- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167849016
感想・レビュー・書評
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あけましておめでとうございます♪
今年も よろしくお願いします。
戦時中の一家族の生活を女中タキさんが淡々と話すのを、じっと聞き入る感じで読み進めた。
時子さんが巻き起こす?様々な出来事は、現代でも起こりうるように思って、妙に身近に感じた。
なんだろう…
全然好転しないコロナ禍で、まだ身近で感染がないだけにそれ程実感がわかないんだけど、気持ちは悶々としている所に、ちょっと明るい陽をさしてくれた本だった。
なんかキツくなってるのかなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
観たら読む…シリーズ。
先に手を付けた三島由紀夫作品を読み進めるスピードが上がらず、休憩がてらに手を伸ばしたら一気に読んでしまった…。うん、上手に書かれている。これを読んだ山田洋次が一目散に映画化への道を駆け登ったというのもよーく分かる。
戦争を史実として巨視的にみるばかりでなく、時には当時の民衆の心に降りて覗いてみることは重要な作業だ。ここ最近では大林監督作品を通してそうした視野をいただいていたが、少し前には妹尾河童の「少年H」を通して感じさせてもらったし、いくつかの小津作品の鑑賞時にもにも味わった。継続はちからなり。
終盤の視点の転換は活字でのほうが緻密に語られていたように思う。うん、もう一回観よう、近いうちに。黒木華に魅入るばかりでなく米倉斉加年の追悼の意味も込めて。
彼のプロフィールをみていて彼こそが板倉正治そのものだったということにも気がついた。彼の作品にも触れてみたい。 -
着物を持って行って食糧を調達したとか、親から伝え聞いて少し知っていることもありました。戦時中のお話を、女中という立場で語っているところがとても新鮮。昔の正義感もちらほら。小さいおうち、は子供のころ読んで今でもストーリーを思い出せる良本。そんな本との対比も。いつか精読すべき。(できるかな?)
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赤い三角屋根の洋館と、時子奥様との出会いは、十四歳のタキちゃんにとって、それはもう夢のような世界であったに違いない。
戦争という暗い背景があったにもかかわらず、そこでの生活は華やかで、多少のユーモアも交えて、ロマンチックに描かれている。
「恋愛事件」も、甘く切ない。
昭和初期の女性たちも、今の時代と変わらず、生き生きと暮らしていた様子がよくわかる。 -
戦前戦後を舞台とした小説というのは、どこかじっとりとした暗さを感じたりもするのですが、この本はとてもからりとしていて、楽し気な部分が多いです。そもそも主人公・タキの記憶を綴った覚書という形なので、美しく、幸せなものしか記録に残していないのだと思います。
美しく優しい奥様と、かわいらしいぼっちゃまとのひと時は、タキにとってとても幸せだったのでしょう。そして、奥様はタキにとって、雇い主であると同時に愛しい人でもあり、ある種もう一人の自分自身でもあったのではないかと感じました。
とても良い本でした。 -
戦争前後に生きた女中の生涯
戦争前後に生きた女中タキの哀しみは80を過ぎ亡くなるまで続いた、と言う。それは長く暮らしを共にした家、東京の街が戦争で期待を絶するほど酷く、一つの屋根の下で家族の様に暮らしていた世界から戦争で人も家も全てを断ち切られるという哀しみは想像を絶する。だが、昔を語る絵本が「イタクラ・ジョージ記念館」で現存していることで救われたのではないかと、想像したい。 -
設定が素晴らしく、登場人物や時代の空気感を表す文体が見事。最後の最後まで読ませる、素晴らしい物語。
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昭和5年春、女中奉公のため12歳で東京に出た<布宮タキ>が、郊外に建つ〝赤い三角屋根の洋館〟を住まいとする平井家での奉公をとおして、忍び寄る戦争の影に怯える不穏な時代に生きた、光と闇の交錯する人間の側面が語り紡がれていく。 晩年の<タキさん>が遺した「ノート」と宛先のない「未開封の封書」の謎が、静かな波紋をまき起こす「最終章」まで、息を尽かせぬ直木賞受賞の名編。
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第143回直木賞受賞作。
太平洋戦争の前後の時期、13歳で東北から女中奉公で東京へ出たタキは、何件目かの奉公先で結婚したばかりの若く美しい時子奥様に出会う。その家族は数年後山手線から少し外れた地域に赤い屋根の小さな洋館を建てる。まだお嬢さんのように若く美しい時子奥様に魅せられ、タキはその家を、【終の棲家】と勝手に思い定め、奥様に心から仕え、その一人息子に愛情を注ぐ。
80歳になる老婆の回顧録と思って読み進めるが、タキの心に引っかかったできごととしていくつかの布石が置かれるので、先が楽しみになる。
甥に読ませるつもりで書いている手記という体であったのに、あるところから、甥に読ませられない内容になり、その手記を隠してしまう。そしてとうとう続きも書かなくなってしまう。
タキが亡くなり、ある日その甥が手記を発見する。
最終章は甥に引き継がれた形で始まる。その最終章が圧巻。
ごく平凡に懸命に生きた一人の女にも、晩年思い出しても心をえぐるような後悔があり、実は近しい人はその秘密に気づいていた、知っていた、受け入れられていた、というところに、ほのぼのとした気持ちになった。