烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫) (文春文庫 あ 65-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901189

作品紹介・あらすじ

史上最年少松本清張賞受賞作人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界「山内」ではじまった世継ぎの后選び。有力貴族の姫君四人の壮大なバトルの果て……。史上最年少の松本清張賞受賞作品。解説・東えりか

感想・レビュー・書評

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  • 正直に告白します。舞台こそ「山内」という空想のものなれど、后の地位を巡る愛憎劇が繰り広げられつつ惨劇が起きるのだろう。なんて、思いながら読み始めたのだが、まるで甘すぎた。いや、自分が甘すぎたのであって、物語は全く甘くない。参りました。シリーズ第1弾でガッツリ掴まれました。解説に書かれている通り、読み終えてから冒頭に戻って読み返した。恐らく誰もが同じことをしたのではないだろうか?

    山神は自らの代わりに山内の地を納めることを金烏に命じ、金烏は四人の子供たちに東西南北に分けた地を与えた。子々孫々、与えられた地を守る四家四領ができ、金烏を宿すのが宗家となった。

    今作の舞台は、宗家の皇太子である日嗣の御子の后「桜の君」候補を集めた桜花宮。東家のあせび、南家の浜木綿(はまゆう)、西家の真赭の薄(ますほのすすき)、北家の白珠(しらたま)という后候補に、それぞれ順に春殿、夏殿、秋殿、冬殿という屋敷が与えられる。そして、第1章から春夏秋冬と銘打って各后候補を中心とした物語が続いていく。その中で徐々に各后候補の人柄が分かってくるが、少しずつどこか物騒な事態や政略などが明らかになってくる。その辺りからはもう先が気になりすっかりハマり込む。出来上がりつつある人物像は尽く覆され、物騒な事態はただ不運の重なりで起きたことではないと分かる。事実からだけでは浮かび上がらない多くの思惑が幾重にも重なる。『烏に単は似合わない』というタイトル、読み終えてみると目に見えることから目に見えないことまで様々なことを連想してしまう。1巻だけでは気になることも多すぎて続刊も楽しみだ。

  • ここにきて、ようやっと読み出した八咫烏シリーズ。積読が数年に及んでいたため、私の手元にあるのは旧カバーだけど、個人的にはこちらの方が好みだったりする。

    ファンタジーというと中世ヨーロッパのような世界観が多数を占める中、小野不由美さんは十二国記シリーズで古典中国のような精緻な世界観と天命説を組み込んで見せた。それでは本シリーズはどうかというと、日本の平安朝のような、華やかな姫君たちのサロンが舞台である。そこは八咫烏の一族が支配する世界であって、なんと人間は鳥の姿に転変できるという。一歩間違えたら冗談になりかねない、摩訶不思議な設定だと思う。

    本書の評価は大きく割れているようだが、それは始めにどういうマンインドセットで読み始めるかにかかっている気がする。
    剣と魔法を期待したファンタジーファンは、貴族の権力闘争と、若宮の后の座を巡るどろどろした女の闘いに、肩透かしをくらったように感じるだろう。ましてや最後の展開には、気持ちの悪ささえ感じてしまうかもしれない。
    だが、本書は松本清張賞受賞作品である。解説で東えりかさんが書かれているように、後半にきて物語はガラリと、本当にガラリと空気が変わる。まるで白い鳥だと思っていた卵から、全く予想もしなかった黒い烏が産まれたような驚きがある。そして、こういう驚きが、大好物なんですね、ミステリファンは。予想が外れて怒るどころか、喜ぶのがミステリファンである。私はとても楽しんだ。

    受賞当時、なんと作者は驚きの二十歳。執筆や構想はそれよりも早いはずである。登場人物のキャラクタが固まり切っておらず、少しブレがあるように感じるのは早書きだからだろうか。シリーズが展開していき、そこがどう変わっていくのかも楽しみだ。

  • 十二国記のような異世界ファンタジーに平安ぽさの漂う後宮を混ぜた印象だったが、徐々に雰囲気が変化していくのはなかなか面白い。なにぶん登場人物が多く、それぞれの性格や思惑の把握、複雑な人間関係の把握に時間もかかったし、世界観に入って行き難かった。何度か読むともっと面白くなるのかもしれない。人に勧められて読んだから期待し過ぎたこともある。

  • たびたびブクログのレビューで見かけて気になっていた1冊です。

    舞台は八咫烏の一族が支配する世界。
    若宮の后候補として四家の名門貴族から遣わされた美しい姫君たちの1年を描いた、王宮で繰り広げられるきらびやかな和製ファンタジー。

    …かと思いきや、なのである。

    ある者は若君への恋心を胸に、ある者は家の期待を背に負って、またある者はうかがい知れない思惑を抱え。
    今上陛下の正室や大貴族の当主たちの権力争いも相まって、ストーリーはどんどん予測できない方向に転がり始めます。
    次々と変わる風向きや旗色に目を白黒させつつも、ページをめくる手が止まりません。
    そしてたたみかけるように真実が明らかになる第5章、夢中になりすぎて体温が上がったように思えたほど、のめりこんでいたのでした。

    この八咫烏シリーズ、続編があるのだそう。
    「また裏切られたい」という期待を胸に、そちらも読んでみたいと思います。

  • 若殿の妻になるべく集った4人の姫君の、後宮での争いの物語。

    物語の3分の2くらいまでは、主人公となるあせびに心を重ね、純真無垢な彼女が若宮に選ばれたらいいと思っていた。あせびの若君を想う、少女小説のような初な恋心に心をぐっと掴まれ、彼女を応援する気持ちになっていた。姫君同士の喧嘩はあるものの、気負わないあせびの様に毒気を抜かれたように宮中も穏やかになっていき、周りにいい影響を与えるあせびを中心とする物語展開に、気持ちも明るくなっていった。
    ところが人死が出、北殿の姫が壊れ始めた頃から、姫君達の憧れと競争心だけではない、隠されていた物語が姿を見せ始める。とどめは若君が登場し、あせびに入内の意志を訊いたところ。ここから様相ががらっと変わる。ただ無邪気に、知識はないながらも心は豊かな姫君だと思っていたあせびが、表と裏を入れ替えるように異なる様相を見せる。伏線の張り方が絶妙であり、意識せずに記憶にとどまっていた一言なり一人なりが、あとから伏線であると明かされ、鮮やかに裏もようを見せる。

    ファンタジーとしての世界観も、ミステリーとしての見せ方も、どちらも非常にレベルが高い。松本清張賞受賞も頷ける。
    異世界後宮ファンタジーであり、異文化体験であり、初恋の少女小説であり、女の友情物語であり、ミステリーであり、何より恋愛物語でもある。読み終えた今でも、物語に深く没頭したためかまだ気持ちが浮上し切れておらず、怖い。笑顔で、何も知らない顔をして、自身が幸せになるために、他の花を手折ることに全くためらいを持たない女。前半をその女に感情移入して過ごしてきたからこそ恐ろしい。身が震える。さても恐ろしい物語であるか。これからが非常に楽しみな作家さんです。

  • 初の阿部 智里作品。『八咫烏』シリーズ第1巻。最初のきらびやか雰囲気とは打って変わって、後半のミステリアスな展開には、舌を巻く程の面白いファンタジー(?)作品でした❗第19回松本清張賞史上最年少受賞も伊達ではないと、とても感心した作品です♫

    あせびの印象が最初と最後で、ガラッと変わったことは驚きですが、個人的には浜木 綿が、イチオシのキャラクターです❗

    ファンタジー好きは勿論のこと、ライトミステリー好きの方にもオススメ出来る秀作です♫

  • 2012年6月文藝春秋刊。2014年6月文春文庫化。第19回(2012年)松本清張賞受賞。阿部さんのデビュー作。八咫烏シリーズ1作目。八咫烏族の後宮ものの話が、中盤まで続き、その後の女官の死亡事件から、不穏な展開に推移する。残り20%というところで、後宮の主となる若宮が登場し、今回の出来事の謎解きが始まるというストーリー仕立になっており、予想もしない展開で、一気にラストまで読み進みました。若宮の花嫁候補となる4つの家の者、後宮を管理する者達との諍いの中での若宮の推理は、いくつもの驚きと哀しみを明らかにし、隠された事実をあぶり出しますが、爽快ではあるものの、割り切れない想いも残ります。物語りは、決して完結したことにならないという予感と続編への強い期待に繋がります。続編が、とても楽しみです。

  • 期待していた話と違っていたのだけど、これは嬉しいことなのか、それとも期待外れになるのか…

    あせびという主人公は魅力に欠けるなぁと読んでいたけれど、なるほど。
    一方、構成上、仕方がないのかもしれないけれど浜木綿に思い入れできるようなシーンがもう少し欲しかったなぁ…

  • 表紙に騙されるな!とだけ。ごちゃごちゃ書きたくない。いい意味で裏切られた。姫様たちの描写や人間関係の描き方が好みでした。だからこそ、この文章の雰囲気でこういうことする?!みたいな驚きを感じました。続きもあるようなので追っていきます、

  • 同僚から「どんでん返しもの」を読んでね、と言われ引き受ける(少し気が乗らず、2か月間放置)。1,2巻を借りていて、そろそろ返さないといけないので慌てて1巻完読。4人+αの女性が入内を争う嫌らしい人間関係。この若宮は本気で悪い奴、絶対に友達にならん!。う~ん、期待を裏切り、このようなファンタジーは私には合わなかった。主人公・あせびの入内を期待していたが、最後の最後に若宮があせびの諸悪を暴露するという内容だと思う。2巻目以降が面白いという妻の意見もあるが、2巻目は、えーい、読んだことにしてしまおうか?

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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