田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2013年6月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167838584

作品紹介・あらすじ

ゆるやかに変わってゆく。私も家族も。

田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸を騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

日常の中での心の葛藤や成長を描いた物語は、結婚や子育ての現実に直面する主人公の姿を通じて、普通の主婦としての苦悩や喜びを浮き彫りにします。家族の役割や自分のアイデンティティを模索する中で、主人公は自身...

感想・レビュー・書評

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  • 「妻」になるとは。「家族」になるとは。

    結婚すると「お母さん」「嫁」など、色々な役割を自動的に持ってしまう。そこでいう「普通」。
    「普通」って何。頑張ってなるものじゃない。
    それぞれの姿があっていい。

    「一年一年何かが失われていくようにしか感じられなかった写真の裏で、もしかしたら、一日一日育っていくものもあるのかもしれなかった」
    の文章が、今の私にとっても響きました。

    • へぶたんさん
      コルベットさんの中には、きっと沢山の物が育ってますよ(^^)
      コルベットさんの中には、きっと沢山の物が育ってますよ(^^)
      2024/08/05
    • コルベットさん
      へぶたんさん、なんと!今年一番嬉しい言葉です♪ありがとうございます♡それでは、おやすみなさい(*^^*)
      へぶたんさん、なんと!今年一番嬉しい言葉です♪ありがとうございます♡それでは、おやすみなさい(*^^*)
      2024/08/05
    • へぶたんさん
      私も幸せな気分♪おやすみなさ〜い♪
      私も幸せな気分♪おやすみなさ〜い♪
      2024/08/05
  • さて、いきなりですが、あなたに問題を出します。
    クリックしていただいたこのレビューの書名からこの本の主人公の職業はなんだと思いますか?

    えっ?あんまりよく見なかったけど、確か『モデル』かなぁ?と思ったあなたに、ブッブーとハズレのブザーが鳴ります。

    この作品のタイトルは、
    「田舎『の』紳士服店『の』モデル『の』妻」
    なのです。一見、『モデルが主人公の小説』と誤解してしまうこの作品。実は私も妻の『職業=モデル』という先入観で読みはじめてしまったため、途中まで、いつ彼女がモデルにスカウトされるのだろうと、かなり混乱してしまいました。

    宮下さんは、どうして、こんなにくどくてピンとこない書名をつけたのか、と疑問に思わざるをえない分かりづらい書名のこの作品。宮下さんの作品の中でもかなり独特な立ち位置を占めていると感じました。宮下さんって、こんな攻めた書き方をする人なんだ、と驚くその展開。敢えて誤解を恐れずに書けば、宮下奈都が湊かなえになった、というくらいに人の心の闇をジワジワと描いていくのには驚きました。間違いなくこの作品は、異端の宮下作品ここにあり、的作品。『私の書いたものの中で最も好き嫌いの分かれる小説だ』と宮下さんも認識されているこの作品。でも不思議と他の作品のやさしい筆致に慣れ親しんだ私がハマってしまった、とても不思議な魅力を持ったそんな作品でした。

    『竜胆(りんどう)達郎は結婚して四年になる、梨々子の夫だ。名前も顔も中身も四年前と同じはずなのに、何かがすっかり変わってしまった』と転出証明書を見ながら過去を振り返るのは主人公・竜胆梨々子。『あの晩』に、達郎が急に言い出した一言『会社、辞めてもいいかな』。『辞めてどうするの?』と問う梨々子に『帰ろうと思ってる。いなか』と答える達郎。『田舎に帰るという夫の言葉はとりあえず放置した』という梨々子。でも翌週『達郎がうつだと診断されて帰ってきた』という展開。『一緒に暮らしているのに気づいてあげられなかった負い目』に狼狽する梨々子。『田舎はどこかね』、梨々子が新卒で勤めた会社でたまたま販売担当の役員に聞かれた一言。『君の顔がなんだか懐かしいんだがね。きっとご両親のどちらかの出自が僕の田舎とつながってるんじゃないか』という役員から『後日、「田舎つながり」というタイトルの社内メールを受け取った』梨々子。『同郷の後輩を紹介したい』と紹介されたのが『海外営業部のホープ、竜胆達郎だった』、そして、『つきあいはじめて二年半で結婚の挨拶に出向いた』という『達郎の田舎は、北陸の一番目立たない県の県庁所在地だった』。そんな達郎の田舎に幼い子供二人と旅立つことになった梨々子。『社宅でなければ到底住めないような街に住んで、住んでいるだけで何かに選ばれているような気分になれて、評判のいい幼稚園に子供を通わせている』生活に別れを告げることに戸惑う梨々子。そんな時『お餞別。日記帳なの』と幼稚園のママ友から十年分書ける日記帳をもらった梨々子。『嫌なことがあったときは、書くとすっきりするから。ぜんぶ吐き出しちゃうといい』という言葉にどこか引っかかりを感じる梨々子。そんな梨々子が初めて書いた日記『いまいましいこと、この上なし。かすり』。『それ以上の説明はつけなかった。今、自分が泣くに泣けない乾いた場所にいることを一年後の自分に思い出されたくない』という、そんな梨々子の新しい生活が始まりました。

    竜胆一家が新しい生活を初める段を起点に2年おきに10年先まで6つの章に分けて、梨々子の内面に焦点を当てながら展開するこの作品。第一章で4歳と1歳だった二人の息子の成長が各章で垣間見れるのに比して、専業主婦として、マンションの一室に篭りきりの平凡で鬱屈した日々を送る梨々子の内面の描写がこれでもかというように登場します。全体を通して梨々子がずっと第一人称であるために、その辛さ、苦しさが読者にまるで自身のことであるかのように伝わってくるとても息苦しい読書が続きました。それは、例えば、
    『考えないようにしよう。今は何も考えないようにしよう。寝室から歩人の泣き出す声が聞こえた。つまらないことを考えるより、今はただ授乳する動物になろう』という考えることを先延ばしにしたい、今は何も考えたくない気持ちを表す表現。
    『誰にも頼れず感謝もされず、子供たちを育て上げなければならない。これからもまだこんなしんどい日々が続くのなら、がんばる自信なんかない。私なんてなんにもできない母親だ。』
    という子育てにも自信をなくし、それがずっと続いていく絶望感を表す表現。
    『生きるのに意味などない。さびしいわけでもむなしいわけでもなく。竜胆梨々子が生きるのは、ほんの何人かの、梨々子がいなくなったら悲しむ人のためだけだ。』という自分が生きている世界の狭さと世の中から隔絶されている孤独感を表す表現など。
    圧倒的な閉塞感、圧倒的な孤独感、そして圧倒的な絶望感が章が変わっても繰り返し繰り返し続いていく展開。この作品の結末に光が見えなかったら読者である自分自身の気持ちがとてももたないと感じさせる、宮下さんの流石の内面描写は、圧巻だと思いました。

    一見、勘違いを生みそうになる書名の一方で、この作品の主人公はあくまで田舎に暮らす二児の母親・梨々子です。そう、『モデル「の」妻・梨々子』『歩人「の」ママ・梨々子』、誰かの付属物のように呼ばれて初めて認識される人格、主役になれない人格である梨々子。そんな立ち位置を表してのこの書名。そんな主役でない人物が主人公のこの作品。宮下さんの作品では何も起こらない日常を描いたものが多いですが、この作品で描かれる世界は、『東京に住む四人家族が夫の田舎に引っ越した後の十年間の日常を描きました。以上』という何ら変哲のないどこにでもいそうな平凡な家族の物語です。怪獣に襲われない一方で、ヒーローが助けてくれるわけでもない、どこにでもある平凡な日常。でもそんな変わらない日常の中でも10年という年月の中で子供たちは少しずつ成長していきます。梨々子もそんな彼らを毎日学校に送り出し、迎えるという日常を繰り返します。そして、梨々子は、かつて夢見た理想とする人生を諦め、現実の人生を受け入れていきます。その時、その瞬間にはゆるやかな変化であっても10年という時間が変えていく環境、そして人の心。『結局は、人だ。人と交わることで変わっていく私は、顔のある人との間に生きていく』と穏やかな気持ちになっていく梨々子。深く苦しい闇を彷徨った先、しあわせに続く未来が見える結末に、『がんばれよ』と声をかけてあげたくなりました。

    宮下さんの作品はこの作品で12冊目ですが、他の作品のどれにも似ていない、とても異端な作品だと思いました。この作品が偶然にも初めての宮下さんという方の中には、自分とは合わないと判断される可能性があり、それが一番もったいない、と思います。逆にこの作品で宮下さんが好きになった方は、他の作品を読むとあまりの雰囲気感の違いに驚くとは思いますが、感情の揺れ、細やかな心の動きを丁寧に描いていく筆致は他の作品でも共通です。そんなこの作品を読まれた方の評価は恐らく中間の△が少なくて○か×のどちらかに割れるのではないかと思います。そんな読者の一人である私の評価は◎。宮下さんの作品の本流では決してないと思いますが、とても強いインパクトを受けた、読み応え十分の作品でした。

  • これは、普通の主婦の、十年間の心の記録である。
    夫のうつ病が原因で、家族四人で、東京から北陸の夫の田舎へ引っ越すことになった梨々子。
    梨々子の心の動きが実に細かいところまで、淡々と描かれていた。
    息子が通っていた幼稚園のママ友とも遠く離れ、社宅から田舎のマンション暮らしへ。
    私は本当は東京で暮らしたかったの?王道って何なのか?
    自問自答が延々と続いていく。
    けれど、読んでいくうちに、年をとるにつれて次第に楽になっていく梨々子が感じられ、光が射し始める。

    人生なんて、目的のない編み物。
    私はひとりだ。私だけがひとりなんじゃない。みんなひとりなんだ。
    不思議なほど勇気をもらえる、愛おしい物語だった。

  • 「生きるのに意味などない。さびしいわけでもむなしいわけでもなく、ぱーんとそれが、わかる。竜胆梨々子が生きるのは、ほんの何人かの、梨々子がいなくなったら悲しむ人のためだけだ。」
    「持ち時間が尽きるまで手ぶらでせっせと暇をつぶして過ごすのだ。」
    梨々子が最後にたどり着く境地に、普通の主婦として共感。それだけでいい、と思うと、人生が気楽になる気がする。
    普通に過ごす毎日に、ふいに「他に何もいらないと思える充実感」に包まれる、そんな幸せに辿り着けるなら、確かに人生他に何がいるだろう。

    でも子育ての難しさは考えさせられた。子供が運動会の徒競走で1人だけ走らなかったり、学校で1番好きな時間は下校だと言ったり、給食を全く食べなかったりしたら、なんて言ったらいいか全然わからない。
    夫と気持ちが通じ合わないのもつらいことだし、でも完璧に以心伝心の夫婦なんて存在しないし、と考えていくと、普通の楽な主婦なんてこの世にいない、当たり前のように難しいことを乗り越えて、みんな偉いとも思った。

  • 竜胆梨々子は夫のうつ病を機に夫の実家のある田舎に引っ越します。
    30歳から10年間の梨々子が描かれています。
    慣れない田舎暮らしで戸惑ったり夫にがっかりしたり子どもたちのことで悩んだりしますが梨々子は諦めたり受け入れたりしながら変化していきます。
    派手な展開はないけれど梨々子の感情が丁寧に描かれていて良かったです。

  • 私は、わりと長いタイトルの本が気になる。それが、この本を手に取った理由。

    理想的な人との結婚、出産からの夫のうつ発覚、辞職、田舎での新しい生活。思ってもみなかったことを受け入れて、頑張る梨々子。なんとか馴染もうと頑張るけれども、夫とは気持ちがすれ違う。子どもの成長で気になることがあっても、相談できる人がいない。隣人は愛想笑いもしない。以前のママ友からは自慢のメールが届く。そんななかで頑張る梨々子の心情が、2年ごとのできごととともに綴られていた。

    梨々子は、時がたつにつれ、場所にも慣れ、人にも慣れ、見方が変わって受け入れられることが増えていく。普通ってなに?と思う気持ちは、私もいつも思うことだ。そんななかで、自分のことを思いどおりにされたくないのと同様、夫も子ども達もそうなんだということに気づいた。「私はひとりだ。夫もひとりだ。でも一瞬ぱちっとつながった。これでじゅうぶんだと思っている。」こんなふうに思えるようになった梨々子の考え方、いいなと思った。

    ただ、途中で芸能人と親しくなるのは、ご愛敬かな。

    人生は、本当にどうなるか誰にもわからない。そしてなんの保証もない。でもそれは仕方がないことで、なんとかやっていこうと誰もが頑張って生活していると思う。始めは苦手だと思う人と、話すうちに打ち解けたり、いつのまにか助けられたり。人のことを一瞬で判断するのは、もったいないことをしているのかもしれない。

    夫の田舎の洋品店のモデルは、10年で卒業。物語もひとくぎり。欲を言えば、夫はどういう思いでこの10年を過ごしていたのかを、もっと知りたかった。

  • 読む前はタイトルを見て、どんな作品かいまいち想像できなかったけど、読み終わってからはすごくしっくりくるタイトル。「イナツマ」ね。解説は辻村深月さんでびっくり。好きな作家さんの共演……!
    主人公の梨々子は、子供2人と素敵な夫と暮らす、東京のキラキラ奥さんだったが、夫のうつ病をきっかけに田舎へ移住する。
    「田舎」「何もない」など、物語の半分以上は雨が降りそうなどんよりした曇り空。
    でも、最後には雲の隙間から光がさす。梨々子が「田舎の紳士服店のモデルの妻」と胸を張って名乗れるくらいにはどっしりして、どっこい生きている。
    梨々子はなかなかおもしろい「普通」の女だ。

  • 中途半端な田舎町暮らし中の私がいうのもなんだけど このまんまの日常に 包まれている。梨々子さんの揺らぐ気持ち 手に取るようにわかる。思い通りにならないことばかりだけど お茶をのむテーブルはある。ささいなことを肯定して納得して やりすごして 月日は重なっていくものだ。結局 自分は何者でもないんだけど どっこい生きている!それで十分だ。町の人が優しくて 羨ましい。読後、窓の外が 優しく見えた。

  • この旦那…ため息でる
    でもこれが結婚出産の現実なのか…
    リリコちゃんを私が毎日褒めてあげたくなる
    そして人間は一人…この言葉沁みる

  • 自分も育休中で、子どもを育て始めたばかりです。今は子どもと向き合い、過ごすだけの毎日。仕事もせず、どこにも行かず、自分は一体何なのだろうと思っていました。

    けれども、この本の中に答えのひとつが書いてあり、気持ちが少し軽くなり、自分のことも認めてもらえたようで気持ちも温かくなりました。

    P.225 この町がどこにでもあるように、私もどこにでもいる。私にも替えが利く。もしも替えが利かないとしたら、あの子たちの母として、達郎の妻としての竜胆梨々子だけだ。

    • へぶたんさん
      tocotocoさん、初めまして♪

      「母」になると、今までの自分を見失いがちですよね…
      私はというと今は子育て終盤で、20年以上前?!を振...
      tocotocoさん、初めまして♪

      「母」になると、今までの自分を見失いがちですよね…
      私はというと今は子育て終盤で、20年以上前?!を振り返れば1人では出来ない沢山の経験を、「母」として一緒にさせてもらったなあ、などと懐かしく思います。自分の子供がいなかったら出来なかったこと。辛いこともあったけど(^^;)
      今しか出来ない体験、楽しんでくださいね〜*\(^o^)/*
      2024/10/28
    • tocotocoさん
      へぶたんさん、初めまして!
      コメントありがとうございます(o^^o)

      自分が母になり、(一時かもですが)失ったものもありますが、その代わり...
      へぶたんさん、初めまして!
      コメントありがとうございます(o^^o)

      自分が母になり、(一時かもですが)失ったものもありますが、その代わりに得られたものもあり、わからなかったことも知ることが出来ました!

      長い子育て、たくさんの苦労もあることだと思います。。
      かけがえのない子どもの、わたしもかけがえの無い母なんだとこの作品で改めてわかりました(o^^o)
      これから楽しく過ごしていければいいなと思います…!
      2024/10/28
  • その声があまりにもまっすぐで、梨々子の胸はじんわりと熱くなった。何かとてもいいものを聞いたような心持ちがした。

  • 普通の定義は色々あるが、まあ普通じゃない。でも、この世界観は好きだなぁ...。夫や子の視点でのモノローグがもう少しあっても良かったか? 無いものねだりでしょうか...。加藤木麻莉さんのイラストも素敵です! 辻村さんの解説は、うん、流石だ!

  • 作家の宮下奈都さんは、「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 2016年本屋大賞」を取っている。
    本屋大賞になった本って、けっこう面白いんだよね。
    という事で、大賞を取った本(『羊と鋼の森』)ではないけど、同じ作家さんの作品を読んでみたいなと思って。

    で、これは(私にとって)大当たり。
    もちろん、好き嫌いは個人差があるので、これをつまらないと思う人もたくさんいると思う。
    ストーリー展開が大きくある訳じゃなく、一人の女性の10年間を淡々とつづっているだけなので、ページをめくるのがワクワクしてたまらないという訳でもない。
    何も無いのだが、私はこの主人公に凄く共感してしまった。

    鬱になってしまった夫。
    それがもとで、会社をやめ都会から田舎に引っ越すことになる。
    その田舎の、洋服屋のチラシのモデルになる時もある夫。
    すなわち、ある程度カッコいいわけだ。
    息子二人も、人見知りでコミュニケーションが取れないとか、発達障害があるとか。
    小学校に何度も呼び出されても、強い信念をもっている主人公。

    最初は、なんで私がこんな田舎で生活しなければならないの?
    こんなハズじゃなかったとか、いろいろ揺れるんだけど、様々なちょっとした出来事の積み重ねでだんだんとその生活に溶け込んでいき、幸せを感じるようになる。
    読了感が、なかなか良かったです。

    この作家さんの作品は、他にも読んでみたいなと思いました。
    なかなか、そういう作品に出合えないですけどね。

  • 結婚し家庭を持ち、子どもが産まれたら…
    まっとうな人生を送っていると安心できるのか?と思っていた。疑問にも感じていた。
    結婚しても子どもが産まれても、私は一人でしかなく、何者でもない。
    家庭を持ち頑張っている人、未婚で頑張っている人、どちらの背中もそっと押してくれるような小説でした。

  • 学生時代はクラスの中でも美貌で注目され、恋も思うままにできた梨々子。
    結婚し、二人の子供が生まれるが、子育ては期待通りにはいかない。
    その上、かつては輝いて見えた夫、達郎は、鬱病に罹り、東京の暮らしから「脱落」する。

    夫とは心が通じていないことにもがき、自分が「誰でもない者」だと突きつけられるつらさが、丁寧に描かれ、読んでいるこちらまで息詰まるようだった。
    「ダロウェイ夫人」を引用しながら、主婦の飢餓感を描いた「巡り合う時間たち」のように。

    その梨々子が、少しずつ変わっていく。
    「自分は一人である」こと、「自分が誰でもない」ことを受け入れるようになっていくのだ。
    それは、本当の意味で大人になったということだと、私は思った。

    梨々子の二十代終わりから三十代終わりまでが描かれる。
    地味な作品とも言えるけれど、実はかなり骨太な成長小説なのではないか、と思っている。

  • 突然田舎に引っ越した鬱を発症した夫と二児の母の10年の物語。淡々としていて、それでも悩んでいる心の葛藤、独白を読まされている感じ。矢理自己肯定しようとしてもがく気持ちが淡々綴られていて抑揚がない。読み手が主婦だと共感できるのだろうか。
    読んでいて興味を惹かれる場面は少しはあったと思います。

  • 東京から北陸の何もないところへ移住した家族、妻目線の10年間の話
    こどもたちへの期待や普通、
    夫との関係、
    私自身の悩みも重なって共感できた
    長男がピアノが好きになってそのまま頑張ってくれたら嬉しい!!
    運動会やボランティアを通じての人々の交流も温かい

  • 独特のテンポと空気感、意外な物語の展開で、他にはない魅力を感じました。
    劇的すぎる展開があったり、激昂したり、衝突したり、決定的なことが起こったり。
    そういうことではなく、柔く強く適応してのびのびと生きる梨々子が良い。
    こんな生き方もあるんだ、と見本を見せてもらえた気持ち。

    田舎で暮らしたことなくて、良い噂を聞かない最近はあまりいいイメージがなかったけれど、気の持ちようとか飛び込んでみてやってみるとか、入ってみないとわからないものなのかもと思った。

  • そのしんどさはよく覚えてる。
    知らない街で子育てをし、頼れる人は思ったよりも頼りない。私は踏ん張らなくちゃ、頑張らなくちゃ。でなきゃ一気に崩れてしまう。この家から私がいなくなったら、きっと一気に崩れてしまうと思った。

    解説の辻村深月さんの「普通の私の話」がよくわかります。少女漫画のような生活はありゃしない。普通だけど、日々の生活なんて普通ではない。精一杯努力しなくてはと、きっと誰でもなく、私は私自身を高く吊り上げて、そうやって危ういな精神状態にぎりぎり攻めてしまい、一気に崩れたのは家庭ではなく自分自身だった。

    今は、もう大丈夫。

    物語の終盤の主人公のように、幸せは誰かに評価されることではなく自分の肌で感じるものだと思いました。

  • 男の子の子供二人、イケメンの旦那の4人家族である程度うらやましがられるような都内の住宅街に暮らしていた主人公。ある日夫がうつ病で会社にはもういけないと言い出し、会社を辞めて一家四人で夫の郷里に引っ越すことになる。
    俗にイメージするイナカよりは栄えている、今の言葉で言えばファスト風土化した何の特色もない地方都市なんだろう。
    ほんの少しなまってて、海とか山とか畑が広がってはいない、本当に普通の地方都市。
    ちょっと人よりキレイであることだけが取り柄の主人公と優秀な長男、成長が遅れてるのか3年生になってもろくな挨拶もできない変わり者の二男と夫との普通の生活が描かれている。

    主人公の葛藤が痛いほどわかります。
    「私」の濃度がどんどん薄くなっていく。年代ごとにぶつっと区切られた章立てだから成り行きの自然さは味わえなかったんだけど、きっと特筆すべきエピソードなんてないうちに「私」というのは薄まっていくものなのだろう。
    それがとても「楽」で「誕生日が楽しみ」というぐらい年齢に感謝するまでの10年。
    三人称で書かれているにも関わらずものすごく一人称的な見え方でしか描かない書き方は遠すぎたり近すぎたりして「私」からうまく見えない部分をうまく補強してくれたように思う。

    自然に私が薄くなる、という過程は露悪的に言えば知らないうちに白髪が増えてるみたいなもんなんだろうなー。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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