勝手にふるえてろ (文春文庫)

  • 文藝春秋
3.35
  • (257)
  • (611)
  • (810)
  • (272)
  • (74)
本棚登録 : 8645
感想 : 785
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167840013

作品紹介・あらすじ

恋愛、しないとだめですか?

賞味期限切れの片思いと好きでもない現実の彼氏。どっちもほしい、どっちも欲しくない。迷いながら、ぶつかりながら、不器用に進んで

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 恋愛小説?違うよな。昔の片思いの彼のことを妄想ぽく思い続けている主人公。現実につき合っている男とどう折り合いをつけていく?うーん、身もふたもないなあ。とにかく大人しい若い女性の心理を細かく述べるのが主眼?分からんなあ。解説の辛酸なめ子さんは、「主人公のヨシカがニ彼のことを好きになったらダメ」と言う。ニ彼は手に入れたものには関心がなくなってしまうから。脳内二股を続けたほうがいいとか。うわあ。

    • しずくさん
      goya626さん、もう一度振り返る機会を下さってありがとうございました。
      原作は読んでいないのですが、映画化されてヨシカ役を松岡茉優さん...
      goya626さん、もう一度振り返る機会を下さってありがとうございました。
      原作は読んでいないのですが、映画化されてヨシカ役を松岡茉優さんが演じているのを観ました。印象に残る作品だったので、4年前でおぼろげな記憶をたどりながらレビューを引き出し再読してみると、レビューの最後は次の言葉で締めくくっていました。
      『ヨシカは実際は序盤に描かれたように誰とでも話せていたのではなく不器用なヒロインで、あのシーンは願望だったのだと終盤になるに従い分かって来た。ラストで、待ちに待った「勝手にふるえてろ」のセリフが使われる。ヨシカは自分をすべて受け入れてくれるニとやっていこうと決心したのだろう。「勝手にふるえてろ」と言ってニにキスをする。「勝手にふるえてろ!」は二に向けたのではなく、臆病だった自身に言った言葉だったのだ』と・・・。

      ラストシーンが鮮やかに蘇ってきました。
      2022/11/29
    • goya626さん
      しずくさん
      コメントありがとうございます。
      どこまでが現実でどこからが妄想か分からないところがありました。作者もわざとそうしてるんでしょ...
      しずくさん
      コメントありがとうございます。
      どこまでが現実でどこからが妄想か分からないところがありました。作者もわざとそうしてるんでしょうね。心の内を詳細に本当らしく描く作者の筆力は凄いんだろうな。鬱陶しいと思うところが多々ありながら、最後まで読まされてしまいました。
      2022/12/01
  • 昔のひとは言いました。”初恋は実らないものですよ”、と。
    昔のひとは言いました。”恋はする程艶がでる”、と。
    昔のひとは言いました。”恋は死ななきゃなおらない”、と。
    そして、主人公は言いました。『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』、と。

    誰もが上る大人への階段。誰にも訪れる青春の日々。そして、誰もが経験する初恋の切ない想い。では、そんな初恋の人と結婚にまで至る確率はどのくらいあるのでしょうか?ある調査によると、なんと1%ほどしかないというその数字。そう、圧倒的大半の初恋は、初恋のまま終わる、それが成就することなどありえないというその数字。でも、そんな数字を見てあなたはどう感じるでしょうか?どんなに好きでも長い間一緒にいれば嫌なこともあるでしょう。結婚すれば理想と現実という言葉が身に染みることもあるでしょう。いつまでも自分の心の中に、自分の心の中だけにひっそりと持ち続けるもの、あの時代の汚れなき想い出の一つとして大切に宝物の如く持ち続けるもの、初恋とは、そういったものであってもいいものかもしれません。

    さて、ここに、そんな初恋の想い出を過去のものとしないで、いつまでも執拗に固執し続ける女性がいます。初恋の人を十年経った今も狂おしいほどに思い続けている、そして、そんな自分自身に恋をしてしまっている女性。これは、そんな女性が本当に好きなひとは誰なのかを探し求める物語です。

    『両隣のトイレの個室は女性社員が入っては出て行き回転率が高い』という状況の中、『ふたをしめた便器のうえに座り頭を抱えていた』という主人公の『江藤良香(えとう よしか)、二十六歳、日本人、B型、…彼氏なし、貯金なし…』。『トイレから人の気配が消えて昼休みが終わ』っても、『どうしても出る気が起き』ず、『上司が呼びに来ても上からバケツの水がふってきても外に出たくない』という良香。『さぼりたいわけじゃない、辞めたいわけでもない、ただ会社が嫌なだけ』という心の内。『今日このまま帰って明日もあさっても会社には来たくない』と思う良香。『私には彼氏が二人いて、どうせこんな状況は長く続かないから存分に楽しむつもりだった』という良香は中学時代を振り返ります。『イーチ』『なんだよ』『呼んでみただけ』、と『朝イチが登校してくると活発なグループの女子たちが彼をふりむかせてくすくす笑う』という状況を横目に見る良香。『イチ寝ぐせついてるし』『ついてないだろ』『ついてるよ、後ろ髪うねってる、カワイー』と戯れるクラスメイト達。『さらさらの長い重たげな前髪、横長たれ目で微笑むとちょっとずるそうに見える、ぬれた黒目がちの瞳』と彼のことを『男子も女子もみんなが彼をかまいたがった』という状況。そんな彼のことを『イチ』と呼び、『イチに関心があることはイチ本人にも周りにもばれてはいけない』と心の中で特別視する良香。イチを主人公にした漫画『天然王子』を描いていた時、『なんで王子?』とページをめくりながら訊いてきたイチ。『一国のあるじになるから』と『なにも考えずに完全に口だけで喋った』良香に『ふうん。へんな髪型』と、意味が通じず行ってしまったイチ。別の日、先生からの言いつけで教室の黒板に『”ぼくは授業中私語を慎みます。”と白いチョークで書いていた』イチを放課後に見つけ、声をかけた良香。『一つくらい”ぼくは授業中私語を慎みません。”にしてもばれないんじゃないの』と言う良香に『書きかけの一文を”ぼくは慎みません。”にした』イチ。『間違い探しみたい』と言う良香は『信じられないくらいにうれしく』なります。そして『中学三年になるとイチとクラスが離れて』しまったものの、ある時彼の担任を訪ねると『一宮くんに反省文を書かせると一つか二つ、”遅刻します”とか”友達としゃべります”とかいう全然反省してない文がまぎれこんでるの、変な子でしょ』と言われ『甘いめまいでくらくらした』という良香。『その変な文章は私とイチが精神的につながっていることの証なんです』と心の中で叫ぶ良香。それから10年が経っても未だに気になる『イチ』の存在。そして、身近で気安く話せる存在である『ニ』とを天秤にかける良香。そんな今の良香が二人の男性のどちらかを選ぶ物語が始まりました。

    当時26歳の綿矢さんが26歳の女性を主人公に描いたこの作品。本を開いてまず圧倒されるのは冒頭の一文です。『とどきませんか、とどきません』という十三文字のその表現。綿矢さんの作品の冒頭には、いつも読者を一気に作品世界に連れ込む魅力に溢れた一文が存在しますが、この作品の冒頭も強力です。そして、この作品が凄いと思ったのはこの一文から始まる独白のような表現が止めどなく溢れる思いのように複数ページに渡って続いていくことです。それは、『とどきそうにない遠くのお星さまに向かって手を伸ばす、このよくばりな人間の性が人類を進化させてきたのなら、やはり人である以上、生きている間はつねに欲しがるべきなのかもしれません』と自らの『手を伸ばす』という行為の延長に『人類』の進化を重ね合わせるという大きな世界観を表現したと思ったら、『でも疲れたな。まず首が疲れた。だってずっと上向いてるし』という単に自らが疲れたことの感情の吐露だったりと全く目が離せません。そして、その表現の極端な振れ幅もあって、これを事情も知らず受け止めなければならない読者には、いきなり何かを背負わさせるような何とも言えない感情が襲ってきます。綿矢さんの文章は句読点が少ないという特徴を持っています。慣れないと読む途中で”息を注ぐ”タイミングが掴めず、ちょっとしたストレスを感じてしまいます。この冒頭はそういう意味でも、これだけで結構な重量感を感じさせる始まりです。そして、そんな独白のような冒頭の表現がようやく終わったと思ったら、次に登場するのは『両隣のトイレの個室は女性社員が入っては出て行き回転率が高い』と始まる本編です。この展開のあまりの落差には、くらくらと目まいさえしそうな気分になりました。いずれにしても、受けた衝撃があまりに大きかったこともあり、この冒頭だけすぐに続けて読み返してしまいました。そんな二度目の冒頭は、独白とは言え一本筋が通っているというか、『とどきませんか、とどきません』という表現の狂おしい感情が二回目にはスッと入ってきた結果、その後の読書に、より感情が入っていくことに繋がりました。この冒頭、是非続けての読み返しをお勧めします。一回だけだとしっくりこない冒頭ですが、その二回目は綿矢さんの世界観がストンと入ってくるのを感じます。一回だけだともったいない、読者を酔わせてくれる世界観がそこにある、そう感じました。

    そんな冒頭から始まるこの作品では、主人公の良香が気にする二人の男性のことが執拗に描かれていきます。一人は『中学以来会っていない、たった三度しか話したことのない初恋の人に十年以上片思い』という『イチ』。良香はそんな『イチ』のことを『イチ彼は私の最愛だけれどとうてい添いとげられそうになく彼がおびえがちに微笑むのを私が見ていたいだけの関係』と語ります。これだけの文章に、読点なしで一気に繋げてしまう読みづらい文章ですが、言いたいことは伝わってきます。そして、もう一人の彼は会社の同僚の『二人』。良香はそんな『二』のことを『二彼は私が彼をまったく愛していないにもかかわらず、私が将来結婚するかもしれない相手だ』と全く対象的な存在として位置付けていることがわかります。この位置づけの異なる二人をひたすらに比べては悶々とする良香。色んな側面から二人を見比べますが、においを元に表現した箇所が絶妙だと思いました。『子どものころ、いつも抱いて眠っていたきりんのぬいぐるみのにおいがした』という『イチ』のにおい。それに対して『スープ系の体臭、飛行機で出される油の浮いたコンソメスープと同じにおいがする』という『二』のにおい。『二』の表現が、いくらなんでもと気の毒にさえ感じてしまいます。そして、このにおいの表現だけでさえ『二』を選ぶという選択肢がそもそもあるのか?と疑問にさえ感じますが、そこに綿矢さんは『イチ』のにおいにこんな表現を付け加えます。『二のにおいよりもよっぽど好きで、深く吸いこむと遺伝子のレベルで落ち着く』という『イチ』のそのにおい。『でも少しさびしくなるにおいでもあった。私たちの間に少し空いたまま、埋まらない隙間みたいに』。このあたりの微妙な表現から、簡単には答えを出せない良香の心の内、そして、あなたならどうする?という読者への問いかけを感じさせる部分です。そんな二人の様々な場面からの比較、同じようなシチュエーションでの二人の対象的な反応の違い、そして冷静に相手の心の内を読み解いていこうとする主人公・良香。そんな良香の身悶えるような心の呻きが、読者の心をも引き摺り込む悶々とした展開が全面に渡って繰り広げられていく物語。分量としては中編ですが、まるで長編を読んだかのようなすざまじいまでの感情の揺れ動きを経た後の結末に、ある意味、良香に対して読者である私が『勝手にふるえてろ』と言いたくもなりました。そう、それだけ読者の心に強く訴えかけてくるのがこの作品だと思いました。

    二人の男性の間で揺れ動く女性の微妙な感情の動きを執拗に描いていく綿矢さん。初恋の人と結婚に至る確率は1%程度という現実は、”わずか1%”と感じる一方で”1%もあるのか”とも取れる数字だとも言えます。そんな『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』と感情を昂ぶらせる主人公・良香が『自分の直感だけを信じず、相手の直感を信じるのも大切かもしれない』という冷静な感情を身につけて、ひとつづつ大人になっていく物語。

    ”綿矢さんワールド”全開なその物語に、綿矢さんの作品を読む喜びを再認識させてくれた、そんな作品でした。

  • 著者の独特な言葉選びとか、
    センスが好きだなぁ。

    イチとニとか、最高なチョイスだし、
    ストーリーも主人公のキャラも好きでした。

    • koshoujiさん
      初めまして。koshoujiと申します。
      私のレビューに“いいね”をいただき、ありがとうございます。
      10年ほど前、ひたすら本を読んでい...
      初めまして。koshoujiと申します。
      私のレビューに“いいね”をいただき、ありがとうございます。
      10年ほど前、ひたすら本を読んでいた時期があり、ブクログに掲載しているレビューも、その頃のものが殆どですが。
      その後、故郷の同窓生探しのためにmakopapa77という名前で、歌うYouTuberに変貌し、小遣い稼ぎしていました。
      この2023年2月に、めでたく「前期高齢者」の仲間入りを果たし、週に6日は日曜日状態(笑)になり、今後はようつべとブクログの両立も可能で、新しいレビューも書けそうです。
      ただし、海外旅行が増えるので、無理矢理そちらにかこつけたレビューが多くなるかもしれません。
      それでも、読んで楽しくなるようなレビューを書き続けたいと思いますので、読書仲間として末永くよろしくお願いいたします。<(_ _)>
      キョー様のレビューも楽しみにしております。
      ※この綿矢りさ、言葉選びというか、言葉遊びというか、面白かったですね。綿矢りさと先日亡くなった大江健三郎氏の対談を東京在住時、講談社に聴きに、見に、行きました。それも面白かったです。私の綿矢りさのどこかのレビューにその時の様子を書いていますので、ちょっと調べてみますね。(^^)/

      2023/04/06
    • koshoujiさん
      連投すみません。調べたら、こちらのレビューに書いておりました。結構面白い対談というか、私がぶった斬っているので、それが面白いかな、と。是非お...
      連投すみません。調べたら、こちらのレビューに書いておりました。結構面白い対談というか、私がぶった斬っているので、それが面白いかな、と。是非お読みいただければありがたく。先日亡くなられた大江健三郎先生は、この頃から体の調子があまり良くなかったのかもしれません。
      https://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/B007NLU55E
      2023/04/06
  • 人は妄想でこんなに暴走するものだと感じました。私も結構妄想をしたりするのですがこんな風にはなりたくないと思いました。綿矢りささん独特の世界観だったと思います。綿矢さんの本を読むときはなんとなく似たような雰囲気というか何というかとにかく独特ですね。

  • イチ彼と二彼と二股をしていると語られるも、実はイチ彼は中学からの片思いしている憧れの相手で、二彼はひょんなことから好意を持たれてアタックされ始めた相手。
    二彼のことを内心でボロクソに言っており、そんなに嫌なら別れればいいのにと思いながら読んでいたが、初めての告白、初めての彼氏というのは悪くないようで結局受け入れている。
    流されるままで行動力がない人物かと思いきや、イチ彼とは中学卒業以来会っていなかったのを海外留学中の友人の名前を語って同窓会を開いたり、話の後半では職場の仲がいいと思っていた同僚が部署違いの二彼に内密にして欲しかった恋愛相談を全て話してしまっていたことにショックを受けて職場に偽りの妊娠による休暇希望の届けを提出するほどの妙な方向にぶっ飛んだ行動力。

    なんとなく共感できる部分もあるのだが、もし私がこの主人公の友人の立場だとしたら、変に行動力のあるめんどくさい女だなとしか思えず笑
    最終的に二彼は良さげな男で、主人公も受け入れ、ハッピーエンドっぽい終わり方で良かった。

    もうひとつの短編、仲良くしようか、は場面があちこち変わりすぎて訳が分からなくなりつつ。
    風呂場で手首を切ったり、不気味な夢や空想、読んでいて展開が目まぐるしいので今のは夢か現実かよく分からなくなる。
    しかし女の子の登場から急に読みやすくなった。
    病み気味の主人公を平和な精神に導いてくれるのか?

    勝手にふるえてろは面倒な女の脳内、
    仲良くしようかは病んだ女の脳内。

    • きたごやたろうさん
      「蹴りたい背中」でしたっけ、なんか賞をお取りになられましたよね。
      それから「インストール」を読んで、基本的には綿矢りささんが作品を出せば読...
      「蹴りたい背中」でしたっけ、なんか賞をお取りになられましたよね。
      それから「インストール」を読んで、基本的には綿矢りささんが作品を出せば読んでいます。

      でもおっしゃる通り、私的には当たり外れが激しくて、途中で本を閉じてしまうこともたびたび…。

      綿矢さんには申し訳ないのですが。
      2024/12/10
    • まえさん
      私も蹴りたい背中は割と共感出来たものの、まだツボに入る作品は読めておらず。
      インストールや嫌いなら呼ぶなよはいずれ読みたいなと。
      タイトルの...
      私も蹴りたい背中は割と共感出来たものの、まだツボに入る作品は読めておらず。
      インストールや嫌いなら呼ぶなよはいずれ読みたいなと。
      タイトルのインパクトが強いのと、たまに話題にあがっていることもあったりで、なんとなく気になっちゃいますね。
      2024/12/21
    • きたごやたろうさん
      綿矢りささんデビューが鮮烈だったからね。
      ご本人もプレッシャーを感じながら出筆活動されているのではないかしら。
      綿矢りささんデビューが鮮烈だったからね。
      ご本人もプレッシャーを感じながら出筆活動されているのではないかしら。
      2024/12/21
  • 巷でたまに、「追う恋」と「追われる恋」の話を聞くことがありますが、それが同時に来た時、「自分のことが好きな人」と「自分が好きな人」、どちらを選ぶのが幸せなのでしょうか。
    本作はそんな2人の男性の間で揺れ動く1人の女性の視点から描かれ、生々しさと青臭い痛さがリアルに感じることができる作品でした。

    本作の主人公は26歳の男性経験がない女性。あくまで妄想上の話ですが、その女性には彼氏が2人いるという…

    1人目の彼氏の名は「イチ」。中学時代からの王子様でその女性がずっと憧れていた男性。とにかく本作では何かにつけて「イチ」を崇めるような高評価の連続で、主人公の溢れる恋心が表現されています。

    2人目の彼氏の名は「ニ」。同じ会社で働く同僚で、主人公ヨシカのことが気になり、たびたびデートに誘ってくる男性で主人公に好意を寄せている。とにかく、「ニ」への描写が酷く、妄想上の「イチ」と対比させられ何かにつけて難癖をつけるような描写の連続。

    本作の良かった点としては、ただの痛い女が恋愛に必要なモノや心構えを理解し始めて、これまでの妄想から、現実の2人とリアルに向き合う心理的成長が描かれているところが素敵だなぁと思いました。

    結局、「追う恋と「追われる恋」のどちらが幸せになれるのかという問いかけに対しては、人生経験の乏しい私では結論が出せませんが、どちらを選ぶにしても人をリスペクトし、人と向き合う精神は忘れずにいたいものです。

  • ふとした描写の言葉選びのセンスが大好き。そう表すかと舌を巻く。面倒臭い女の主人公だけど、どこか自分と似ている部分があって心がヒリヒリする。治った瘡蓋を剥がし、可愛い絆創膏を貼ったような読書体験。
    二作目の短編集は今まで読んだ作品の中でダントツで理解できなかった…私まだまだ読解力が足りないのかも。

  • 表紙の可愛さとパンチのある題名のギャップに惹かれて♪
    不器用で複雑な乙女心が繊細に描かれていた。
    恋愛と結婚の違い。愛するより愛されるほうが幸せなのか。
    そんな答えのでない永遠の問い。悩みすぎて時に暴走してしまうが、それは真剣に向き合った証でもある。
    自分の想いを伝えること。相手の想いを受けとめること。決して簡単なことではないけれど、どちらも大切だよね。
    主人公が相手と本音でぶつかりあえた時に初めて少し大人になれたような気がした。

  • まさしく今で言うなら厨二病か笑
    誰しもが妄想したりわがままな思考になるけど
    自我の目覚めに必要なステージが経験不足だと
    猫パンチ連打みたいな暴走が起きちゃうのかも
    恋愛小説というより成長覚醒小説みたいな

  • 『蹴りたい背中』以来の綿矢りささん。
    タイトルのキャッチーさとウサギちゃんの表紙のガーリーさに惹かれ読んでみました。

    冒頭の「とどきますか、とどきません。光かがやく手に入らないものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちは足元に転がるたくさんの屍になってライトさえ当たらず、私に踏まれてかかとのかたちにへこんでいるのです。」
    からもう夢中。夢見てるような達観しているような文章で気持ちよくさせて、さらにまた鋭すぎて痛気持ちいいツッコミをかまされて思わず、綿矢さま!と言いたくなる。冗談ですが。

    主人公は26歳の経理課のOLヨシカ。
    彼女には彼氏が2人いる。
    中学の頃からの思い人、イチ。
    数回しか話したことないが、中学の間ずっと観察していて、彼の事は完璧にわかっている。彼女の「天然王子」
    もうひとりは、ニ。
    最近彼女に告白してきて「スープの臭いのような」体臭をもっていて、自分のことばかり話している。

    この「脳内二股」に揺れる主人公に痛い辛い恥ずかしいと思いながらもほぼ一気読みでした。タイトルの意味が分かったときちょっと可笑しくなった。逆ギレじゃん。でも切実だね。

    解説の辛酸なめこさんが面白く、的をついているのですが、ネタバレなので本文読んでから読んだ方がいいです。

全785件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×