烏に単は似合わない  八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.77
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本棚登録 : 4064
レビュー : 505
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901189

作品紹介・あらすじ

史上最年少松本清張賞受賞作人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界「山内」ではじまった世継ぎの后選び。有力貴族の姫君四人の壮大なバトルの果て……。史上最年少の松本清張賞受賞作品。解説・東えりか

感想・レビュー・書評

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  • 「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎの若宮の后選びが始まる。
    権力を争う大貴族四家から遣わされた美しい四人の后候補は、春殿、夏殿、秋殿、冬殿を与えられる。家の命運を担い、それぞれの思惑を胸に后の座を争う。

    塩辛いものを食べたら甘いものが欲しくなるように、北方水滸伝を読んだ後は、少しスイートなものを読みたくなる。
    こちらのシリーズはブクログでもしばしば見かけ、面白そうだなと前から気になっていたもの。表紙からしてキラキラだし和風ファンタジーは私の好きな世界観!あらすじからは後宮内のドロドロもあるようだけど、序盤を読んだ範囲だと、若宮との純愛物語なのかなと想像して読み出した。

    しかし、どうみても王朝ファンタジーなのに、松本清張賞なのは何故だろう?と思っていたら!
    後半、窃盗で捕まった女官が謎の死を遂げたあたりから、空気が妙になっていく。なんだか変だなと戸惑っていたら、終盤は驚きの展開。

    読了後はもやもやが残る。全然スイートじゃなかった。むしろかなりビター。
    伏線としては弱いと思うし、あせび以外の姫君たちのことはほとんど描かれていなかったのに、あれこれ唐突すぎで感情移入できない。
    私はミステリーで騙されるのはむしろ好きなんだけど、この本は、騙されたというより、(いい意味でなく)裏切られた感が強い。
    そもそもミステリーとは思わずに読んでいたのに、最後にようやく現れた若宮が、いきなり真相を暴き出し、置いてけぼりを食らう。お前誰やねんと思ってしまった。
    しかも若宮こそ性悪というか、見下す態度が全然かっこよくないし好きになれない。

    Amazonレビューでも★1と★5が拮抗しているようだけど、せっかくの作り込まれた世界観なのになぁと、どちらかというと★1レビューの感想に近い。合う合わないは個人的な好みの問題だと思うが。
    でも2巻もセットで読むべきという意見もあるようだし、とりあえずもう一冊くらいは読むつもり。

  • ここにきて、ようやっと読み出した八咫烏シリーズ。積読が数年に及んでいたため、私の手元にあるのは旧カバーだけど、個人的にはこちらの方が好みだったりする。

    ファンタジーというと中世ヨーロッパのような世界観が多数を占める中、小野不由美さんは十二国記シリーズで古典中国のような精緻な世界観と天命説を組み込んで見せた。それでは本シリーズはどうかというと、日本の平安朝のような、華やかな姫君たちのサロンが舞台である。そこは八咫烏の一族が支配する世界であって、なんと人間は鳥の姿に転変できるという。一歩間違えたら冗談になりかねない、摩訶不思議な設定だと思う。

    本書の評価は大きく割れているようだが、それは始めにどういうマンインドセットで読み始めるかにかかっている気がする。
    剣と魔法を期待したファンタジーファンは、貴族の権力闘争と、若宮の后の座を巡るどろどろした女の闘いに、肩透かしをくらったように感じるだろう。ましてや最後の展開には、気持ちの悪ささえ感じてしまうかもしれない。
    だが、本書は松本清張賞受賞作品である。解説で東えりかさんが書かれているように、後半にきて物語はガラリと、本当にガラリと空気が変わる。まるで白い鳥だと思っていた卵から、全く予想もしなかった黒い烏が産まれたような驚きがある。そして、こういう驚きが、大好物なんですね、ミステリファンは。予想が外れて怒るどころか、喜ぶのがミステリファンである。私はとても楽しんだ。

    受賞当時、なんと作者は驚きの二十歳。執筆や構想はそれよりも早いはずである。登場人物のキャラクタが固まり切っておらず、少しブレがあるように感じるのは早書きだからだろうか。シリーズが展開していき、そこがどう変わっていくのかも楽しみだ。

  • 若殿の妻になるべく集った4人の姫君の、後宮での争いの物語。

    物語の3分の2くらいまでは、主人公となるあせびに心を重ね、純真無垢な彼女が若宮に選ばれたらいいと思っていた。あせびの若君を想う、少女小説のような初な恋心に心をぐっと掴まれ、彼女を応援する気持ちになっていた。姫君同士の喧嘩はあるものの、気負わないあせびの様に毒気を抜かれたように宮中も穏やかになっていき、周りにいい影響を与えるあせびを中心とする物語展開に、気持ちも明るくなっていった。
    ところが人死が出、北殿の姫が壊れ始めた頃から、姫君達の憧れと競争心だけではない、隠されていた物語が姿を見せ始める。とどめは若君が登場し、あせびに入内の意志を訊いたところ。ここから様相ががらっと変わる。ただ無邪気に、知識はないながらも心は豊かな姫君だと思っていたあせびが、表と裏を入れ替えるように異なる様相を見せる。伏線の張り方が絶妙であり、意識せずに記憶にとどまっていた一言なり一人なりが、あとから伏線であると明かされ、鮮やかに裏もようを見せる。

    ファンタジーとしての世界観も、ミステリーとしての見せ方も、どちらも非常にレベルが高い。松本清張賞受賞も頷ける。
    異世界後宮ファンタジーであり、異文化体験であり、初恋の少女小説であり、女の友情物語であり、ミステリーであり、何より恋愛物語でもある。読み終えた今でも、物語に深く没頭したためかまだ気持ちが浮上し切れておらず、怖い。笑顔で、何も知らない顔をして、自身が幸せになるために、他の花を手折ることに全くためらいを持たない女。前半をその女に感情移入して過ごしてきたからこそ恐ろしい。身が震える。さても恐ろしい物語であるか。これからが非常に楽しみな作家さんです。

  • 2012年6月文藝春秋刊。2014年6月文春文庫化。第19回(2012年)松本清張賞受賞。阿部さんのデビュー作。八咫烏シリーズ1作目。八咫烏族の後宮ものの話が、中盤まで続き、その後の女官の死亡事件から、不穏な展開に推移する。残り20%というところで、後宮の主となる若宮が登場し、今回の出来事の謎解きが始まるというストーリー仕立になっており、予想もしない展開で、一気にラストまで読み進みました。若宮の花嫁候補となる4つの家の者、後宮を管理する者達との諍いの中での若宮の推理は、いくつもの驚きと哀しみを明らかにし、隠された事実をあぶり出しますが、爽快ではあるものの、割り切れない想いも残ります。物語りは、決して完結したことにならないという予感と続編への強い期待に繋がります。続編が、とても楽しみです。

  • たびたびブクログのレビューで見かけて気になっていた1冊です。

    舞台は八咫烏の一族が支配する世界。
    若宮の后候補として四家の名門貴族から遣わされた美しい姫君たちの1年を描いた、王宮で繰り広げられるきらびやかな和製ファンタジー。

    …かと思いきや、なのである。

    ある者は若君への恋心を胸に、ある者は家の期待を背に負って、またある者はうかがい知れない思惑を抱え。
    今上陛下の正室や大貴族の当主たちの権力争いも相まって、ストーリーはどんどん予測できない方向に転がり始めます。
    次々と変わる風向きや旗色に目を白黒させつつも、ページをめくる手が止まりません。
    そしてたたみかけるように真実が明らかになる第5章、夢中になりすぎて体温が上がったように思えたほど、のめりこんでいたのでした。

    この八咫烏シリーズ、続編があるのだそう。
    「また裏切られたい」という期待を胸に、そちらも読んでみたいと思います。

  • 期待していた話と違っていたのだけど、これは嬉しいことなのか、それとも期待外れになるのか…

    あせびという主人公は魅力に欠けるなぁと読んでいたけれど、なるほど。
    一方、構成上、仕方がないのかもしれないけれど浜木綿に思い入れできるようなシーンがもう少し欲しかったなぁ…

  • 2020.08.17 読了
    一気読み。後半急ぎ足で進む展開が少し残念だったけど、綿密に考えられた八咫烏の世界観が良かった。想像していた結末ではなく、良い意味で裏切られた。

  • ミスリードされるように構成されている作品。
    一度読み終わってから、再度冒頭のあせびと父の会話を読み返すと、なんか怖い(笑)
    個人的にはあまり好きな騙され方ではない。
    主人公だと思って好意的に読み進めていった末の裏切られた感が気持ちよくない。
    人物や世界観は好き。

  • すごくおもしろかった!
    解説でもあったけど、本当に最初はあらすじ読んでよくある宮廷内の切ない恋愛とか陰謀渦巻く愛憎劇の物語なのかなーって思っていたら不意にん?って展開になってあとは一気に最後まで読みきってしまいました
    いい意味で裏切られた。そして私にとってそれがとても気持ちのいい裏切られ方でした
    ただ今作の衝撃がすごすぎて続編読むかはちょっと保留にしておきたいかも

    ※以下ネタバレ注意※



    クライマックスでこの物語の主人公はそれまでほとんど姿を見せることもなかった若宮だとわかるんだけど、同時に主人公然としていたあせびに抱いていた疑惑が溶けた気がしました
    純真無垢で世間知らずの箱入り娘、容姿も美しくて他の后候補のような野心や嫉妬心を持ち合わせないあせびは一見少女漫画の王道主人公のようなんだけどそれにしては実態が掴めないというかどうも感情移入しにくかった
    この感じ、ある程度の年齢いった女性はわかるんじゃないかなー
    それとも私が疑ぐり深いだけなのか?(笑)

  • 良質の和製ファンタジーを読んでいるつもりが
    ラストで本格ミステリー気味の大どんでん返し
    で唖然という言葉でまとめられる。

    ラストは個人的には評価しがたい。

    というのは、唐突感がありすぎて
    ポカーン(゜д゜)という感じだし
    最後までファンタジーを読みたかった
    という思いがあるから。

    大富豪の革命ばりにすべてが
    ひっくり返りすぎて
    今までの話はなんだったのか
    という読後感だった。

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2021年 『烏は主を選ばない(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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