総員起シ 新装版 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2014年1月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784167900090

作品紹介・あらすじ

潜水艦[イ33号]を襲った悲劇と、戦争の実相沈没した[イ33号]。引揚げ作業中の艦内から、生けるが如き十三の遺体が発見された。証言を基にした衝撃の戦史小説。

みんなの感想まとめ

戦争の悲惨さと人間の深い心理を描いた本作は、異なる立場からの戦争体験を収めた短編5篇から成り立っています。それぞれの物語は、裏切りや極限状態での人間の行動を通じて、戦争の恐怖や理不尽さを強く訴えかけま...

感想・レビュー・書評

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  • 戦争とひと言で言うても人の数だけ戦争体験があるわけで、本書はそれぞれ異なる立場の人が経験した戦争記録5篇が収録されている。
    ただ全てにおいて共通しているものがある。みんな悲惨。

    日本人同士での裏切り行為の描写があるが、こんな酷いことが出来るのかと思うと同時に、極限状態にはこういうことが起きても不思議ではないよな、とも思う。
    だからこそ戦争は起きたらあかんのよ。

    タイトルにもなった総員起シの章、潜水艦の中に閉じ込められて9年後に驚く姿で発見されるというエピソードなんやが、知的好奇心も刺激される話で、強烈に印象に残った。

    それと同じぐらい印象に残ったのが、剃刀のエピソードのラスト。他人を巻き込む身勝手な軍上層部の行動に胸クソ悪くなる。

  • 戦中戦後の恐怖、理不尽、悲哀を綴った短編5編。
    「海の柩」が一番刺さったが、他にも三船殉難事件を扱った「烏の浜」、伊号第三十三潜水艦を扱った標題作など良作が鎮座。戦争という不気味な怪物が生み出した事象は、極限下での状況を踏まえた意思決定の在り様について考えさせられた。

  • 前から気になってはいたものの、読んだことのなかった吉村昭。どこまで史実なのかわからない部分はあるものの、司馬遼太郎とか清武英利に似た感じだろうか、太平洋戦争の知らぬ歴史を興味深く読んだ。ドキュメンタリーや映画よりもよっぽど戦争の悲惨さや人間の浅ましさが心に響く小説であった。他の本も読んでみたい。

  • 2021/6/26(土)夕方読了。いつでも書店の電子書籍にて。

    戦史小説、のはず。
    私としては、吉村昭氏の著作を読むのが初めてで、文体や内容があまりにリアルで、ノンフィクションなのではないかと思うほど。
    検索に頼ると、初出は1970年頃の模様。

    1文字として無駄のないような、冷静さと迫力が同居しながらシーンが次々に駆け巡る文章で、どんどん読めてしまった。
    山岡荘八氏の太平洋戦争の戦史小説を読んでいた頃を懐かしく思い出した。
    戦争は悲劇で、起こすべきではないことと私も思う。
    知っておかねば繰り返しかねないという義務感からか、
    それとも戦争自体が内在する迫力か、
    小説家の秀逸な手腕か、
    興味深く読む私がいる。

    戦争を起こさないために、いろんな手段があると思うが、
    戦争さえなければ死ぬ必要のなかった最前線の兵士を含む様々な人々が戦時にいたことを知り学び心に刻むことも、その手段のひとつと思う。

    コロナに直面して日本も世界も全人類一人一人全員総無責任に陥っているような状態だが、できるだけ戦争が起きませんように。

  •  徹底的な取材により事実のみを描き、戦記文学というジャンルを確立したとされる吉村昭の短編集。どの物語も重たいものばかりだが、続きが気になって一気に読んだ。

    『海の棺』
    輸送船が雷撃を受けて襟裳岬付近で沈没、海岸に手のない無数の水死体が流れ着く。将校のみが上陸用舟艇に乗り、舟艇に掴まってくる兵の手を軍刀で切って助かった、その後この一件は厳重に秘密にされたという後味の悪い話。

    『手首の記憶』
    昭和20年8月11日、樺太でソ連軍の攻撃が始まり、終戦後も攻撃は続いた。逃げ遅れた大平炭鉱病院の看護婦23名は集団で自決した。この事件と5名の生存者のその後を扱ったもの。

    『烏の浜』
    終戦後の昭和20年8月22日、樺太からの引揚者を載せた小笠原丸が北海道増毛町沖で国籍不明の潜水艦から魚雷攻撃を受けて沈没、約六百名が犠牲になった。漂流者に機銃掃射まで行う執拗ぶりだった。鰊漁の盛んな村落での救助活動を交えて描く。

    『剃刀』
    昭和20年4月1日、米軍が沖縄本島嘉手納に上陸。5月下旬、首里の軍司令部が陥落。その後摩文仁まで日本軍は後退、6月23日の司令官牛島満中将、参謀長長勇中将の自決まで沖縄戦は続いた。日本軍の戦死者は約9万人に達し、一般県民は約15万人が死亡した(米軍側損害は4万9千名、内1万1千人戦死)。凄惨を極めた沖縄戦を司令部の散髪要員だった人物の視線から描く。

    『総員起シ』
    昭和19年6月13日、松山市由利島付近で訓練中の事故により伊号第三十三潜水艦が沈没、乗組員102名が殉職(生存者は2名)。昭和28年夏、ようやく伊33の引揚げが行われた。そこには「総員起シ」の命令があれば今にも飛び起きそうな姿で遺体が残っていた。これらの人は気圧上昇と酸素不足の想像を絶する苦しみの中で死んでいったはずなのに、艦内は秩序が保たれた状態だった。

  • 全5話。短編集。
    最後の表題作「総員起し」…沈没した潜水艦を数年後に引き上げてみたら、中からほぼ当時のままの姿で遺体が見つかった…という話。 潜水艦モノ、無人島モノ…といった「閉鎖空間」の小説に興味があるので裏表紙の解説みて飛びついた。吉村昭いくつも読んで来たのになんでいままで気付かなかったんだろう。

    これまで読んだ物は、なんとか抜け出して無事帰還!みたいなハッピーエンドが多かったが(作り話ですから)、これは実話。実際に起きた潜水艦沈没事故のお話。 途中から、タオルで涙ふきながら読んだ。

  • 昭和19年、訓練中の事故によって沈没した伊号第三十三潜水艦。
    9年後、引揚げられた艦内の一室から発見された13名の遺体。
    遺体は、まるで生きているような状態でした。
    事故から命がけで脱出した生存者の証言などを基に書き上げた戦史小説です。
    「海の柩」「手首の記憶」などの他の作品も、戦争の悲惨さが描かれています。

  • 終戦前後に起きた悲劇を題材とした5篇を収めた短篇集。
    残念なことにいずれも、現代では風化し、
    忘れ去られた事件になり下がっているようだが、
    それだけに衝撃的だった。
    とりわけ『海の柩』、『手首の記憶』、『総員起シ』の読後感は重かった。
    戦争とは、軍隊とは理不尽の塊であり、
    戦争に負けるとはこういう事なのだなあ。
    目頭が熱くなった。

  • 「海の柩」は次々と流されてくる兵隊の水死体、という状況からして恐ろしいのですが、それらに共通するある特徴の理由がわかった時、あまりの殺生ぶりに戦慄せずにはいられませんでした。「総員起シ」は潜水艦サルベージのドキュメントとして非常に興味深い話でした。せっかく戦争を生き残ったのに、9年後に引き揚げられた潜水艦のメタンガスで死んでしまった三名の元海軍技術士官が不憫でならない。

  • 吉村昭による短編小説集。太平洋戦争末期、現日高町厚賀沖にて、兵員輸送船「大誠丸」が米軍の攻撃を受け沈没した事件を主題とする作品『海の柩』が収録されています。実際に多数の将兵が亡くなった事件である為非常に暗い作品ですが、戦争という現実の中で暮らしていた厚賀の人々の姿が克明に描かれています。(日高門別 あ)

  • ”ビブリオバトル in 文教 2015”にてチャンプ本に選ばれました。


    文教大学図書館の所蔵情報はこちらです: https://opac.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=551971&test=t

  • 短編集5篇。白眉はやはり、遺体が保存状態にあったという事故艦伊33号の引き上げを描く、表題の「総員起シ」。戦中、生存者の体験談を交えての事故発生の顛末と、時を9年下って戦後、密閉され続けた船室を開ける緊迫感。他薦にも戦中戦後の2部構成のものがあるが、タイムカプセル化された船室が物語の焦点となる本編が最も劇的だった。

  • 総員起しは、森史朗の「作家と戦争」で紹介された小説だったので読んでみた。終戦後になって沈没した潜水艦から、死亡した当時のままの姿で発見されたというショッキングな内容が書かれていた。一貫して、吉村昭の小説に描かれている死に際の内面に迫っていく手法なだけに身に迫る怖さがある。ここには、「手首の記憶」など短編5編が掲載されているが、あっと言う間に読み終わってしまったという印象である。中には、吉村自身が「私」はという主語で論じるスタイルもあり、面白い。ストーリーの構成としては、ショッキングな場面から始まり、そこに至る事実経過や取材の場面が書かれ、最後に、タイトルともなっている出だしのキモの部分に焦点が当てられ、何故という問いが解されていくのだ。

  • 戦争にまつわる実話を基にした5つの短編小説。

     もう、ずーっと読みたくて、古本で探しても見つからず1年。我慢できずに新刊をお取り寄せしました。読んで良かったです。戦争の悲惨さ、当時の人の思い、傷跡…。あくまで、「実話を元にした小説」なのでしょうけれど、Wikipediaなんかで調べただけではイメージ出来ないいろいろな情景が胸に迫ってきます。とても読みやすい小説で、引きこまれました。

    『海の柩』
     北海道で大量の水死体がある村に流れ着いた。その中に、手・腕のない死体が多く紛れていた。
    『手首の記憶』
     南樺太で起きた、看護師の集団自決。数名の看護師以外は一命を取り留めたが、彼女たちがその後背負ったものは…。
    『烏の浜』
     終戦を迎えたにも関わらず、女性や子供の多く乗った船が沈められ、彼らとその遺品の多くが増毛町に流れ着いた。
    『剃刀』
     沖縄戦において、牛島軍司令官は崖上で月を背景に自決したというが、それは本当なのか?
    『総員起シ』
     急速潜航訓練中に不幸な事故によって沈没し、102名を乗せたまま鉄製の柩と化した「伊号第三十三潜水艦」を9年ぶりに引き揚げると、そこには眠ったように当時の姿のままの船員たちが…

  • 短編集。どの話もそうだけど、一番最初の話がやりきれない。

  • 【潜水艦[イ33号]を襲った悲劇と、戦争の実相】沈没した[イ33号]。引揚げ作業中の艦内から、生けるが如き十三の遺体が発見された。証言を基にした衝撃の戦史小説。

  • 実際にあったこと。としては、とても信じられない。
    衝撃的すぎる。
    今がすごい幸せなんだなと思う。

  •  吉村氏の本2冊目。氏のおかげで戦中、戦後史に俄然興味がわいている。この作は、戦後8年ほどを経て引き上げられた潜水艦の様子の記述に、とにかく度肝を抜かれた。おそらくこの艦だけでなく、他の場所でも多くの沈没艦があるはずで、それらの記録も一部には残っているのだろう。しかし、氏の綿密な調査により、ここまで詳らかになったものはほとんどないのでは?
     30年以上も前の本の新装版ということで、さすがに当時小学生の自分はこの本を知る由もなかったが、とにかくインパクトがあった(その後、自分の生まれた年に発刊された書籍に、この沈没艦から9年ぶりに現れた軍人の姿を収めた写真も見た。本書をさらに記憶づけるに十分なものだった)

  • 戦争によって、どれだけの人々が犠牲になったなか、改めて思い知らされた。戦争に正義はない。

  • 昭和40年代に雑誌で発表されたのが初出であるという5篇の作品が収められている。5篇共に読み応えが在る。

    色々な意味で、各作品に「惹かれる理由」が私個人の中に在るのだが、それらを割り引いても、各作品は「流石に高名な吉村昭の作品!!」という魅力に溢れている。題材となっている挿話も、「考えさせられる」とか「迫るモノが在る」ものである。安価で読み易い文庫でもあるので、多くの人に奨めたい一冊だ!!

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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