こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)

著者 :
  • 文藝春秋
4.28
  • (66)
  • (53)
  • (18)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 681
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838706

作品紹介・あらすじ

ボランティアの現場、そこは「戦場」だった――自分のことを自分でできない生き方には、尊厳がないのだろうか? 介護・福祉の現場で読み継がれる傑作ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 映画を観たあと、この本を手に取った。順番としては、それが正しい読み方であると、読んだ後に思った。そして、既観映画の人は是非、本書を読んで欲しいと思う。

    ノンフィクションであるから、当然映画脚本の通りではないのは明らかだ。そうではなくて、(1)映画は様々な登場人物の名前からして違うし(鹿野以外)、第一「バナナ事件」は、当事者の性別も場所も経過も全て映画と違う。(2)映画に描かれていない多くの「事実」があるのは当然としても、映画では描き切れていない重要なテーマもある。(3)しかし、そうであっても、鹿野は正に大泉洋が演じたままのように思えるし、高畑充希のような女性は、結局ここに出てくるたくさんのボランティアの一面を代表していたと思う。だから、映画を観て本書を読むと、とてもイメージが湧いて面白い。

    いい映画だったと思う。でも、原作はもっといいのである。

    原作は、福祉も医療も門外漢だったフリーライターの著者が、筋ジストロフィー患者を取材したノンフィクションである。患者が自立生活する「シカノ邸」に入った約2年間で見聞きしたことをまとめた。

    多くのボランティアたちが鹿野のワガママにも付き合い、体位交換をし、間違えれば命の危険もある痰吸引もし、買物代行もする。その中で彼らをは、何を考えてボランティアをするのか。それは映画でも答えにならない答えを描いていたが、原作は豊かにそれをほぼ550ページかけて描き尽くす。現在の私は福祉ボランティアこそしていないが、「金にならない労働」は週のうち多時間を割いているので、このような「様々なボランティアたち」を見て自分を見つめるきっかけになった。読者はきっと、1人は自分に似たボランティアを見つけることが出来るだろう。

    鹿野は、思ったことをほとんど表に出す稀有な患者だった。それでも、死ぬ直前、最期に見せた鹿野のあまりにも優しく冷静な判断(著者の推測)は、この本を読んだぐらいで「筋ジス患者のホントの気持ち」なんて安易にわかったと思っちゃいけない。という気にさせる。

    だからこそ、文庫化に当たって大幅に改稿追記された注釈や、中段部分の70ー90年代の鹿野の人生は、きちんと踏まえておくべきものだろう。筋ジス患者が自立生活するまでに、いかに多くの闘いがあったかを知るべきだ。実際、映画では原作内容を半分ぐらいしか使っていない。もっと面白いエピソードはたくさんある。この私でさえ、もう一本ぐらい脚本がかけそうだ。その時の題名はもう決まっている。「こんな夜更けにバナナかよ 青春篇」。
    2019年1月11日読了

  • 今年も残すところあとわずかだけど、間違いなく、今年一番の読んでよかった本。

    生きるってなんだ。
    障害ってなんだ。
    自立ってなんだ。
    介護ってなんだ。
    人が人を支えるってどういうことなんだ。

    そういう根本的な問題にグイグイ突っ込んでこちらに問いかけてくる。

    この物語は筋ジストロフィーを患った鹿野さん、彼とともに生きた家族とボランティアの記録だが、もちろん単純な記録だけに終わらない。
    鹿野さんのことをメインに据えた内容ではあるが、鹿野さんと接する上でボランティアメンバーが感じた戸惑いや葛藤、怒り、悲しみ、喜び、不安、幸福感、対立、和解、後悔…そういう人間関係の生々しいところがありのまま語られている。

    頭の片隅で、
    両親を介護することになったら…
    義両親を介護することになったら…
    私が介護されることになったら…
    と色々なパターンを思い浮かべ、そのときは自分はどう考えどう動けばいいのだろう?と想像しながら読み進めた。

    たとえ誰を介護することになっても、介護されることになっても、結局はどこまで行っても人と人の付き合いである、という視点は私の中でそれらの問に対する大きなヒントになった。
    他にもたくさんのヒントが散りばめられていて、本に付けた付箋がすごい量に…笑

    著者の渡辺一史さんが新刊「なぜ人と人は支え合うのか (ちくまプリマー新書)」も出されたのでこちらも読んでみたい。

    • ありが亭めんべいさん
      わたしは単なるミーハーです が、同じ本を読んでも感じる部分が違うことを教えられる日々です♪ なので、好みのジャンルと異なる本を求める時に勝手...
      わたしは単なるミーハーです が、同じ本を読んでも感じる部分が違うことを教えられる日々です♪ なので、好みのジャンルと異なる本を求める時に勝手に参考にさせて頂いております♪
      2019/04/24
    • tsukiyomi777さん
      ありが亭めんべいさん

      こんにちは!いいねとコメントまで頂いて、ありがとうございます(^^*)

      私のようなものの本棚を参考にだなん...
      ありが亭めんべいさん

      こんにちは!いいねとコメントまで頂いて、ありがとうございます(^^*)

      私のようなものの本棚を参考にだなんて恐縮です(^^;)でも嬉しいです!
      私は最近、本は読めても感想を書くまで時間がとれず…ですが、ありが亭めんべいさんをはじめフォローさせて頂いている方のレビューは楽しく拝見しております(*^^*)

      〉同じ本を読んでも感じる部分が違う

      本当にそうですね、それを手軽に知れるのもこのブクログの面白さだと感じています(^^*)
      また、本棚にお邪魔させて頂きますね!
      これからもどうぞよろしくお願いいたします(*^^*)
      2019/04/26
  • 過剰でもなく無関心でもなく、自然に手を貸す、が出来たらいいのにと思う。
    障害のある人だろうと妊婦だろうと老人だろうと体調が悪い人だろうと。
    生活の中でどう思うか感じるか、いたるところにある「立場」に思いを巡らせた。

  • 映画が良かったのでオリジナルも読んでみようと思いました。
    結果、映画よりも面白かった、正確に言うなら映画とは全く趣の異なる面白さがあった。
    鹿野さんの生きざまを描いた(切り取った)のが映画だとしたら、鹿野さんを含んだ周囲の生きざまを描いたのが本著であろう。

    鹿野さん(と周りのボランティアさん)を通じて、人間がより良く生きるためには制度や法律、インフラ…といったマクロ的で外部的な問題から、自己の存在を見つめようとする、マズローの自己実現理論を想起させるような哲学的で内部的な問題まで、全方位的に「生きる意味」提起している。

    この本がすばらしいのは、鹿野さんだけでなく様々な人生を背負ったボランティアさんのひととなりまで描いていることである。山田太一さんがいうように「読む人の心に届く」ことである。
    奇しくも、本編にて鹿野さんのことをボランティアは「尊師」といってからかい半分に呼称している時期があるが(笑)、ボラさんたちが鹿野さんの介助ボランティア活動にハマっていくさまは、かの「オウム信者」と似た構造かもしれない(失礼・笑)
    ただ、障害者介助関係者だけでなく、生きる意味や人間関係、他者との関係などに悩んでる人は読んでみてもいいかもしれない。

    最後のほうに出てくる、斉藤大介さんの(453ページ以降)達観的な?一連のくだりは私の中で着地点として答えは出でいるような気がする。

    障害者だろうと健常者だろうと「生きる」のは大変で苦悩だらけだけど、それ以上でもそれ以下でもない、そんな域まで行きたいとおもう。

  • 鹿野さんに会ってみたかったなあ。障害者の問題は、自分の老後問題なんだ。この本たくさんの人の目に触れますように。それにしても、ボランティアに頼らさるを得ない鹿野さんの不安を取り除く制度はどうしたら良いか。全部プロ化は非現実的なので。。明日の介護の問題でもある。

  • 障害者ノンフィクションとして読むと、乙武洋匡が『五体不満足』で(その後、著者自身も後悔する)明るく元気な障害者像を打ち出してから 5年後の 2003年、障害者の聖化に真っ向から NO を叩き付けた快作だが、しかし、それはあまりにも浅い読み方だろう。この本は、障害者と介助ボランティアの話ではなく、人間達と人間達の話なのだ。「生きるとは何か」「人と関わるとか何か」を異常に濃密な人間関係の中で考え続けた著者の苦悩録なのだ。筋ジストロフィー患者シカノの圧倒的な存在感を背景に一気に読ませる。タイトルも秀逸。

  • 映画で話題になり、原作本があることを知り読んでみた。

    筋ジストロフィーという難病と文字通り闘っている鹿野さんの生活とそれを支えながら、逆に鹿野さんに人生を変えられ、ある意味で支えられているボランティアさん達の実録(少し前の話だが)。

    近頃は、普通の人間が普通に生きるのだって、何かと窮屈で閉塞を感じる。便利ではあるが、ネットによる情報網が張り巡らされ人の目や耳が気になるからだろうか。
    まだ、その恩恵も悪影響もなかった頃の話だが、鹿野さんのパワーが凄い。鹿野さんによって変わった人たちの話も面白い。2019.3.31

  • こんな夜更けにバナナかよ。
    読後、この一文にすべてが集約されているんだなと感じました。
    こんな強い人ばかりではないと思いますが、主張し合って築かれる関係性っていいなと思いました。食わず嫌いはもったいない。

  • もう何年も前にタイトルの面白さと装丁のセンスに惹かれて本棚に積んでおいたのだが、最近大泉洋と高畑充希主演の映画を見て改めて本を手にした。映画も面白かったけどこの本の方が映画の何十倍も面白かった!
    鹿野という強烈なキャラクターを持つ筋ジス患者の主人公と、その自立生活をサポートするボランティアたちとの人間ドラマ。
    長年にわたって親の介護をしている自分としては、大概の人間は先天的な障碍者か後天的な障碍者の2種類に括られるので障碍は他人事ではないと強く思っているが、
    この障碍者という既成概念を打ち砕くような鹿野の強烈な生き様に多くのことを考えさせられた。

  • 映画を観るなら映画を観た後に原作を
    読んだ方がしっくりくる。
    やっぱり原作に勝るものはないと思った1作。

    看護師である自分自身すごく考えさせられた。
    ほっこり、明るい気持ちになれる1作です。

全79件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

渡辺一史(わたなべ かずふみ)
1968年、愛知県名古屋市生まれのフリーライター、ノンフィクション作家。大阪府豊中市育ち、北海道札幌市在住。北海道大学理Ⅱ系に入学し、キャンパス雑誌編集にのめり込んだことから、1991年9月北海道大学文学部行動科学科中退。
2003年、『こんな夜更けにバナナかよ』で第25回講談社ノンフィクション賞、第35回大宅壮一ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。2012年、『北の無人駅から』で第16回林白言文学賞、第12回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、第34回サントリー学芸賞をそれぞれ受賞。
2018年、大泉洋主演・前田哲監督で『こんな夜更けにバナナかよ』が実写映画化される。

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)のその他の作品

渡辺一史の作品

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)を本棚に登録しているひと

ツイートする