地層捜査 (文春文庫 さ 43-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901332

作品紹介・あらすじ

警察小説の巨匠の放つ新シリーズ、開幕!時効撤廃を受けて設立された「特命捜査対策室」。たった一人の捜査員・水戸部は退職刑事を相棒に未解決事件の深層へ切り込んでゆく。

感想・レビュー・書評

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  • 新宿荒木町の変遷と戦後花街の盛衰など、勉強になった(笑)。

    最後、主人公の選んだ選択はどちらだったのか?シリーズものらしいので、続巻でそれとなく示してくれると嬉しいかな。

    ★3つ、7ポイント半。
    2017.10.01.古。

    主人公の過去・・・・人間の屑のようなキャリア警官との経緯が気になるため、続巻も追うことになる予感。

    道警シリーズの新刊も、早く読みたいな。

  • 『火刑都市』みたいなのを読みたいなーと思っていて。
    いつだったか、これのドラマを見て意外によかったのを思い出したのがきっかけ。

    読み終わってみると、これはドラマの方がよかったかもなーと。
    ドラマを見たのはずいぶん前だから、うろ覚えのところもあるんだけど、原作よりも小鈴や国枝、そして鈴佳の人となりが描かれていたように思う。
    また、原作には出てこない鈴佳の妹も出てきて、登場人物たちの愛憎や淡い夢、哀しさに味があった。
    一方、原作は場所の匂いこそ濃厚なものの、そこにあった小鈴をめぐる事件がうまくからんでないって言ったらいいのかなー。
    それが過去のことだけに、欲や愛憎のどろどろさが妙にさらっとしすぎちゃった気がする。

    そのため、ただでさえ地味な話が、地味、地味、地味、地味、地味ぃ~とエピソードでつながって。
    最後に、瓢箪から駒ならぬ、その地味からまたまた地味ぃ~駒が見つかって。
    ま、それは登場人物たちからすると、ちょっと湧くことなんだけど、でもストーリー的には全然湧かない、みたいな(^^ゞ

    最後の最後の真相(?)も、やっぱり地味ぃ~に語られて、その辺りと鈴佳の淡い夢の対比を前面に出したドラマの方がお話としては上手かったなーなんて思った。
    もっとも、それを、2時間ドラマにありがちな話に落とし込んじゃっただけ、と言ってしまうならその通りなんだろうけどさw

    ストーリーはともかく、鈴佳が昭和29年に荒木町の花街に12歳で売られてきたという境遇にどきりとした。
    主人公の刑事は、それを聞いて「戦後のことですよね」と聞き返す。
    それを言ったスナックのマスター(ママか?w)は、「まさか、もう当時は人身売買なんてあるわけない、と言うんじゃないでしょうね」と言う。
    それに対して主人公が「いえ」と短く答える、その展開。
    それって、たぶん著者が読者に“戦後に人身売買がなかったなんて思ってないよね?」と問いかけているんだろうなって思うのだ。
    いや、著者だって、たぶんこの本を読もうと思う読者なら、ちょっと前まで人身売買があったことを漠然と知っているはずだと思っているのだろう。
    だから、スナックのマスター(ママ?w)の口を通して、「そんなこと、忘れちゃった?」と読者に問うているんだと思う。
    貧困とか、格差とかって、今の日本ではよく聞くけど。でも、ついこの間まで日本(人)は貧乏だったということって、意外と忘れられているor知らないような気がするんだけど、どうなんだろう?

    あと、最後の方で、主人公に協力している元刑事の加納が言う、「殺しの理由は、男と女の間のしょうもない結末、バブルの頃の、相続遺産をめぐっての身内の殺し。
    わずか8万円の借金のことで人を殺した一件もあったな。人の馬鹿さ加減とかあさましさの、最後の後始末をやっているのが自分のような気もした」というのも、思わず「うーん…」と言っちゃうというか……。
    それは、例の京王線の事件が、まさに加納の言う“人の馬鹿さ加減とかあさましさ”の“しょうもない結末”だったように感じるからなんだけど。
    いや、殺人事件なんて、いつの時代も“人の馬鹿さ加減とかあさましさ”だと思うのだ。
    現に、“自殺は怖いから死刑になりたくて人を殺した”なんて事件、ぱっと思い浮かべてもいくつか思いつくわけだ。
    ただ、それにしても、“人の馬鹿さ加減とかあさましさ”の“しょうもない結末”が、どんどんエスカレートしているような気がする。

  • 奇しくも、過去の事件を捜査する小説が続いてしまった。
    新宿荒木町で、15年前に起きた殺人事件。
    この迷宮入り事件を、時効が廃止されたことにより担当することになった若き刑事。
    退職刑事と相棒を組み、事件現場周辺を渉猟する。
    荒木町の詳細な叙述は、まるでガイドブックのようで、思わず区分地図の該当ページを取り出し見比べながら、読み進んだ。事件そのものよりも、かつての荒木町の雰囲気が印象に残る読後。

  • 街の歴史、時代の空気を味わいながら楽しめる警察小説。女性は大抵水商売、ヤクザがらみ、パソコン弱い感がわかる描写が、佐々木譲氏の小説に出てくると自分はいつもながらグッとくる。

  • 謹慎中だった刑事の水戸部に、殺人事件の時効廃止に伴い15年前の事件の再捜査が振り分けられた。
    相棒は当時の捜査本部にも参加していた退職刑事の加納が相談員として当てられた。
    当時は花街として芸者たちもいて賑やかだったというが、その中に埋もれていた事件と秘密。
    突き止めた真実は、長い年月の経過と共に意味を変えていた。

    2017.11.5

  • 四ッ谷荒木町が舞台。何度か訪れたことがあるけれど、お屋敷町だった 程度の知識しかなかった。事件を通して語られる過去の情景がリアルで入り込めた。
    事件の筋を変える水戸部の視点に無理を感じさせなかったのは、当時の情景、背景がリアルだったからだろう

  • 法改正によって、これまでの事件に対する時効はすべてなくなった。
    上司の命令により15年前の未解決事件(荒木町老女殺人事件)の再捜査をすることになった水戸部。
    事件当時とは街の様相も変わり、関係者もみな一様に年を重ね、中にはすでに死亡している者もいる。
    タイトルの「地層捜査」とは、地層に埋もれた遺物を発掘して歴史を探っていくように、時間の経過とともに埋もれてしまった事件を掘り起こしひとつずつ洗い直していく・・・といった意味だろう。
    すでに引退し捜査協力員として再捜査に加わった加納がいい。
    古き時代の刑事像そのままのスタイルで捜査していく姿と、水戸部のいまふうの捜査の違いが面白かった。
    もしも本当に法改正が実施され、すべての時効がなくなったとしたら・・・。
    諸手を挙げて賛成する人たちと、反対する人たちに分かれることは目に見えている。
    加納が言うように、被害者側のひとつの区切りとして時効が果たしている役割はあるようにも思う。
    時間とともに薄れていく記憶、風化していく事件。
    変わらないのは関わった人たちの中に眠る様々な感情だけなのかもしれない。
    張り巡らされた伏線がひとつになり、思いがけない真実にたどり着いく。
    まったく違った視点からの捜査も、ときには必要なときもある。

  • 15年前の殺人事件の再捜査から、その原因となったさらに30年前の殺人事件に辿り着いた。
    そして15年前に疑われていた理由とは異なる事件の本質が見えてきた。
    四谷荒木町界隈の谷底に深く潜っていったような読後感。

  • 「代官山コールドケース」の前作。四谷荒木町そのものが主人公ともいえる作品。


    無能なキャリアに歯向かって謹慎となった若き刑事・水戸部は迷宮入り事件を担当する「特命捜査対策室」に配属された。15年前の四谷荒木町の殺しを再捜査せよ。専従捜査員は水戸部ただ一人。退職刑事を相棒に、水戸部は町の底に埋もれた秘密と嘘に肉薄してゆく。静かな余韻を響かせる警察小説シリーズ第一作。

    相棒の加納元刑事が魅力的。

  • 久しぶりに佐々木譲氏の警察小説を読了。佐々木氏の作品らしく、淡々と流れる時間、雰囲気を感じました
    時代背景も伺えて渋い内容でした!

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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