気。
    読後感も良いです。

    [追記]
    世田谷にあるプロテスタント系の私立女子校。
    最寄り駅はいつも何かの工事をしている。
    希代子と森ちゃんは、中学から進学した内部生で、真面目なタイプ。
    高校の入学式に、一人だけ制服を着ないで来た子がいた。
    奥沢朱里という子は、写真家の娘で帰国子女。
    どのグループにも属さず、気分次第で色々な子と一緒にいた。
    希代子は強く惹かれていくが…

    やや取り残された森奈津子は、校則では禁じられているバイトを始めてみる。
    マイペースな朱里は、だんだんクラスから浮いていった。
    希代子の気持ちは、こじれていく…

    恭子はクラスでも目立つ華やかな美人で、大学生の恋人がいると評判になっていた。
    ところが、その彼が朱里を車に乗せたことから、別れてしまう。
    退屈な夏休み。図書館で偶然、早智子と出会い、本の話をして、意外に楽しい時を過ごす。
    漫画研究会に入っている早智子は、クラスでは全く別なグループなのだった。

    おかしかったり、哀しかったり。
    朱里の大学時代の話で締めくくり。
    忘れたかった希代子のこと、その気持ちをふと思いやる…
    ぶつかりながらも成長していく彼女たち。なかなかいいですよ~。

    著者は1981年生まれ。
    立教大学卒。
    2010年5月発行のこの作品が初の単行本。

    • sanaさん
      まろんさん、
      コメントありがとうございます!
      まろんさんのレビュー、印象的でした。

      あの頃はほんとに、狭い世界での立ち位置が重大問...
      まろんさん、
      コメントありがとうございます!
      まろんさんのレビュー、印象的でした。

      あの頃はほんとに、狭い世界での立ち位置が重大問題なんですねえ。
      まあ大人になってからも似たようなことはあるんですが。まだしも逃げ場があったり、いずれ変化が起きることも知っていたりします。

      なんだかこの子達、可愛くて…
      リアルで~時々、「おいおい」なんだけど、憎めない。
      あるかもねえっていう…懐かしさと痛みと共に…愛おしくなりますよね。
      そう感じるような視線で包まれている所が良いですね☆
      2012/10/20
    • 野原さん
      私はうまくレビューにまとめられなかったのですが、sanaさんのレビューは私がこの本で感じたことをまさに言い表してくれました。
      重過ぎず軽過ぎ...
      私はうまくレビューにまとめられなかったのですが、sanaさんのレビューは私がこの本で感じたことをまさに言い表してくれました。
      重過ぎず軽過ぎず、絶妙な雰囲気ですよね。痛い描写もあるのに、不思議と読後感も良くて。
      お気に入りの一冊になりました。
      2012/10/25
    • sanaさん
      野原さん、
      わあ、ありがとうございます!
      このとき、ストーリーはまとめられなかったんですが。
      とても良かったので、何とかその印象だけは...
      野原さん、
      わあ、ありがとうございます!
      このとき、ストーリーはまとめられなかったんですが。
      とても良かったので、何とかその印象だけは書き留めておきたくて。
      そうそうそう、絶妙なんですよ~。
      リアルだけど可愛くて、痛いけど辛すぎず、読後感がいいので。
      オススメ出来ますよね~♪♪
      2012/10/26
  • 柚木麻子さんと朝井リョウ君は仲の良いお友達。
    らしいのだ、どうも。
    二人のツイッターを読むと頻繁にお互いが登場してくる。
    馴れ初めは何だったのだろう?
    いやいや、そんなことはどうでもよい。
    でも、柚木さんの比喩は朝井君の比喩に雰囲気が似ている。
    朝井君のが切れ味鋭いアーミーナイフだすれば、柚木さんのは、少しやんわりとした果物ナイフというような違いはあるけれど。
    どちらも、比喩の表現はきらきらと光り輝いている。

    男子高出身の私には、本当のところは分かってないのかもしれないが、彼女のこの作品は高校女子の心の機微や切なさなどの心理描写が秀逸だ。
    登場人物が見事に女子女子しているのだ、みんな。
    女子高の子ってこんなに面倒くさいのかと分かったら、高校時代に付き合ったりしなくて良かったと思った。
    いや、それは嘘だが……。
    私たち男子高の男どもは、こんな些細なことで悩んだりしなかったよな、と遥か昔を振り返り思うのだが、それってひょっとして私だけだったのか?
    受験勉強と野球部の部活漬けで、ただひたすら家と高校往復の毎日だったので、他のことを考える余裕がない高校生活を送っていたからなのか?
    うーむ。今さらながら高校の同級生に聞いてみたい気分だ。

    ま、それはともかく、柚木麻子の文章は私の好みである。惚れた。
    噛み締めると酸っぱい檸檬のようなストーリーのタッチも独創的だ。
    本のタイトルの「終点のあの子」も、一作目の「フォアゲットミー、ノットブルー」もセンスが感じられる。
    そんなわけで、これから彼女の作品を何作か読んでいくことに決めた。
    大好きなお嬢様学校の出でもあることだし。
    恵泉女学院出身。まさに憧れの秘密の花園的雰囲気むんむんではないか。
    男なんて、そんな単純な生き物ですよ、はい。

  • 女子のお話。
    独特の世界があることは何となく知ってはいましたが、みえなくてもよかった陰の部分が最初のお話からでてきて、どうしようかと思ってしまいました。
    いろいろと悩んで、考えることは大事なことだとは思いますが、自分の時間、大事ですよ。嫌な人のために自分の時間を使うのは、それが1秒であってももったいないです。
    人の見方なんて関係ない、そんな子もいたので救われました。

  • みんな「自分」を持ってるから、人間関係って難しい。

    当初電子書籍を購入したが、中一の娘に読ませたくなり文庫本も購入。
    娘がこの本をちょうど読んでいる時に些細なことから友だちとの喧嘩が勃発。
    愚痴を聞きつつ、「とはいえ、相手にも「正しい自分」があるからさ」と言うと、この本の影響があったのか、妙に納得したらしく、ほどなくLINEで友だちと仲直りしていた。
    そのあとで、ぼそっとひとこと「女子ってめんどくさいよね…」

  • 自分が高校生の頃から、いやそれ以前からか。この歳になってもずっと謎、積年の疑問だった女子高校生の頭の中。
    大好きから大嫌いへ、愛情から憎しみへ、友情から敵意へと、まるで古いオーディオのレベルメーターのように両極端へと瞬時に振り切れるその針は、傍目には恐ろしい近寄りがたいアンタッチャブルなものとして横目で見ていた。

    そういう女子高生たちの機微を、作者の柚木麻子さんは非常に細かく、そして深く丁寧に描写する。ははぁ、こういう思考システムでこういう結論に達するんだな、と納得は出来ないのだけれど、なんとなく得心してしまう。そんな感じ。

    四つの章の、それぞれの主人公の女の子たちが、同級生との微妙でなんともいえない独特の距離感で関わり(そこで登場する脇役の子が次の章では主人公になるみたいな)不思議なクラス・カーストみたいなものを構築していく。

    これ面白いなぁ。実に面白い。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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