空色バトン (文春文庫 さ 61-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838904

作品紹介・あらすじ

黒歴史!? いやいや、青春ってそんなものだろ!おかんの人生が突然終了した。そして紐解かれた25年前の同人誌。少女期の想いは時を場所を超えて繋がってゆく――青春連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • かなりメゲていて、本を読むのもツライ。でも意地で何か読みたくて、薄さに釣られて購入しました。書籍販売のサイトで「230頁以下の本」なんてカテゴリーがあれば私は飛びつくのに(笑)。

    そんな不純な動機で読みはじめた本は、気持ちも乗らないから、2話目までは惰性で。ところが3話目でやっと連作であることに気づき(裏表紙を見ればわかることだったのに)、しかもすごくいい話じゃあないかと思いはじめ、前に戻って登場人物を確かめながら読みました。

    40歳になった男女が中学生だった頃。一緒に漫画を描いていた彼女たちの当時のこと。そして彼女たちの息子や娘の今。

    すごくメゲていたけれど、もしかするとここに出てくる中学生たちの悩みのほうが大きいかもしれない。だって彼女たちはまだ15年かそこらしか生きていない。経験値が少ない分、いろんなことを大きく感じているだろう彼女たち。だったら今の私の悩みなんて、たいしたことない気がしてきました。

    読み終わって本を閉じたとき、鼻の奥がツンとして、ありがとうと思った。読書はやはり素晴らしい。

  • 男子高校生のセイヤのおかんが突然亡くなります。セイヤは、通夜のやってきた3人にのおばさんたちに、中学の時におかんと一緒に作ったという漫画同人誌を渡されます。その漫画同人誌がバトンとなって25年の時をつなぎます。
    セイヤのおかんショーコの早すぎる死は悲しい出来事ですが、富士山が見える静岡の地方で、何気ない大切な日々がキラキラ輝いて見えるあたたかいお話です。

  • 初めての作家さん。
    突然亡くなった母の同人誌をバトンに、関わった人物たち目線で物語が繋がれる。読み始めは何だか読みづらく感じられ、これは私にはあまり合わないかもー。と思いつつ流し読み程度に読んでしまっていたら、後半、あれ、面白いぞ!と本の魅力に気づき最終話は結構楽しめた。こんなことなら、初めからもっとちゃんと読んでおけばよかったな。と思いつつも再読はしない。笑
    でも、この作家さんの他の本はまた読んでみたいなと思う。

  • 中高生向けかと
    思って侮ってたら、意外にいけた。
    借りて読んだので、機会があればまた読みたい。
    タイトル通り、各章のつながりが素敵

  • 田舎の小都市ののんきな高3だったセイヤ。ある日突然母親が亡くなり、単身赴任中の父親・小学生の妹の3人が残された。行きがかり上セイヤが家事を担当することになり、母親の残したダンボール箱を開けてみると、どうやら母親が中学生の時に友人たちと作ったらしいマンガの冊子が出てきた。その執筆者たちは、どうやら母親の葬式の時に来た3人の叔母さんたちのうようだ。母親の昭和な少女マンガに驚きつつも、母のたどった道を自分のこれからと重ね合わせてみたりするのだった。

    セイヤの見つけたマンガ誌を軸に、セイヤの母親とその友人たちや、友人の子どもたちのオムニバスになっている。
    最後には、そのうちの一人の娘とセイヤが偶然出会って、なんとなく相手に交換を抱くところで終わる。

    あらすじだけ書くと、乙女チックなお話を想像してしまうが、昭和のバブル期の母親世代の中学生と、現代の中学生がシンクロしていて、面白かった。

  • ある日母親が急死した。地味な母親としか思っていなかったが、通夜に母の友人三人組が、中学時代に一緒に作ったという漫画同人誌を持って現れた。母にも青春時代があったことへの新鮮な驚きがあった。

    この本はその母と一緒に漫画同人誌を作った友人達の古今を描いた連作です。なかなか爽やかで懐かしくて良い本なのに、冒頭一話目の母親の死に対して、兄妹が全く悲しんでいなくて凄く違和感が有りました。不安や憐憫や怒りなどがあっても良いのではないか?それさえちゃんと描いてくれればと残念の一言です。

  • 【黒歴史!? いやいや、青春ってそんなものだろ!】おかんの人生が突然終了した。そして紐解かれた25年前の同人誌。少女期の想いは時を場所を超えて繋がってゆく――青春連作短篇集。

  • さわやかで良い話(^o^)

  • 読み終わってみると、表紙カバーの絵の4人がよくわかった。小学校高学年以来のお絵かき仲間は、中学3年の文化祭のときに1冊だけマンガ同人誌をつくった。その頃の4人なのだろう。4人のうち、誰が誰かも、読み終わるとよくわかる。

    巻頭は、高校3年の望月セイヤの語りから始まる。オレが学校帰りの電車で同級生のまっつんとタイガくんとエロしり取りなんかやってたときにおかんが倒れ、死んでしまった。おかん・望月ショーコ、40歳。旧姓・樹村。

    お通夜では、小中の同級生だったという三人組のおばさんがお悔やみを言いにやってきた。学園もののキャラで言ったら「学級委員」と「ギャグ要員」と「女王様」がパーティー組んで来ちゃいましたという感じ。そのおばさんたちから副葬品として渡されたのが、25年前の白黒コピーのマンガ同人誌。表紙には空の絵。

    おやつ片手にマンガを読んでる姿なら見たことあったけど、おかんがマンガを描いてた? 葬儀がすんだあと、おかんの年代ものの私物から、その同人誌が出てきた。おかんは本名で乙女チックな内容の少女マンガを描いていた。夢中になっていたおかんの中学時代がちょっと見える気がした。

    うつりかわる空の色をつけたとおぼしき6つの章は、それぞれ語り手がかわる。

    次の章(青の女王)では、セイヤ言うところの「女王様」、陣ノ内アキが語り手となって、アキが転校してきてショーコたちのお絵かき仲間に加わる小学生時代が描かれる。その次(茜色図鑑)は、「学級委員」の吉野カオリが、お通夜で出てきた同人誌をつくった中学生時代を語る。

    続く章(ぼくのパーマネントイエロー)では、同人誌をづくりにたまたま加わった同級生の男子・芹沢ユウイチが、中学当時は不登校だった平岡にあてた手紙のようなかたちで、都内の大学生になった芹沢がある日のコンパで「ギャグ要員」の森川ヒロミと偶然再会したもようが述べられる。

    そして、亡くなったショーコが、短大を卒業してすぐ結婚し二人の子をもつ母になった頃のことが、「パステル・ストーリー」の章で、陣ノ内が開く個展開催にあわせて、かつての仲間4人が集まった日を中心に書かれる。乙女チックなショーコが、子どもの頃から胸のうちの王国に住まわせていた小さな女の子リリィと対話しながら、今も過ごしていることもわかる。

    最後の章(マゼンタでいこう)は、吉野カオリの娘・14歳のミクが語り手で、両親の離婚によって、都内から、母の実家へ引っ越す前後が綴られる。母の実家で荷物の片づけをしていて、空の絵が描かれた同人誌をみつける。祖母に訊くと、母はかつて親に隠れてマンガを読んだり描いたりしていて「プロになるんだ」と言ってたらしい。

    同人誌にあった写真入りの町の地図を片手に町巡りに出かけたミクはケータイを落とし、それを拾って届けてくれたのが、母の死後、ジャージにエプロンつけて犬の散歩をしていたセイヤだった。

    高校3年のバカっぽい男子を糸口に、こういう展開になるとは思わなかったけど、連作うまいなーと思った。「青の女王」の章のアキの語り口が「てよだわ」言葉というのか、「~~だわ」「~~ね」「~~なの」「~~よ」のオンパレードで、ここがちょっと読みにくかった。こないだ途中まで読んだ、『翻訳がつくる日本語―ヒロインは「女ことば」を話し続ける』を思い浮かべたくらいだった。陣ノ内アキのキャラ設定としてこういう語り口にしたのだろうけど、こんな「女ことば」の内言でアキはしゃべるんかなー?と思った。

    (6/3了)

  • 表紙の四人の青春の話。母の死をきっかけに母が青春時代につくった文集から母のことを知る息子。当時ともに文集を作った母の友人たちが章ごとに語り手となり、全く別のしかし少し関連している話をする。

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著者プロフィール

東京都生まれ。慶應義塾大学文学部人間科学専攻卒業。1995年『ジャンボジェットの飛ぶ街で』が講談社児童文学新人賞佳作となる。1996年『ぼくらのサイテーの夏』でデビュー。同作品で第30回日本児童文学者協会新人賞、第26回児童文芸新人賞を受賞。2003年『楽園のつくりかた』で第50回産経児童出版文化賞を受賞。その他の著作に『世界がぼくを笑っても』『バラ色の怪物』などがある。

「2015年 『楽園のつくりかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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