江戸の備忘録 (文春文庫 い 87-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167858025

作品紹介・あらすじ

面白くてためになる歴史随筆集奇怪を好んだ信長、神仏を脅した秀吉、大将のつとめは逃げることと心得ていた家康……。気鋭の歴史家が日本史の勘どころを伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史研究者によるエッセイ。扱うテーマが毎回違うが、それだけに読みやすく面白い。一つ一つのテーマを深掘りしても面白いかも。

  • 歴史好きには見逃せない、戦国末期から幕末までを網羅した歴史随筆集。
    江戸城無血開城をめぐる西郷隆盛と勝海舟との会談の裏には、西郷に決断を促した女性(78歳の尼さん)の存在があったとか。
    幕末の発明王からくり儀右衛門が西洋に生まれていたら、天才工学者として、名をの残していただろうとか。
    歴史教科書には記されない逸話の数々。
    歴史的事実を述べながら、現代にちくり一言も。
    江戸時代の寺子屋教育は、子供が能動的に自分の手と口を動かして成り立つ「手と口の学び」であった。しかし、現代は「目と耳の学び」であり、自分で勝手にやる創造的な人間や発想は生まれにくくなっていると。

  • <目次>


    <内容>
    朝日新聞土曜版に連載の記事をまとめた本の文庫化(原本は2008年刊)。磯田さんは古文書をきちんと読めこめる稀有な人。江戸時代あたりが専門だが、現代的なテーマとつないで解読することができる。なので、この本の内容も現代的なところでは古いが、歴史的な古びていないので信憑性が高い。文庫版のあとがきに書かれている、取り上げたテーマの解説がいい。

  • 2021年10月11日読了。

    『江戸の備忘録』磯田道史 (文春文庫)

    NHK「英雄たちの選択」でお馴染み歴史学者磯田先生の本。
    私は歴史オタクなので磯田先生のことは尊敬しています。
    備忘録と書いてあるだけに1つのお話は短い。
    先生お得意の古文書からのエピソードで成り立っています。

    歴史の教科書には載ってないお話なので楽しく読むことが出来ました。

    特に気になった人物は尼僧、大田垣蓮月。
    歌人でもあり陶芸家でもある。
    大田垣蓮月の作品は偽物も多いが彼女自身は偽物を認めて「自分の焼き物が誰かの助けになれば」と援助していたという。
    晩年は慈善活動に勤しんでいたがそれまでの彼女の人生は穏やかなものではなかった。
    もっと大田垣蓮月のことを知りたいと思ったのでした。
    忘れぬうちに備忘録に大田垣蓮月の名を書き記しました。

    磯田先生の本は面白い。
    先生の語り口調を思い出しながら読んでました。
    書庫で古文書を貪って読んでいるとのことでしたが、磯田先生らしく想像出来て「ふふふ」と笑ってしまったのでした。
    私も古文書を少しかじっているのだけど、いつか先生のように貪るほど読めるようになりたいと思いました。

  • 日本史に生命を吹き込むような本

    今の人と同じく武士も農民もみんないろんな大変なことがあったけど、今と同じように滑稽なこともあった
    江戸時代が魅力的にも感じるけど、江戸時代は私が思っているより悲惨で、そして私が思っているより人間味に溢れた時代なんだろうな

    今が遠く昔のことになった時、私たちの人生の浮き沈みはほんのちょっとした一喜一憂に見えるだけなんだろうなと思うと、肩の力が抜ける
    ただ、古文書に残っているように、無名でも尊敬に値する人生を送った人も数多いるのだから、できるだけ自分が正しいと思うように生きるべきなんだろう

  • 歴史に関する短い随筆がずら~りと。索引付きの親切仕様。
    ぱらぱらとめくって、ぽちぽち読むのが楽しい。
    だが、短いながらも興味をそそる内容、多し。
    江戸時代の左利き、早起きと朝寝坊、長かった披露宴、識字率、
    江戸庶民と名字・・・目から鱗の話が多く、愉しかったです。

  • 朝日新聞の土曜版に連載したものを書籍化したもので、60編のものが纏められている。全て短編なので、要領よく纏められており、読みやすい。
    「日本人の識字率」では、日本人の読み書き能力が高いのは「江戸時代の遺産」であると教えられてきたが、どうもそれは怪しいとの事。江戸時代の識字調査はないが、明治の初めに長野県のある地域で行われた調査では、
    ・数字も名前も書けない:35%
    ・出納帳がつけられる:15%
    ・手紙や証書が書ける:4%
    ・公文書に差支えない:2%
    ・新聞論説を理解できる:2%
    つまり、
    自分の名前が書ける程度の識字率は65%
    新聞を読んで政治論説が理解できる人は2%
    ということで、一般の日本人が活字を読んで政治や社会を理解できるようになったのは、ここ百年ほどのことだそうです。

    また、その識字率に関する戦国時代のエピソードが面白い。本田作左衛門という奉行が、三河で百姓が守るべきことを書いた高札を三河中に建てたが立てたが少しも守られない。そこで百姓を捕まえてきた時に、奉行はその百姓の顔をじっとみて、その後放免した。そして国中に建てた高札を全部取り換えた。
    新しい高札には「○○すると、さくざえもんがきるぞ」とひらがなで分かりやすく書いた。すると犯罪が一気に減ったそうだ。
    「よい政(まつりごと)はわかりやすい言葉からと言うことらしい」等々の類のことが満載された一冊で、暇な時の肩の凝らない読書にお勧めです。

  • 江戸の歴史にまつわる短文集。

    江戸時代の識字率が高かったという話を無条件に信用すべきでない、という「日本人の識字率」は印象的だった。
    たしかに、いわれてみると何をもって「識字」する状態だとみなすかは問題だ。
    自分の名前や数字くらい読めたという人は6割を超えても、それが書ける人は約四割と下がり、出納帳がつけられる人となると十五パーセントくらいだとのこと。
    当時の他国の状況との比較は具体的にされていなかったけれど、これまで「江戸時代の識字率は高かった」と無条件に信じてきたから、ショッキングな話だった。

    江戸時代の左利きの割合はどれくらいか。
    天皇、将軍、大名は何時くらいに起きていたのか。
    こんな、ちょっとした、しかし調べるのが大変そうな話がたくさん出てきて、楽しい。
    (漱石や鏡子夫人の起床時間をめぐる夫婦喧嘩の話も出てくるが…)

    この間読んだばかりの、冲方丁「光圀伝」ともかかわる内容もあった。
    家康が子どもたちに水練を熱心に仕込んだこと。その結果、尾張の徳川光友、水戸の徳川光圀など、大変な水練の達人が生まれたとのこと。
    特に、光友が江戸の人々の前で、八丁堀に飛び込み、立ち泳ぎをしたまま食事して見せたという「昔話」のエピソードには、無性に笑える。

    「光圀伝」では水戸藩(佐々介三郎)が作ったとされる「土芥寇讐記」。
    当然のことながら、ここでは編者不明。
    ああ、よかった。冲方さんのフィクションを信じ込んでしまうところだった。
    タイトルだけ知っていた、磯田さんの「殿様の通信簿」は、この本に依るものだそうだ。
    今度見かけたら読んでみよう。

  • 教科書には書いて無い一般の人達の話が面白かった。

  • 随筆集というより雑学集に近い。江戸時代に関する話がおもしろく、かつ簡潔明瞭に書かれている。あとがきを見て新聞の連載がもとになっていると知り、納得した。同じくあとがきに「学術的なものを書く場合であっても、誰にでも伝わる達意の文章を心がけたいと思う」とあるが、この本はまさにそれを体現している。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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