オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 463
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167834012

作品紹介・あらすじ

人が降ることで有名で、誰もがみんな知っている町、ファウルズ。そんな町に送られてきたレスキュー・チーム=町の英雄たちの物語

円城塔のデビュー作が文庫で登場。
表題作は、第50回文學界新人賞を受賞し、第137回芥川賞候補となった。

感想・レビュー・書評

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  • 昨晩、頭がもやもやしていて、あぁこれは寝れないなと思ったのです。
    だから、円城塔を読むべきだと。

    円城塔氏が、何を意図して書いたものなのかはわからないけれども(本人に聞けるわけでもなし。)、やっぱり私は、円城塔氏の文章の中に、勝手に私が抱く不安と不条理感と開き直りとを見出していって、大いに安心して満足して、しっかり眠ったのでした。

    最近、円城塔氏は、詩人なんじゃないかと思うようになりました。
    詩人の定義は知らないけれど、文章のリズムがあまりにも、心を落ち着かせるテンポをもっているものだから。

    円城塔入門にオススメできる一編「オブ・ザ・ベースボール」と、とことん知識と教養と薀蓄を蓄えて臨んだらまたずっと深くて豊かな味わいを楽しめるに違いない一編「つぎの著者につづく」。
    「つぎの著者につづく」は「これはペンです」で救われた私を、同様に救ってくれました。
    もっと本を読み、知識をたんまり身につけて、また読みにくるね。

  • 初円城塔作品。

    事前の評判でたぶん小難しい小説なのだろうと思っていたけど、予想に反し1編目の「オブ・ザ・ベースボール」は意外と読み易かった。ポップな感じである。それでも話の筋は全く意味不明だったが。

    読んでいてぼーっと野球自体の不思議さとか意味不明さについて考える。私は野球が好きだがつくづく変わったスポーツだとは思う。ルールを何も知らない宇宙人とかが見たら、全く意味不明なんではないだろうか。

    意味不明さの原因に「どういう技量があればこのゲームを制することができるのか」という問いにかなりの答えを見いだすことがあるような気がしている。バッターでいけば「スタンドまで打球を飛ばす技術(ホームラン)」「人のいないところに打球を打つ、落とす技術」「内野手に捕られてもセーフになるだけの走力」であったり、ピッチャーであれば「三振を取る技術(剛速球なり変化球なり)」「打球を詰まらせて内野手に捕らせる技術」「打球を上に上げさせて外野手なりに捕らせる技術」のようなものがあり、野球道を極めて達人と呼ばれるためにあまりにも多くの方法がある。

    もともと野球もたぶんシンプルに「打って、走って、守って」みたいなものだったんだろうと思うが、現代の野球はそこから比べるとかなり複雑になっているのではなかろうかと思う。そして私は生まれたころから「野球とはそういうもんだ」とその複雑なルールを受け入れている。これを受け入れる時に感じる違和感は「オブ・ザ・ベースボール」の中の物語の世界の中の「ルール」を受け入れるのとどこか似ていないだろうか。ここにはどうもそういうことが書いてあるような気がしてくる。

    そして2作目の「つぎの著者につづく」。これは難しかった。途中で何回も何言ってるかわからなくなった。なかなか大変だったが終盤まで読み進めてきた頃に何となく二つのことがふっと思い起こされた。

    1つは芥川の『侏儒の言葉』とか『或阿呆の一生』がなぜか思い出されたこと。芥川のそういう作品には西洋の古典などの引用が多くあり、断片を集めたもののふりをしながら一つの作品になっている、と言えなくもないものである。的外れかもしれないが何か似ているかもと思った。

    2つ目に思ったことは「つぎの著者に続く」というタイトルからもどこかメタ小説的な雰囲気は感じ取れるけれども、古今の小説の情報をデータベース化して、関連情報から物語の体裁へと自動生成するようなプログラムが作れればこんな小説ができてしまうのでは? ということ。実際に円城さんはエンジニアでもあったらしく、wiki情報によればそもそも「円城塔」というペンネームもある小説の物語生成プログラムからとっているのだとか。なるほどなあと思った。実際にそんなプログラムを作ったわけではないのだろうけど、そこへの夢想というか憧れみたいなものが感じられた。

    フィネガンで終わっているところが何とも心憎い。

  • 文庫になったので再読。
    解説の沼野氏の言葉にあるように、円城氏の文章はどんなに難解でもチャーミング。おかしみと可愛げがあるところが好きなんだなぁ、と思う。
    「つぎの著者につづく」は1回目に読んだ時よりも少し頭に入ってきた気がする。注に挙げられている参考文献をひとつずつ読んでいけば、いつかは理解出来る日が来るのだろうか。ぐるぐるまわる、知の迷宮。

  • 解説はスタニスワフ・レムの翻訳などで有名な東欧文学者による。このことから円城塔の認知のされ方が分かる。
    内容はライプニッツ、ジョイス、ボルヘス、エーコ、カフカ、『完全な真空』などの参照・引用が成された緻密な構成でこの手の文学作品に読み慣れている人はすらすら読める。もともとそうした前衛的文学傾向に興味のある人が対象となっている作品の気がする。
    『道化師の蝶』も含めてハヤカワSFではない円城塔も面白い。
    円城塔を読み終えたあとは、レム『完全な真空』、ボルヘス『伝奇集』、カフカ作品などにあたってみると作品世界が広がる。

  •  この人の作品は、感想を書くのがいつもむずい。
     めちゃくちゃ面白くて刺激的な作品であることは間違いない。
     しかし、何が面白くて、どこが刺激的なのかを表現することが、本当に難しい。

     沼野充義氏の解説に、良い表現があったので引用。
    <blockquote> どんなに難解なものを書いても、なんだか魔術師が悪戯っぽくウィンクをしているようなチャーミングなところが感じられて、読者を決して突き放さないのだ。</blockquote>
     上手い表現だなあ、と感心する。
     確かに、円城氏の作品からは、いつもそんな感じを受ける。

     円城氏の作品に対しては「難解」という評を見かけることが多い。
     けれど、あまり「難解」だと思ったことは無かったりする。
     確かに、読みやすい文章では無いけれど、それは決して悪文だということではない。
     あまりに「普通」からかけ離れた文章であり、表現であり、ストーリィであり、キャラクタであるために、すっと入ってこないことが、一番大きい原因だろうと思う。しかも、その「違和感」に、読者が慣れる隙を与えてくれない。氏の書く作品は、同じテンションで結末まで進みはするものの、使われている様々な要素は決して落ち着くことは無く、いつまでも変幻自在に形を変え続ける。そのことが、「読みにくさ」に拍車を掛ける。
     けれど、それでも、氏の作品は「難解」では無いと思う。

     本作は、表題作の「オブ・ザ・ベースボール」と「つぎの著者につづく」の二本立て。
     「オブ・ザ・ベースボール」の方は、氏の作品のなかでも、読みやすい方だと思う。
     ただ、相変わらず妙なテンションで、妙な世界がずーっと広がる。
     この「妙さ」に惹かれる人は、きっと他の氏の作品も、「難解」とは思わないのでは無いかな、と思う。
     「つぎの著者につづく」は、いつもの円城作品、という感じ。
     ほんと感想を書くのが難しいけど、とにかく面白い作品。
     ただし、読後に「あー面白かったー」となるような作品ではない。
     「面白かった・・・。面白かった?面白かった、んだろう。」な感じ。

     まあ、不思議な作品を書く作家であることは間違いない、と思う。
     よく分かんないけど、面白いんだよなー。

  • 2012-5-2

  • 表題作より併録の『つぎの著者につづく』が面白かった。

  •  表題作と「つぎの著者につづく」の二編を収録。
     表題作は思った程には難解ではなく、割とスラスラと読めた。
     特に際立ったストーリーはないように思える。
     僕なりの解釈だと「生と死」という現象を言葉に託して表現したものなのかな、なんて思えた。
     現象を表現するんだから、物語は不要なのかなと。
     作中に「クリス・ラントン」という名前が出てくるけど、人工生命の研究で有名なクリストファー・ラントンのことだと思われるし、この名前を見た時に、なんとなく「生と死」についてのことなのかな、と思った次第。
     当たっているかどうかは判らないけど、僕がそう感じてしまったんだから、当たっていようがはずれていようが、気にはならない。
    「つぎの著者につづく」の方が、難解、というか決して楽には読み通せない。
     やりたいことは判る気がするし、面白い試みだな、とも思える。
     膨大な量の注釈も含めて、著者の頭の良さと膨大な読書量には脱帽。
     これ、これだけの本を読んでいないと、この作品はきちんと理解出来ないのかもしれない。
     あるいは、これだけの本を読んでいたら、もっと楽しめたのだろうか。
     某批評家がこの著者をペダンチックと批判した気持ちが判るような気がしてしまった。

  • うーん 難しい!
    分からないと放り出すにはもったいない気もするんだけど、情景が浮かばなくてつい流しながら読んでしまった。

    円城さんは「これはペンです」と「屍者の帝国」を読んでいて、こちらの2つは”自我とは何か”とか”文章とは何か”みたいなテーマが肌にあって、楽しんで読めたのですが……
    こちらはテーマが掴めないまま読んでしまった。
    でも、円城さんの作品はもうちょっと他にも読んでみたいです。

  • といいつつ、早速辛い評価をしてしまっている訳ですが(苦笑)。「屍者の帝国」は、あくまで伊藤ケイカクの作り上げた世界観があったからこそ、傑作に仕上がったんですね、きっと。もちろん円上塔に、突拍子もない発想を十全に広げる力があるからこそなんでしょうが、少なくとも本作は、そんな期待を満足させてくれる内容とは言い難かったです。正直、難しくて理解出来ていないだけって言われればそれまでなんですが、いかんせん物語が… 読み進めるのがちょっとしんどかったです。ちなみに表題作で力尽きてしまい、もう一方の作品は読めませんでした。当然、ここのコメントも表題作に対してのものです。

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著者プロフィール

円城塔(えんじょう とう)
1972年、北海道生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。複数の大学で研究員を務める。34歳の時、研究を続けることが困難となり、2007年にSEとして一般企業に就職。2008年に退職、専業作家となる。
デビューのきっかけは、研究のさなかに書いていた「Self-Reference ENGINE」。各所で認められデビュー作となった。2007年『オブ・ザ・ベースボール』で第104回文學界新人賞、2010年「烏有此譚」で第32回野間文芸新人賞、2012年『道化師の蝶』で第146回芥川賞、同年『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で第31回日本SF大賞特別賞、第44回星雲賞日本長編部門をそれぞれ受賞。他にも2012年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)、2017年「文字渦」で第43回川端康成文学賞をそれぞれ受賞している。
その他代表作に『これはペンです』『エピローグ』などがある。「新潮」2016年5月掲載号で川端康成文学賞を受賞した短編小説、『文字渦』が2018年7月に発売された。

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