大人のいない国 (文春文庫)

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レビュー : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838546

作品紹介・あらすじ

かつてなく幼稚化したニッポン!子どもと大人の違いは個人の中に多様性があるかどうかである――。練れた大人の「知」による成熟への道しるべがここに!

感想・レビュー・書評

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  • 内田樹はブレないなあー。

    先見的知についても、邪悪なものの鎮め方についても、今までに読んだ著作で書かれていることが多い。
    けれど、そこに鷲田清一が加わって、より分かりよくなっている感じがする。

    内田樹よりカタカナの羅列が多い鷲田清一。
    上には上がいるのだな。。。

    内容も面白かった!
    価値観が画一化されることで、子供のままで社会人になることが可能なシステムが出来上がった日本。

    間違いを許せなくなった社会だと評した言葉を思い出した。

    クレーマーの多発、ネットの炎上。
    自分ではなく、権利と匿名性に守られた者たちが放つのは「呪」だと内田樹は言う。
    言葉に価値がないから、匿名でいられる。
    その視点に、なるほど、と思わされた。

    この状況を打開するには、無秩序な一角が必要だと言う。

    しかし、私は行き過ぎた秩序は、結局無秩序に結ばれていくのではないかと思う。
    少なくとも、呪に彩られたネット社会はもはや無秩序と化している。

    私たちが見つめる二つの世界の中、無秩序を以て新たな大人は生まれるのだろうか。

  • 私は内田樹が大好き。文章の感じが好き。
    タイトルは大人のいない国(もちろん日本のコトですね)ですが、今の日本がよくないとか、今の若者は…(これはちょっとあるか)というより、もっと本質的に「大人ってこういうことなんじゃないの?」って言いあってる感じです。
    私が感じたのは一面的でなくたっていいんじゃない?多面的である方が大人っぽいよってことですかね。
    生まれてからずーーーっっと変身しないでいなくちゃ、と、窮屈な状態でいなくてもいいらしいし、時系列で同じ事言わなくても本質が合ってればいいってことらしい。
    あと、もっと、自分のコト信じてあげていいってことかなぁと。
    内臓が喋るっていいなぁと。脳の細胞だけじゃなく、体の細胞も言いたいことがあるって感じでしょうか。

  • 小気味良い対談の終章はとくに面白かった。「オメオメ」とか「ノコノコ」といったオノマトペがなぜ伝わるのかだとか、定型に万感をこめて余白をのこすことだとか、「利」でなく「理」で動く政治家がいないことだとか。
    知性あるお二人のやりとりは、行間たっぷりであるのにまとまっている。

  • 鷲田清一と内田樹の大人のいない国を読みました。

    日本は、人が成熟せず、大人にならなくても生きていける国になってしまった。
    クレーマーやモンスターペアレントが横行する国になってしまった、ということが議論されています。

    面白いと思ったのは、内田樹の以下のような主張でした。
    SNSなどでの匿名のメッセージは本人が正しいと思っていてもそれは呪いのメッセージである。
    なぜなら、呪いはその発信源が特定されるとその効果を失うからである。

    表現の自由というのは、他の人が認めようと認めまいと自分は正しい、というメッセージを発信することではない。
    メッセージはその受信者に対して発せられるものであり、受信者に対する「敬意」が必要である。

    そのような呪いのメッセージが充満する世界で、少しでも呪いを中和することができるのは「祝福」のメッセージである。

    少しでも、祝福のメッセージを発信できるようになりたいものだと思ったのでした。

  • 私が好感をもっている二人の論客の共著だ。ちょっと考えてみれば、二人とも思想や哲学に造詣が深いし、拠点も関西だし、年もほぼ同じなんだから交流がないはずない。そんな二人が「大人のいない国」なんて、これまた(自分のことは棚に上げといて)私が常々、日本に対して思っていることに触れた本が出ているなんて。
    いろいろ話題が出ているけど、最も共感したというか身につまされたのは、終章の対談「身体感覚と言葉」で触れていた内田さんいうところの「大人の芸」ってやつ。
    内田さんは、これまで結婚式とかでスピーチするとき、気の利いた面白いことを言ってやろうとか思っていたけど、それが嫌になってきたと。葬式でそんなことをする人はいない。型にはまって、そのなかで万感を出せるようになりたいと言う。鷲田さんも、葬式のときに何といいのか迷う、困るみたいなことを言っている。
    つい最近、伊藤理佐さんが新聞に書いていたエッセイで、知り合い程度の人との会話で面白いことを言おうとしていたが、あたりさわりのない天気の話くらいがいいのだと気づいたみたいなことを書いていたのを読んで以来、ハタと思い、いろんな場で気の利いたことを言おうとしては、結局玉砕……どころか不発に終わることがままあるわが行動パターンの換えどきを思っていたんだけど、この本でさらにその思いが深まった。
    ちなみに、鷲田さんは葬式で「なんと申し上げてよいのやら」としか言えないと釈徹宗さんに話したら、そう言いながら首を縦か横に振ればいいと教えてくれたとか。こんど会葬の機会があったらやってみよう……って想像してみたら、ぜんぜん板についていない気がする。長い時間と経験をかけて磨いていかないとダメそう。

  • この本を読んでの感想…じゃないかも。
    この本は読んでよかったけど。

    私は、大人かなぁってよく思う。

    自分でもびっくりするような小さなことにイライラしてしまったり、八つ当たりではないけれど、人に冷たくするような態度をとってしまったり


    心に余裕がないときに、

    自分の行動、今のは正しかったのかなぁなんて、

    よく考える。わたしは、プライドが高いのかなぁ。


    それで、とても悲しい気持ちになる。


    「あんたはさ、そこにいるだけで目立つわけ。だからやっかみの対象にもなるし、あんたがいくら目立たないようにしようとしたって、そうすればそうするほど目立つのよ。人に気を使うとかそんなことしても無駄って言うかさ、ちょっとでも尻尾見せたら叩かれて大変なことになるのよ。ほら、学校時代にクラスでもいたじゃない?ちょっと浮いた感じの子でさ、『わたしなんかが○○さんに話しかけちゃ悪いかなって思って』みたいに勝手に線引きされちゃうような子。あんたはそのタイプなのよ。自分を持ってるって言うのかもしれない。そういう人とさ、面と向き合うと、自分がいかに何もないかってことを思い知らされるのが怖くて近寄りがたくなっちゃうのよ。」



    っていうようなことを言われたことがある。


    「怖い」とかさ、「オーラあってキャラ立ってるよね。」とかさ、

    なんとなく違う感じを、あたかも私が何かしたかのように被害者のような口ぶりで言われたりさ、


    もう、そういうの、うんざりなんだよって思うんだけど


    自分が何にもないことを思い知らされるような存在って、


    身近にいたら、きっと傷つく。


    わたしは、自分がまるでモンスターのようだと思うことがあるんだけれど(それは自意識過剰という意味で、自意識にとらわれたモンスターという意味だ。)


    わたしはきっと、存在するだけで人を傷つけるような、モンスターなんだろう。

    シザーハンズみたいに、泣いた赤鬼の、赤鬼みたいに、

    人間と仲良くしたいのに、その存在ゆえに、人の心は離れていく。


    どうしたら、人を傷つけずに生きることができるのだろう。


    知らぬ間に人を傷つけていることに傷ついているなんて、人は嗤うだろうか。


    「そんなにいい人で、いたいわけ?」


    わたしは、最近そんなことを言われた。


    「いい人で、いたいわけではないです。ただ、率先して人から嫌われる必要も、ないんじゃないですか?」なんてことを答えたのだけど、


    心の中で、「あぁ、今私の言葉は、吐き出した途端に、上滑りしていった。」と思った。

    「いい人で、いたいのだ。わたしは。」と思った。


    わたしは、嫌われることが、怖いのだと思った。


    それは、「人並み以上にそう思っているのかどうか」は、私には分からない。


    おかしいなぁ。


    「愛されファッション、愛されメイク。」

    いったい誰に愛されたいんだよ


    心の中で突っ込みを入れる私が、


    一番、不特定の誰かに、愛されたいのだ。



    とかなんとかつぶやくほど、私は今、心に澱が溜まっている。

    自分の時間が保てないと、決まってそうなる。


    自分の時間なんてものがなくても、その澱を、見ない振りするか、どこかに捨て去ることのできる人が、

    社会に求められる人なのだろうと、最近よく思う。

    だったら私は、社会にいらない存在なのだと、最近よく思う。




    悲しくて。


    何の話かは忘れちゃったのだけど、家の中にいて、誰かの帰りを待っている、でも外にはモンスターがいるらしくて、誰も家に帰ってこない。次第に、家で待っている人は、誰も帰ってこないので、実は自分がそのモンスターなのではないかと思い始めるというような話が、どっかであった気がする。


    わたしは、人の顔をかぶった、人が近寄りたくもないと思ってしまう、モンスターなんだろう。でも、自分は、人間だと思い込んでいる。人間の振りをすることができていると思い込んでいる。



    わたしは、いったいどこで、道を踏み誤ったのだろう。


    人を傷つけることは、仕方のないことなんだろうか。

    できるだけ、うまくやりたいと思うことは、罪なことなんだろうか。

    それを悲しいことだと思うのは、私の自由だ。

    傷つくことは、自由なのだ。


    でも、他人が、自分のせいで傷つくことは、
    「傷つくことなんてあんたの勝手でしょ。」なんて、思えない。


    できるだけ、謙虚に。
    できるだけ、人を傷つけないように。
    できるだけ、そのことで、自分も傷つかないように。

    そう思いながら、私は今日も、
    人の皮をかぶって、

    人間社会を生きる。

    「終わりなき安穏を受け入れることは、死に等しい」

    そう思い生きるだけで、重たい罪を私は抱えているという自覚を、忘れてはいけないのだ。

    罪を自覚しているにもかかわらず、その軌道修正をする選択を選ばない。

    おそらく私の最大の罪は、そこにある。

  • 内田先生と鷲田先生の対談が、とても読みやすくて納得することばかり! 私自身 精神的に大人になりきれていないなぁと反省しつつ、日本独特の社会構造について考えさせられました。何度も読み直したい1冊。

  • たしかに世の中”子ども”だらけですね。
    僕も含めてですけど。
    それでも機能する社会システムというのは確かに素晴らしい、
    しかし、単一の価値観で階層化された社会というのはつまらんですよね。

    と、どうせなら上の階層から言った方が説得力ありますかね。
    著者のお二人は上の階層の住人ですからね。

  • 祝文庫化

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    「かつてなく幼稚化したニッポン!
    子どもと大人の違いは個人の中に多様性があるかどうかである――。練れた大人の「知」による成熟への道しるべがここに! 」

    プレジデント社のPR(単行本)
    「 いつまでも若くいたいと思うのは勝手だけど、いつまでも子どもでいたいというのはムシがよすぎませんか?

    いま、この国に「本当の大人」はどの程度いるのか? 「私の責任だ」と言える人間はいるのか? 鷲田清一(大阪大学総長、『モードの迷宮』でサントリー学芸賞受賞)と内田樹(神戸女学院大学教授、『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞受賞)──現代日本を代表する論客二人による刺激的な日本社会論。伝説の対談「大人学のすすめ」も収録。発売前から有力書店で話題の書、ついに登場。」

  •  2008年出版の単行本の文庫化。たぶんポイントは、この間に「東北大震災」があったにもかかわらず、お二人が指摘し、危惧する社会の幼稚化は、むしろ進行している印象を受けることです。
     どうなっているのですかね、そう感じられる方はお読みになれば、考えるヒントには、確実になると思います。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202001140000/

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著者プロフィール

1949年京都生まれ。お寺と花街の近くに生まれ、丸刈りの修行僧たちと、艶やかな身なりをした舞妓さんたちとに身近に接し、華麗と質素が反転する様を感じながら育つ。大学に入り、哲学の《二重性》や《両義性》に引き込まれ、哲学の道へ。医療や介護、教育の現場に哲学の思考をつなぐ「臨床哲学」を提唱・探求する、二枚腰で考える哲学者。2007~2011年大阪大学総長。2015~2019年京都市立芸術大学理事長・学長を歴任。せんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。朝日新聞「折々のことば」執筆者。
おもな著書に、『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力』(ちくま学芸文庫、桑原武夫学芸賞)、『「ぐずぐず」の理由』(角川選書、読売文学賞)、『くじけそうな時の臨床哲学クリニック』
(ちくま学芸文庫)、『岐路の前にいる君たちに』(朝日出版社)。

「2020年 『二枚腰のすすめ 鷲田清一の人生案内』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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