聖夜 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2013年12月4日発売)
3.53
  • (15)
  • (32)
  • (33)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 352
感想 : 33
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784167857028

作品紹介・あらすじ

この心の震えは、祈りに似ている



“俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた”。聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり。

みんなの感想まとめ

音楽と青春の葛藤を描いたこの作品は、主人公の鳴海一哉がオルガン部での仲間たちとの交流を通じて成長していく姿を描いています。カトリックの一貫校で育った一哉は、音楽に対する情熱と家族の複雑な背景に悩みなが...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私はこの作品に郷愁を感じました。

    カトリックの初等部から大学まである一貫校の高等部に通う、主人公鳴海一哉は、父は牧師、母は元ピアニストです。父と母はドイツでバッハを通して知り合いましたが、母は一哉が10歳の時にドイツ人のオルガン教師と出会い、離婚してドイツに渡ってしまい、祖母と三人で暮らしています。
    一哉はキリスト教を全く信仰していませんが、聖書研究会とオルガン部に所属しています。
    メインの話はオルガン部の五人の活動なのですが、母が元ピアニストの一哉は、皆に一目置かれている存在です。
    しかし、一哉はオルガン奏者として最も、素質のあるのは、五人の中では、天野真弓だと見抜いています。

    俺は天野のデカい目をしっかり見て言った。
    「あんたは演奏者だと思うね」
    「昔、ピアノのコンクールで課題曲にバッハのインベンションがあったんです。全国コンクールの東京予選でした。私の二つ後くらいの順番の男の子が、ものすごくいい演奏をしたんです」
    「何のコンクール?いくつの時?」
    「俺も出てたかもね」
    「その男の子、鳴海さんだと思います」
    天野は迷いなく言い切った。

    オルガンとバッハと礼拝と聖書。
    私も、高校の三年間はカトリックの学校でした。
    毎日、聖歌を歌っていました。
    オルガンではなくピアノをやはり13年間習っていましたが、バッハは特に好きな作曲家で、先生に発表会でバッハを薦められて弾いたこともあります。
    読んでいるだけで、泣きたくなるような、懐かしいものばかりの文章でした。

    作者の、佐藤多佳子さんはあとがきで「作品のモチーフに合った時代を自分なりに探しました。キリスト教の信仰を持つことはなかった私ですが、中学高校の六年間、毎日、講堂の礼拝で聴いたオルガンの音と讃美歌の歌声は忘れがたく、思い出という以上に大切なものに思えます」とおっしゃっておられますが、ここにも佐藤さんの作品をこんなに懐かしく読んでいる者がいます。と叫びたくなる物語でした。
    最後は、タイトル通り、クリスマス・コンサートの終わりとともに終了します。

    • やまさん
      まことさん
      こんにちは。
      朝そうそうからお騒がせしました。
      つい興奮してしまいました。
      もう何十年ぐらいになるのですか「沈まぬ太...
      まことさん
      こんにちは。
      朝そうそうからお騒がせしました。
      つい興奮してしまいました。
      もう何十年ぐらいになるのですか「沈まぬ太陽」を読んだ時の記憶が湧きだしたのです。
      自分でもビックリしています。
      山崎豊子さんの本は、「白い巨塔」を田宮二郎さんが映画でやりそれを見て、本を読んだのが始まりです。
      「華麗なる一族」「不毛地帯」など出版される本を読んで行ったと思います。
      やま
      2019/11/18
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは!
      山崎豊子さん、お好きなんですね。
      『白い巨塔』はドラマで唐沢寿明さん主演の方を観たかもしれません。
      大御所の方...
      やまさん♪こんにちは!
      山崎豊子さん、お好きなんですね。
      『白い巨塔』はドラマで唐沢寿明さん主演の方を観たかもしれません。
      大御所の方ですよね!
      2019/11/18
  • 主人公が生意気なのかカッコつけていて好きになれず、2/3くらいまでは音楽の本だからということだけで我慢して読んでいました。ところがです、核心部分が表に現れ始めた高円寺と新宿の夜から引き込まれ始め、翌日のおばあさんとの会話では涙が出ました。その後の父の部屋での場面は最初から心臓が押しつぶされてしまい、お母さんからの手紙を明かされてからは号泣でした。もちろんその後はずーっと涙目で読まされました。メシアンとBWV533を初めて聴いてみました。こんなマイナーな曲を高校生が部活で演奏するのかと驚きです。20回以上聴いてみましたが、バッハはまだ分かるとしてもメシアンは未だに"なぜこの曲?"という感じです。確かに少しロックっぽいかなとは思いますが。

  • オルガン専門の高校生たちって珍しいな
    メシアンの曲を聴きながら読みましたが、この局に惹かれるってなかなかレアだなぁと。ラストシーンは唐突でびっくりしました。元々オルガンが上手い人の一人称なのでカタルシスもあまりない感じ…
    ただ純粋な音楽小説を読めたのは嬉しかっです

  • キリスト教系の高校なのかな、学校のオルガン部を舞台にした青春物語という感じ。この手の話は苦手なのだが、淡々とした主人公で、淡々とした語り口で、最後までスラーっと読めてよかった。

  • さらっと読めるけど、心に染みる作品だった。
    ラストは、カラマーゾフの兄弟のラストをオマージュ?

  • 信仰も何もない私だけど、教会やパイプオルガンが醸す静謐で糸の張ったような空気は、どこかにいるかもしれない神様へ思いを巡らせる。

    母親の手紙の内容が気になった。

  • 信じられない神と、思い出したくない母。
    けれども、どんなときにも、音楽は彼とともにあった。


    『聖夜』 佐藤多佳子 (文春文庫)


    やっぱりいいな、佐藤多佳子さん。
    今これを表現するにはこの言葉をおいて他にないぐらいの的確な言葉がスコーンと来る。
    一行一行、一文字一文字の言葉の全部が心の中に入ってきて、あふれてこぼれそうだ。

    School and Music シリーズ第二弾。


    鳴海一哉は、ミッション系の高校に通う18歳。
    家は教会で、父は牧師、母はオルガン奏者という環境に生まれ、小さな頃から神様やオルガンに触れて育った。

    ところが一哉が10歳のとき、母がドイツ人のオルガン奏者と駆け落ちをして、家を出て行ってしまう。
    家族は壊れ、母との思い出は、悪霊のように一哉を苦しめた。

    神を信じなくなり、人と打ち解けず、母の罪を“神”を通して許そうとしている父に反発する。
    これはキツイな。
    親子の問題に神が介入してくるのか……

    物語はそんな一哉の一人称で語られていくのだ。
    膨大なモノローグの洪水におぼれそうになる。
    引きずり込まれて息が苦しくなる。

    大人びてひねくれた少年のアドレッセンスの終盤。
    無駄な寄り道以外の何ものでもない。
    なのになぜ、こんなにも力強く真っ直ぐに、ぐんぐん道を進んでいるように見えてくるのだろう。


    母がよく弾いていたメシアンという作曲家の曲を、一哉は文化祭のコンサートの演奏曲に選ぶ。
    しかし彼にとってメシアンは、母の記憶と直結しており、不安と恐怖の象徴であり、彼言うところの開けてはならないドアでもあった。

    文化祭の日、一哉はメシアンを弾かなかった。
    コンサートを無断欠席したのだ。
    友人の家でレコードを聴き、ロックバンドのライブに行き、その日、家へは帰らなかった。


    一哉が好きなミュージシャンとして、ELPのキース・エマーソンの名前が出てくる。
    この物語の時代は1980年なのだ。

    私は中三だったな。
    携帯もパソコンもない時代。
    必要不必要にかかわらず情報があふれている今とは違って、好きなことを極めるにはそれなりの努力がいった時代。
    不便だけど、誰も不便だとは思わなかった。
    精いっぱい背伸びをして、外の世界を見ようとしていた。
    一哉もそんな時代の少年なのだ。


    クラスメイトの深井や、キーボーディストの笹本さんとの出会いが、一哉を変えていく。

    オルガン部で弾いた初めてのパイプオルガンの音色や天野の演奏が、干からびた土に降る恵みの雨のように彼の心を潤し、まるでつぼみがふわりと開いたみたいに、彼の心を優しくした。


    父の部屋で二人きりで話をするシーンがとてもよかった。
    いつも正しい父が、ちょっとだけ揺らぐ。
    読んでいてドキドキする。
    子供が主役でありながら、大人の苦悩もきちんと手を抜かずに描かれていて、大人として、姿勢を正して物語と向き合おうという気持ちにさせられる。


    父はいつも正しくて、神と家族の比重が同じで、でも母は、それを受け入れることができなかった。

    祖母は、悪いことのできない父のことをかわいそうだという。

    「あんなに完璧な父なのに、その完璧さをものともせず、祖母はさらに大きな愛で包み込んでいる。悪さのできない父さんがかわいそうだって?そんなこと誰が思う?そんなことを思う人は、この世に一人だ。彼の母親だけだ。父がうらやましい。あんな母親がいて。」

    そして、これがすごかった。

    「どんな女でもいい。お母さんにもう一度、会いたい。」

    震えた。
    これが一哉の裸の心なのだろう。
    でも。
    自分に母親がいないことと、父に母親がいることをなぜ同列に考えてしまうの?
    なぜただの父子の問題に、そんなややこしい感情が入り込まなくちゃいけないの?


    父は、一哉あての母からの手紙をずっと隠していたことを告白し、一哉に手紙を託す。
    一哉は、クリスマスコンサートでメシアンがきちんと弾けたら、母からの手紙を読もうと決めた。

    お父さんの無垢な正しさが、その安定感が、本当は見えないところで、一哉を支えていたんじゃないかな。


    ラストシーンはコンサートの前日練習。
    オルガンと一体になる幸福感や神への感謝。
    音楽は人を変えることができる。
    いくら道をそれたって、やっぱり神様と音楽に見守られて、君は育ってきたんだね。


    牧師として最後までブレることのなかった父、手紙の向こうで待っている母、ともに音楽を生み出すオルガン部の仲間たち。
    最後はとても穏やかな優しい気持ちで読み終われる。

    本番がうまくいきますように……

    祈りながら、本を閉じた。

  • 両親の離婚を背景に屈折した高校3年生の男の子が主人公。
    自ら性格が悪いと公言。父は真面目な牧師。
    オルガン部での日々と抱えている家族との問題。
    ありきたりな青春物語ではない葛藤が描かれ、登場人物も味がある。

  • パイプオルガンの音が響いてくる。
    難曲に挑む主人公がオルガンと対話し、母のこと、父のこと、宗教のこと、自分のこと…様々なものに向き合っていく。
    クリスマス・コンサートまで書かれていなかったけど、自分なりに想像できるからこれはこれでいいな。

  • 白い部分が多くてスカスカ。高校生の作文。

  • ミッションスクールに通う男子高校生の苦悩と成長を描いた音楽青春小説です。

    シリーズなのかな?前作にあたる作品があるようですが、本作のみでも満足度はかなり高い。
    何気ない日常に、悩みに、光明に、胸がふさがれる。彼等を見ているだけで涙が出そう。
    読み終えて早速YouTubeで曲を探したのは言うまでもない。これ弾いちゃうんだもんな…。

  • 主人公は、真面目な牧師の父、鍵盤楽器奏者の母の間に生まれた鳴海一哉という。
    オルガンやピアノについては、高い技術を持った少年。
    母はだいぶ前に家を去り、母のこと、母が好んで弾いたメシアンのオルガン曲のことがずっと心にわだかまって、どこか斜に構えた風になっている。
    学校のオルガン部の部員やコーチとの関わり、同級生の影響で、少しずつ音楽と率直に向き合うことができるようになっていく。
    そうした彼の成長の過程が美しい。

    ただ、文体のせいなのか―ちょっと違和感があって、すっと物語に入り込めなかった。
    なぜなんだろう?
    最初の2ページくらいを読み進めて、語り手でもある主人公が男子高校生だとわかったときは、結構衝撃的だった。
    時代も、現在の二、三十年前あたりか?
    作者が佐藤さんとわかっているからか、大人の女性が語っているようにしか思えなくて…。

  • 読んでいくうちにどんどん引き込まれていった。

    私にはすんでのところでの勇気がなくて彼のように冒険(?)できなかったことがとても悔やまれる。

  • School and Music第二弾。第一弾が短編と中編が四つの「第二音楽室」第二弾は長編が一つの「聖夜」前作のさわやかな感じもよかったけど、重たくても主人公の気持ちが丁寧に描かれている「聖夜」の方が好きでした。正しくて神様みたいな父親が、らしくない普通の父親としての思いを、感情をさらけ出した会話が一番印象に残っています。音楽やキリスト教などわからないところもあったけど楽しめました。上橋菜穂子さんの解説もすごくよかったです。

  • きれいなお話だった。
    要約するなら「辛い過去を抱えた多感な17歳の少年(一哉)の夏休みから聖夜にかけての成長物語」だけど、その過程の彼の心の動きを丁寧に描いている。
    母を求めて求めてもがいている彼の辛さがたまらなくて、ぎゅっと抱きしめてあげたくなる。
    天野さんの音楽に対するまっすぐな気持ち、祈りのような音が彼を変えていく。だけど、安易な恋物語にもっていかなかったことが好印象。
    母親からの手紙が読みたかったなぁ~

  • 【この心の震えは、祈りに似ている】“俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた”。聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり。

  • School & Musicシリーズ第二弾。
    前作が短編集だったのに対して、本作は一作で一冊。

    主人公は、キリスト教系の高校でオルガン奏者を弾く
    高校三年生男子。オルガン部の部長も務めている。

    牧師一家で育ったり、母親が出て行ってたりと
    かなり普通ではない生い立ちのためか、
    性格はかなり屈折している。

    といっても、物語が主人公の一人称で語られるため
    読んでいる我々には分かる訳で、周りの人からは
    そこまでひねくれているとは思われていない様子。
    その証拠に「隠れファン」が結構いるとか(^ ^

    その彼が、文化祭で発表するオルガンの難曲に挑みつつ、
    音楽のこと、自分のこと、家族のこと、過去のことなど
    様々に思い悩み、時に成長し、時にやけを起こし...

    短い期間にいろいろな人と出会い、経験をする中で
    少しずつ成長を見せて行く、というお話。
    それほど大きな事件が起きる訳でもなければ、
    感動の涙にむせぶエンディングが用意されてもいない。
    むしろ「大舞台の前日」で物語が終わっており、
    ハッピーエンドかどうかすら分からない(^ ^;

    それでも、当人が自覚しているかどうかは別にして、
    主人公の中で何かが変わり、確かに成長が見られる。
    後輩と交わす視線一つでも、それが感じられるほど
    作者は主人公の心象を丁寧に描き出している。

    抑えに抑えた静かな文体で、大きな事件もないのに、
    何もないはずの空間から魔法のように「物語」を紡ぐ
    この作者の力量はハンパない(^ ^;

    中山七里さんの岬洋介シリーズと同じく、
    本作でも印象的な「演奏シーン」が数多く出てくる。
    中山氏とはまた違うアプローチの「高校生なりの感性」で
    描かれる演奏シーンは、これまた説得力がある。

    また楽器に向かっている以外のシーン、たとえば
    歩道橋の上から車や人を眺めている場面などでも
    「音楽」を感じられる描き方をしているのも見事。

    いやはや本当に「ハズレのない作家」である(^ ^

  • 佐藤多佳子の聖夜を読みました。
    School and Musicというシリーズで書かれた小説とのこと。

    主人公の鳴海は小さい頃からオルガンを弾いていたので、ミッションスクールの高等部でオルガン部に入っています。
    鳴海の母は牧師の父を裏切って駆け落ちしてしまったため、彼はトラウマを抱えて高校生活をおくっています。

    母親が好きだったメシアンの曲を選んで練習をするのですが、自分のできばえに納得が出来ません。
    発表会当日鳴海は演奏をすっぽかしてしまうのでした。

    鳴海と彼を取り巻く友人たちとの交流が温かく描かれていました。

全29件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤多佳子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×