隻眼の少女 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.21
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本棚登録 : 1268
レビュー : 193
  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838461

作品紹介・あらすじ

山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。


    ・レビュー

    この小説は麻耶作品の中では比較的読後感がライトなものだといえると思う。
    初心者向けの麻耶作品を挙げるなら多くの麻耶ファンはこの『隻眼の少女』と『螢』を挙げるようだが確かに読後の衝撃の度合いとしては入門編的内容かもしれない。
    とはいえ、別段この小説が麻耶作品の特徴の公倍数から外れているわけではない、もちろん『螢』も。麻耶作品としては初心者向けかもしれないがそれはミステリ初心者向きという事にはならず、やはりミステリ初心者で麻耶作品未読ということなら初読は『螢』だろう。
    この『隻眼の少女』はミステリ初心者だと全てを理解するのにやや難解さが残る。

    長編はほとんど強烈なカタストロフによって強烈な印象を残す麻耶雄嵩の小説の中では、『隻眼の少女』は一見するとライトで受け入れやすい本格モノ風の進み方をする。
    ミステリとして非常に読みやすく、キャラクターも狙いすぎな感もあるほどの漫画・アニメ的特徴を備えている。
    ただしここには幾つかの罠が当然仕掛けてある。麻耶雄嵩の作品が普通に落ち着くなんてことはまずあり得ない。

    まずは「意外な展開」だろう。正直ミステリファンからするとこの小説の面白さは「まったくそこじゃない」のだけれど、ミステリファンではない人やたまにしかミステリを読まない人からしたらこの「意外な展開」は本格風の物語の進行から一気に魅力的に惹きつけるポイントだと思う。

    そして次に麻耶特有のアンチミステリ的要素。ミステリファンならおそらくこっちがメインだろう。さあ、今回のテーマはどの枠組みに「問いかける」ものなのか、楽しみにしていいと思う。この点でこの小説は絶大な価値を持っている。

    物語は二部構成だ。
    スガル様という現人神が崇められる村の名家で連続殺人が起こるという、本格推理的な舞台設定で、種田静馬という主人公(語り手)とで探偵の御陵みかげが、探偵と助手として事件に挑むストーリーである。
    そしてその事件が解決してから18年後、非常に印象深い結末に向けて再び殺人事件が起こる。

    テーマは「探偵とその推理」であり、ミステリ読みなら一度は考えることになる、「探偵」についてのある懐疑を物語の軸に据えている。この小説では読者の推理や犯人当てはほとんど意味が無いのであるが、それでも犯人を当てるつもりで本気で突き詰めていくと体感的にミステリの根幹的問題点に行き当たって面白いのかもしれない。

    ブログの方に詳細は書くけれど、この小説は浅く読むか深く読むかで評価が二分しやすい。もちろん「しやすい」というだけで必ずそうなるわけではないけれど、深く読むと興味深いのだが表面的に読むとやや苦しい部分があるのは否めない。
    どうせなら深く読めるよう「後期クイーン的問題」について念頭に置いて読むのがいいと思う。

    本音を言ってしまえばこの小説はここまで非難されるものではないと思っている。トリックが非現実的だとか、犯人当てのトリックありきで書かれただけだとか、色々言われているがよく考えて欲しいのはそんなことくらい作者が解らないはずがないだろうということだ。
    そしてその先にある真意、この小説の意図をしっかり読めば決して前述の非難点が「わざと」書かれているものだと理解できるはずなのだ。そうすれば少なくとも安易に批判的になる人は減って、批判するにしてももっと高尚な評価がされるんじゃないだろうか。

    個人的には、この小説は傑作だと思っている。
    探偵小説に対する非常に重要な問題提起が成されているある意味正当すぎるくらいの「本格」だと思う。
    日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞のダブル受賞はその点が考慮されてのことだろうし、ミステリ読みじゃない人が批判するのはまだしも、ミステリ読みがかなり多く真意に辿り着いていないのが少々哀しい作品かもしれない。

  • 以前にネタバレを見てしまった状態で読み始めたが、興味がそがれることなく読み終えた。ロジックを重きとする推理が特徴的な著者だが、いつもより冴えがないと感じてしまった。その結論付けは無理がないか?と。ミスリードを誘ったと思われる描写がほったらかしだったり、サーカスですか?と突っ込みたくなる離れ技があったり・・・とまあ、色々気になる部分はあるが、読んで損はない作品である。

  • あまりミステリーは読まないが、面白かった。

    ミステリーであるためあまり内容には触れないが、本で読む面白さを感じる構成になっており読み手への意識が非常に高い作品であると感じた。

    ミステリー好きはもちろん、そうでない方も一読されてはいかがか

  • 推理作家協会賞とミステリー大賞をダブル受賞した作品です。
    信州の山深い寒村で起こる猟奇的な殺人事件
    それを解決するためにリードするヒロインは…水干に赤い袴の隻眼の少女!
    キャラ設定が濃過ぎです(笑
    物語は二部構成になっていて、まさかの結末に唖然。。

  • 単行本が出た年のあらゆるミステリ賞で(悪の教典と同じ年?)見かけて気になっていた作品。やっとの文庫化で、読みました。
    何気に麻耶作品の長編は初めてかも…?
    見かけは派手だけど、マジメなミステリ。2代にわたってのドラマチックな展開が大好物でした。しかし、「みかげ」って名前が、某少女マンガの双子エスパー主人公を思い出して、ずっとそのイメージでしたw

  • 麻耶雄嵩作品を読むのはこれで5冊目…だが、本当に同一人物の作品か?と疑うほど、クセがなくスルスル読めた。(ただ慣れただけ?)
    キャラクター設定も相俟って、なんだかライトノベルっぽい感じ。アニメ化したらウケそう。というか、アニメ化を前提に書かれたんじゃないか?と思ってしまうくらい。

    日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞 ダブル受賞作ということだが、どうしてこれが? ……まあ、現場に残された手がかりには本物と偽物があり、どれを拾い上げるかで事件の様相が二転三転するというコンセプトが評価されたのかなあ、とは思うけれど……正直『鴉』の方が好きだなあ。

  • 久々にオチが面白い(funny)な作品に出会った。話の9割は純粋に事件の奇怪さや、主人公みかげの推理力、ストーリーの展開が楽しめる。
    そして最後1割で真相が明かされたときの衝撃といったら!これは怒る人がいても無理はないと思うが、そのfunnyさに私は笑った。種田静馬… 笑。麻耶雄嵩は以前読んだ「蛍」が私的にはイマイチだったのでしばらくご無沙汰していたが、これを機会にまた他の作品を読んでみたいと思う。

  • 書店平積みで、かなり力の入った宣伝だなーと思い、購入。
    やられた。まさかそんな種明かしとは。ということで以降またネタバレ。

    長野の小さな山村で発生した殺人事件の解決に、美少女探偵御陵みかげが大活躍、と思いきや犯人はその上を行き、解決したのかと思えば18年後に再び悪夢が。宣伝文句風に枕詞を付けるとこんな感じですが、すべては巧妙に隠された偽装・ミスリードによる探偵デビュー戦だったとは。
    途中は「ふーん」、って感じでしたが、最後の最後の種明かしは一気読み。まあ、反則な気もしますけどね。

    全体的に現実感のない話だったかなー。まあ、あまりリアリティを求めるものではないのかもしれませんが、出だしから、父親殺して自殺しようとしていた、とか1985年の殺人が少女の手でそうやすやすと行われますかね?光恵さんのあとにそのまま納まるもんかなあ。動機もなあ、ないわけではないが、それでこんなに人殺す?最後も青酸カリでの自殺を許すか?こんな状況のあとで、娘の方は続けられるか?

    種馬と言いながらも、「そのころの私は静馬に夢中だったから」の言葉が本心であったのなら・・・、なんて思ったり。どうなのかなぁ?娘のデビューのために、さらに殺人を重ねるとか、もう狂気だしねぇ。

    殺人を犯した者が罰せられることなく、というのもなんとなく違和感あるし、自殺についてもなんだか軽くて。

    表紙は良くできていると思いました。まさに御陵みかげをイメージしたモデルさんですねえ。

    • 中井イリアさん
      高根 美里さんというモデルさんだそうです。
      高根 美里さんというモデルさんだそうです。
      2013/05/30
  • よくもまぁこんなの思い付くよなぁ。
    凄い作家だ。
    ただただ脱帽。

    陸の孤島みたいな村の、伝統ある名家の中で起こる連続殺人事件。
    おどろおどろしい雰囲気とか、ひとつの事件に対して探偵が饒舌にさまざまな可能性を披露するわりには慎重を期すあまり核心には触れない感じとか、麻耶さんデビュー作の『翼ある闇』に雰囲気が似てると思った。
    それにしても、麻耶作品に登場する探偵のキャラ設定は、現実感に欠ける。
    まぁ、探偵って存在自体が現実味ないから、このくらいはっちゃけてても別に気にならないけど。

    犯人の目星は全くつかないし、そもそも動機から謎だし、もう犯人当ては無理。ただの読者になって読んだ。
    スガル様が犯人だと指摘された時は「なるほど盲点だ」くらいには感心したんだけど(いや多分その瞬間はとても驚いたはずだけど第二波のせいで印象にない)、まさかの探偵が殺人犯だったことが明かされた時には、読者の目、曇りまくりじゃね?ってひっぱたかれたみたいな衝撃でした。
    ここで本投げつけたくなるヒトがいるんですか? 私は(真相が分かってやっと自覚できたんだけど)ずっと部外者である山科が殺されたのが引っ掛かってて(みかげの言う不整合だ)、みかげも何故土が適当にかぶさってたのかとか状況しか問題にせず山科が死んだことはスルーだし、殺された唯一の部外者としてもっと注目すべきじゃないかと思ってたから、真相知って凄く腑に落ちたんだよね。つまり動機に納得したというか。

    確かにオコジョ利用説だけは無理がある。
    腹話術も始めは「バレるやろ!」と思ったけど、そのシーン読み直したら静馬は入口に誘導されてたから、あの距離じゃ分からないかもなと思い直した。

    この作品はいわゆる「後期クイーン的問題」に対する問題提起みたいな意味合いがあるらしいけと、そこまで詳しくないので、ただ麻耶さんまた掟破りの作品世に送り出したな(褒めてる)的な喜びを感じた。

    どなたかがレビューしてた、「でも結局みかげ犯人説を支えてるのは自白だけだから、ばらまかれた手掛かりの拾い方次第では他のヒトが犯人になり得るわけで、実は明確な犯人はわからずじまい」みたいな読みは、正に仰る通りかも知れないけど(自分はそこまで読み込めなかった)、個人的にはみかげ犯人でお仕舞いでイイよ。

    (追記)
    本当に衝撃的な作品は、読み終わったあとも作品世界から抜けられなくてボーっとしちゃうんだけど、この作品は意外にあっさり離れることができた。
    ☆4つ付けたけど、そんなに印象深くない作品だった。

  • この作者の本は初めて読んだ。きっと、この作者はミステリがすごく好きなんだなぁと思う。他の方の感想を読んで「後期クイーン的問題」なる言葉を知った。ミステリの問題提起的な面白さがある。

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著者プロフィール

1969年生まれ。三重県出身。京都大学在学中に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビュー。主な著書に『夏と冬の奏鳴曲』『木製の王子』『貴族探偵対女探偵』などがある。『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞・第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。『さよなら神様』も「2015本格ミステリ・ランキング」1位、第15回本格ミステリ大賞を獲得。

「2018年 『友達以上探偵未満』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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