墨攻 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2014年4月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784167900717

作品紹介・あらすじ

漫画や映画にもなった伝説の傑作。復刊



中国古代、「墨守」という言葉を生んだ謎の集団・墨家。たった一人で大軍勢から城を守った男を、静謐な筆致で描いた鬼才の初期傑作。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

独特の思想を持つ集団「墨家」を背景に、一人の墨者が小さな城を守る壮絶な戦いを描いた作品です。主人公の革離は、実在の歴史に埋もれた墨家の矛盾や理想を体現し、戦術や人間ドラマを通じてその魅力を引き出します...

感想・レビュー・書評

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  • 清貧な軍師という珍しい集団の中の一人に焦点を当てた作品。実在したようだが、歴史の荒波に紛れてしまったようだ。

  • 独自の思想の下に戦国時代を生きた思想家集団「墨家」。兼愛と非攻を旨とし侵攻を否定しながらも、防衛戦争に関しては一流というなんとも変わった集団です。

    驚異的な知識と精神で恐れられたにも関わらず、こつ然と歴史上から消えたというのもおもしろい。
    本書はそんな墨家を題材とした創作小説で、タイトルの「墨攻」は「墨守」を転じた作者の造語だそう。
    大軍の趙に攻められる小さな城を、たった一人の墨者が守るというエンターテイメントです。

    わずか百数十ページの攻防戦ですが、城攻めや守りの戦術がおもしろく、墨家の矛盾や人間の悲喜こもごもも描かれ盛りだくさんな内容。スッキリと、しかし奥が深い1冊でした。

    思想家集団ということですがとても実際的で、主人公の墨者である革離がお偉い思想家ではなく、小汚くも優秀な技術者のように描かれてるのが新鮮。

    女も老人もかり出して組織と規律を作り戦う様は、素人集団がプロ集団に挑む緊迫感で胸が高まります。

    一人の墨者の戦いの中で謎に包まれた墨家という集団にひとつの解釈を与え、またその矛盾と理想を描き、革離の運命とともに幕を降ろすストーリー運びが素晴らしい。
    スパッと短くも大満足でした。

  • 墨家という言葉をこの作品で初めて知った。
    元々、中国に関しては奇書と呼ばれる白文か、「神仙伝」のようなものばかりを好んで呼んでいるためなのだが……。

    老子、孔子、孫子等聞いたことはあれども、手に取ったことがあるのは学校の授業で仕方なく学んだ論語がいいところ。(現在、遅ればせながら孫子を読もうと積読の山に入っている)

    実際、二千年近く本国でも存在が忘れられていたというのだから驚いた。この年月の長さはさすがに我が国とは比べることができないくらい歴史の深い国だと思う。

    では墨子とは何かと言えば、戦争(あくまで守り)の職人だと作者は言う。

    これは一人の墨子が小さな城塞都市を守る物語だ。正しくいえば一人対二万の戦の物語である。

    ひたすらに墨家の教えに従って突き進む革子がいい。彼の中にあるのは墨家としての誇り。中編とも云えない短い物語だが読み終わった瞬間に、彼と共に長い戦を戦いぬいたような気がした。

    楽しい時間を過ごすことができたし、終わりに近づくのが切なかった。

  • 梁国王子の最後の裏切りに度肝を抜かれました。あと少しで防衛成功してたのに残念。複雑な結末でした。
    あと革離が女性を抱くチャンスを自ら断った後に「やはり抱けば良かったか」と言うシーンが面白かったです。おい!って言うツッコミを思わず入れたくなりました。

  • 諸子百家の中で特に謎めいた集団、墨家(墨子教団)を書いた中編小説。デビュー作で第1回ファンタジーノベル大賞を受賞した著者は、いきなりその受賞作『後宮小説』で賞の方向性を思いっきり変えてしまったことで知られるが、この作品でも、いかにもありそうな古代中国を描くのに成功している。
    墨子の教えは兼愛(博愛)として知られ、キリスト教と比較されたりもするが、同時に非常に強力な軍事知識・技術を持つギルド集団・戦闘集団でもあった。ただし、攻めることは禁止され、そこから「墨守」という言葉が生まれた。
    彼らは軍事的経験から、物理、建築、ビジネスに関する当時としては驚異的な内容の数多くの命題を導き出している。教団内では術語にいちいち定義をつけ、論理的な会話に用いたが、その多くは、建築から出た用語だった。この辺りから、フリーメーソンと結びつけて語る論者もいる。
    例えば、「円。一中心から同じ長さにある」「方。直線が四か所で直交するものである」と言った具合に、幾何学上の用語に厳密な定義をつけ、また抽象的な概念も定義づけていくことで、かなり高度な論理学をも構築した。

  • 漫画や映画の原作にもなった時代小説。墨子というイマジネーションの膨らむ集団であるからか、小説からスタートしたこの物語は、それぞれの表現方法で展開する中でストーリーや世界観を大きく膨らませている。本書では、その原点を確認できる。

  • 新装復刊を受けて旧版を持っているのにも関わらず買ってしまった。
    職人としての軍師。理詰めの戦争の話。華のある話ではないのだけれどタイトルの時点で既に最高に格好いい。

  • 文春文庫版のあとがきがあります!

  • 事前に漫画である程度読み進めていたので、漫画の画を頭に浮かべながら読んだ。
    墨子の組織や代々の巨氏の人柄や考え方など小説を理解するための重要な墨家の特徴が簡潔にわかりやすくまとめられている。主人公の革離が墨家の教えを順守しながら守城に突き進む姿は圧巻。最後の革離の死に方は集団を統率することの難しさを物語っている。

  • 漫画 映画の原作本になる。
    謎の墨家についての小説という事で期待したのだが、ウーン。
    読んではいないが、漫画の方が戦闘シーン表現が面白く仕上がっているのではないか•••。
    短い小説ゆえに、もう少し文章にも工夫があってもよい。山月記や李陵と比較するのは酷かもね。

  • 漫画もよかった。

  • 戦国時代。封建制で繋がってきた都市国家が次第に集約され、国家の生産力拡大と血縁の薄まりによって、実力者による地方支配が広がり、それは有力諸侯を立ち上がらせ、それぞれの下剋上が支配する戦乱の世界を到来させた。混沌の時代には、それに伴う思想の発展が導かれる。何が正しいのか。何を信じればよいのか。何に従えばよいのか。そのようにして、諸子百家が表れ、中華の基本となる思想が積み上げられていった。


    儒学は、中華の基本だ。孔子が語った仁(特に家族愛)を基礎にして、孟子の性善説が王道政治を説けば、荀子は人の基本を性悪だとして、礼(秩序)を教え従えることで、国というものを王が導かなければと説いた。孟子の教えが現在も続く天命思想、易姓革命の正当性を生み出してきた。天が指し示す有徳者は、その得を正しく見定め支持する人民によって示され、その支持の上に取り除かれるべき暴君を倒し、易姓革命が起こり天下が創り変えられるという概念が誕生した。秦の始皇帝は、易姓革命そのものを超えるために、荀子への対抗として生まれた法家の思想を採用した。人を支配するための強大で強靭な制度を立てるために、法と刑罰を用い、それを実行する巨大な官僚制度を作り上げた。始皇帝は結局、強制的な権力行使と横暴な権威を奮ったために易姓革命によって王朝を終わらせてしまうが、中国という巨大な大陸を統一するために、強大な中央集権官僚体制の上に表れる独裁というシステムは幾度も中華という帝国を構成するための標準仕様となった。


    儒家の仁(愛)・礼は、宗族という一族第一主義とその延長線上にある易姓革命によって、中華というものの基本となる思想だと言えるが、そこに唄われる愛や正義はとにかく一義的で、思想が語る理想の在り処と比べてひどく欺瞞的なものに映るということも、現在に表れている中華という国の実態に見えてくることからも確かなことだと思えてならない。


    だから、儒家と同じくして、古代に表れてそして消えていった墨家が示した思想、理念は面白い。


    「一人の人間を殺せばこれは不義であり、必ず一死罪に値する。この説でゆけば、十人を殺したものは不義が十倍であり、十回分の死罪に相当する。同様に百人を殺せば不義は百倍であり、百回の死罪に相当するべきところだ。この真実は天下の君子と称する人々はすでによく承知しており、その通りそれは不義である、と言ってくれよう。しかし、それがこと戦争となるとそうではない。他国を攻めて大いに人を殺しても、不義であると言わないばかりか、かえってこれを賞賛して義であるとする。(じつに不合理で不可解なことである)彼らは義と不義の区別を知らないと言わざるを得ない」


    闘うことの非を表し、非攻を謳う。それは、己を愛するように他人を愛する相互的な愛があることを求めた「兼愛」からだ。


    “子や臣は自分を愛するように父や君に接すれば不忠不孝はなくなる。他人の家を自分の家と同じように見るならば盗賊は絶える。他国を自分の国と同じように愛するならば戦争はなくなる。墨子の兼愛は自己愛を拡大してゆき治国平天下にまで及ぼしてゆくものであり、博愛主義の主張ともなる”


    圧倒的な理想を掲げ、その理念を追い求める。そしてそのために、反対的に墨家は闘うことを選んだ。侵略戦争を否定し(「非攻」)、しかし、自らの大切なものを守るために闘う、「墨守」する徹底的な戦闘集団となったのだ。


    この世界においては、正義とか愛とかをはじめとして、君子によって様々な綺麗な言葉が表れ理想として並べ立てられるが、それが如何に二重規範的にしか有りえないかを捉えていたのだ。そういう綺麗事に飾られているものほど、平気で矛盾を起こし、その矛盾を看過し、そのことに何事もなく平気でいられるものだという、人の在り方を何よりも理解していたからだ。


    だからこそ、守るために闘ったのだ。

    理想を高々と掲げ、そしてそれを譲らないために、何よりも自らで立ち上がり、闘わなければならないことを理念としたからだ。

    それが「墨攻」だ。


    現実を見ずにいまが無条件にやってきてくれるものだと、無邪気に勘違いをして、自らが見たいものだけしか見ようとしない。いまの日本が気づくべき現実がここにきっとあるのだと思う。

  • 薄い文庫本。30分くらいで読める。無駄がなくて読みやすい。あらすじを読んでいるのかというくらい、スパスパと話が進む。

    もともと、軍靴のバルツァーという架空の19世紀ドイツ風の戦記物マンガを愛読していたところ、作者がこの墨攻の映画が好きだった、モデルになったところもあると聞いて、まずは映画版を途中まで見た。
    (最後までは見ていません)
    次に原作の文庫本をたまたま見かけたので購入。薄いから笑。
    私が買ったのは南伸坊さんのイラストの表紙だったけど、ブクログでは見当たらず。


    古来、人気があるのは、圧倒的に戦力差のある戦争で、弱い陣営でちょこっと頑張った人の物語だ。

    絶対勝てるわけない→いや、意外といい線いけるかも→すごい、まさか勝てるんでは!?→ヒーローの死。やっぱりダメでした。の展開が、胸熱なのです。

    墨攻もまさにそういう王道だった。
    作者の後書きで、書きたかったのは、職人とそのプライド、とあって納得。

    カクリ、据え膳食ってもよかったのに笑、と自嘲していて人間ぽくて面白い。血尿出るほど寝てない人がそんなことしなくて正解ですよ…。

    墨家のあり方や、論理的思考がかっこいいです。

  • 男性の中ではビックコミックで漫画化されてた方がお馴染みだったりするのかな??
    映画化もされてるのね。
    しかも、アンディ・ラウ(*≧︎∀︎≦︎*)
    見なくては!
    *
    墨子教団については分かってないことの方が多いらしく、この小説の革離もすごい人なんだけど、本当に戦闘のことしか考えてなくて(その為に来てるから当たり前なんだけど。)城主の息子の気持ちがちょっと分かる気がした。
    *
    後書きも面白かった!
    特に文春文庫版の後書き。
    そして、酒見賢一さんのご本は『陋巷に在り』が好きなんだけど、読んだのだいぶ昔だから読み直したいなー。
    *

  • 2017/12/01 初観測 漫画は読んだが、小説は未読。だいぶ趣きが違うようだ。

  • 作者は、あー、表紙の絵描いた人とコラボの企画はいろいろあってアレしたうえ、作者がデビューした新潮社ファンタジーノベル大賞受賞作家の、悍ましい黒歴史(新潮社でデビュー>>>後出版社との軋轢により版権を文藝春秋社へ移す)を、なんか知らんけど襲ふことになったさうである。その辺の経緯はあくまで偶然ださうである。

     絵の人と言ったら、この作品は1990年代にジブリでアニメ化が企画されて現在に至ってゐる。

     その「ボランティアの傭兵@職人系」が、ぼろい城塞都市を当時としては最強の要塞へリフォームし、ついでに城の中の住人を、戒厳令下の平和主義者へとリフォームし、普通の軍人をぼこぼこにする。

     発行当時、支那の思想がエンターテインメントとして消費されるばかりで勉強されてないと嘆くあとがきが興味深かった。

  • 戦に博愛無し

  • ~_~;

  • 趙の大群に攻められた小国・梁の救援に一人応えた墨者・革離。彼は軍事の独裁権を委ねられ、部隊編成、守城兵器の工作、民心の掌握を一身に担います。

    守城といえど、知略と守城兵器を武器に敵兵が死屍累々積み重なるさまは”墨守”ではなくまさに”墨攻”。また軍規に違反した者を容赦なく斬る冷厳さはとうてい”非攻・兼愛”という穏健な思想を説く墨子の思想と相入れるようには思えません。

    墨子はたんに理想を説く政治団体ではなく、実践力をそなえた(戦争の)プロの職工集団でもあったようです。乱世だこそ、穏健さと強さを兼ね備えたこの不思議な思想集団が生まれたのかもしれません。

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