その女アレックス (文春文庫)

制作 : 橘 明美 
  • 文藝春秋
3.78
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  • (788)
  • (163)
  • (40)
  • 本棚登録 :6686
  • レビュー :1142
  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901967

作品紹介・あらすじ

あなたの予想を全て裏切る究極のサスペンス!監禁され、死を目前にした女アレックス――彼女の心に秘められた壮絶な計画とは? 英米ミステリ界を戦慄させた驚愕と慟哭の傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 本著は、カミーユ警部シリーズの2作目です。1作目「悲しみのイレーヌ」、2作目「その女アレックス」、3作目「傷だらけのカミーユ」という順番です。

    できれば、1作目から順番に読んでいったほうが楽しめると思います。

    本著は、タイトルにあるアレックスという女性が誘拐されるところから始まり、いきなり読者に緊張感を与えます。加えて、主人公アレックス視点と警部カミーユ視点が短い章で交互に繰り返され、始めからぐいぐいとストーリーに引き込まれます。

    さらに、すぐさま予想もつかない展開が起こり、先が気になり一気に読み進めさせる構成に、唸ってしまった。

    しかし、欲を言えば謎を解き明かしていく過程にもうひとひねり加えてくれたら、最高だった。もう少し酔わせて欲しかった。

    また、最後は「こんなのアリ?!」という展開になりますが、内容が陰鬱だった分、読後感は爽快な気分にさせてくれ、自分としては納得の最後でした。

    私は本著を最初に手にしてしまったため、完成度を求めてしまったがために評価は4点とさせていたあだきましたが、1作目を読んだら、また変わってくるのかもしれません。1作目と3作目を早く読みたいと今はワクワクしています。

  • 今更ながら読みました。
    一時期、このミステリーがすごいと様々な媒体で紹介され、世界中で話題となったフランスの犯罪小説です。

    訳者あとがきに「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」と書かれていて、まさにそのとおりだと思いました。
    残忍な場面がありつつハラハラする内容ながら、本書の見所はやはり、なんと言っても構成の巧さ。
    訳書だけあって最初は違和感があるものの、読みすすめているうちにそんなことは気にならなくなります。

    ネタバレにならないように本書の素晴らしさを伝えるのは難しいですが、総じて見ると主たる登場人物がいいですね。
    ルイは優美で格好いいし、アルマンの健気な感じもいい。
    いけ好かないと思っていたヴィダールだって、案外話がわかる奴じゃないか、なんて思えたりして。

    小説としては素晴らしいけど、事件の内容はあまりに壮絶。
    涙こそ流さなかったものの、あまりにも理不尽な出来事に心が痛くなります。感情移入したら気持ちが鬱々としてしまいますね。映像化もされるみたいですが、怖いもの見たさで見たいような見たくないような。ああ、でも動くルイは見てみたい。

    これは確かに読んだ方がいい1冊。特に読書好きの人にこそ勧めたい1冊ですね。
    やるせない気持ちは残るけど、名小説です。

  • ある日路上で誘拐・監禁された女性アレックスを
    警察が追っていく物語。

    アレックスの立場は、見知らぬ男に突然襲われた
    か弱い被害女性のはずだったのに…。
    そうだったの?そんなことになってるの?
    ああなっちゃったの?そこが狙いだったの?と
    読者は有無を言わさず、ぐるぐると連れまわされます。

    話はよく出来ていて、思ってない場所に連れていかれ
    先がとても気になるのですが…。
    私には重すぎたのかも知れません。
    一気読みできず、ちょっと読むとグッタリして
    十数ページで眠ってしまう日々が続きました。

    自らの意志というより、誰かに進まされているような
    後戻りが許されない暗い深い階段を下りていく感覚。
    そんなアレックスの緊迫する状況と渦巻く怒りのエネルギーに、
    読み手として同行することを無意識に拒否してたのかも知れません。

    アレックスを追う警察側の絆。
    ワケありの警部カミーユと、
    カミーユを助ける周囲の者たちの組織力・人間力に
    ちょっと救われた一冊です。

    よく最後まで読めたものです。
    でも最後まで読まないと…この物語は全く別物になってしまいますからね。

  • 史上初の6冠達成、アマゾンでもベストセラー1位の話題作です。
    確かにスピーディでスリルがあり、面白いですよ。

    パリで深夜に女性が誘拐されたという目撃情報が警察に寄せられたが、誘拐されたのが誰なのかもわからず、捜査は難航します。
    捜査の指揮を執るカミーユ・ヴェルーヴェン警部には、かって妻が誘拐されて亡くなったという辛い過去があった。
    ヴェルーヴェン班の面々がなかなか個性的でバランスよく、素敵です。

    見知らぬ男に監禁された女性アレックス。
    派遣の仕事が終わったところをさらわれたため、身近な人も彼女が誘拐されたとはなかなか気づかないでいた。
    アレックスは必死で脱出を試みるが‥
    警察側と交互に描かれ、緊迫した状況に。

    その後、思いがけない展開へと、発展していきます。
    無関係にも見える事件が起きて‥
    ‥この先を書いちゃうわけにいかないよねえ‥
    アレックスとは何者なのか?と思わせるタイトル。
    確かに‥

    カミーユはなんと145センチという小柄。
    フランスでは警察官になる条件に、身長は入ってないんですかね。
    カミーユの実母が芸術家で、才能溢れてはいても普通の母親らしさはないため、息子のカミーユは愛憎半ばする感情を抱いていました。遺作をすべて売り払おうとするのです。
    過去の事件のトラウマを乗り越えられるのか?という問題も。
    カミーユが探偵役の作品は、シリーズとなって他にもあるようです。

    この作品は、何より構成が凝っていて、文章も切れ味よく、翻訳もいいですね。
    ミステリ読みなら必読。ただ事件は陰惨なので、怖い話が読めない人には無理ですけど‥
    描写は書き込むところとアッサリ通り過ぎるところと加減してあります。

    著者は2006年作家デビュー。
    小説を書くことを何年も教えていた人なので、読む人に衝撃を与える新鮮な作品を作り上げてのけたという、これはなかなか出来ないこと。
    お手本のようなヒット作ともいえますね!

  • 面白かった!!
    史上初の6冠!とか他にもポップで書店員煽りすぎーと思って読み始めたら…誘拐監禁事件だと思ってたのに全然違った!驚きのクライマックスから始まって、1部が終わったら1冊読み終えた気分だった。
    2部も3部も予想と全然違う方に進んで、予想した着地点と違いすぎた。刑事たちのキャラもすごく良かったし、ほぼずっと残酷で悲しくて痛いし、でも最後は救いもあって良かった!大事なのは真実ではなく正義。とても感動した。
    アレックスの見方がどんどん変わっていった。頭が良くて行動力もあってかっこいいけど、悲しい女性。
    全部知った上で、また最初から読みたい作品。

    • 三略さん
      「真実よりも正義」自分の言いたかったことが言葉になっていて参考になりました。自分も最後は「こんなのアリ?」と率直に感じてしまいましたが、この作品はそこで全てが救われている感じがしました。
      2017/12/28
  • やっと読了。アレックス側のストーリーは、はらはらしたけど、カミーユ警部の方は、捜査がなかなか進まず、ちょっと退屈でした。でも第3部からは、一気読み。アレックスの無念が少しでも晴らされて良かったかな。

    アマゾンのレビューで批判してる人がいたけど・・。検討違いな批判をしていたので、それはどうかと思いましたが。
    カミーユ警部の身長について、警察の採用条件を指摘してた人いたけど・・、本書読めば、それくらいは、リサーチ済みでしょう。という印象。むしろ知った上での設定だと思いましたが。重苦しくならないための設定演出でしょう。
    あと、アレックスの偽装自殺を、警察は見抜けないのか?という人もいたけど・・あたしも最初心配しましたが、見抜いた上での誤認逮捕ですしね。最後のセリフでそれがわかります。(「大切なのは真実ではなく、正義だ」と仰ってたので)

    とりあえず、心配したほどのグロ描写は無かったですし、読みやすくて面白かったです。

  • ああそうゆうことだったのかと思った。。。なぜアレックスが人を殺し続けても嫌悪感がわかなかった理由が最後にわかった瞬間、とても切なくなった。彼女の魂が救われますようにと祈る。傑作!

  • 本屋でも必ず平積みされているミステリーの注目作。映画化の予定もあるとか(「その女諜報員アレックス」というなんともまぎらわしい映画があるが、それは全くの別物)。
    読み終わってから本作がカミーユ・ヴェルーヴェン警部三部作の二作目であることを知る。一作目は「悲しみのイレーヌ」、三作目は「傷だらけのカミーユ」。……まだ読んでないけど、タイトルからしてカミーユはとことん不幸な星の下に生まれているようで……。

    とにかく凄惨な描写が続く。苦手な人は読まないことをお勧めする。私も胸が悪くなって、断念しかけた。凄惨なだけじゃなくて、その凄惨さがすごいリアルというか。



    以下ネタバレ。
    タイトル通り、アレックス(だけ)が主人公だと思った。カミーユはじめ警察メンバーは正直脇役だよなあ。後手後手にまわって、最後までなんにもしてないという印象。ラストも(承知の上でだろうが)アレックスの掌の上で踊っていたわけで。でも真実を追求するのが大事!っていうミステリーにばかり触れていたせいか、ラストは、うーん。馴染まないなあ。賛否両論あるんじゃなかろうか。
    はっきり言って、カタルシスはない。いろいろ謎は残されてるし、アレックスの人生を損なわせた面々がやっつけられてスカッとするわけでもない(殺されてるけど、なんで殺されたのかわからないまま殺されてるから)。なんであんなことしたのかとか、後悔してるのかとか、言い訳でもいいけど、もう少しはっきり奴ら側の言い分を聞きたかった。
    それと、硫酸流し込むのが喉なのはなんでなのか、よくわからなかったなあ。作中でも言及されているように、何があったかわかってからは尚更、性器にかけるのが自然だと思った。このあたりのアレックスの心情も描写してくれればよかったのに。
    こういうあえて核心に迫らない手法、もやもや感を残すやり方はわざとなのかもしれない。でも私は、この小説に関しては最後には霧を晴らしてほしかった。

    この物語が多くの人から称賛されているのは、おそらく二転三転するストーリー展開のためだろう。その度に読者のキャラクターへの評価ががらりと変わるわけだが、自分の現在持っている情報だけで安易に人を評価する危険性について感じさせられた。別の本からの引用だが、「判断を留保する」のが大事だろうと。

    ずっと孤独だったアレックス。彼女は死後にようやく自分のために怒ってくれる人、悲しんでくれる人を得た。それはカミーユをはじめとする警察の人々であり、読者である私たちでもある。
    しかし、彼女はそれを知らないのだと思うと、一層悲しくなる。

  • まず、翻訳の上手さに感心する。橘明美さんありがとうございます。
    悲しみのイレーヌを先に読むべきだった。

    1部2部3部でアレックスに対する見方が全く変わる。ただ、カミーユ警部の推理により早い段階でアレックスが性的被害者だということは分かった。
    行き当たりばったりだと思わせた殺人がそうではなかった事や,監禁を抜け出してどうしてもやらなければならない事がそれだったのかと、胸が詰まる。
    真相が分かると何ともやり切れない事件だった。
    ルイも素敵だが、個人的にアルマンがいい…。
    ラストに差し込まれたこのエピソードが、後味の悪い事件の後、せめてもの救いになった。

  •  先日読んだ『悲しみのイレーヌ』が著者ルメートルの処女作で、本作はその続編に当たる。
     前作には確かに驚きのプロットもあったものの、文章にあまり緊迫感が感じられない、凡庸な筆力ではないかと思ったものだった。最後の悲惨すぎる結末が後味悪く、それも、もしハッピーエンドで終わったとしたら、それはそれで整合性はあるので、イヤな後味に必然性を感じなかった。
     けれども、本作の方ははるかに優れた作品だった。
     最後の方に苦い後味の残る部分もあるが、そこには必然性があるし、最初から最後まで叙述の緊迫感が素晴らしく、巧みに読者を驚かせまくって、見事な構造を呈示しているのである。
     以下はネタバレのレビューになる。
     
     主人公の女性アレックスが男に誘拐され、檻に幽閉される。このアレックスの状況と、カミーユ警部の捜査の状況とが交代で進められていく。これはよくある手法ではあるが、なかなかスピーディーで興味を引っ張っていくことに成功している。
     さてこの監禁シチュエーションで最後まで引っ張っていくのかと思っていたら、犯人の男性は早々に死んでしまうし、アレックスは無事脱出するのである。
     とても美人のようだが普通の女性のように描かれていたアレックスが、実は連続殺人犯だったということが、次いで明らかになっていく。
     読者がイメージする「アレックス」の像が、どんどん変転していくのである。この驚くべき意外性の転調が、本作品のコアだ。
     謎は尽きず、物語は進んで行くが、さらに驚くべきことに、残り100ページ以上のところでアレックス自身が自殺してしまう。
     おいかけていた人物が自殺してしまったことによって、捜査側のカミーユ警部たちは失敗したかのように見えたのだが、このあとさらにプロットは進む。
     予想どおりアレックスがなぜそんなに殺人を犯してきたのかが明らかにされるわけだが、この解明部分もまた、読者の予測の範囲を超えるような衝撃性をもつ。
     要するに家族による幼女の性的虐待の物語が開かされるわけだが、これが生半可なものではない。性的児童虐待といえば、アメリカが本家という印象を持っていたのだが、フランスでもこういう本が書かれたのだし、日本でもこれに近いような実態はあるのかもしれない。
     実におぞましくて泣き叫びたくなるような悲惨さだ。
     読者にとってのアレックスのイメージが、かくして冒頭から二転三転し、最後に至ってようやく「過去の事実」によって輪郭が明確になる。このイメージ変容が本書ではとても巧みに構築されていて、なかなか傑出した小説と言えるものになっている。ストーリー性に関して言えば、その重量感はフォークナーの小説にも比肩する。
     最後は重いのだが、かろうじて女主人公が「復讐をやりとげた」格好になるのでなんとか明るい気分も混じってくるから、後味は悪くない。
     散漫なディテールもあるのだが、とにかく構造的に優れた手法で人物の「真相」に迫っていくこの小説は、ひとつの見本と言っていいのかもしれない。

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