月と蟹 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.36
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本棚登録 : 1798
レビュー : 215
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838669

作品紹介・あらすじ

あの夏、海辺の町で少年は大人になる涙を知った孤独な子ども達が始めた願い事遊びはやがて切実な思いを帯びた儀式めいたものに――深い余韻が残る少年小説の傑作。直木賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 第144回直木賞受賞作品。
    鎌倉を舞台に小学5年生の二人の少年と少女、それを取り巻く大人達の物語。大人になるにはまだ遠く、子供でいるには無邪気になれず、お腹の中にモヤモヤしたものを抱えていく少年。そんな思春期に突入しかけた少年の心の描写が上手い。最後の方の臨場感は素晴らしかった。ラストシーンも良い終わり方だった。

  • 久々の道尾秀介、直木賞を受賞作ということで攻めた奇想天外な物語性は抑えられ、狙いにいっているのではと訝しく思っていたけど、しっかりとグロテスクな表現が随所に散りばめられていて、あぁこれこれという感覚。
    疑心、嫉妬、裏切り、暴力、精神的に蝕まれる感情がごちゃ混ぜに幼い主人公を襲う、容赦なく破壊する。何とも爽やかでない展開が続いていくけど、最終的にはみんな痛みを抱きしめて少し大人になってる気がする。
    しかし、ヤドカリの描写はほんと食欲がなくなる、もちろん褒め言葉です。

  • 2010年直木賞受賞作品。
    少年時代の親や友達への感情の変化や抗えない環境の取り巻きを如実に描いた作品。純文学のような世界観で主人公の哀しみが主軸にある。今なら大人の事情もよくわかる。

  • 今まで読んだ道尾さんの中で1番好きかも。
    子供目線の話って苦手だったけど、子供にも大人にもどっちも共感。

  •  物語は、慎一と春也を中心に小さな世界でのろのろと進む。子供の頃の記憶は、人それぞれ違うだろうが、世間を知らないゆえに、自ら作ったルールに囚われていたことを思い出させる。

     良かれと思ってしたことが、思いがけない事件に繋がってしまったり、相手を思いやる気持ちは、実は自分を落ち着かせるための衝動だと知る。少年たちは、自らの生い立ちを振り返り、過ちを繰り返しながら、自らの姿を水面に映そうとしているのかもしれない。

     ソロモンの犬のようにミスリードを誘うようなギミックもなく、龍神の雨のようにある人が変貌することもなく、本当に良い作品でした。

     普通より少しだけ重い運命を背負った小学生の、小さな世界の中に広がる人間らしい気持ちと、抑えきれない衝動を描くことによって、私たちが忘れてしまった感受性が鋭かった時代を思い出させてくれます。

     自分や友達の妄想と現実の境目が曖昧だったあの頃、私たちは厭なものに錘を付け心の底に沈める方法を本能的に知っていた。この本を読むと、あの頃の苦い思い出も残された人生に活かすことができると思えるのです。

     道尾秀介さんは、誰よりも自分が少年だった頃のことを鮮明におぼている作家さんなのではないだろうか?自分自身や友達が、その時に感じていたことを、行動から嗅ぎ取っていたのではないだろうか?とろけるように甘く切ない記憶、ざらざらした苦い記憶、夫々の記憶の味が舌に蘇るたびに新しい作品が生まれるのかもしれない。

  • 子供は遊びの天才だが、
    ストレート(純粋)で残酷な一面が。。

  • 子供が持つ無邪気さと残酷さ、そして純粋さが危うくバランスを崩しそうな、いや、
    少し崩れたものを子供ならではの稚拙さで繕おうとも足掻いているような。
    それが成長ってものなんだろうか。上手く繕えたから大人になれたんだろうか?歪ん
    で繕ったから大人になったんだろうか。
    『大人になるって難しいね』

  • 本作は確か直木賞受賞作だったと思いますが、個人的には純文ぽく感じられ、ちょっと感情移入しづらかったです。

    蟹とガン(どちらも英語でCancer)とかけているところや、その象徴と思われるヤドカリを生贄にする行為がとても記号的。加えて、それぞれの登場人物が内向的で人に話しづらい何かを抱えている(あとがきで「危うさ」と表現されているもの)ところに、本作はそれらを読み解かないと真価がわからない作品のように思います。

    そのような行為を読者に強いる点に、娯楽性よりも国語の授業のような要素を強く感じ、それが純文ぽさを連想させるのかな、と。

    結末のスッキリしなさもあって、正直あまり楽しめませんでした。知力の低い私的には、もっとわかりやすいエンタメ作品の方が合っているのだと思います。

  • 『腹ん中に妙なもの育てるなよ』この忠告は肝に銘じよう。

  • 最後の1ページを読み終えた瞬間、私は涙を流しました。慎一、春也、鳴海から見る大人への描写が、私の遠い記憶の中に埋め込まれたものと通ずるものがあったからです。きめ細かい描写が、私をこの物語の魅力に誘ってくれました。

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著者プロフィール

1975年東京生まれ。04年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。『月と蟹』で第144回直木賞受賞。

「2019年 『カエルの小指 a murder of crows』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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