あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅 (文春文庫 き 36-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (538ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167843014

作品紹介・あらすじ

日中の国交が断絶していた文化大革命のさなか、中国から奇跡の帰国を果たした日本人戦争孤児が私の父だった。二つの国の間で翻弄された父はどんな時代を生き抜いてきたのか-21歳で旧満州に飛び込んだ著者が、戦争のもたらす残酷な運命と、歴史の真実を鮮やかに描き出した大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 城戸久枝 『あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅―』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/121052/

    みずみずしく、10年がかりで描き出された<br />歴史の真実 『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』 (城戸久枝 著) | 書評 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/articles/-/3515

    文春文庫『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』城戸久枝 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167843014

    今は新潮社から出ている
    城戸久枝 『あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅―』 | 新潮社
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  • 「落葉帰根」という言葉を教えてもらったのは
    もうずいぶん前のことだった
    その時は戦争に関する一つのキーワードとして
    記憶していたような気がする

    この一冊を読み進めていて
    何度も蘇ってくることばが
    この「落葉帰根」だった

    壮絶としか言いようのない
    満州からの引き上げの中
    運命としかいいようのない
    満州残留孤児である
    城戸幹さん(孫 玉福)の半生を
    辿るノンフィクション
    時代が文化大革命の時代であったこともあり
    想像を絶する事柄が次から次へと
    襲い掛かってくる

    第一部の
    それだけでももの凄い衝撃的な内容である
    のてすが

    第二部として
    城戸幹さんの娘さんである著者の久枝さんが
    中国と関わっていく物語(ノンフィクション)が
    その上に丁寧に重ね合わされて
    語られていく

    私たち日本人は
    被害者の子供である
    でも
    加害者の子供でもある
    ことを
    静かに 考えさせてもらえる
    すばらしい一冊です

  • 労作。はじめは慣れない中国語のルビと本の厚さに読み通せないかと心配したけど杞憂だった。文章のうまさ、構成の見事さ、そして何より内容自体、登場する人々のの魅力にひかれ時間ができると読み続けた。恥ずかしながらいわゆる中国残留孤児が国の支援で訪日調査を行う前に帰国していた人々のことを全く知らなかった。図らずも取り残されてしまった筆者の父が貧困の中で学問を志しながらも日本人であることから挫折を味わい、文化大革命の嵐の中日本への帰国を熱望するようになる。彼が日本の赤十字に宛てて書いた肉親捜しを依頼する手紙には涙を誘われた。それにしても文化大革命のさなかよくぞご無事で帰国された。さらに筆者は自信が中国へと留学し、父の親族と交わり、父の中国での暮らしを知り、日中関係に思いをいたし、日本に帰国した残留孤児たちのその後を追っていく。ここまでも十分素晴らしいのだが自分がこの本を素晴らしくしたのは軍人であった祖父について調べた点。中国でかつての日本軍人について非難され責任を問われた筆者が祖父の背景を調べ、軍人にもいろいろな採用形態の違いがあったことは知らなかった。祖父が戦後口をつぐんでいたのはその不遇故もあったのだろう。実は読書途中で軍人であった祖父は自分の立場をどう思っていたのか気になっていたのか疑問に思っていたのだが、解消され得心がいった。父親に連なる中国側の人々やかつての父の友人やご近所の方々も皆優しい。こういった方々のおかげでお父様が救われてきたことがわかる。筆者は恵まれなかった孤児たちのこともきちんと触れている。忘れてはいけない時代、人々がいることを気づかせてくれた一冊。

  • 中国残留邦人となった著者の父親、祖父、著者自身を描いたノンフィクションの名作。

    戦後の混乱、文化大革命、満州国軍、帰国後の苦難、面子の文化、反日教育、そして親子の絆など、歴史から現代に繋がる読みどころが満載である。
    絶望的な苦難の末に、日本に帰国する事となった息子が、敵国の子供を育てあげた母親との別れのシーンは、本当に泣ける。

    2018年現在で、マイベスト・ノンフィクションです。
    ここまでの作品までの作品にできたのは、著者の父親や祖父の几帳面な血統を著者が受け継いだのだと思う。

  • 「日本人が日本で日本人として生きる」
    当然のことが難しい状態に陥る。
    そのようなことにはなりたくないなぁ。。。

  • 自分の人生を切り開いていこうというお父様の覚悟が、身に染みました。

  • 中国残留孤児の父の半生を丹念に取材して書かれた一冊。事実の羅列をもう一歩掘り下げて書くべき部分もあると思った。前半の父の半生に対し、後半部の筆者の中国留学体験では、中国人との交流による日本人ならではの悩みや摩擦が描かれており、自分の体験と合わせて興味深く読めた。

  • 日経新聞夕刊 プロムナード 2013年1月8日

  • 中国に取り残され、国交断絶期に自力で帰国した戦争孤児の父。それがきっかけで学生時代に中国へ留学し、父のルーツを辿りながら、残留孤児の国家賠償裁判闘争へ身を投じる娘。父が育てられた小さな村の人々の温かさと、娘が出会った、愛国教育により反日思想を持った学生たちの日本に対する憎しみが合わせて描かれることで、中国人の複雑さも明確になる。そして、日本生まれの残留孤児二世である著者が出会った、残留孤児とその子弟の過酷な生活とその賠償をめぐる戦い。これだけの内容が破綻なくまとめられているのは、著者が背負った人生と父親の運命が日中間の歴史と、両国の国家と個人のあり方にも重なってくるからであろう。ドラマもよかったけど、それ以上に深いところまで書かれていたので、読み応えがあった。日中間でのゴタゴタがある今だからこそ、読むべき本。

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著者プロフィール

城戸久枝
1976年、愛媛県松山市生まれ、伊予市育ち。徳島大学総合科学部卒業。出版社勤務を経てノンフィクションライター。『あの戦争から遠く離れて── 私につながる歴史をたどる旅』(2007年/情報センター出版局)で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞ほか受賞。その他の著書に『祖国の選択──あの戦争の果て、日本と中国の狭間で』などがある。一児の母で、戦争の記憶を次の世代に語りつぐことをライフワークとしている。http://saitasae.jugem.jp/

「2019年 『じいじが迷子になっちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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