江戸の備忘録 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167858025

作品紹介・あらすじ

面白くてためになる歴史随筆集奇怪を好んだ信長、神仏を脅した秀吉、大将のつとめは逃げることと心得ていた家康……。気鋭の歴史家が日本史の勘どころを伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史好きには見逃せない、戦国末期から幕末までを網羅した歴史随筆集。
    江戸城無血開城をめぐる西郷隆盛と勝海舟との会談の裏には、西郷に決断を促した女性(78歳の尼さん)の存在があったとか。
    幕末の発明王からくり儀右衛門が西洋に生まれていたら、天才工学者として、名をの残していただろうとか。
    歴史教科書には記されない逸話の数々。
    歴史的事実を述べながら、現代にちくり一言も。
    江戸時代の寺子屋教育は、子供が能動的に自分の手と口を動かして成り立つ「手と口の学び」であった。しかし、現代は「目と耳の学び」であり、自分で勝手にやる創造的な人間や発想は生まれにくくなっていると。

  • 歴史に関する短い随筆がずら~りと。索引付きの親切仕様。
    ぱらぱらとめくって、ぽちぽち読むのが楽しい。
    だが、短いながらも興味をそそる内容、多し。
    江戸時代の左利き、早起きと朝寝坊、長かった披露宴、識字率、
    江戸庶民と名字・・・目から鱗の話が多く、愉しかったです。

  • 朝日新聞の土曜版に連載したものを書籍化したもので、60編のものが纏められている。全て短編なので、要領よく纏められており、読みやすい。
    「日本人の識字率」では、日本人の読み書き能力が高いのは「江戸時代の遺産」であると教えられてきたが、どうもそれは怪しいとの事。江戸時代の識字調査はないが、明治の初めに長野県のある地域で行われた調査では、
    ・数字も名前も書けない:35%
    ・出納帳がつけられる:15%
    ・手紙や証書が書ける:4%
    ・公文書に差支えない:2%
    ・新聞論説を理解できる:2%
    つまり、
    自分の名前が書ける程度の識字率は65%
    新聞を読んで政治論説が理解できる人は2%
    ということで、一般の日本人が活字を読んで政治や社会を理解できるようになったのは、ここ百年ほどのことだそうです。

    また、その識字率に関する戦国時代のエピソードが面白い。本田作左衛門という奉行が、三河で百姓が守るべきことを書いた高札を三河中に建てたが立てたが少しも守られない。そこで百姓を捕まえてきた時に、奉行はその百姓の顔をじっとみて、その後放免した。そして国中に建てた高札を全部取り換えた。
    新しい高札には「○○すると、さくざえもんがきるぞ」とひらがなで分かりやすく書いた。すると犯罪が一気に減ったそうだ。
    「よい政(まつりごと)はわかりやすい言葉からと言うことらしい」等々の類のことが満載された一冊で、暇な時の肩の凝らない読書にお勧めです。

  • 江戸の歴史にまつわる短文集。

    江戸時代の識字率が高かったという話を無条件に信用すべきでない、という「日本人の識字率」は印象的だった。
    たしかに、いわれてみると何をもって「識字」する状態だとみなすかは問題だ。
    自分の名前や数字くらい読めたという人は6割を超えても、それが書ける人は約四割と下がり、出納帳がつけられる人となると十五パーセントくらいだとのこと。
    当時の他国の状況との比較は具体的にされていなかったけれど、これまで「江戸時代の識字率は高かった」と無条件に信じてきたから、ショッキングな話だった。

    江戸時代の左利きの割合はどれくらいか。
    天皇、将軍、大名は何時くらいに起きていたのか。
    こんな、ちょっとした、しかし調べるのが大変そうな話がたくさん出てきて、楽しい。
    (漱石や鏡子夫人の起床時間をめぐる夫婦喧嘩の話も出てくるが…)

    この間読んだばかりの、冲方丁「光圀伝」ともかかわる内容もあった。
    家康が子どもたちに水練を熱心に仕込んだこと。その結果、尾張の徳川光友、水戸の徳川光圀など、大変な水練の達人が生まれたとのこと。
    特に、光友が江戸の人々の前で、八丁堀に飛び込み、立ち泳ぎをしたまま食事して見せたという「昔話」のエピソードには、無性に笑える。

    「光圀伝」では水戸藩(佐々介三郎)が作ったとされる「土芥寇讐記」。
    当然のことながら、ここでは編者不明。
    ああ、よかった。冲方さんのフィクションを信じ込んでしまうところだった。
    タイトルだけ知っていた、磯田さんの「殿様の通信簿」は、この本に依るものだそうだ。
    今度見かけたら読んでみよう。

  • 相変わらず磯田さんはすごい!
    古文書の翻訳家、それも興味深いものばかりを厳選している。どれだけの古文書を読み尽くせばここまで行けるのか、感心させられる。
    相場の格言
    思い入れ違いの節は早速手仕舞、40-50日は休むべし!売りならし、買いならしは厳禁!
    まず、損失の見積もりをすべし!

  • 20190313

  • 今をときめく歴史学者・磯田道史さんの本。

    『武士の家計簿』や『殿、利息でござる!』(そういや羽生結弦くんも出演していた)などの原作を書いた方。

    古文書を、まるで新聞を読むようにスラスラ読めるという磯田さんが、古文書から拾い上げた色々な人物のことをわかりやすく紹介してくれている。

    この本を読んで良かったのは、東芝の祖になった「からくり儀右衛門」こと田中久重について知れたこと。

    9歳で金庫の鍵構造と同じ物を独自に作ったことから始まって、文字書き人形を作り、蒸気機関を作り、蒸気船を作り、アームストロング砲を作り、自転車を作り、通信用電信機を作り……。

    こんなレオナルドダヴィンチみたいな天才が幕末の日本にいたのね。知らなかった。

    これだけでもこの本を読んだ収穫があった。

    他にも、大田垣蓮月(まるでマザーテレサじゃないか)とか、上杉鷹山(今の政治家に見習ってほしい)とか、教科書では習わないような歴史上の人物の興味深い話がたくさん。

    「秀吉は権力や財力で何でもできると思っており、稲荷大明神を脅したことさえある」っていう話もツボだった。何ていうおっかないことを……。だから滅びたんじゃないのか。お稲荷さんは怒ると怖いんだぞ。

    とりあえず、からくり儀右衛門について書いた本を探そう。

  • 軽妙な語り口で面白かったが、複数の文章をそのまま切り貼りしたようで重複が多く、読みづらかった。書籍化するにあたって上手く編集できなかったものか。ただ、歴史的な人物だけでなく、名もなき人々や行政のあり方も取り上げられており、トピックのチョイスが秀逸。特に、昔の祖父と孫の関係には、現代に通ずるものを感じてほっこり。江戸の銃管理や政府のサイズの話も面白かった。

  • 戦国末期から幕末までのこの国の歴史を多方面から語る、歴史随筆集。

  • 竜宮やお稲荷様に命令する秀吉
    武士は早起き
    女性が記録した岐阜城籠城戦

    二宮金次郎の離婚
    江戸の少子化対策、闇の堕胎を許さない
    貧乏人の子は多産多死

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著者プロフィール

磯田道史(いそだ みちふみ)
1970年、岡山県生まれの研究者。茨城大学、静岡文化芸術大学などを経て、国際日本文化研究センター准教授。専攻は日本近世・近代史・日本社会経済史。
実家は備中鴨方藩重臣の家系で、古文書が豊富にあった。高校生のとき実家と岡山県立図書館の古文書を解読している。京都府立大学文学部史学科、慶應義塾大学文学部史学科を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。「近世大名家臣団の社会構造」で史学博士号取得。
2003年刊行の『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』が第2回新潮ドキュメント賞を受賞し、2010年森田芳光監督により『武士の家計簿』のタイトルで映画化し大ヒット。2015年には『天災から日本史を読みなおす』で第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。その他代表作に『日本史の内幕』などがあり、多くの新書がヒット作となっている。

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