円卓 (文春文庫 に 22-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167861018

作品紹介・あらすじ

二〇一四年、芦田愛菜主演で映画公開決定!三つ子の姉をもつ琴子は、口が悪く偏屈な小学三年生。周りの価値観とぶつかり、悩み考え成長する姿をユーモラスに温かく描く感動作。

感想・レビュー・書評

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  • なんやこれー、めっちゃおもろいー
    ことこ、めっちゃかわいいー

    的な感じで前半はサクサクと読み進めていったのだけれど、日常英会話辞典が出てきたあたりから、作品の様相が変わってくる

    ことこの言葉を借りれば、重力によって、ぐぐっと、気持ちをひっぱられる
    言葉にできないもどかしさ、戸惑い、悩んで、大人になるということ

    前半と後半で、ことこは大きく成長する
    読者は、読み始めたら最後、渦をまく円卓の中に放り込まれたように、この作品の中から出られない
    それはまるで、人生、そして、生きるということは、確実に死に向かっているということ
    大人になるということは、死に近づいているということ

    ぽっさんと話すことこ、わからないことをわからない、であるとか、自分の思いであるとかを言葉で伝えることができるのは、ことこの力だ
    それに寄り添って一生懸命話すぽっさんはかっこいい
    解説にもあるけれど、ぽっさんの吃音や、幹成海の繊細さ、外国籍の子どもたちなど、作品は子どもの全てを受容する
    こんな世界であったなら、わたしはもっと、自分に向き合うことができただろうか
    重力をきちんと感じることができただろうか

  • 「うるさいぼけ。」

    乱暴な言葉が口グセのこっこ(琴子)は小学3年生。

    でも、3つ子の姉たちや、両親、祖父母、担任などからはとても愛され、理解もされている。

    いつも一緒に遊ぶのは、向かいの棟に住んでいる、ぼっさん。

    こっこが少し変わっているのは、カッコイイと感じるもの。

    ・ぼっさんの吃音の喋り方
    ・香田めぐみが付けてきた眼帯
    ・その眼帯のめぐみが「体育を見学する」こと
    ・学級会の途中でパニックで倒れた朴君のその「パニック」などなど•••。

    カッコイイから、憧れるから、こっこは、眼帯や吃音やパニックをマネしてみたくなる。

    でも、「マネされる側の気持ち」を本人たちの口から直接聞くことにより、少しずつ、「相手を思い遣る」という意識を育んでいく。

    そんな少女とクラスメイトのひと夏の成長物語。

    読みながら、あの頃に戻ってみたいな、と感じたが、それは解説の津村記久子さんが書かれているように、いつのまにか消えてしまった、「子どもの目・感じ方」をもう一度味わってみたい、ということになるのだろう。

    懐かしさと温かさが感じられる一作。

  • H30.9.28 読了。

    ・「子供が世界を生きる、世界を感じる、ということ。何かが起こる/起こらないに関わらず、それ自体がすでに奥深い物語をはらんでいる。自分がいつの日か耳にした、世界の軋む音が聞こえる。『円卓』は、その裂け目から差し込む息の詰まるような光を、今一度思い出させてくれる作品である。(解説より)。」「世界には阿呆も思慮もある。どちらも分け隔てなく世界は受容する。思慮に偏ることも、阿呆こそが正義と開き直ることも、この作品は良しとせず、優劣をつけない。そのままのバランスの美しさを、それらが融合する場所の幸福こそを、本書は描くのである。(解説より)。」

     主人公の小学三年生の渦原琴子(通称:こっこ)と吃音のあるぽっさんなどの個性の強い友人たち、琴子のことを猫かわいがりする程、大好きな家族たちなど西加奈子さんの個性的なキャラ満載の小説でとても面白かった。徐々に終わりが近づいてくると、この世界観から離れたくないと寂しくなるような気持ちにさせられました。
     映画も観てみたい。

  •  世間の「当然」に立ち止まり、悩み考え成長する物語。西さんの世界観、好きです。
     主人公の琴子は、平凡や幸せに反発する小学3年生。大家族に愛され囲まれて生きる。
     「うるさいんじゃぼけ」
     「だまれ凡人」
    と悪態つきまくり(笑)

     周りから愛されているからこそ、何不自由なくいろいろなものが与えられているからこそ、琴子のような考えができるんだろうと思うんですけどね。

     琴子のそばに、ぽっさんがいてくれてよかったと、心からそう思った。
     

  • 子供と大人の境目をユーモラスに書かれている温かい作品。孤独や寂しさに憧れる子供心のリアルが、懐かしくて笑顔になれる。

  • 私の理解力が乏しいのかな?
    キャラ設定はおもしろかったし、好きな感じの子どももたくさん出てきたけど、特に何も残らなかった、、、。
    子どもたちがたくさん遊んで色々なことを経験して、こうやって成長していくんだな、ということがわかる作品。
    子どもの視点でありながら、どこか俯瞰しているところもあって、そういう西さんの描写力はすごいなと思った。

  • 関西弁の小説が読みたくて。
    公団住宅のせまい家で、三つ子の姉と両親と祖父母に愛されて暮らす「こっこ」こと渦原琴子。
    家の中心に大きな円卓を置き、そこで毎日とても賑やかで明るく食事を摂るこっこは、内心それを疎ましく思う孤独に憧れる小学三年生だ。
    眼帯や麦粒腫、妾の子や不整脈などなどに恋焦がれ、頭の悪い家族を口悪く馬鹿にしつつも、それでも彼らからたっぷりの愛情を受けてすくすく育つさまは、なんとも可愛らしい。
    「うるさいぼけ。」っていいなー。

  • マンガの様な個性的な登場人物たち。

    こっことぽっさんの関係がいい。ぽっさんの吃音を心からかっこいいと思っているこっこを、そのままに受け入れているぽっさん。こっこが級友の病気や境遇を単純に羨ましく思って真似ようとするこっこに、ぽっさんが、こっこの行動は…と優しくじっくり諭すように話す場面が良かった。

    みんな〜ほんとに小学3年生?

  • 「こっこ」は、周囲の一貫した「幸せ」や「可哀想」なんて定義を全くと言ってもいいほど受け入れない。
    なんでみんなが揃いもそろって喜んだり嬉しいのか。
    なんで本人や周囲が気にしていることなんかを真似したりすると、大人は怖い顔になるのか。
    それってそんなにいけないことなのか。分からない。
    だって、「こっこ」にとっては、格好いいことなのに。

    格好いいから、吃音を真似したり、憧れるから眼帯をする。死ぬ思いをする不整脈だって、ボートピープルだって、ハーフだって、お妾さんの子だって、「こっこ」には格好いいのだ。

    ぽっさんと「こっこ」の会話には、はっとさせられる。
    「こっこ」の悩みや考えを、真っ正面から受け止め全力で応えるぽっさんは格好いい。

    今のふたりの前には手本となる大人はお呼びではない。
    大人は見守ればいいのだ。変に子どもに媚びる必要も、物わかりの良い大人を演じる必要もないのだ。
    大人は大人の価値観でただ動けばいいのかもしれない。
    子どもが大人の態度を、周囲の評価をおかしい、それは変だと思うことも必要なのだろう。
    子どもは、悩みぶつかり、そして乗り越えていく力をちゃんと持っている。過保護になる必要もない。

    けれどそれは、子どもという時代には、とってもしんどいことかもしれないけれど。

  • 初っ端から笑いが止まらない。可愛すぎるぞ琴子!
    皆から【こっこ】と呼ばれ愛されながらすくすく成長中の小学3年生、琴子。祖父、祖母、両親、そして三つ子の姉と暮らす。騒がしいほど賑やかで琴子のことが大好きな家族たち。しかし本人は孤独に憧れをもつ。
    気に入った言葉をジャポニカ(懐かしい…!)に書き留め、吃音のぽっさんと毎日学校へ通う。同級生には大人びた子やダブルの子、社長の子。偏見がないわけではない。けれど誰もに真っ直ぐに向き合おうとする3年生たちが私は人間らしくて好きだった。自分と違う環境で育った人間を受け入れるって本当に簡単じゃない、大人になる程難しかったりする。表面上受け入れているように見えててもね。

    私が小学3年生のとき、ここまで深い考えなかったなぁと感心しました。何事にも真っ直ぐに、時には疑問やいちゃもんを大切にする琴子。石太ではないが、本当に世界を動かしていく人間になるのではないかと期待するのも分かる。そしてそんな琴子が可愛くて仕方ない家族たちの気持ちも。

    家族が増えても引っ越しても、渦原家の真ん中には円卓があるんだろうなぁ。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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