ジュージュー (文春文庫 よ 20-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900038

作品紹介・あらすじ

下町の小さなステーキ&ハンバーグのお店「ジュージュー」を舞台に繰り広げられる、おかしくも切ない物語。美津子は両親から受け継いだお店を、遠縁で元恋人でもある進一と共に切り盛りしている。常連のお客さんたちは、みんなどこかに欠落を抱えながらも、背一杯今日を生きている人ばかり。世の中はどうにもならないことばかり。でも、おいしいハンバーグを食べれば、つらいことがあっても元気を取り戻せる! 生きることの喜びをギュッと閉じ込めた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 吉本ばななさんの初読み。
    フォロワーさんのレビューを見て、手に取った一冊。

    今まで読んだ本とは、全然種類が異なっていて、一口で趣味が「読書」と言っても、好きな作者や作風が異なると全然わかりあえないこともあるだろうなと感じました笑

    本書についての印象ですが、繊細で丁寧という感じです。(吉本ばななさんの作風全体に言えることだったらすみません)
    わかる人にだけわかる世界観という感じ?

    私が好きだったシーンは、養子として進一を引き取ったみつこの両親がお金をもらわなかったことについて触れるところ。
    「お金では買えない縁をもらったんだから、お金に変えたらバチがあたる、とママはよく言っていた。」
    こういう感覚って余裕がないと生まれないと思う。
    すごく素敵な感性だと思う。
    自分の気づかないを気づかせてくれる瞬間って、本を読む醍醐味だよなぁって思いました。

  • 自分の大好きな料理でもある
    ハンバーグがくれるあの幸せのエネルギーを
    これまた大好きなよしもとばななさんが
    言葉の力を駆使して味会わせてくれるなんて!
    …とよだれタラタラで手にした作品(笑)
    (だいたいタイトルの『ジュージュー』からしてイマジネーションを刺激し、お腹が、鳴る鳴る)

    しかし、そこは儚く切ない世界観のばななさんの小説。
    ハンバーグから連想する
    ただ単にあったかい小説で終わるわけはなく(笑)
    一人ぼっちの自由の
    その切ない香りに満ち溢れている。


    昔からばななさんの作品は
    別れと喪失を描きながらも、
    人との出会いとたくさんの食べ物によって
    人間が再生していく姿を描くことがテーマともなっていたので、
    食い意地が張った(笑)いただきます体質の自分にも
    すぅ~っと馴染んで共感できるんですよね。
    (「キッチン」に出てくるカツ丼を筆頭に、「なんくるない」の沖縄料理や「TUGUMI」のアイスやスイカなど)


    ログハウス風の店内に
    カントリー&ウェスタンな音楽が流れる、
    古き良きアメリカのイメージで作られた
    ステーキとハンバーグ店『ジュージュー』。

    『ジュージュー』の売りは
    玉ねぎのソースがかかった
    サーロインステーキと
    おじいちゃんとパパの秘伝のドミグラスハンバーグ。


    主人公は大好きだった母を亡くし
    『地獄のサラミちゃん』という漫画に励まされながら
    祖父や父や母が守ってきた『ジュージュー』を切り盛りする
    女性、美津子。

    そんな美津子を支えるのは
    店を継ぐ覚悟で
    代々続く店の味を頑なに守り抜く、
    遠い親戚で元カレでもある進一。

    そして進一の奥さんだが、
    足が不自由で家に引きこもったままの
    幽霊みたいなミステリアスな女性の
    夕子さん。
    (自らの前世をビルマのコブラ使いの少女だと言う儚くて不思議ちゃんなこのキャラがホンマ魅力的!)

    他に『ジュージュー』に集う様々な常連さんと、
    母を亡くしたことが縁で
    美津子と恋に落ちることになる書店の息子の宮坂さん。

    この4人の微妙な四角関係が面白いし、
    お互い意識しつつも
    何かシンパシーを感じ絆を深め合う美津子と夕子の関係は
    女性なら、より理解できるところなのかも(笑)
    (実際自分も元カノと当時付き合ってた彼女とが知らない間に妙に仲良くなってることがあってビックリしたもんなぁ笑)


    トラウマと戦い
    未来が見えない苦悩の中で
    「どうにもならないことばかり
    だけど
    それが、それこそが人生なんだ」と、次第に腑に落ち
    ジュージューと生きる覚悟を決める美津子。

    1ミリでもいいから
    ままならない人生というものに抵抗してやろうという考え方は
    女性というものの強さをシミジミ思ったし、

    進一と別れてから
    油にまみれ『ジュージュー』で働くことしか知らなかった美津子が
    新しい恋の予感に胸ときめかすシーンが
    とにかくいいんですよ(笑)


    安易に好きと言い合うこともせず、
    ゆっくりそうっと
    何かを温めているような
    美津子と宮坂さんのじれったい恋。

    恋をしている人なら
    誰もが頷いてしまう(笑)あるある描写と共に、
    美津子と同じように
    胸の奥から甘い蒸気が立ち上がってくるような恋の匂いにクラクラすることでしょう(笑)


    世界はいつでも変わりうる。
    その気持ちを胸の奥に持ち続けること。
    そうすることから人生は初めて動きだす。

    うまくいかないことに悩み苦しみ、
    借り物の身体で
    限られた寿命を精一杯生きるしかない
    人間の空しさや哀しみを毎回描き続けながらも、

    光のあるところへ
    光のある方へと進もうとする人間たちのお伽話を紡ぎ出す
    ばななさんの作品。

    賛否両論あるみたいだけど
    自分はこれからも彼女の作品を支持していきたいな。

    • chiitarowさん
      レビューを読んだら、もう一度ジュージューを読みたくなりました。
      レビューを読んだら、もう一度ジュージューを読みたくなりました。
      2015/09/27
  • 最近懐かしさもあり、ばななワールドを楽しんでます。そういえば、私この世界観好きだったなあ。

    なくなったもの(人も感情も景色も)に対して、やはりさみしさ悲しさという感情は一番切り離せないもの。生きているものとしては一旦どうしても受け入れなければいけない変化。けれど受け入れた先の人生、生きているからこそ、ちょっとした運命や、些細なきっかけやいたずら?が、人生のこれからをとても幸せにしてくれる。

    しばらくこの本、手元に置いておこう。

  • 主人公の立場からしたら中々にハードモードな人生だと思うんだが、それを感じさせないぐらいこのハンバーグ屋さんは主人公にとっては大切な居場所なんだということが伝わってきた。
    お母さんはお空にいて目に見えないけれど、愛情深い人のようでうらやましい。

  • はーん、、、なんかはーんてなってしまう

    「解決しなくても、行き場がなくても、環境が自分に優しくなくても、ひたむきに生きることはできる。生きるために他の生き物の命を奪っていたり、他の人の幸せを奪っていたりするかもしれない。しかし、生きているということがそういう意味なら、それしかできることがないなら、少しでも誠意を持ってやり続けるしかない。そういう話だと思います。」

    あとがきのよしもとばななさんのことばが全てだなと思いました。
    書く仕事って本当にすごい。

  • 期待を裏切らない、よしもとばなならしいスローなストーリー。この世界観がたまらなく好き。命を食し命を造り命を絶やすということを当たり前に思っているけれどそれはめちゃくちゃ尊いことだと久々に気付かされた。
    個人的には一番最近読んだチョコレートグラミーと価値観が真逆なところがまた面白かった。同じ街で暮らすことを水槽だと、息苦しいと感じるか、その街での変わらない日々を関係性を一生ものと捉えるか。美しい言葉の紡ぎで後者とするのがさすがばななです。そして私はそれが好き。

  • これは、なんと…!!!私の中で『みずうみ』『王国』に並ぶ好きな作品になった。サラミちゃんの絵に惑わされて、想像もしなかった内容に感動。どんどん書いてください!

  • 「死」がもたらす存在感の表現が素晴らしい!

    母の死の悲しみを抱えつつ、父も、進一も、毎日ハンバーグを焼く。進一の両親との過去や、進一との過去を抱えて毎日を過ごす日々…。しかし、少しずつ幸せなニュースが舞い込み、幸せな空気が流れていく。今まであった過去までを包み込むような…。

    人は、こうやって乗り越えていくんだよな。あ〜、生きていくって、やっぱり素晴らしいな、と思える小説でした。

  • 命をもらってるなら精一杯誠実に向き合う、その考えが押し付けがましくなく描かれていて素敵でした。時々読みたくなる1冊。

  • ステーキ屋を営む家族とその周りの人達の物語。

    どんなものにも人にも歴史があって、その積み重ねで自分達が生きていて、それを繋いでいくのは自分達で、自分も歴史上の1人になるんだなあってしみじみ思った。登場人物が過去に何らかの悩みがあったけど、それを乗り越えて生きていく姿が良かった。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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