私という名の変奏曲 (文春文庫 れ 1-17)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900755

作品紹介・あらすじ

十八歳の時に交通事故で顔に大怪我を負い、美容整形手術を受けて完璧な美貌を手に入れて世界的ファッションモデルにまでのし上がった美織レイ子が死んだ。整形後の人生の中でレイ子は七人の男女を憎んできたが、その七人もまた彼女を殺す動機を持っており、しかも全員が、「美織レイ子を殺したのは自分だ」と信じていた!? ミステリー史上でも出色のヒロインをめぐる目くるめく愛憎劇を描き切ったその超絶技巧は、帯にいただいた綾辻行人さんの言葉どおり、「まさに連城流、並ぶものなし」です。

感想・レビュー・書評

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  • 「私という名の変奏曲」
    犯人は誰だ?


    人気と美貌を持つ23歳。愛くるしい笑顔に可憐な美声を持ち、世界的なファッションモデルに駆け上がった美織レイ子。一方で、傲慢でわがままで二重人格。悪魔に人間らしさ全てを売り払ったような娘。カメラマン、女性デザイナー、新進デザイナー、若社長、ファッションモデル、ディレクター。彼らはレイ子を殺したいほど憎んでいると彼女自身が名指しした。しかし、残り1名はまだ名前を明かせないと言う。そんな意味深なメッセージを発した後、レイ子が死んでしまう。


    とすると、犯人は誰だ?となる訳だが、捜査線上に浮かんだ7人皆が自分がレイ子を殺したと思い込んでいる。犯人は誰が?から、どうやって7人が同じ人間を殺せるのか?、に変わっていく。作者のことばにはこうある。


    他の多くのミステリーと同じように、この物語でも殺人事件が起こります。しかし、普通のミステリーでは最後まで隠しておいた方が良いことが、この作品では第1章で明かされています。事件は他殺と自殺が同時に起こっていて、加害者と被害者の二重奏とも言うべきものかもしれません。その重要な真相の一部が最初から読者に提示されています。


    もう一つ、この物語には、確かに女主人を死に至らしめた犯人と言える人物が存在していますが、それが登場人物のうちの誰なのか、作者自身が知らずにいます。従って、この作品には犯人の章がありません。2つのルールを破って、それでも謎があり、解決があるミステリーを書くことが可能か。それに挑んでみたかったのです。


    ミステリファンであれば惹きつけ力間違いなしな設定であり、どうやって7人が同じ人間を殺せるのか?の謎が解決されていく。ここが普通のミステリーとは毛色が違う。


    一方でレイ子の動機には腹落ちしない部分がある。自らを落とし込めた相手に復讐する計画であるが、一部に関しては、自らが傲慢わがままを振りかざして好き勝手やっているように思える。


    例えば、歌を歌いたくなかった(それ相応の理由がある)のに歌手デビューさせられたとあるが、レイ子自身はたまにはノリノリだったのだ。気分屋色があったからしょうがないのかも知れないが、それまで自分を貶めたと言うのは無理があるだろう(後半に判明する事実からするともしかしたら〇〇がやっていたから、とも思うが、だとしたら、別の復讐の理由が必要になるな)。


    84年に既にこのようなタイプのミステリーが創作されていたとは!となるミステリー。

  • 「レイ子を殺したのは自分だ」と信じる7人の男女。
    謎は大きいが、トリック自体は意外と単純。

    だが、7人それぞれの視点から自分が殺した理由などを語っていくという中弛みしそうな構成ながら、ここまで読者を惹きつける文章力はさすが。
    連城さんの文章の美しさの欠片がようやく理解できたかもしれない。

  • 自分を殺したいと思ってる男女7人に、自分を殺させるという聞いたことのないストーリー。すべての登場人物の人物描写が事細かで、最近のミステリ作品に慣れてしまうと、少ししつこく感じてしまった。

  • 最序盤にて、犯行の方法も、動機も、被害者の隠していた過去も明かすという思い切った作品。なんならば、加害者の犯行そのものが、被害者により誘導されたものであるという、謎解きの目玉にもなりうる事実を惜しげもなく本人の語りで開陳していくスタイルでまず引き込まれる。
    なぜ7人が同時に1人を殺せたのか?犯人たちに迫る謎の影は誰か?というところでミステリを展開していて読ませる文章。
    如何せんすぐに謎が読めてしまうのと、レイ子が例の6人に対し逆恨みが過ぎるのではないかと思ってしまう点が引っかかるものの、最後まで楽しめた。

  • う~ん。やっぱり連城さんのミステリーは初期のものが好きだなぁ。連城作品の中で人気が高い小説だったので読んだけど、好みじゃなかった。ストーリーは、売れっ子モデルが殺されて6人の人間が「自分が彼女を殺した」と思っているというミステリー。どんなトリックなんだろうと思ったが、なんせ長い。6人の独白が延々と続き飽きてしまった。

  • けして厚い小説ではないが、
    内容が濃い。
    行間にあるストーリーも楽しめる内容。
    ミステリとしては、飛び道具的かと感じましたが、情念のこもった傑作ではないでしようか

  • レイ子に翻弄される人々を描いたミステリ。読者である私も翻弄され、真相に驚き、楽しめました。 かつて整形手術を受けさせられ、トップモデルに駆けあがり、殺されたレイ子。そんな中で、彼女の元夫が自殺をし、遺書でレイ子を殺したと自白していたのです。しかしレイ子に関わっていた他の六人、それぞれにレイ子を殺した記憶があるのです。 七人の章に分かれ、それぞれのレイ子殺しのシーンが描かれます。繰り返される凄惨なシーンと疑問が膨れ上がる中で、レイ子の人間関係が浮かび上がり、真相の衝撃といった緩急が気持ちよい作品です。

  • 時間があれば。

  • 小さな小さな箱の中の、大きな大きなからくり、のような作品。

  • ドラマを観てなかなか良かったので読んでみる。
    7人が美織レイ子を殺したと言っている。でもそんなはずはなく、一人一人の告白によって真相が明らかになっていく。

    結局、結末は知ってるのでハラハラすることはなかったけど、レイ子が使ったトリックは文章だけだと分かりづらいのでドラマ観てて良かったと思った。コンセプトやら構成やらは面白いと思ったんだけど、なぜかなかなか読み進められず、てこづった。

  • ごく最近,天海祐希主演でドラマ化された作品。もともとは,なんと1984年の作品。連城三紀彦の作品は古びれないということか。
    世界的なファッションモデルとして活躍している美織レイ子を殺す動機を持っている7人の男女。この7人の男女は,全員が「美織レイ子を殺したのは自分だ」と信じている。
    連城三紀彦がこの作品を紹介したことばとして,解説に以下のように書かれている。
    「事件は,他殺と自殺が同時に起こっていて,加害者と被害者の二重奏ともいうべきものかもしれません。その重要な真相の一部が,最初から読者に提示されています。」,「この物語には,確かに女主人を死にいたらしめた犯人と言える人物が存在していますが,それが登場人物のうち誰なのか,作者自身がしらずにいます。従って,この作品には”犯人”の章がありません」,「二つのルールを破って,それでも,謎があり,解決があるミステリーを書くことが可能か。-それに挑んでみたかったのです。」
    この紹介文を見ただけで,読みたくなってしまう秀逸な紹介文でが,ここに書かれている内容は全て真実。実際に,美織レイ子に毒を飲ませた人物が7人のうち誰かは分からない。犯行シーンと美織レイ子が仕掛けた罠については最初から書かれている。それでも,もう一つの罠,共犯者である笠原信雄の存在が隠されているので,「18章 共犯者」の章で笠原信雄の存在と,美織レイ子の代わりに死体役を務めた「石上美子」の存在が隠されているので,「謎」と「驚愕の真相」が浮かび上がってくる。
    プロットが実に見事な作品であり,叙述トリックも非常に見事に使われているとても「よくできた作品」だと思う。よって,玄人筋,ミステリー作家の評価はとても高い。
    個人的な好みとしては,そこまで印象に残らなかったし,登場人物にもそれほど魅力を感じることができず,そこまで「驚愕な真相」とも思えなかった。連城三紀彦の作品は,どれも評価が高く,よくできた作品だと思うが,個人的には好みから少しずれている。この作品の個人的な評価は★3。連城三紀彦の作品は,もっと時間が経ち,もっと歳をとってから読めば,また,評価も変わるかもしれない。

  • なんとも奇妙で、読めば読むほどぐるぐるしてしまうミステリ。でも真相が分かってみると、謎はすっきり解けました。そして端麗で凄絶な雰囲気が印象的な一冊です。
    七人の人間がそれぞれ自分が犯人だと自覚しているにもかかわらず、殺されたのは一人、というなんとも不可思議な状況。そして七人に自分を殺すよう仕向けていた魔性の美女。分かってみるとこの「復讐」はあまりにも悲しく凄まじく。それでもとても魅力的だなあ。

  •  また凝った作りのミステリー。7人の容疑者がそれぞれ自分こそは殺人をおかしたと思いこんでいる。真犯人は1人なのだけれどそれが最後までわからないという趣向。だましだまされる虚々実々の関係とか、入れ替わりトリックとか、工夫が凝らされていてそれが話の進行とともに小出しにされて読者を引きつけてゆくところはさすがに手練の作者ならでは。ただ、7人もの相手それぞれの弱みを握って殺人に至るまで追い詰めるというところが結構無理しているし、殺人トリックもさすがに苦しいところだ。それよりもレイ子の回想シーン。東京の濁った海が地中海よりも南太平洋よりも美しく輝いていた。そんなささやかな幸せが運命の交通事故を境に急転するのが切ない。そこで元に戻るという選択はなかったのか。

  • 「私は7人の男女に7回殺される」という書店の紹介に惹かれ、目次を見た時に「誰か」というタイトルが並んでいることに惹かれ即決で買った本。
    読み進めて行くうちに登場人物達が巻き起こしていく事件の世界に夢中になれた。
    また、タイトルが「誰か」となっているためにすぐに名前は出てこず、これは一体7人のうちの誰なのか考え、読み進め、わかった時の驚きはとても爽快であった。
    だが…欲を言うなれば、トリックはわかったものの、全てが終わっていない。これまで完璧に奏でていた奏者がいきなり曲の途中でステージを降りたような虚しい驚愕が残ったまま。私はまさに、どよめきが残る会場に取り残された客の一人となってしまった。
    作者にはこの変奏曲の終幕をしっかりとおろして欲しかったと思う。

  • 【惜しまれて亡くなった著者、全盛期の代表作】世界的モデル美織レイ子の死。七人の容疑者全員が、レイ子を殺したのは自分だと信じていた!? 連城ミステリーの最高峰ここに復活。

  • トリックがすごいというわけではない。というより端からそこに重きを置いてなどいないのだろう。
    人物の描き方に感銘を受けた。はじめはいかにも人工的に造り上げられた登場人物の造型に戸惑いを感じたが、読み進めるうちにそれが狙いではないかとも思えた気がした。

  • 究極的とも言える人工美に満ちた佳品。巻末解説にもあるとおり、何もかもが「つくられたうつくしさ」なのだが、その絶美には息を呑む。
    有名になりたいとみずから望んでおきながら、なぜかくも己を呪うようになったのか。そのあたりがいまひとつわからなかったのだが、もとより余人の理解を拒むようなキャラ造型が不自然さを軽減している。
    個人的には共犯者の人物像に、最もどんでん返しの意外性と感銘を覚えた。

    2014/8/14読了

  • 魔術的な語りと騙りが、凄絶な悪夢を奏で出す。
    まさに連城流、並ぶ者なし。――綾辻行人
    数多ある傑作長編の中でも掛け値なしの最高傑作――千街晶之(「解説」より)

    美容整形によって手に入れた完璧な“美”。
    世界的なファッションモデルとして活躍する美織レイ子が死んだ。
    自宅で毒殺されていたのだった。
    参考人として元夫の医師が警察の取り調べを受ける中、レイ子に恨みをもつ男が自殺する。
    ところがその他6人の動機を同じくする男女も、「自分自身がレイ子を殺した」と信じていたという、読者を混沌へと誘い込む展開を見せる。
    果たして美織レイコを殺害したのは誰で、彼女に何が起こっていたのか。

    「超絶技巧の騙し絵にして、人間の業の深さや哀しさを描ききった小説でもある本書は、ミステリという人工美を重んずる文芸が到達し得た極北の境地」
    と評する千街晶之氏。
    正直なところ、途中でトリックの一端は何となく予想できていたのだけれど、
    読了後やっぱりそうだったのか、というよりは、よくもこんなことをしてみせるものだ、という感覚だった。

    解説で著者は本書を、
    1.重要な真相の一部が冒頭で明かされている
    2.作者自身が、被害者を死に至らしめた人物=犯人、を知らずにいる
    このルールを枷に謎と解決のあるミステリーを書くことが可能か、挑んだ作だと紹介している。
    その挑戦がどのような結果をもたらすのか、ぜひ読んでもらいたい作品です。

    ミステリ  :☆☆☆☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆☆
    人物    :☆☆☆☆☆
    文章    :☆☆☆☆☆

  • 初連城作品。
    ものすごい勢いで読み終えた。
    構成力と文章力が素晴らしく、二十年前とは感じさせない。
    巧みです。

  • 連城氏ならではというか、流石というか。
    こまやかなトリックというわけではないけど、流れのテンポがいいのでワクワクしながらアッという間に読んでしまった。最初は「僕が殺しました×7」的な展開になるのかと思ったんだけど、裏切られたー!!面白い!

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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