ヤクザと原発 福島第一潜入記 (文春文庫 す 19-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901264

作品紹介・あらすじ

原発はヤクザにとって「最大のシノギ」暴力団専門ライターが作業員として福島第一原発に潜入したルポ。そして用地買収や作業員派遣で原発に食い込むヤクザの実態を暴く。

感想・レビュー・書評

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  • ヤクザ記事を専門とするルポライター・鈴木智彦さん
    ヤクザと原発について調べるために自ら原発作業員となって福島原発のF1に潜入して書いたルポ。

    「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物を永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺たちは。」

    原発の作業員を集める仕事、建設現場での土木仕事、原発誘致に反対する人々への圧力、原発をつくって村の存続を願う人をまとめる仕事、原発事故の土地での墓の移転、農地移転、電力会社、建設会社、下受け、孫請け…様々なところにヤクザの仕事がある

    つまり原発は「大きなシノギ」になる

    2011年3月12日に福島第一原子力発電所が水素爆発を起こした。東北の大震災で起こった「想定外の」大きな津波が原子力発電所を襲ったからだ。

    F1と呼ばれる原発事故後の現場に入る人にしかわからない作業の杜撰さ、なんだかんだ言って全く謝罪の気持ちのない上から目線の電力会社、情報弱者の現場の人夫たち、見えないからこそ恐ろしい放射能の恐怖
    それらは現場を見ないと書けない。
    放射能で汚染された水を浄化する施設に流すために汚染水のすぐ横で働く作業員
    原発バブルでにぎわうソープ街
    造血幹細胞の保存を支持した谷口プロジェクト
    そしてそれを無駄と言い切った国や東電

    「ヤクザが原発をシノギにできるのは暴力団を含む原発村が地域全体を丸のみすることによって完成しているから」と鈴木さんが書いていることがすごく納得がいく

    田舎に原発が多い
    そのカラクリもよくわかった

    すごいルポだった!
    まさに鈴木さんでなければ書けなかったルポだと思う。

  • 震災による、原発事故。連日ニュース等で目にしていたが、この本を読むまでは本当のところまでりかいしていなかった。どこか他人事に思っていことは否めない。
    大組織にはよくありがちな隠蔽。そして、それを正義ではないと思っていても、家族、生活のために解雇を恐れそれを指摘できない、そんな気持ちも分かる。

  • ヤクザ記者が原発作業に従事した(するまでの記述も多いが)先入ルポ。

    比婆山麓旅行中に一気に読了。

    寝屋川事件の容疑者といい、訳あり従業員が多い印象あり、またこういったスキマに入り込むのがヤクザなので、驚きは無かった。

  • 原発と暴力団の関係を追ったルポ。周辺と1F潜入取材。原発村が地域共同体を丸呑みすることで彼らは原発をシノギにできている。地方は同族意識が強いから丸抱えしやすく都合が悪いことを隠蔽しやすい利点もある。土地や箱物、人夫を通じて稼ぐのは土木業と同じ。現場作業員の情報弱者っぷりが怖かった。

  • 辛い現実

  • 「闇営業」という言葉でヤクザさんの本が目につき再読。
    ヤクザさん、なくならないよ。必要悪だもん。
    しかし、終章読むとため息しかない。
    最近、福島第一の報道、見かけません。

    汚染されている事に、私達は気づかされたとしても、何もできない。化学の技術の発展を祈るのみです。

    潜入ルポしてくれたから読めましたが、お身体大丈夫何でしょうかね?

  • まさに体を張った原発潜入ルポです。

    最近、トンと汚染水処理の話を聞きませんが、凍土壁が無駄になって以降、海に流し放題が続いているのでしょうか?
    その一方で、疎開者が放射線汚染でいじめられたり、福島沖周辺の魚介類への危険性などをあおったりという問題は散発的に耳にしますが・・
    これだけの大事故が起きながら、結局だれも責任を取らず、従って第2第3の福島事故が起こりうる可能性は消えず、原発行政の無責任体質だけは温存されています。
    原発もそうですが、放射線廃棄物の処理場やら沖縄の米軍基地などやっかいもの誘致には大金が動き、その金に群がる「汚れ仕事」専属のヤクザが暗躍するようになりますが、ある意味、彼らのような存在が無ければ汚れ仕事を引き受ける人材を確保することさえむつかしいのも事実です。
    国も政治家も地元も企業も必要悪だとわかっていても持ちつ持たれつの関係性を絶つことができない。
    吉本芸人の闇営業は非難されても、ヤクザの大きなシノギとなっている原発営業にはダンマリ・・というかむしろ許容しているというダブルスタンダード。

    民主党政権下で起こった大惨事でしたが、あの時点で国家が行った情報統制は正しかったのか(大本営発表前になぜか外国企業がいち早く国外退去していたこと、水素爆発、放射能の拡散経路の発表など)などの検証はもっときちんとすべきですが、日本人の悪い癖、喉元過ぎれば熱さを忘れるが当たり前のように繰り返されている現実はやはり問題です。

    私が読んだのは、2014年の文庫版ですが、2011年12月に単行本としていち早く発表された本書に敬意を表します。

  • 鈴木智彦『ヤクザと原発』読了。
    以前読んでいたのだけれど、とある読書法を試す為に再読。

    あの原発事故ですらシノギとして取り込もうとするヤクザ。
    その節操の無さには呆れるが、それがシノギとして成立する裏には地方都市ならではの閉鎖性と役所とヤクザとの関係性が…

    何だ、池田敏春監督の『人魚伝説』や黒木和雄監督の『原子力戦争』で描いていた内容は事実だったて事じゃない‼️

  • 暴力団関係の取材を得意とする著者が、実際に福島第一原発での作業員として現場に潜入し、その実情を伝えたノンフィクション。福島第一原発の現場作業への作業員派遣絡みで暴力団がいかに関わっているのかという点に著者が着目して、実際に自ら作業員として雇用されて現場に入ります。
    暴力団との関わりに関しての記述は書名の割に少なく、それよりも本書の読みどころは2011年の夏ごろの福島第一原発で働く作業員の日常や、作業の様子です。
    作業を進めるために形骸化する除染のルール、作業員に現場の状況に関して緘口令を敷いたり、作業員にまともな放射線防護教育を実施しない下請け企業など、報道されない様々な実情が描かれています。
    本来守られるべきルールや安全が形骸化している様子は誰もが「それはおかしい」と感じるはずです。しかしそうでもしないと作業が進まないという矛盾した状況に、原発の事故が他の災害や事故とは全く異なる種類のものだという事を考えさせられます。
    専門用語などもほとんど出てこず、あくまで専門知識のない「一般の人」の視点で記述されているので、読みやすいです。

  • やっぱり、原発はいりません。叡智を駆使してもコントロールできないものが何故必要なのか。理解不能!

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著者プロフィール

1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。週刊誌、実話誌などに広く暴力団関連記事を寄稿する。主な著書に『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文藝春秋)『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文藝春秋)『サカナとヤクザ』(小学館)などがある。

「2021年 『修羅の花』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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