月と蟹 (文春文庫 み 38-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838669

感想・レビュー・書評

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  • 少年期の純粋さと哀しみと残虐性が子供達を寡黙にさせるているかのようで、暗然とした小説でした。
    父を病気で亡くし、海の事故で片足を失った祖父と母親と暮らす少年。貧しく父親からの暴力を隠し通す友人。少年の祖父との事故で母親を亡くした少女。三人は、いつしか親しくなり、ヤドカリを神様に見立てた秘密の儀式に、願いを込めるようになる。
    それぞれの子供達から見た大人達が描かれる。大人達への寂しさからの不満が彼らの気持ちを支配していく。気持ちを表現できないのではなく、耐えている姿が痛々しい。抑えきれなくなった気持ちをぎりぎりのところで親達が受け取る。大人になるには、まだ早すぎたんですね。

    直木賞受賞作として読み始めたら、鎌倉の建長寺が登場してきて、そうだ、建長寺へ行こうと思い立ち半僧坊まで登ってきました。なかなかハードなのでお子様は気をつけましょう。鎌倉の街や相模湾まで見れます。お天気が良かったので富士山も見えました。

    • なおなおさん
      おびのりさん、こんばんは。はじめまして。
      フォローといいねをいつもありがとうございます。

      建長寺と言えば"けんちん汁"を思い浮かべる食いし...
      おびのりさん、こんばんは。はじめまして。
      フォローといいねをいつもありがとうございます。

      建長寺と言えば"けんちん汁"を思い浮かべる食いしん坊な私です^^;
      半僧坊…行ったことあったかな……。昔、建長寺から高い所に登った記憶があるのですが、そこが半僧坊だったのか…(・-・`)
      私も鎌倉に行きたくなりました。
      鶴岡八幡宮(特に舞殿)、明月院、大仏、長谷寺、江ノ電がお気に入りです。
      本と関係のない話になってごめんなさい。
      これからもよろしくお願いします。
      2022/11/10
    • おびのりさん
      なおなおさん、コメントありがとうございます。いつも、いいねありがとうございます。

      そうです。けんちん汁です!
      最近、鎌倉詳しくなりたくて、...
      なおなおさん、コメントありがとうございます。いつも、いいねありがとうございます。

      そうです。けんちん汁です!
      最近、鎌倉詳しくなりたくて、時々行きます。
      お寺の宝庫なので、困りますよね。
      私も鶴岡八幡宮と長谷寺好きです。明月院もいいですよね。北鎌倉から鎌倉へ歩くのも良し。そして、鎌倉文学館。住みたいぐらい。
      はいどうぞよろしくお願いします。
      2022/11/10
  • 子供の持つ、純粋がゆえの心の奥に巣くう闇の部分が静かに描かれていて、はやくここから脱したい、そう思ってしまうほどの不安に心が苛まれました。少年ゆえの苦悩、人生を生き様々な経験を積んだ祖父の心の内。大人である昭三が子供である慎一に対して対等に、一人の人間として向き合う姿・言葉がとても響きました。数十年後、大人になった慎一は、いつか自分の子供の頃のあの体験や気持ちを、どんな想いとともに思い出すのでしょうか。

  • 子供時代に経験する葛藤、不満、周りの環境や人付き合いでの悩みなどの、あの時言葉にできなかった気持ちの色合いを、色々な局面で描いていて、共感できる部分もあった。
    どこか気味の悪い面も見え隠れしていたけれど、逆に少年時代の無意識の残酷さが、そこに見れる気がした。

  •  両親の離婚、クラスに馴染めず不登校、母が出会い系で別の男を探してた、わたしの中学生時代の何もかも嫌になった時期を思い出した。
     1つ嫌なことがあると、他のことも上手くいかないって思ってどんどんネガティブ思考になって抜け出せないんだよなぁ。周りの些細な表情や言葉も敏感に感じ取っちゃって生きづらかったあの頃は...。

    「何か、粘着質の音が聞こえた。鳴海の父親の、微かな声。同じくらい微かな、純江の声。そしてふたたび静かになった。その静けさの中に、先ほどと同じような粘着質の音が、また聞こえた」(P222)

    慎一が車にて、母と鳴海の父の密会現場に潜むシーン。口付けを「粘着質の音」と表現してるのが印象的。母が他の男と性的行為をしてるのを想像するだけでもゾッとするのに、慎一は現場に居合わせちゃうんだからすごい度胸。俺だったらその後、まともに母と顔合わせられないかも。

    「鳴海は昼寝から覚めたように、しばし春也に顔を向けていたが、さっと恥ずかしそうに身体を硬くし、それから相手に笑いかけた。前髪で隠れた額は軽く汗ばみ、耳たぶが熱ってピンク色になっていた」(P259)

     慎一、春也、鳴海の三角関係は台詞を使わず表情や仕草だけで、照れ、嫉妬、ショックなどを表現してるのが上手い。鳴海と春也の距離がだんだん近づき、慎一が可哀想になってきて切ない。

    「『ね』って、逃げてく奴をロープか何かで捕まえとるみたいやろ。このほら、縦の棒が人やとして、首んとこからぐるぐる巻いて、ぎゅっと掴んで」(P34)

     春也が「ね」を書きまくる場面が狂気を感じで怖い。他にもヤドカリを躊躇なく潰したり「あ、こいつサイコパスや...」って序盤から感じた。慎一宛のイタズラ手紙はなんとなく「春也が書いたんだろうなー」と予想してたので、慎一が春也が書いたのだと見破るシーンの驚きは少なかった。

     最後鳴海の車に乗ってたのは春也なのかヤドカリ神なのか気になる。でも父親を結局殺せなかった春也が慎一のためとはいえ、鳴海の父を殺そうとするかなぁ。モヤモヤして気になる。

  • 子どもって純粋で残酷で。そして少し大きくなって周りが見え出した頃には寂しさや処理できない感情に戸惑ってしまう。作者は僕が子どもだったころの気持ちを知ってるのか?と思うくらい自分の苦い思い出がよみがえる・・・。

  • 直木賞受賞作と聞いて買った一冊。

    少年少女の成長の話だった。

    前半部分の、秘密基地みたいなのを作ったり、生き物を捕まえたり、隠れてタバコ吸ってみたり生き物を無意味な殺生など、自分が昔やった事と似た事が書かれていて共感できる事がたくさんあった。

    しかし後半の人の不幸を願い実行に移すのはさすがにやっていない。

    少年の心理や行動が細かく書かれていてよくわかった。

    全体通してなんか暗い感じがする話だったが、少年少女の成長が感じられる小説でした。

  • 重たいお話でした。子供たちの感情が痛い。

  • 繰り返し読んだ。

  • 女の子が大人というキャラクターが何か好きになれない

    こどもの残酷さが1冊まるまる書かれている

    他の道尾秀介作品の方が好きかな

  • 2010年直木賞受賞作品。
    少年時代の親や友達への感情の変化や抗えない環境の取り巻きを如実に描いた作品。純文学のような世界観で主人公の哀しみが主軸にある。今なら大人の事情もよくわかる。

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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