月は誰のもの 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2014年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167901998

作品紹介・あらすじ

超人気シリーズが、書き下ろし長編小説に!



髪結いの伊三次と芸者のお文。仲のよい夫婦をめぐる騒動を、江戸の夜空にかかる月が見守っている。大河ロマン的な人情時代小説です。

みんなの感想まとめ

人情溢れる江戸の風景を舞台に、髪結いの伊三次とその妻お文の物語が描かれています。シリーズの14作目でありながら初の文庫書き下ろしとして、過去の出来事が明らかにされる新たな視点が魅力です。お文が父親と巡...

感想・レビュー・書評

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  • 人気シリーズの14作目。
    ただし、初の文庫書下ろし。

    8作目の「我、言挙げす」のラストで火事があって家を無くした伊三次とお文一家。
    9作目「今日を刻む時計」では、10年がたっていたのです。
    この10年間の空白に起きた出来事を描く内容になっています。

    伊三次の妻で芸者のお文は、父親を知らずに育ちましたが、しだいに察してはいました。
    お座敷の客として訪れた侍の海野との偶然の出会いから、互いにそれと気づきます。
    さっぱりした気性のお文の、胸のうちに秘めた思いが切ない。
    互いに名乗りはしないまま、手を差し伸べてくれる実の父親の気持ちを受け取ります。
    祖父とは知らずに懐いていたお文の息子の伊予太。
    子供の言葉がタイトルというのもいいですね。

    一方、不破の息子龍之進ら奉行所の見習いの若い者らは、無頼派を名乗る若者集団を追っていました。
    事件が落ち着いた後にふと出会い、互いを認め合う成り行きがまた妙味があります。

    伊三次が焼け出されて、お文と離れていた時期の出来事。
    不破友之進の妻いなみの、年を重ねた妻の思い。
    一捻りした味わいが深く、読んでいてこちらも江戸市中をさまよい、人の心にまで共感したような心地になりました☆

  • 「我、言挙げす」から飛んだ十年を埋める、文庫のための書き下ろし。
    火事で焼け出されてから、お文は実の父親と出会い心を通わせる。新居も見つかり娘の出産を経てお座敷に復帰。伊佐次は新居がみつかるまでの離ればなれの暮らしの忙しさや侘しさから、道を踏み外しそうになるも仲間の忠告で踏みとどまる。龍之進はかっての宿敵と出会う。
    そんなこんなの十年、みんな同じひとつの月をながめていろいろな思いにふけり、月は変わることなく淡い光を投げかけてくれていた。

  • 2016.9.17
    昔語り。
    お文と父親との交流が切ない。
    火事見舞いに大枚を渡してくれた。
    互いに名乗りあわずとも心通う。

    味噌屋の事件が腹立たしい。下手人の悪どさにいたたまれない。真相がわかって良かった。

    次郎衛と龍之進の不思議な友情にほっこりした。次郎衛は龍之進の小者になって近い将来、大事件を解決していくその伏線かも…

    2025年3月18日
    再読

  • 今までは「オール讀物」に1年半くらいにわたって掲載してから単行本化していたのだが、病床で書いたためか、デビュー作のシリーズの気になる事柄に決着をつけておきたかったからなのか、初の文庫書き下ろし。

    シリーズ最初から見守ってきた読み手へのありがたいメッセージとして受け止めた。

    章立てはないが、4つのストーリーが描かれる。
    (1〜8)父母を知らずに育ったお文が、十年前父親に巡り会い親子の縁を喜んだ話。泣ける。
     お座敷の客として来た隠居の侍海野は、お文を見て美濃屋の内儀が探していた娘ではないかと問う。二人が駆け落ちし引きはがされた後に自分が生まれてたことを知っていたが、相手をおもんばかって否定するが海野は親愛の情をかけてくれた。「月は誰のもの」とは伊与太が海野に問うたことば。

    (9〜16)本所無頼派を名乗り鬱憤晴らしに悪さを働いていた旗本の二、三男たちのリーダーだった薬師寺次郎衛に、不破の息子龍之進が邂逅し、互いを認め合う話。
     龍之進ら奉行所の見習い組は、彼らを捕らえようとして最後の誘拐事件を解決するが、誰も捕らえられなかった。龍之進が荒れていた時期になじんだ芸者小勘が、勘当されて駄菓子屋の親父となった次郎衛と暮らしていた。

    (17〜23)焼け出されてお文と別居していた時期の伊三次の、おでん屋の女将との淡い思いと捕り物の話。

    (24)不破友之進の妻いなみの、嫁と不破への思い。

  • 短編の様な長編。
    10年間の空白が、雪が解けるように、氷解!
    お文の父親にも再会。
    どちらも、言葉に出さないのに、心と心が通い合う。
    その描き方に、作者のうまさを感じる。
    大火事で、何もかも、無くし、身体一つと家族だけが命からがら逃げることが出来たが、お文の子供伊与太が、おもちゃも無く、月を見て、『月はだれのもの』と、訊ねる所は、子供にとって、自分の所有物の無さに、無念を感じているのかと、ほろりと、させられてしまう。
    人情味豊かな作者が、描く人物像が、素敵である。
    龍之進と次郎衛の昔話から、江戸の武士の長男、次男の差が、理解出来、又それゆえ、友と呼べる仲には、難しい物があったのだと、、、、
    又、武士の嫁姑の面白さも描かれており、楽しく読み終えた。

    66歳で、乳がんで、永眠との事、このような人情味あふれた時代小説が、読めなくなるのが寂しいです。合掌。

  • すっとばされた気がしていた大火事後の十年が
    描かれていた良かった。

    お文さんが実の父親と交流が出来たのも、
    本所無頼派の最後が知れたのも、
    龍之進と無頼派の一人が心を通わせていたのも、
    龍之進がふてくされていた時につ
    き合っていた芸者が幸せになっていたのも、
    伊三次の読みがあたって誘拐が解決したのも、
    良かった。

  • 2014年10月刊。今まで語られなかった10年が語られる。シリーズ初の文庫書下ろし。いくつかのお話があるが、お文の実の父である要左衛門の話が良い。 小さな伊予太が要左衛門に聞いた「月は誰のもの」がタイトルになっているのが楽しい。

  • 文庫まるごと書き下ろしという贅沢な1冊。
    『無頼派』と『純情派』(中二病的で恥ずかしくなるけど、当時彼らそれくらいなんだよね)の決着やら、お文の父親のこと、不破さんちの長男のやさぐれに巻き込まれた感がある芸者さんのその後など、気になっていたいろいろなことをこれでもかというほど、書いている。
    個人的には緑川さんちの御新造があのぎすぎすした家庭や男衆や奥さんをなごませてくれているエピソードがよかった。
    不破さんちの奥さんも1巻の頃と比べると大人になって、自分の人生をいいものだと受け止められる度量も出てきてよかった。
    伊三次の浮気未遂事件もいつもの宇江佐さんなら嫌な終わり方をしそうだけれど、ほろ苦いくらいで終わっているし、それなりにすっきりした終わり方。
    家を乗っ取られた娘さん姉妹も性格がよい子で、容疑者になった奉公人を思いやってるし、その奉公人もご主人夫婦を本当に慕っているし、姉妹のおばさんも殺されたご夫婦もいい人ばかりで、悪い人は真犯人のみという、どうしたんだ、宇江佐さん! めっちゃいい話のうえにラストも放り投げたような書き方じゃない。
    後味のよい番外編集でした。

  •  これは何冊目だろうか。髪結い伊三次捕物余話。さて伊与太と茜の行く末はどうなったかなと思いきや、そんな新しい話ではなく、お文や龍之進の昔話の回想を主題とするスピンオフ長編だった。お文の実の父親の話、揺れる伊三次の心情の話、若き八丁堀純情派と本所無頼派の話、それぞれがしんみりとして読ませる。以前なにかのあとがきに著者が個人的な事情でどんどん時代を進めているような話を書いていたが、友之進から龍之進、伊三次から伊与太、お文からお吉とどんどん世代が変わって物語が進んでいくのもおもしろいが、こんなふうにふと立ち止まって語られなかった過去を振り返ってみるというのも興がある。さすがの手練だ。

  • 人気シリーズも14弾目、シリーズ初の文庫書下ろし作品。
    お文の回想から始まり、過去の出来事と現在の事件が絡み合いながら、話が進む。作者自身も、シリーズを振り返りながら、書くことを楽しんでいるよう。ますます筆がさえる。

  • 江戸の髪結い・伊三次と芸者のお文の夫婦をめぐるさまざまな事件が、現代社会と同じで理解し易い。伊三次が捕物を手伝う中での誘拐事件、冤罪事件の解決など。また2人のそもそもの来歴などが描かれ、子どもの誕生、その間お文の妊娠中に、伊三次が居酒屋で出会った女将お里や店で出会ったなじみ男性客・留さんとの交流、そしてその話の展開も楽しい。

  • お文のお父さんが出て来た。すごくあたたかい人で泣きそうになった。良かったね。あと、伊佐次が浮気しなくて良かった。自分が弱ってる時は危ないんだなあと。とりあえず、伊佐次になんで良いことないんだろう。伊佐次が主人公じゃないのか…

  • 内容(ブックデータベースより)

    江戸の大火で別れて暮らすことになった髪結いの伊三次と芸者のお文。仲の言い夫婦をめぐる騒動を夜空にかかる月が見守っている。
    伊三次の色恋沙汰。お文の父親のこと、八丁堀純情派に屈した本所無頼派のその後・・・・。
    長女・お吉が誕生する頃の、語られることのなかった十年を描く傑作長編。
    大人気シリーズ、初の書き下ろし!

    令和6年10月11日~14日

  • 火事から10年間をワープした間の物語。お文の実の父親に会えたり、多彩な物語が詰め込まれています。

  •  宇江佐真理「月は誰のもの」、文庫書下ろし、2014.10発行。髪結い伊三次捕物余話、刊行日からいくと№14になりますが。特別編のような気も。火事で家が焼失し、家族が離ればなれになって、新しい家で家族が一緒に住むまでの10年間の話。長女お吉の誕生、実の父親・母親の話、本所無頼派と八丁堀純情派の話、伊三次がおでん屋の女将といい仲になりそうになった話など。

  • とうとう本当にこれで最後です。
    最初で最後の長編が描いているのは、シリーズ中で飛ばされた10年の出来事。

    家事で焼け出され、すべてを失ったことから伊与太は何を見ても「これは誰のもの?」と聞くようになった。
    自分は何も持っていないことを確認するかのように。
    そんな伊与太が「月は誰のもの?」と聞いた相手は…。

    火事の後妊娠に気づき、出産までの間今まで以上にお座敷仕事をすることにしたお文。
    そこで知り合った老人が、実の父親だと知りながら、父親の家族を思い知らぬふりをするお文。
    そんなお文の気持を受け入れる父だが、伊与太にはこっそり「伊与太のお爺ちゃんは、このわしだ」と言っていた。
    そして、お文の娘の名付け親になってくれた。
    お吉…お文がお座敷に呼ばれる時の名前、文吉からつけてくれたのだろう。
    決して出しゃばらず、蹴れどしっかりと娘を見守ってくれる父。
    お文にとって、何より幸せなことだったろう。

    龍之進が仕事終わりにふと見かけたのは、本所無頼派の首領・薬師寺次郎衛。
    家を勘当され町人になった次郎衛は、駄菓子屋の親仁になっていた。
    共にあれから所帯を持ち大人になった二人は、改めて友人になる。

    だからか。
    短篇の方では唐突な感のあった、龍之進の手下を次郎衛にという話は、ここから繋がるのだった。

    この長篇を読んで、作者が細かなところまでしっかりシリーズの構成を考えていたことがわかる。
    この作品にすら入りきらなかったエピソードはいくらでもあるのだろう。
    小さな伊与太の可愛らしいエピソードをもっと読みたかった。
    龍之進の、茜の、伊与太の、お吉のその後も読みたかった。
    本当に寂しい。

  • 長編でいつもと趣が違うけど、新鮮な気持ちで読めた。おでん食べたい。

  • 2019/2/5
    すっ飛ばされて気になっていた年月を回想する形。
    読んでる間は夢中だから思わないけど、章を読み終えるたびに思うのは作者が死を宣告されていて、おそらくもうかなり目前に迫ってると思われること。
    だから感謝して生きようとか言われると何とも言えない気持ちになっちゃうのよね。
    身につまされるけど現実にも戻ってしまう。
    龍之進と本所無頼派の次郎衛の邂逅はとびきり素敵だった。
    近頃影の薄い不破様の活躍も見られてよかった。

  • なんとなくひといき、といった感じの、物悲しさが
    あった一冊。
    手の届かない月なんて、誰のでもないのに。

  • 今回は少し趣が違っていてそれはそれで楽しく読めた。
    タイトル通りの内容だったかな。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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