月と蟹 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2013年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784167838669

作品紹介・あらすじ

あの夏、海辺の町で少年は大人になる涙を知った孤独な子ども達が始めた願い事遊びはやがて切実な思いを帯びた儀式めいたものに――深い余韻が残る少年小説の傑作。直木賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 少年期の純粋さと哀しみと残虐性が子供達を寡黙にさせるているかのようで、暗然とした小説でした。
    父を病気で亡くし、海の事故で片足を失った祖父と母親と暮らす少年。貧しく父親からの暴力を隠し通す友人。少年の祖父との事故で母親を亡くした少女。三人は、いつしか親しくなり、ヤドカリを神様に見立てた秘密の儀式に、願いを込めるようになる。
    それぞれの子供達から見た大人達が描かれる。大人達への寂しさからの不満が彼らの気持ちを支配していく。気持ちを表現できないのではなく、耐えている姿が痛々しい。抑えきれなくなった気持ちをぎりぎりのところで親達が受け取る。大人になるには、まだ早すぎたんですね。

    直木賞受賞作として読み始めたら、鎌倉の建長寺が登場してきて、そうだ、建長寺へ行こうと思い立ち半僧坊まで登ってきました。なかなかハードなのでお子様は気をつけましょう。鎌倉の街や相模湾まで見れます。お天気が良かったので富士山も見えました。

    • なおなおさん
      おびのりさん、こんばんは。はじめまして。
      フォローといいねをいつもありがとうございます。

      建長寺と言えば"けんちん汁"を思い浮かべる食いし...
      おびのりさん、こんばんは。はじめまして。
      フォローといいねをいつもありがとうございます。

      建長寺と言えば"けんちん汁"を思い浮かべる食いしん坊な私です^^;
      半僧坊…行ったことあったかな……。昔、建長寺から高い所に登った記憶があるのですが、そこが半僧坊だったのか…(・-・`)
      私も鎌倉に行きたくなりました。
      鶴岡八幡宮(特に舞殿)、明月院、大仏、長谷寺、江ノ電がお気に入りです。
      本と関係のない話になってごめんなさい。
      これからもよろしくお願いします。
      2022/11/10
    • おびのりさん
      なおなおさん、コメントありがとうございます。いつも、いいねありがとうございます。

      そうです。けんちん汁です!
      最近、鎌倉詳しくなりたくて、...
      なおなおさん、コメントありがとうございます。いつも、いいねありがとうございます。

      そうです。けんちん汁です!
      最近、鎌倉詳しくなりたくて、時々行きます。
      お寺の宝庫なので、困りますよね。
      私も鶴岡八幡宮と長谷寺好きです。明月院もいいですよね。北鎌倉から鎌倉へ歩くのも良し。そして、鎌倉文学館。住みたいぐらい。
      はいどうぞよろしくお願いします。
      2022/11/10
  • 消失感を抱えた少年が奇妙な儀式を友達と始める。そこから段々と少年に内包されている自我が変化していき、悲しみや寂しさが溢れてそれは暴力性や非倫理的な思いや行動へとつながっていく。
    話の中に流れる描写が少年たちの行動や心情を生々しく描いている。その少年少女たちも家族を失っていたり、家族に暴力を振るわれていたりと家庭の愛をどこか感じられていない心にすっぽりと穴があるような人たちである。それが交わり交流していく中で改めて主人公に訪れる妬みや嫉妬、それらがいつか主人公の人格もどこか変えてしまう。
    どうして人生は上手くいかないのだろうか、どうして大人になるのは難しいのか、そんな誰しもが抱える気持ちをこの本の読みに捧げながら、溶かしながら読み進めていくと、腹の中にドロドロとした様々な感情が読み手の中に生まれると思う。

  • 最後までミステリと信じて読み進めてしまったが、これは……青春小説じゃん!
    しかもとびっきり暗い。

    友人と秘密の場所を見つけ、ヤドカリを神と崇めるごっこ遊びが、やがて実生活とリンクして暗い切実な願掛けとなってゆく。

    事故の加害者家族と被害者家族の子供。親から虐待を受けている子供など、それぞれの事情を抱えながらも親しくなって行く主人公達。
    親友と感情を共有する熱い思い。しかしそこに女の子が入る事で微妙にすれ違って行く。
    まだ名付けることも知らなかった嫉妬、独占欲などの感情に振り回されて主人公はぐじゃぐじゃになってゆく。

    子供時代ってこんなにもセンシティブだったか?
    意外にも鋭く大人の嘘を見抜き、かと言って全体を見る事が出来ずに思い込みだけが暴走して行く。
    圧倒的な筆力で小説世界に取り込まれて行くが、その世界はグロテスクで痛々しい。
    読後感はあまり良くない。

  • 鎌倉市にほど近い海辺の街で、父を亡くした小学五年の少年(利根愼一)と父親から虐待されている友人(富永春也)、母親を水難事故で亡くした同級の少女(葉山鳴海)の三人が絡み合う、〝子供時代の終わり〟に立つ思春期の不安と葛藤に喘ぎ、動揺する姿を描いた直木賞受賞作品。 愼一の母(純江)と祖父(昭三)、鳴海の父親ら゙大人゙たちの背負った哀しみの心情は、「終章」の胸せまるエンディングで一気に炸裂、昇華する。

  • 道尾秀介さん直木賞受賞作品。読友さんの感想を読み、口渇感でたまらず購入。終始、少年・少女が暗闇の中で生きる様を描いていて辛い内容だった。転落事故、病死、虐待。慎一、春也、鳴海がそれらに翻弄される。行きつく先は「ヤドカミ様」、残酷にヤドカリを炙り殺す。解説にもあるが「危うい少年時代」。自分の感情表現がうまくできないため、自分が支配できるモノへの転嫁。この少年時期はとても繊細で、何をするのか分からない時期。ラストは、慎一が鳴海とサヨナラができたが、慎一にとって暗闇を浄化するイベントだったのかもしれない。

  • 著者の記念すべき直木賞受賞作品。子供の気持ちを描く事にこれより前までの作品では苦労されていたのだろうに。ずっと読んできた読者からしても、不遇な少年少女のミステリで受賞したことは、作風に対する評価でもあると納得できたのではないだろうか。この先もあっと驚かすミステリを期待してしまう。

  • 筆者名からたまにはまたホラーでも読もう、と選んだ本が、ホラーじゃなかったよ、というのが第一印象。で、暗い。が、引きずり込まれるような暗さはないので、読後感は意外とすっきりだった。いびつな家庭の子供達の歪んだ集まり。危うい場面はいくつもあるが、意外とフツーに戻っていく。おそらくこういった環境下で育つ現実の子達も、お話の中の子達もフツーの人になるのだろう。人はそれだけ振れ幅があるということか、子供は強いからなのだろうか。

  • 再読。なんとなく好きな作品だった憶えはあるものの内容は例の如く忘れており、でも読み終えて今回も好きであることを再確認。私は道尾さんオタクですが、中でもこういった少年(少女)の苦悩が鮮やかに描かれている系統の作品が最も好きです。(他に「向日葵〜」「龍神の雨」など。)道尾さんの才能ここに極まれり。今作も主人公の小学生慎一の感情の機微が、序盤〜中盤までムズムズ、ヒリヒリと繊細で引き込まれます。さらに後半284Pでがらりと変化した心境は鬼気迫るものがあり、そのあとはさらに息がつけない展開。ほんと天才。

  • 子供の持つ、純粋がゆえの心の奥に巣くう闇の部分が静かに描かれていて、はやくここから脱したい、そう思ってしまうほどの不安に心が苛まれました。少年ゆえの苦悩、人生を生き様々な経験を積んだ祖父の心の内。大人である昭三が子供である慎一に対して対等に、一人の人間として向き合う姿・言葉がとても響きました。数十年後、大人になった慎一は、いつか自分の子供の頃のあの体験や気持ちを、どんな想いとともに思い出すのでしょうか。

  • 2022.03 図書館借本
    *
    簡単には言い表せない物語な気がする。小学生の純粋さが凄い。春也は何で手紙を入れてたんだろう、慎一のことが羨ましかったからなのか、いまいち春也という人物が掴めない。鳴海は大人になりたがってる女の子という感じがする。慎一はいちばん小学生っぽいけど、クライマックスが凄かった。
    物語的にはつらつらと日常を書かれてるのかと思いきやクライマックスの疾走感が衝撃だった。実はおじいちゃんがキーマンなようでキーマンではない気がした。でもタイトルはどちらもおじいちゃんの言葉がキーになってる。慎一の思想はおじいちゃんの言葉が大きいということかな。

  • 第144回直木賞受賞作品。
    鎌倉を舞台に小学5年生の二人の少年と少女、それを取り巻く大人達の物語。大人になるにはまだ遠く、子供でいるには無邪気になれず、お腹の中にモヤモヤしたものを抱えていく少年。そんな思春期に突入しかけた少年の心の描写が上手い。最後の方の臨場感は素晴らしかった。ラストシーンも良い終わり方だった。

  • 何も知らずに読み始めたので、いつ殺人事件が起こるんだろう、、と思ってたら読み終わった
    読後感がなんとも言えない、叫び散らしたい
    小学校高学年ともなれば思考は大人、でも経験値の浅さからか物事の判断力は子供、みたいなちぐはぐさが、なんとも懐かしいような、恥ずかしいような気持ちになった
    あと爺ちゃん好き

  • 子どもたちの世界が舞台だが
    おじいちゃんの「腹の中で変なもの育てすぎるなよ」が見事に話をシビアにしてく感じがして、のどかだけど緊張感のあるいい話でした

  • 道尾秀介さんの直木賞受賞作ですが、テイストとしては、芥川賞寄りの作品でした。
    率直に言えば暗い話で、エンタメ作品ではない気がします。
    闇直木賞か、暗黒直木賞の受賞作だと言われたら、あぁなるほどねと思いそうです。
    主人公たちのモヤモヤがモヤ過ぎて、読みながら息苦しかったです。
    私には文章が良いのが救いでした。

  • 小学生慎一のなんとも言えない感情がじわじわくる。
    鎌倉の情景やなにげない放課後の過ごし方。山を登るときの木々の色や風の唸り。海でブラックホール仕掛けたり、ヤドカリ見つけていたずら。

    描写が国語の教科書に出てきそう。
    この時の岩の声は何を表わしているでしょう。この時のこの行動で、主人公のこういう気持ちが上手く表現されています。
    とか。
    国語が苦手だったから、乏しい読解力だと間違った解釈してそうだし、よさも存分に分かっていないのかもしれない。
    でも勉強とは関係なく、今の年齢、状況で自由に読むことができることに幸せを感じる。描写が、情景をありありと思い巡らせてくれた。

    祖父や母に理解されていないと感じるもどかしさ。
    春也との関係や鳴海とのやり取り。
    懐かしさとともに、もやもやもした。

  •  両親の離婚、クラスに馴染めず不登校、母が出会い系で別の男を探してた、わたしの中学生時代の何もかも嫌になった時期を思い出した。
     1つ嫌なことがあると、他のことも上手くいかないって思ってどんどんネガティブ思考になって抜け出せないんだよなぁ。周りの些細な表情や言葉も敏感に感じ取っちゃって生きづらかったあの頃は...。

    「何か、粘着質の音が聞こえた。鳴海の父親の、微かな声。同じくらい微かな、純江の声。そしてふたたび静かになった。その静けさの中に、先ほどと同じような粘着質の音が、また聞こえた」(P222)

    慎一が車にて、母と鳴海の父の密会現場に潜むシーン。口付けを「粘着質の音」と表現してるのが印象的。母が他の男と性的行為をしてるのを想像するだけでもゾッとするのに、慎一は現場に居合わせちゃうんだからすごい度胸。俺だったらその後、まともに母と顔合わせられないかも。

    「鳴海は昼寝から覚めたように、しばし春也に顔を向けていたが、さっと恥ずかしそうに身体を硬くし、それから相手に笑いかけた。前髪で隠れた額は軽く汗ばみ、耳たぶが熱ってピンク色になっていた」(P259)

     慎一、春也、鳴海の三角関係は台詞を使わず表情や仕草だけで、照れ、嫉妬、ショックなどを表現してるのが上手い。鳴海と春也の距離がだんだん近づき、慎一が可哀想になってきて切ない。

    「『ね』って、逃げてく奴をロープか何かで捕まえとるみたいやろ。このほら、縦の棒が人やとして、首んとこからぐるぐる巻いて、ぎゅっと掴んで」(P34)

     春也が「ね」を書きまくる場面が狂気を感じで怖い。他にもヤドカリを躊躇なく潰したり「あ、こいつサイコパスや...」って序盤から感じた。慎一宛のイタズラ手紙はなんとなく「春也が書いたんだろうなー」と予想してたので、慎一が春也が書いたのだと見破るシーンの驚きは少なかった。

     最後鳴海の車に乗ってたのは春也なのかヤドカリ神なのか気になる。でも父親を結局殺せなかった春也が慎一のためとはいえ、鳴海の父を殺そうとするかなぁ。モヤモヤして気になる。

  • これはきっと純文学ですよね?

    主人公慎一の心理描写が凄い。鎌倉の情景も目に浮かんでくるようです。

    道尾秀介の描く少年はぶっ飛んでいることが多いですが笑この主人公もあと一歩のところであちら側に足を踏み入れていましたね。


    どちらかというと芥川賞っぽい感じの作品でした。

  • 子供時代に経験する葛藤、不満、周りの環境や人付き合いでの悩みなどの、あの時言葉にできなかった気持ちの色合いを、色々な局面で描いていて、共感できる部分もあった。
    どこか気味の悪い面も見え隠れしていたけれど、逆に少年時代の無意識の残酷さが、そこに見れる気がした。

  • 祖父の家に越してきた小学生の慎一。
    その1年後父親が病死、
    祖父と母との3人暮らしになるが
    未だに友達が出来ないのは
    祖父が乗っていた漁船が事故を起こし
    クラスメイトの女子・鳴海の母親が亡くなった事に一因が…。

    慎一の唯一の友達は事情を知らない
    同じ転校生の春也で
    春也もまた複雑な事情を抱えていた…。

    やがて慎一と春也はヤドカリを神様に見立て
    願いを叶える遊びをするようになる……が?


    学校では浮いてて友達は春也だけ
    友達が"いる"だけでも救われる思いがある一方
    外れ者だけでつるんでる感覚もあり
    そして母親に男の影
    父親が亡くなって1年…
    そんなに早く父親の事が忘れられるのか?の思いと
    父親が生きていたらの思いに
    気になる女子の見つめる先…



    なんとも言えない読後感、
    慎一の孤独、やるせなさ、暗くて息苦しい……

    久しぶりに鬱々とした話を読んだわ、
    でもこれはこれで悪くはない。

  • 道尾秀介さんが好きな友からのお勧め。

    読んでいるこちらが苦しくなるような灰色の閉塞感が終始漂っていて、
    「今のタイミングで読むのしんどいかも…」なんて思っていたが、鳴海が慎一家に遊びに来た辺りから目が離せなくなった。

    子供の無邪気な残酷さ、後ろめたさや不安からくる、下腹の辺りがムズムズするあの感覚。
    心理描写が見事で、子供の頃抱いた事のある仄暗い感情を思い出した。

    道尾さんの作品はどれも一気読みしてしまうなぁ。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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