田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 543
レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838584

作品紹介・あらすじ

ゆるやかに変わってゆく。私も家族も。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸を騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代はクラスの中でも美貌で注目され、恋も思うままにできた梨々子。
    結婚し、二人の子供が生まれるが、子育ては期待通りにはいかない。
    その上、かつては輝いて見えた夫、達郎は、鬱病に罹り、東京の暮らしから「脱落」する。

    夫とは心が通じていないことにもがき、自分が「誰でもない者」だと突きつけられるつらさが、丁寧に描かれ、読んでいるこちらまで息詰まるようだった。
    「ダロウェイ夫人」を引用しながら、主婦の飢餓感を描いた「巡り合う時間たち」のように。

    その梨々子が、少しずつ変わっていく。
    「自分は一人である」こと、「自分が誰でもない」ことを受け入れるようになっていくのだ。
    それは、本当の意味で大人になったということだと、私は思った。

    梨々子の二十代終わりから三十代終わりまでが描かれる。
    地味な作品とも言えるけれど、実はかなり骨太な成長小説なのではないか、と思っている。

  • 男の子の子供二人、イケメンの旦那の4人家族である程度うらやましがられるような都内の住宅街に暮らしていた主人公。ある日夫がうつ病で会社にはもういけないと言い出し、会社を辞めて一家四人で夫の郷里に引っ越すことになる。
    俗にイメージするイナカよりは栄えている、今の言葉で言えばファスト風土化した何の特色もない地方都市なんだろう。
    ほんの少しなまってて、海とか山とか畑が広がってはいない、本当に普通の地方都市。
    ちょっと人よりキレイであることだけが取り柄の主人公と優秀な長男、成長が遅れてるのか3年生になってもろくな挨拶もできない変わり者の二男と夫との普通の生活が描かれている。

    主人公の葛藤が痛いほどわかります。
    「私」の濃度がどんどん薄くなっていく。年代ごとにぶつっと区切られた章立てだから成り行きの自然さは味わえなかったんだけど、きっと特筆すべきエピソードなんてないうちに「私」というのは薄まっていくものなのだろう。
    それがとても「楽」で「誕生日が楽しみ」というぐらい年齢に感謝するまでの10年。
    三人称で書かれているにも関わらずものすごく一人称的な見え方でしか描かない書き方は遠すぎたり近すぎたりして「私」からうまく見えない部分をうまく補強してくれたように思う。

    自然に私が薄くなる、という過程は露悪的に言えば知らないうちに白髪が増えてるみたいなもんなんだろうなー。

  • なんとか最後まで読んだ。なかなか感情を読み取れなかまた。

  • 私は何者でもなかったし、今でも何者でもない。何者かにならなくちゃいけないなんて、嘘だ。

    心に響きました。自分を精一杯生きていきたい。

  • 日常の何気ないひとときが大切に思える本でした。
    感情表現が独特だと感じました。

  • 30歳から40歳、何者でもない等身大の女性の10年間を2年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。じんわりと胸にしみてゆく、いとおしい「普通の私」の物語。

    この作者の文章は素敵だと思う。さりげなく主人公の思いを描き出し、読者に差し出す。その時々揺れる思いの中で、精いっぱい生きていく主人公に感情移入してしまいそうだ。

  • 鬱の夫の出身の地方都市に引っ込んだ二人の子の母である主人公のくすんだ10年間の定点観測。
    これで食ってけるなら、まあ、と言うしかない人生。

  • 結婚することで環境が変わり、思ってもみなかった方向に人生が進む点については共感できた。

    ただ、なぜこの主人公は流されてしまうのだろう、と思った。夫とぶつかって自分の意見を伝えるより、穏やかにやり過ごすことの方が心地よかったんだろう。
    でもその結果、思っていたのは違う人生に転がって不本意な時間を過ごしてる。誰かのせいにして。とはいえ最終的にその中で幸せを見つけているのだから、主人公にとっては幸せなのかもしれない。

    楽な方に流されるより、主張して自分の行きたい方向にいくタイプのわたしには歯がゆかったけど、こういう幸せもあるのだ、というひとつの物語として読んだ。
    自分の意見を抑えて周りにあわせるって、こんなに苦しいのだとも思いました。しんどかった。

  • 羊と鋼で文章に感銘を受けて読んだけど、正直かなり辛かった。性差もあるのかもしれないけど、こういうことは20歳以前に自分の中で決着してることだし、周りの人にそれを感じることはあっても、題材としてそれを拗らせて悩む母というのは痛ましく、ほとんど感じるものはなかった。読んで鬱陶しいだけだった。

  • 日本中によくありがちな田舎で、特にこれと言ったこともなく普通に暮らしていくとは?の話。
    普通ってなんだろう、私ってなんだろうと考えてしまう。
    誰にでも、ああここ当てはまるかなと思うところがありそう。
    でも主人公がいちいち考えすぎてしまうのが、大して毎日何も考えてない私には辛くて星三つ。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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