田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 409
レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838584

作品紹介・あらすじ

ゆるやかに変わってゆく。私も家族も。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸を騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代はクラスの中でも美貌で注目され、恋も思うままにできた梨々子。
    結婚し、二人の子供が生まれるが、子育ては期待通りにはいかない。
    その上、かつては輝いて見えた夫、達郎は、鬱病に罹り、東京の暮らしから「脱落」する。

    夫とは心が通じていないことにもがき、自分が「誰でもない者」だと突きつけられるつらさが、丁寧に描かれ、読んでいるこちらまで息詰まるようだった。
    「ダロウェイ夫人」を引用しながら、主婦の飢餓感を描いた「巡り合う時間たち」のように。

    その梨々子が、少しずつ変わっていく。
    「自分は一人である」こと、「自分が誰でもない」ことを受け入れるようになっていくのだ。
    それは、本当の意味で大人になったということだと、私は思った。

    梨々子の二十代終わりから三十代終わりまでが描かれる。
    地味な作品とも言えるけれど、実はかなり骨太な成長小説なのではないか、と思っている。

  • 男の子の子供二人、イケメンの旦那の4人家族である程度うらやましがられるような都内の住宅街に暮らしていた主人公。ある日夫がうつ病で会社にはもういけないと言い出し、会社を辞めて一家四人で夫の郷里に引っ越すことになる。
    俗にイメージするイナカよりは栄えている、今の言葉で言えばファスト風土化した何の特色もない地方都市なんだろう。
    ほんの少しなまってて、海とか山とか畑が広がってはいない、本当に普通の地方都市。
    ちょっと人よりキレイであることだけが取り柄の主人公と優秀な長男、成長が遅れてるのか3年生になってもろくな挨拶もできない変わり者の二男と夫との普通の生活が描かれている。

    主人公の葛藤が痛いほどわかります。
    「私」の濃度がどんどん薄くなっていく。年代ごとにぶつっと区切られた章立てだから成り行きの自然さは味わえなかったんだけど、きっと特筆すべきエピソードなんてないうちに「私」というのは薄まっていくものなのだろう。
    それがとても「楽」で「誕生日が楽しみ」というぐらい年齢に感謝するまでの10年。
    三人称で書かれているにも関わらずものすごく一人称的な見え方でしか描かない書き方は遠すぎたり近すぎたりして「私」からうまく見えない部分をうまく補強してくれたように思う。

    自然に私が薄くなる、という過程は露悪的に言えば知らないうちに白髪が増えてるみたいなもんなんだろうなー。

  • 年を取ると楽になる。
    わかるなあ。
    でも、年を取ると苦しくなることもあるよね。

  • 夫のうつ病を契機に梨々子は、彼の故郷である田舎に移り住むことになる。妻として、母として、田舎に馴染めず、葛藤しながら暮らしていく。
    わたしはひとりだ。という梨々子の気づきは深い。田舎に暮らし、地図と人々と全てが身体に染み込んでくるとき、当たり前に、普通の私に、じわじわと幸せを感じるようになる。
    なんか良くわかるなぁ。

  • 登場人物の一人、林マヒナという名前がお洒落

  • リリース:うららさん

    テーマ:温泉

  • 表紙の絵の先入観で、タイトルをよく読んでおらず、"モデル妻"の話かと思って読み始めたらモデルは妻ではなく夫だった…。
    どんなところでも大切な人さえいればいい。
    場所じゃない、人なんだと感じた作品。

  • 解説が辻村深月さんというその一点で手に取った本。
    普段解説読まないのに。
    略して「イナツマ」。
    7年前に解説で「10年後の自分を想像できない」と書いた辻村深月さんは今、どのような思いを胸に生きているのだろうか。
    ーーー
    東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚きーー三十歳から四十歳、「何者でもない」等身大の女性の十年間を二年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。じんわりと胸にしみてゆく、いとおしい「普通の私」の物語。解説・辻村深月

  • 10年って長いようで短い。逆に、あっという間のような気がするけど、実はいろいろあって、みんな少しずつ進んでる。

  • なんとなく、心のどこかが震えている。
    ぞくりとした。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。
代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月に映画公開される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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