捕食者なき世界 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2014年5月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784167901127

作品紹介・あらすじ

生物多様性、崩壊の真相に迫る!



生態系の頂点である肉食獣を人類が駆除した結果、生物多様性は減少した。その実例と共に奇想天外な再野生化計画も示す、警告の書。

みんなの感想まとめ

生態系の頂点に位置する肉食獣の減少がもたらす生物多様性の喪失について深く考察されている本書は、科学的な視点と実際の再野生化計画を交えながら、自然環境の複雑な関係を明らかにしています。読者は、肉食獣がい...

感想・レビュー・書評

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  • とても面白い。第一に、生態学の理論の発展を学習することができた。第二に、被食もされてきた人類、という新しい歴史観を得ることができた。そしてコロンブスが来る前に、すでに大型哺乳類は絶滅していた、と!そして、第三に、実際に頂点捕食者の復活に取り組んでいる人たちがいる。残念ながら日本では、この話は人気がないようだが、本当のところはどうなんだろうか。

  • ライオン、ヒョウ、トラ、オオカミ、クマなど、最上位捕食者がいなくなった世界では、自然環境が多様性を失い、自滅していくことがあるというレポート。通常習ったことでは、オオカミがいなくなるとシカが増えるが、シカが植物を食べ尽くすとシカの個体数が減るという調整機能が働くというもの。この定説に反し、実際にはシカは増え続け、生息地域を拡大し、餌となる木々を全滅させる。そうすると、その植物の花を目当てに集まっていた昆虫が減少し、昆虫を餌にしようとする鳥類が減少する。こうしてその地域は多様性を失い、一面シカも食べないシダ植物に覆われる。これは海でも同じことが起こり、毛皮目当てにアシカやアザラシが乱獲されると、彼らの餌となっているウニが増え、昆布や海藻を食い荒らす。海藻のない海は小魚が寄り付かず、その小魚を餌にする大型魚も姿を消すというもの。科学的に全てが証明されているわけではないが、一考に値する内容で、現代社会の一面、不都合な真実を見せられた気がする。

  •  捕食者(食物連鎖の上位に属する)の増減による環境の変化を、長いスパンで調査した一連の研究をまとめている。自分の予想と別の視点で展開されるストーリーが面白い。肉食獣を駆逐しようとしていた場と、同じ場で再び戻す、という活動も凄い。
     広い領域での研究結果を網羅しているので、中々に難しい点もあるが、充実の内容に満腹。環境問題等地球規模の話にはなかなかついていけなく、またイメージが湧きそうで湧かない状態だったが、本書で少し具体的な事情やアクション案等を思索できたのが良かった。

  • 頂点捕食者(トップ・プレデター)がいなくなった生態系ではどんな事がおこるのか。
    科学ライターの著者は、保存生物学会の第一四回大会で「頂点捕食者」についてのシンポジウムにすっかり心を奪われ3時間ずって聴いていた。


    頂点捕食者がいなくなった生態系では中間捕食者や被捕食者が暴れまわるメルトダウンがおこる。ダム湖にできた人工島に住んでいる、どこにも逃げられないサル達の地獄絵図や、シカが病気や事故を引き起こす北米の郊外などが紹介されている。では、どうすれば生態系を回復する手助けができるのか。第八章からは、イエローストーン国立公園にオオカミを放ち増えすぎたワピチや中間捕食者たちを抑える実験と現状が書いてあります。被捕食者の数を減らすだけではなく、川やポプラへも頂点捕食者が関わっていた、自然は一方を守るだけではなく必要なものだけで出来ている。それを壊したのは人類が出現したからだという衝撃的な話もでてきます。
    「テーマパークのように管理された自然はなんとも味気ないが、世界はすでに、干渉しない保護という選択肢が消えてしまった地域もあるのだ」(肉食動物生態学者ディヴィッド・マクドナルド)の言葉が自然界の姿をあらわしているのではないでしょうか。

  • 「捕食者なき世界」
    生物学的な食物連鎖ピラミッドについて、頂点捕食者が生物多様性に重要な役割を果たしていると言うことについて書かれている。
    まず始めは、海の浅瀬の潮だまりに生息するいくつもの貝とヒトデとの関係である。
    アメリカの研究者が二つの潮だまりで、一つは丹念にヒトデをすべて排除した潮だまり、もう一つは通常のヒトデもいる潮だまりを作り丹念に観察した。潮だまりではヒトデは貝を食べる頂点捕食者だ。
    実験の結果、ヒトデのいない潮だまりでは主にヒトデの食料であったひとつの種の貝がが繁殖し潮だまりの大部分を占領していた。その一方ヒトデがいる潮だまりはオールスターキャストと言った様相で依然としていろいろな種類の貝が生息し活気に満ちていた。
    その次はラッコと昆布とウニの関係である。
    昆布が多い海は昆布を中心として小魚が住みつき、海の熱帯雨林のように生物の多様性を作っているが、ウニは昆布を食べてしまう。そして、そのウニをラッコが食べる。
    このため、ラッコのいない海は昆布がないために殺風景な海になっている。
    ところが、そのラッコを食べるシャチが現れラッコが激減し海の生物多様性が失われた海域がある。
    その原因が、捕鯨により鯨が激減したために鯨を襲うシャチが餌に困り、ラッコを補食するようになったという仮説が発表され学会で激しい議論になった。
    それは、シャチが自分より大きな鯨を襲わないと考えられていたためだが、偶然にシャチが鯨を襲うところに出会った調査船がビデオ撮影に成功しその説は裏付けられた。
    このほかにも、陸上では北アメリカ大陸でオオカミを駆除した結果、鹿が繁殖し木の葉を食べるために森が荒れ果て、鳥のさえずりがなくなり、川岸が崩壊、魚や虫、花まで消え去ってしまうところも現れた。
    人間のハンターが鹿を撃って駆除したが追いつかず、実験的にオオカミを再び放すことで自然が回復しうまく行き始めたところもある。
    そして、最後のケースは人類がアフリカから世界に散らばっていく過程でいくつもの大型肉食獣を絶滅に追い込んだと考えられていることである。大型肉食獣が環境、生物多様性を保つために重要な影響を持っていることを著者は指摘し、人類は環境を維持できるかと結んでいる。
    なんとも、気が重いがやはり経済優先である限り見通しは暗いような気がする。経済よりはもっと重要なことはたくさんあり、失ってからでなければ気がつかないと言うことが問題のように思える。
    人類の未来について考えさせられる一冊である。

  • 生態系のバランスが世界全体で崩れており、その要因として、被捕食者の保護と称して頂点捕食者を大量に虐殺したことが例に挙げられる。これにより被捕食者が異常に増加し、その地域の緑を食べつくしてしまう、もしくはその下の被捕食者を排除する。本書でも挙げられていたシカの例は日本でも当てはまる話であり、シカの大量繁殖により農作物が食べられ、「動物愛護」が邪魔をして黙ってみているしかない。このバランスを元に戻す方法として「頂点捕食者」を再びもといた場所へ戻すことだが、現代の人間との共存は並大抵の努力では実現できない。

  • 面白い。生態学史にも触れつつ、生き物の行動を探る過程を楽しみながら、生き物同士の関係のパターンにも深遠さも味わえる。
    捕食者不在だとこうなる!に一貫しすぎているのが強いて言えば惜しいのかもしれない。恐竜がいなくなったから哺乳類の隆盛と今の人類があるんだし。

  • うーん。

  • 『ハチはなぜ大量死したのか』もそうだったけど、読んで良かった!&是非、読んでいただきたい一冊。 一万3000年前から始まった人間による大型捕食者の駆逐。その結果、中型捕食者、被捕食者が暴走し荒み行く生態系。科学的に大型捕食者が果たしてきた役割が明らかにされる。 おとぎ話など子供のころからすり込まれた偏見、原人からDNAに刻まれてきた恐怖心を克服し、大型捕食者、自然とどう向き合うか考えさせられる良書でした。

  • 学校でも習った生態系のピラミッド、実はこのバランスを絶妙に保っているのは、頂点に存在する肉食動物らしい。1960年代に3人の科学者が発表した「緑の世界」という仮説を、多くの実例とともに紹介している。

    ヒトデを取り除いた結果、岩場が貝で埋め尽くされてしまったり、ラッコが減少したアリューシャンの海では、ウニがケルプ(海藻)の森を食い荒らしてしまったそうだ。
    近年、自分の地元北海道でもエゾシカによる食害が問題となっているが、これももしかするとヒグマの個体数の減少なんかが影響しているのかもしれないと思った。

    頂点捕食者の減少にはいろんな理由があるが、人間による乱獲や開発というケースも決して少なくはない。もし地球上に人間が出現しなければ、今頃目の前にはどんな光景が広がっていたのだろうか、非常に興味深い。

  • 食物連鎖の頂点に立つ捕食者(例えば、オオカミ)が生物の多様性を保つ鍵であり、頂点捕食者がいなくなると被食者(例えば、シカ)が異常繁殖する結果、生物の多様性(例えば、ヤナギ、ビーバー等)が失われる。そのことが、米国イエローストーン地域でのオオカミとワピチ、アリューシャン列島でのラッコとウニ、オリンピック半島でのヒトデとイガイ、サハラ以南でのライオンやヒョウとヒヒ等の実例を挙げながら説明される。
    そして、人間が頂点捕食者を次々と絶滅に追い込んだ現代は、そういうことをするとどうなるかという壮大な実験場である。一部の科学者は大型捕食動物を再導入することでこれを食い止めようという提案をしている。ただ、そうした提案は一般市民の支持を得るには至っていない。ほぼ確率が0だとしてもライオンやオオカミに襲われるかもしれないと思えば大抵の人は感情的に反対するからだ。
    人間のハンターが頂点捕食者の代わりにならない理由は、得心がいった。ハンターは遺伝子集団の最上位の獲物(例えば、大きな角を持った鹿)を狙うのに対し、大型肉食動物は弱った獲物を狙う。ハンターは特定のシーズンに集中して狩りをするが、肉食動物は日々狩りをする。このためハンターでは狩りのシーズン以外は肉食動物の代わりにならず、死肉を漁る動物たちは狩りの狩猟シーズン以外は飢えてしまうし、草食動物はその間野放しになってしまう。もちろん、オオカミは道路を作ったり、四輪バギーで獲物を追い詰めたり、騒音を何時間も撒き散らしたり、地面を踏み固めたりといったこともしない。
    一般人向けの読み物としては、やや硬い感じなので、星3つ。なお、解説によると、原題は "Where the Wild Things Were" で、絵本の"Where the Wild Things Are" (『かいじゅうたちのいるところ』)のもじり。

  • かなり面白い!

  • 驚きと知的興奮と、そして種/主としての人類について考えずにはいられない、とても刺激的な科学読み物であった。食物連鎖の頂点に立つ上位捕食者、狐や狼、時にヒトデの様なキーストーンとなる種いかにが生態系の多様性を保証し、彼らの不在によって中間捕食者が急速に自然を荒廃させていくかを様々な事例から導いてく。理屈の上では理解していたつもりでも、こうやって具体的に示されると改めて自然の生態系が持つ複雑さに驚かさせられる。そして、人類という生態系の頂点に立つ生物が何をしてきたか、どうすべきなのかを問いかける。

  • 【生物多様性、崩壊の真相に迫る!】生態系の頂点である肉食獣を人類が駆除した結果、生物多様性は減少した。その実例と共に奇想天外な再野生化計画も示す、警告の書。

  • 生態系ピラミッドの頂点を占める捕食者〜apex predator〜が主に人間の手によって駆除されつつある。オオカミ、ハイイログマ、ピューマ、トラなどが、家畜や人間自身を守るために罠や銃で殺されている。そうして彼らがいなくなった地域では何が起こるのか。それは恐ろしいほどの生態系の破壊で、概ねピラミッドの下部にいる草食動物体が大量に繁殖することでその地域の植物が食い尽くされ、その生態系が崩壊する。うすうす感づいていたことだけれど、それを綿密な調査で明らかにした動物学者たちによる実証の記録であり、興味深い読み物となっている。更には失われた捕食者を再び環境に戻す動きもあるという。人間が自然環境に及ぼす影響力の大きさを憂えずにはいられない。好奇心を刺激する一冊である。

  • 生態系のトップに立つ捕食者がいなくなると、草食動物や下位の捕食者が増え過ぎて、生物の多様性が失われるという。このテーマに関する生態学の研究の歴史を丹念に追っているのも勉強になる。しかし、オオカミなどの肉食動物を復活させることには、人々の根強い反発がある。これまで、危害を及ぼす動物を根絶する努力をしてきた歴史を考えれば、当然のことだろう。それならば、人間がその役割を果たせばいいという意見も出るだろうが、ハンターには生物多様性の維持は担えきれないという結論が出されている。生態系の保全と人間の生活を両立させるためにどうすべきかを考えるにあたって、新たな視点を与えてくれた。

    チャールズ・エルトンは、1920年代にノルウェーの北側に位置するスピッツベルゲンで生態系の研究を行い、ニッチ、食物連鎖、ピラミッドの概念を編み出した。1960年にヘアストン、スミス、スロボトキンの3人(HSS)が、捕食者によって草食動物が植物を食べつくさないようにしているという「緑の世界」仮説を発表した。ロバート・ペインは、海岸の岩場から捕食者のヒトデを除去すると、ヒトデの捕食対象であるイガイが岩場を占領することを発見し、ヒトデのような影響力のある種をキーストーン種と呼んだ。

    アメリカのオオカミ根絶の取り組みは、マサチューセッツ湾の植民地で1630年から1頭あたり1セントの報奨金を与えたことに始まり、1915年からは税金を投入して1930年代にほとんどの州で根絶された。

    コヨーテが駆除された地域では、アライグマ、アカギツネ、カンガルーネズミなどが増え(中間捕食者の解放)、これらの動物に巣を荒らされた鳥が減少した。アフリカでは、ライオンやヒョウがいなくなった地域でヒヒが増加した。

    オジロジカは広食性で多種多様な植物と菌類を食べ、多産のため2年で2倍に増える。シカの数が増えると、鳥類の種の数は減少する。

    ノースカロライナ起きでは、大型のサメが乱獲された結果、その獲物になっていた小型のサメや映画桁違いに増加し、その食料であるハマグリやカキなどの貝が激減した。

  • 生態系のバランスがとれている小さな湾内で、捕食者であるヒトデを排除したら、イガイだらけになってしまった話や、ダム湖の中の孤島ではやはり捕食者がいなくなったため、ホエザルが大繁殖したのちに、木の芽が食い荒らされ、毒素をもつシダだけが生き残る話など、生態系のバランスは、大型肉食動物等のトッププレデターが担っているというのが、著者の主張。

    それでは、人間はトッププレデターなのか?
    本書はそのことにも言及している。

    近所のカラスを見て、捕食者は誰なんだろう?と考えた。

  • 本書で描かれている主張が、生態学の定説となっているかどうかは知らない。だが、とても説得力がある。
    頂点捕食者、すなわちオオカミであり、ラッコ→シャチたちが、生態系の安定を、上からキーストーンのように支えるというものだ。北米では近代に大型の捕食者が人間のために激減し、このことがシカなどの不安定な増減、植生、鳥の破壊をもたらしたが、イエローストーンでオオカミを再導入すると安定が見られたという。人間の意識の底にいまなお潜む捕食者への恐れ、嫌悪とどう折り合いをつけるかが、彼ら生態学者たちの課題となる。

  • 環境問題、人類と自然界の関係を深く考えさせてくれる非常に面白いノンフィクション作品だった。

    多くの科学者が観察や研究を行い、辿り着いた頂点捕食者の存在が自然界の生物多様性を維持しているという仮説…また、現在の生物多様性の崩壊を招いているのは、人類が頂点捕食者を次々と絶滅に追い込んでいるからだという驚きの仮説…まるで、SF小説のような展開に最後まで面白く読むことが出来た。

    繊細なバランスの上に辛うじて成立している自然界。人類が地球の絶対王者に君臨し、勢力を拡大した時から自然界の崩壊は始まった。人類とは何と残酷な存在であろうか。最近、よく目にする自然界の猛威。これは人類に対する自然界の逆襲なのか。感想もSFチックになってしまった…

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