勝手にふるえてろ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.34
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本棚登録 : 5413
感想 : 576
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167840013

作品紹介・あらすじ

片思い以外経験ナシの26歳女子が、時に悩み時に暴走しつつ「現実の扉を開けてゆくキュートで奇妙な恋愛小説。3年ぶりの注目作!

感想・レビュー・書評

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  • 昔のひとは言いました。”初恋は実らないものですよ”、と。
    昔のひとは言いました。”恋はする程艶がでる”、と。
    昔のひとは言いました。”恋は死ななきゃなおらない”、と。
    そして、主人公は言いました。『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』、と。

    誰もが上る大人への階段。誰にも訪れる青春の日々。そして、誰もが経験する初恋の切ない想い。では、そんな初恋の人と結婚にまで至る確率はどのくらいあるのでしょうか?ある調査によると、なんと1%ほどしかないというその数字。そう、圧倒的大半の初恋は、初恋のまま終わる、それが成就することなどありえないというその数字。でも、そんな数字を見てあなたはどう感じるでしょうか?どんなに好きでも長い間一緒にいれば嫌なこともあるでしょう。結婚すれば理想と現実という言葉が身に染みることもあるでしょう。いつまでも自分の心の中に、自分の心の中だけにひっそりと持ち続けるもの、あの時代の汚れなき想い出の一つとして大切に宝物の如く持ち続けるもの、初恋とは、そういったものであってもいいものかもしれません。

    さて、ここに、そんな初恋の想い出を過去のものとしないで、いつまでも執拗に固執し続ける女性がいます。初恋の人を十年経った今も狂おしいほどに思い続けている、そして、そんな自分自身に恋をしてしまっている女性。これは、そんな女性が本当に好きなひとは誰なのかを探し求める物語です。

    『両隣のトイレの個室は女性社員が入っては出て行き回転率が高い』という状況の中、『ふたをしめた便器のうえに座り頭を抱えていた』という主人公の『江藤良香(えとう よしか)、二十六歳、日本人、B型、…彼氏なし、貯金なし…』。『トイレから人の気配が消えて昼休みが終わ』っても、『どうしても出る気が起き』ず、『上司が呼びに来ても上からバケツの水がふってきても外に出たくない』という良香。『さぼりたいわけじゃない、辞めたいわけでもない、ただ会社が嫌なだけ』という心の内。『今日このまま帰って明日もあさっても会社には来たくない』と思う良香。『私には彼氏が二人いて、どうせこんな状況は長く続かないから存分に楽しむつもりだった』という良香は中学時代を振り返ります。『イーチ』『なんだよ』『呼んでみただけ』、と『朝イチが登校してくると活発なグループの女子たちが彼をふりむかせてくすくす笑う』という状況を横目に見る良香。『イチ寝ぐせついてるし』『ついてないだろ』『ついてるよ、後ろ髪うねってる、カワイー』と戯れるクラスメイト達。『さらさらの長い重たげな前髪、横長たれ目で微笑むとちょっとずるそうに見える、ぬれた黒目がちの瞳』と彼のことを『男子も女子もみんなが彼をかまいたがった』という状況。そんな彼のことを『イチ』と呼び、『イチに関心があることはイチ本人にも周りにもばれてはいけない』と心の中で特別視する良香。イチを主人公にした漫画『天然王子』を描いていた時、『なんで王子?』とページをめくりながら訊いてきたイチ。『一国のあるじになるから』と『なにも考えずに完全に口だけで喋った』良香に『ふうん。へんな髪型』と、意味が通じず行ってしまったイチ。別の日、先生からの言いつけで教室の黒板に『”ぼくは授業中私語を慎みます。”と白いチョークで書いていた』イチを放課後に見つけ、声をかけた良香。『一つくらい”ぼくは授業中私語を慎みません。”にしてもばれないんじゃないの』と言う良香に『書きかけの一文を”ぼくは慎みません。”にした』イチ。『間違い探しみたい』と言う良香は『信じられないくらいにうれしく』なります。そして『中学三年になるとイチとクラスが離れて』しまったものの、ある時彼の担任を訪ねると『一宮くんに反省文を書かせると一つか二つ、”遅刻します”とか”友達としゃべります”とかいう全然反省してない文がまぎれこんでるの、変な子でしょ』と言われ『甘いめまいでくらくらした』という良香。『その変な文章は私とイチが精神的につながっていることの証なんです』と心の中で叫ぶ良香。それから10年が経っても未だに気になる『イチ』の存在。そして、身近で気安く話せる存在である『ニ』とを天秤にかける良香。そんな今の良香が二人の男性のどちらかを選ぶ物語が始まりました。

    当時26歳の綿矢さんが26歳の女性を主人公に描いたこの作品。本を開いてまず圧倒されるのは冒頭の一文です。『とどきませんか、とどきません』という十三文字のその表現。綿矢さんの作品の冒頭には、いつも読者を一気に作品世界に連れ込む魅力に溢れた一文が存在しますが、この作品の冒頭も強力です。そして、この作品が凄いと思ったのはこの一文から始まる独白のような表現が止めどなく溢れる思いのように複数ページに渡って続いていくことです。それは、『とどきそうにない遠くのお星さまに向かって手を伸ばす、このよくばりな人間の性が人類を進化させてきたのなら、やはり人である以上、生きている間はつねに欲しがるべきなのかもしれません』と自らの『手を伸ばす』という行為の延長に『人類』の進化を重ね合わせるという大きな世界観を表現したと思ったら、『でも疲れたな。まず首が疲れた。だってずっと上向いてるし』という単に自らが疲れたことの感情の吐露だったりと全く目が離せません。そして、その表現の極端な振れ幅もあって、これを事情も知らず受け止めなければならない読者には、いきなり何かを背負わさせるような何とも言えない感情が襲ってきます。綿矢さんの文章は句読点が少ないという特徴を持っています。慣れないと読む途中で”息を注ぐ”タイミングが掴めず、ちょっとしたストレスを感じてしまいます。この冒頭はそういう意味でも、これだけで結構な重量感を感じさせる始まりです。そして、そんな独白のような冒頭の表現がようやく終わったと思ったら、次に登場するのは『両隣のトイレの個室は女性社員が入っては出て行き回転率が高い』と始まる本編です。この展開のあまりの落差には、くらくらと目まいさえしそうな気分になりました。いずれにしても、受けた衝撃があまりに大きかったこともあり、この冒頭だけすぐに続けて読み返してしまいました。そんな二度目の冒頭は、独白とは言え一本筋が通っているというか、『とどきませんか、とどきません』という表現の狂おしい感情が二回目にはスッと入ってきた結果、その後の読書に、より感情が入っていくことに繋がりました。この冒頭、是非続けての読み返しをお勧めします。一回だけだとしっくりこない冒頭ですが、その二回目は綿矢さんの世界観がストンと入ってくるのを感じます。一回だけだともったいない、読者を酔わせてくれる世界観がそこにある、そう感じました。

    そんな冒頭から始まるこの作品では、主人公の良香が気にする二人の男性のことが執拗に描かれていきます。一人は『中学以来会っていない、たった三度しか話したことのない初恋の人に十年以上片思い』という『イチ』。良香はそんな『イチ』のことを『イチ彼は私の最愛だけれどとうてい添いとげられそうになく彼がおびえがちに微笑むのを私が見ていたいだけの関係』と語ります。これだけの文章に、読点なしで一気に繋げてしまう読みづらい文章ですが、言いたいことは伝わってきます。そして、もう一人の彼は会社の同僚の『二人』。良香はそんな『二』のことを『二彼は私が彼をまったく愛していないにもかかわらず、私が将来結婚するかもしれない相手だ』と全く対象的な存在として位置付けていることがわかります。この位置づけの異なる二人をひたすらに比べては悶々とする良香。色んな側面から二人を見比べますが、においを元に表現した箇所が絶妙だと思いました。『子どものころ、いつも抱いて眠っていたきりんのぬいぐるみのにおいがした』という『イチ』のにおい。それに対して『スープ系の体臭、飛行機で出される油の浮いたコンソメスープと同じにおいがする』という『二』のにおい。『二』の表現が、いくらなんでもと気の毒にさえ感じてしまいます。そして、このにおいの表現だけでさえ『二』を選ぶという選択肢がそもそもあるのか?と疑問にさえ感じますが、そこに綿矢さんは『イチ』のにおいにこんな表現を付け加えます。『二のにおいよりもよっぽど好きで、深く吸いこむと遺伝子のレベルで落ち着く』という『イチ』のそのにおい。『でも少しさびしくなるにおいでもあった。私たちの間に少し空いたまま、埋まらない隙間みたいに』。このあたりの微妙な表現から、簡単には答えを出せない良香の心の内、そして、あなたならどうする?という読者への問いかけを感じさせる部分です。そんな二人の様々な場面からの比較、同じようなシチュエーションでの二人の対象的な反応の違い、そして冷静に相手の心の内を読み解いていこうとする主人公・良香。そんな良香の身悶えるような心の呻きが、読者の心をも引き摺り込む悶々とした展開が全面に渡って繰り広げられていく物語。分量としては中編ですが、まるで長編を読んだかのようなすざまじいまでの感情の揺れ動きを経た後の結末に、ある意味、良香に対して読者である私が『勝手にふるえてろ』と言いたくもなりました。そう、それだけ読者の心に強く訴えかけてくるのがこの作品だと思いました。

    二人の男性の間で揺れ動く女性の微妙な感情の動きを執拗に描いていく綿矢さん。初恋の人と結婚に至る確率は1%程度という現実は、”わずか1%”と感じる一方で”1%もあるのか”とも取れる数字だとも言えます。そんな『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』と感情を昂ぶらせる主人公・良香が『自分の直感だけを信じず、相手の直感を信じるのも大切かもしれない』という冷静な感情を身につけて、ひとつづつ大人になっていく物語。

    ”綿矢さんワールド”全開なその物語に、綿矢さんの作品を読む喜びを再認識させてくれた、そんな作品でした。

  • 「勝手にふるえてろ」と「仲良くしようか」の初出時のレビューを加筆修正。

    1.「勝手にふるえてろ」

    なんとインパクトのあるタイトルだろう。 
    書き出しフェチでもありタイトル名人でもある、綿谷りさ節。
    思わず手に取りたくなるね、書店でこれ見たら。ジャケ買いですよ。
    期待と興奮に胸躍らせながらページをめくると、
    「とどきますか、とどきません。光りかがやく手に入らないものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちは足元に転がるたくさんの屍になってライトさえ当たらず、私に踏まれてかかとの形にへこんでいるのです。」の書き出し。
    「綿矢節キタ───!」と叫びたいですが、この表現って古くない? もう死語じゃないの?
    2012年の『文學界』新年号に彼女と金原ひとみの対談があって、その中で金原さんが綿矢りさ新作の文中表現に関して『綿矢さんキタ───!』とおっしゃってるので、使ってみたけれど。
    それこそ言葉の絶滅危惧種のような……。金原さん、時代に乗り後れていない、大丈夫?
    ま、それはそれとして、すぐに「私には彼氏が二人いて」という文章に出会えば、二人を弄ぶ恋愛ものか? と勘ぐりたくもなるが、そこはさすが綿矢くん。
    料理の仕方が常人とは異なる。その二人の名前をすぐに出さずに、イチとニという呼び名で分類分け、というか括り方で強引に話を進めるのも彼女ならでは。
    「蹴りたい背中」を思いのままに弾けた文章にするとこんなカタチになるんだろうか。
    書きたいように書いた、という感ありありで面白かった。
    日本中の小説家が束になっても敵わない、綿矢りさにしか書けない恋愛小説です。
    ぼくは思うのだが、彼女の文章の素晴らしさはこういったシチュエーションでこそ最大限に引き出されるのではなかろうか。
    だから無理に普通の恋愛小説風なストーリーとかにしなくてもいい。
    30代になったら、30代の物語を書かなきゃいけないのか? 50代になって高校生青春物語を書いてはいけないのか? そんなことはあるまい。 
    一般的にそうなりがちなのは、単に作家自身が書けなくなるからだ。
    サザエさんがテレビの中で永遠に年を取らないのと同様、作家だって、何歳になっても同じようなシチュエーションで、でも違う物語を書き続ける。
    そういう人がいても一向に構わないと思うのだ。
    逆に言えば、そういう作家こそ稀有であり、貴重な存在なのだから。
    ぼくはこれを読んで、高橋源一郎が「綿矢さんは将来田辺聖子みたいな作家になるのではないか」と思った理由が少し分かった気がする。
    彼の慧眼に感服。

    ちなみに、この作品は書き出しだけではなく、最終ページの表現も別の意味でよかった。

    付録:思わず吹き出しそうになった、「勝手にふるえてろ」名文集
    (あまり長く引用すると、読んだ時の面白さが半減するので、さわりだけとか伏字にしました)
    問題1:下の〇を文字で埋めなさい。
    (って、この本を読んでないのに、これを埋められる人は誰もおるまい)
    :両脇の個室からユニゾンで鳴り響く〇〇の〇〇〇
    :先生、(中略)だから自分のてがらにしないで
    :で、隠された私のコインはどこへいったの?
    :で、この鳩は私が育てなきゃならないの?
    :じゃあ家族になってあげてよ。合掌。
    :ほとんど修行だった
    :自分の〇〇を探して毎夜、上野公園の不忍池の辺りを這いずりまわる人生になるだろう。
    :たくさんお酒をのんだら〇〇〇〇が〇〇〇なるからイヤ! と首を横にふって ──
    :君の〇のふせんもぼくが取ってあげるよ、ってか。正気か。(これが一番笑えた)
    :だとしたらニは私を絶滅から救う保護観察員なのだろうか。
    :だるまさんがころんだで鬼になって(中略)心境だった。
    註:ここに列記したのはごく一部です。

    付録その2
    「視野見」という表現について
    この表現はあまりにも的確すぎて、実際に辞書にあるのではないかと、思わず手元の電子辞書を開いてしまったほどだ。
    広辞苑の第七版には是非入れてほしい表現。例えば次のように。

    「視野見」(しやみ):別のものを見る振りをして、本当に見たいものを視界の隅で見ること。日本の作家、綿矢りさのあみ出した技で、目の血管が切れそうになるほど複雑な作業。


    2.「仲良くしようか」

    ──ぜいたくとは何か。私にとってそれは、美しい男、よく磨かれた寝そべりやすい床、太陽を水面が反射するまぶしいほどの川岸。宝物とは何か。私にとってそれは、いつも褒められる長いまつ毛、清廉な佇まいで飲み口の薄いアンティークの紅茶茶碗、すっと触った指がありもしないささくれを想像して鳥肌を立てるほどになめらかで黒ずんだ艶を帯びた木製の肘掛け椅子。

    もう、この書き出しを読んだだけで心が魅きこまれていく。
    流れるような美しい言葉選び。巧みな比喩。
    詩を朗読しているみたいな文章。いつもそう感じる。
    苔むした石の上をさらさらとすべるゆるい小さな滝のように、聞こえるか聞こえないかほどの微妙で繊細なバランスをとりながら、ひとつひとつの言葉が綺麗に流れ落ちていく。
    どうして綿矢りさは、こんな文章が書けるのでしょうね。
    私には、到底こんな綺麗な文章を書くことができないが、でも心の奥底まで存分に染み渡ってくる。

    自意識、混沌、葛藤。
    綿矢さんの描く女性は、実像というよりも意識が塊となって人間の形をしているように思える。
    意識という粘土で作り上げられた人間像。
    いったいそれは柔らかいのか固いのか。
    まだ、こねくり創られたばかりで、少しでも触れるとぐにゃりと形を変えてしまうのか。
    それとも時間を経たことで焼き物のようになり、木槌で叩けばパリンと割れてしまうほど固まってしまっているのか。
    いや、最初はまだ形の定まっていないものが、どんどん世界の深みに入っていくことで次第に固形化し、最後には破裂するような音を立てて自らを粉々に壊していく。自己崩壊の世界。
    何度も何度も、作っては壊し、作っては壊しの繰り返し。
    その壊れるときの弾けっぷりが、爽快でもあり、笑いを誘い、哀しくもある。
    おそらく彼女はこれからもこのような小説を書き続けるのだろう。
    それは読者にとっては耳に心地よい音楽に浸っているようなものだ。
    言葉の響きは音の響きとなり、それらが体中に染み渡り、心地良さを演出する。
    モーツアルトかシューベルトか、或いはヴィヴァルディか。
    第一楽章、第二楽章とゆるやかに進行しながら、第三楽章で一変し、第四楽章では見事な結末を迎える。
    彼女の場合、最終楽章はとても短く、最後の数ページ、或いは最後の数行、最後の一言ということさえある。
    いや、作品の結末後の読み手に想像させる次の一言でもあったりするのだ。
    「仲良くしようか」と。

    綿矢りさ、着実に進化の真っ最中。
    面白い作品です。是非お読みください。

  • 『蹴りたい背中』以来の綿矢りささん。
    タイトルのキャッチーさとウサギちゃんの表紙のガーリーさに惹かれ読んでみました。

    冒頭の「とどきますか、とどきません。光かがやく手に入らないものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちは足元に転がるたくさんの屍になってライトさえ当たらず、私に踏まれてかかとのかたちにへこんでいるのです。」
    からもう夢中。夢見てるような達観しているような文章で気持ちよくさせて、さらにまた鋭すぎて痛気持ちいいツッコミをかまされて思わず、綿矢さま!と言いたくなる。冗談ですが。

    主人公は26歳の経理課のOLヨシカ。
    彼女には彼氏が2人いる。
    中学の頃からの思い人、イチ。
    数回しか話したことないが、中学の間ずっと観察していて、彼の事は完璧にわかっている。彼女の「天然王子」
    もうひとりは、ニ。
    最近彼女に告白してきて「スープの臭いのような」体臭をもっていて、自分のことばかり話している。

    この「脳内二股」に揺れる主人公に痛い辛い恥ずかしいと思いながらもほぼ一気読みでした。タイトルの意味が分かったときちょっと可笑しくなった。逆ギレじゃん。でも切実だね。

    解説の辛酸なめこさんが面白く、的をついているのですが、ネタバレなので本文読んでから読んだ方がいいです。

  • 中2で一目惚れしたイチ彼を、三回しか喋ったこともないのに想い続けてきたヨシカ。誰とも付き合うことなく、処女もこじらせて26歳になった彼女に惚れた暑苦しい二彼。

    結婚するなら1番好きな人と…と思い詰めて、同窓会をセッティングしてまでイチに再会するも、イチ彼には名前すら思い出してもらえないヨシカ。

    ここまでぶっ飛んではいないけど、ヨシカの気持ちが分かってしまう私も立派な中2病…。

    二彼に対する残酷さとか狡さとか、生々しいけどうまいな~。「インストール」のときより綿矢さん自身年齢を重ねてふっきれたのかな。

    でもまだヨシカは26歳で、まだまだ余裕あるじゃない。二彼もいい人そうだし。

    幸せにしてくれそうな人≠一緒にいれるだけで幸せな人。だからややこしい。

    イチ彼にそこまで惹かれる理由がよく分からないけど、それも恋の不思議ってやつだろう。二彼にいたっては「前世はおでんの具か」とまで脳内で切り捨ててるし(笑)

    巻末の辛酸なめ子さんの解説もツボった。こんな可愛いうさちゃんの表紙でこの内容。素敵です。

  • 理想の彼に憧れて、現実の彼には興味なし。
    あるある!と思ってしまった。イチに惹かれるのは分かるけど、こういうフワフワした人を追いかけても絶対報われないのに。だからと言ってタイプでもないし欠点ばかり自動的に探してしまうニのことを好きになれるかと言うと・・・。

    そこまではなんか分かるんだけど、ヨシカの大胆な行動には驚く。平気で人の名を騙って同窓会を開いてイチに近付いたり、平気で妊娠したとウソをつく。ヨシカの虚言癖が怖かった。
    でも結局、自分の名前さえも覚えていなかったイチへの熱が冷めて、それでタイトルが「勝手にふるえてろ」なんだと分かった。

    絶滅動物の話はロマンを感じて興味深かった。調べたら面白そう。人間(ホモサピエンス)は運良く絶滅しなかったからここまで進化してきたのだろうけど、絶滅するしないって紙一重。人間のせいで絶滅した動物の事を思うと、人間って弱いくせに罪深い生き物だなと思う。

    イチへの想いがなくなって、ニにも愛想を尽かされてからヨシカは自分を見つめ直した。
    心を開いて本心をぶつけて、自分の思いを伝えることって大事なんだ。素直ってこういうことなのかも。

    その後の短編「仲良くしようか」は、よくわからなかったけど川上未映子のエッセーを色々くっつけたみたいな、見た夢をそのまま記録したような、混沌とした印象。こちらの解説もほしい。
    3.5点ぐらい。

    20170604

    • koshoujiさん
      初めまして。フォローいただきありがとうございます。リフォローさせていただきました。最近あまり書いてないのですが、今後ともよろしくお願い致しま...
      初めまして。フォローいただきありがとうございます。リフォローさせていただきました。最近あまり書いてないのですが、今後ともよろしくお願い致します。<(_ _)>
      2018/03/21
  • 中学時代の片想いの相手を胸に秘めつつ、いまだ恋愛経験ナシの26歳OL、ヨシカ。
    現実と理想に振り回されて、妄想炸裂。
    綿矢さんの書きっぷりが気持ちいいです。
    何だかんだでとりあえずハッピーエンド。
    やはり男の人の方が、受け皿が広い。

    今いっしょにいる人に感謝しようと思う。

  • 自分が好きになる人と自分を好きになってくれる人が違うというよくあるシチュエーション。
    この物語の主人公には中学生の頃から一途に片想いをしている相手がいる。
    相手に気付かれないようにずっと視野見する日々。
    何度もリピートして思い出す彼との数少ない接点。
    読んでいてなんとなく気が滅入る。
    本人にとっては初めての大切な恋心なのに、それはひどくありがちで、チープで、粘着質に見えてしまう。
    その残酷さに鬱々とする。

    主人公に迫ってくる同僚の男性も、主人公があれこれ相談する同僚の女性も、記号的な存在に思える。
    あらかじめ用意されている役にキャスティングされた役者さんのような。
    この人じゃなくてもいいけど、男には告白されたいし、恋バナ出来る友達も欲しいという欲求を満たすためだけの存在のような。
    そういう役どころを当てはめているから、彼らにそっぽ向かれることが許せないわけですね。

    食中毒が私の身体で進行している時に読んだからかもしれないけど、読み終わってとてもぐったりしてしまった。
    主人公がこの後幸せになれたかどうかについても、あまり良いイメージが浮かんでこない。
    私はこの物語と幸せな出会いが出来なかった。
    残念…

  • 想いを告げられなかった片思いの相手ほど、数年経っても心に引っ掛かり、思い出とともに美化され、気付けば記憶の中で”完璧な人”に変貌してたりします。

    中学時代に片思いをした相手が忘れられず、それ以降OLになった現在まで恋愛経験ナシの主人公・ヨシカ。
    中学卒業以降一度も会うことなくヨシカの脳内で「理想の王子様」として君臨する”イチ”、全然タイプじゃないけれどヨシカのことを好きと言ってくれる”ニ”。この2人の狭間で揺れ動く決心のつかない主人公は、片思いと妄想を拗らせ過ぎて痛いです。
    恋愛らしい恋愛をしたことなく結婚の予定なし。初めての相手は心から好きになった人と、と守りつづけた貞操。やりがいもない仕事をする日々。26歳。とにかく痛い。でもその痛さ、同世代女性には痛いほど分かる人も多いはず。

    綿矢さん独特のさばけた文体は軽快で一気読み。この小説の漫画版も見てみたいなぁ、作画・安野モヨコ辺りで。

  • なんか、綿矢りささんって、すごい才能なのかも、と思った。
    文章にもストーリーにもすごくオリジナリティを感じるというか。恋愛ものといえばそうなんだけど、いかにもありそうな、読んだことあるような、よくきくような、っていう感じがまったくない。恋愛もの、なんて言っちゃいけないような気もする。確かに、恋愛の話だし、すごく笑えるし、細部もリアルでおもしろいんだけど、単なるラブコメディ扱いしちゃいけないような。笑いながらさくさく読めるんだけど、本当はさくさくなんて読んじゃいけないんじゃないか、と。じっくり詩を読むみたいに読むべきなのかも、とか。

    でも、なんというか、読み手を集中させるというか、ほっと息をつかせないようなところがある気がして、読むのにけっこう力いるというか疲れるというか。わたしは基本、たらたらした小説が好きなので。

    もう一篇の「仲良くしようか」も、よく理解はできないながら、すごいのかも、とやっぱり思った。ご自身のことを投影してるのかな。

    結局、二篇とも、おもしろかったのだけれど、ちゃんと理解できてないような気がしていて。だから文庫解説では解説をしてもらいたかったなー、と勝手ながら思った。
    綿矢りささんのことをもっとよく知りたい。

  • 「ひらいて」よりは現実的かな...。ただ、ぶっ飛んでることに変わりはない...。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞して作家デビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川賞、12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。ほかの作品に『夢を与える』『勝手にふるえてろ』『ひらいて』『しょうがの味は熱い』『憤死』『大地のゲーム』『手のひらの京』などがある。

「2018年 『100万分の1回のねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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