Iターン (文春文庫 ふ 35-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838416

作品紹介・あらすじ

広告代理店の冴えない営業マン・狛江が単身赴任したのは、リストラ対象の北九州支店。思わぬトラブルでヤクザに絡まれ、大借金のうえ身売りの大ピンチに。鉄拳の雨と禁断のレバ刺し、爆弾を抱えたダイ・ハードな日常。生き地獄に陥った男のI(=自分)ターンとは!?血圧急上昇、リーマン・ノワールの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • この著者の作品を初めて読んだ。
    コミカライズ版の1巻が激安セールだったので読んでみたらなかなか面白くて、原作を読んでみたのである。

    主人公は、中堅どころの広告代理店の中年サラリーマン。彼は東京から、閉鎖間近いと噂される業績不振の北九州支店に飛ばされる。支店長になったため役職上は栄転だが、実質は左遷だ。

    支店の閉鎖を避けるべく、業績を上げようと奮闘するも、広告がらみのトラブルでヤクザに脅され、紆余曲折の末になんと「舎弟」にされてしまう。

    つまり、主人公は心ならずも、サラリーマンとヤクザを「兼業」する羽目になるのだ。
    その後は、「サラリーマンもの」と「ヤクザもの」の物語が並行して進んでいくような奇妙な展開を見せる。

    荒唐無稽な設定ではある。が、広告代理店の仕事とヤクザ社会の描写にそれぞれリアリティがあり、突飛さをあまり意識させない。

    主人公の親分となる岩切は、口より先に手が出る粗暴なヤクザ。まるで『ドンケツ』(本作同様、九州を舞台にしたヤクザマンガ)の主人公・ロケマサのようだ。

    主人公は岩切によって、どんどんのっぴきならない立場に追いつめられていく。
    だが、彼が働いている広告代理店も、腐敗した上司が幅をきかすブラックきわまる環境なのだ。

    読んでいるうち、「こんな会社なら、ヤクザの組のほうがまだしもマシではないか」という気がしてくる。そのへんも本作の面白いところ。

    終盤の大逆転劇には、半沢直樹的な痛快さもある。
    サラリーマン小説とノワールの面白さを兼備した、サービス満点なエンタメ。

  • 任侠映画とか血生臭くて観ないが、この本を読んで映画化して欲しいと思ってしまう、魅力ある本でした。
    とにかく面白かった。
    最後の終わり方…続編が読みたくなる。

  • 広告代理店の営業マンの単身赴任先Q支店で、ヤクザの抗争に巻き込まれてしまう。獄中で自首のタイミングを図る組長に、広告マンらしく新聞広告の誤植でメッセージを入れるところなど面白かった。展開は荒唐無稽だけど、コミック的面白さ。

  • 40代、望まぬこと、理不尽に思えることに多々会うけれども、逃げるではなく、渦中に思い切って飛び込めば、活路が見えてくる!
    そんな40おっさんへの応援歌。



  • うだつの上がらない広告代理店の冴えない営業マン・狛江が単身赴任したのは、リストラ対象の北九州支店。
    思わぬトラブルからヤクザに絡まれ、あれよあれよという間に組長の舎弟になることに。気付けば堅気の仕事と土日は組事務所の住み込みに。
    百貨店からピンハネし、更には銀行から金を強請りとることに。
    四十半ばの悲哀の中年サラリーマンのコミカルな北九州物語。
    福澤徹三氏、ハズレなし。面白い。

  • 福澤徹三『Iターン』文春文庫。

    リーマン・ノワールとはまさにピッタリのネーミング。スピード感があり、ユーモラスで、ドキドキハラハラの一気読み小説。

    同族経営の弱小広告代理店の冴えない営業マンの狛江はリストラ対象の北九州支店への赴任を命ぜられる。単身赴任で向かった北九州支店は営業マンの柳と事務員の吉村の二人だけ。リストラ回避のために奔走する狛江は思わぬトラブルからヤクザに絡まれ、大借金を負い、ついには犯罪にも手を染める。果たして狛江の運命や如何に。

  • 「Iターン」
    熱演中。


    ムロツヨシ熱演中のIターン。ムロツヨシのキャラクター的にぴったしだと思っていたところ、原作は結構キツイ。とにかく狛江が不憫なのだ。コメディ要素がもっとあるかと思っていたが(これもムロツヨシが主演だから、と言うバイアス)、親会社も支店も取引先も妻も、ヤクザに絡まれる前段階からかなりキビィ。不憫過ぎる。広告業は潰しが効かないとか考える前に、絶対やめるべきだ。と何度思ったことか。なんじゃ、これは〜!である。


    しかし、本丸の竜崎と岩切である。これはあかん。狛江はよくぞ頑張ったと言える。確かに、狛江は狛江なりに、ちゃんとすべき点があった。でも、怖いのは怖い。と言うか、一番やばいのは土沼印刷。取引先としてやば過ぎる。Q市とはこれほどやばいのかを示している。絶対、辞める笑。


    生き地獄に陥った男のI(自分)ターンとは?を問うテーマが狛江の肩にかかっている。人生後半、どうやって自分を取り戻すか。それを体現している。本来あるべき姿を無視する会社。下っ端にミスを押し付ける、嫌がらせをするお偉い方・上司。そんな理不尽な環境を変えることを諦めてしまっていた自分。


    しかし、それがなんだと反旗を振りかざす狛江。普通はこんな遣り方じゃないはずなのに、ヤクザに絡まれたことで火事場の馬鹿力が発揮されるのだ。めちゃくちゃ絶望的なとこに放り込まれた唯一の功名だろうか。にしても、絶対に嫌だな。

  • ごく普通のさえないサラリーマンが、ひょんなことからヤクザの舎弟になってしまいう、っていう荒唐無稽な設定だけど、面白かった。
    次の展開が気になってしまった。

  • 序盤は、有り得ないほどドンくさい狛江にイライラしたけど。サラリーマンがこんなに異次元の体験を繰り返したら、怖いもん無くなるわ!って、すっかり引き込まれてしまった。

  • 40代のサラリーマンの物語。
    不振にあえぐ会社から左遷され、家では妻と子供に邪魔者扱いと胸が痛くなるくらい可哀想な狛江が現実に立ち向かう姿は、ちょっと勇気が出ました。

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著者プロフィール

福澤 徹三(ふくざわ・てつぞう):1962年、 福岡県生まれ。ホラー、怪談実話、クライムノベル、警察小説など幅広いジャンルの作品を手がける。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞受賞。著書に『黒い百物語』『忌談』『怖の日常』『怪談熱』『S霊園』『廃屋の幽霊』『しにんあそび』『灰色の犬』『群青の魚』『羊の国の「イリヤ」』『そのひと皿にめぐりあうとき』ほか多数。『東京難民』は映画化、『白日の鴉』はテレビドラマ化、『Iターン』『俠(★正字)飯』はテレビドラマ化・コミック化された。

「2023年 『怪を訊く日々 怪談随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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