死命 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2014年11月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784167902186

作品紹介・あらすじ

死へのカウントダウンは彼らの運命を――



余命僅かの宣告を受けた殺人願望を秘めた男と殺人犯逮捕に執念を燃やす刑事。死を恐れぬ者たちが最期に臨む戦慄の光景とは……。

みんなの感想まとめ

余命を宣告された連続殺人犯と、その犯人を追う病を抱えた刑事の対峙を描いたサスペンスミステリ。両者が抱える死への恐怖と欲望が交錯する中、物語は緊迫感を持って進行し、約500ページをあっという間に読み進め...

感想・レビュー・書評

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  • 余命幾ばくもない連続殺人犯と、同じく余命僅かで、その犯人を追う刑事。互いに胃癌という病により命を削りながら、片や犯行を、片や捜査を、それぞれの死命が攻防するサスペンスミステリ。

    現在、私のミステリ欲はピークを迎えている。

    どこかに悪いやつはいねえか。
    ハラハラヒリヒリさせてくれるやつはいねえか。

    薬丸岳は本作で3作品目。
    前作、前々作は少年法をテーマとした社会派ミステリで良作であったことは前読レビューの通りである。

    本作品は、病の殺人犯・殺人犯の恋人・病の刑事・新米刑事の4視点で展開していくのだが、兎角読みやすい。視点の切り替えが絶妙で、約500ページをサクサクと読めて最後までハラハラさせられた。

    何よりも相反する立場と併存する余命という設定は斬新であり、互いに身体が徐々に不自由になっていく進行は、実にリアルで読んでいてしんどかったほどだ。

    また、本作は雄雌の性的描写が過激であり、生臭さが凄い。私は許容範囲だったが、苦手な人はもしかすると敬遠すべき作品かもしれない。

    ただし、自分の死期が近いことを知った時に人は何を一番恐れるのか、死生観の感慨に耽る展開が、本作品の最大のテーマと見どころであることは記しておきたい。

    総括、一冊でミステリ・サスペンス・エロス・ヒューマンドラマが味わえるエンタメ作品であった。

    • 奏悟さん
      akodamさん

      初めまして。
      いつも、いいねをありがとうございます。
      いつもコメントしたいと思いながら躊躇していた私ですが、どこかに悪い...
      akodamさん

      初めまして。
      いつも、いいねをありがとうございます。
      いつもコメントしたいと思いながら躊躇していた私ですが、どこかに悪いやつはいねえか。ハラハラヒリヒリ・・・に、ナマハゲが脳裏にちらついてどうしようもない事をお伝えしたくて(←つ突っ込みたくて笑)初コメントしてみました。

      薬丸さん作品、何冊か読みすっかり少年犯罪の人のイメージでしたが、死命気になります。
      一冊でミステリからヒューマンドラマ、そしてエロスまで笑

      私も刺激不足かも知れません(^-^;




      2021/10/25
    • akodamさん
      奏悟さん、こんばんは。
      こちらこそ、いつも「いいね」とコメントまでいただけて嬉しいです。

      私のナマハゲのクダリ、お気付きいただき光栄です(...
      奏悟さん、こんばんは。
      こちらこそ、いつも「いいね」とコメントまでいただけて嬉しいです。

      私のナマハゲのクダリ、お気付きいただき光栄です(*´-`)

      薬丸岳作品は中毒性がありますね。
      テーマもさる事ながら、加害と被害の視点が絶妙で、一言で言うならば『ズルい』です。

      その中でも本作は、あらゆる要素が詰め込まれたバラエティーパックになっています。

      ハラハラしたい方。
      感慨に耽りたい方。
      破廉恥気分を味わいたい方。

      オススメです!

      今後ともよろしくお願いします^ ^
      2021/10/25
    • 奏悟さん
      akodamさん、こんばんは。

      ナマハゲの件、突っ込んで良かったんですね笑
      私の暮らす地域に秋田料理の店があり、時短営業も終わり夜の街が賑...
      akodamさん、こんばんは。

      ナマハゲの件、突っ込んで良かったんですね笑
      私の暮らす地域に秋田料理の店があり、時短営業も終わり夜の街が賑わいを取り戻したつい先日、ワクチン帰りにお店の看板を掲げたナマハゲ2人がアーケードの角から出てきて、腰を抜かしそうになった事を思い出しました(|||´Д`)
      そう、まさに私にはタイムリーなナマハゲ!!

      薬丸さん作品、映画化も多いですよね。
      バラエティーパック、お得感が良いです!
      破廉恥気分に吹いてしまいました。
      これからは躊躇せず突っ込みコメントしたいと思います笑

      こちらこそ宜しくお願いします
      2021/10/25
  • 薬丸岳さん著「死命」
    今まで読んだ著者の作品の中で一番考えさせられたかもしれない。
    そして最後の数頁、最後の一行は感動で震えてしまった。物語も凄くよかった。
    最近読んだ中で最高の作品。

    まずタイトル「死命」
    そもそも「死命」って「使命」を作者がもじっているのか?と思い調べてみたら「死ぬべき運命、死ぬか生きるかの瀬戸際」という検索結果。最後まで読めば後書きでも書いてあったが…
    なるほど、そう考えるとこの「死ぬべき運命」って…
    読む前と読了後ではこの「死命」という言葉、全く違う重さと深さを感じる。
    至る所に幾人ものその死の運命への道筋が描かれており各々が凄絶な「死命」だった。

    この作品、凄く秀逸だと考えさせられる所が二人の主人公が同じ胃ガン宣告を受け余命少ない末期患者であるという点。
    榊は余命を告げられてから感性の赴くままに快楽殺人を繰り広げていく。死を目前にしてある意味で自身の欲望の赴くまま快楽への道を選択。それは自身が今までに築き上げた自分自身という存在の破壊行動に近い。
    一方、捜査一課のベテラン刑事の蒼井はその余命の中でも最後の最後まで刑事として犯人を追う決意。
    同じ余命宣告をされた二人の人物の残り少ない人生をコンペアさせての物語展開。
    構成力が凄まじい。

    正直殺人まではどうかと思うが、自分も仮に余命宣告されたならば両者の行動言動はかなり理解できる。
    今までは他者の目を気にしてやらなかったけれど、死を目前にしてしまえばやってしまおうという「方の外れかた」は理解できてしまう。
    また一方で例え死のうが自分の今までの人生を肯定するかの様に最後の瞬間までしっかりと全うしたいという気持ちも理解できる。

    死を目前にすればするほど、生きるという事自体の重心が今までとは違うものになるのは間違いないかと思う。少ない人生の中で何に重点をおいて、何をどうすべきか?残された時間の有限さとは、ある意味では抑圧的なものなのかもしれない。

    そしてもう一点、澄乃が榊の子を身籠ると同時に真実を知り、事故でなくなってしまうという展開。
    この展開も深く考えてしまう。
    澄乃にとってこの事故がなければどういう選択をするべきだったのだろう?
    警察に電話をしているので榊の犯行は暴かれたではあろうが、果たして彼女は連続快楽殺人犯との間に身籠った子を産み育てるという決断が取れたであろうか?
    仮に事故で命を落とさなければ澄乃の未来はどちらにせよ明るいものには感じられない。彼女の死は考えれば考えるほど「開放」という「死命」にも感じられた。

    著者の他作品のレビューで「薬丸作品は中毒性がある」と書いていた方がいたがまさにその通りだと自分も感じている。
    この「考えさせられる」という特別感を欲するが如く、依存する様に薬丸作品ばかり読んでしまう。読み終えるとすぐに著者の別の作品に手を伸ばしてしまう。
    この中毒、自分もいよいよ末期かもしれない。



  • 余命わずかと宣告された男が、欲望のまま連続殺人鬼に変貌する。
    同じ病気で余命を知った刑事が、残された時間を
    その逮捕にかける。
    殺人鬼となった男には両親から受けた虐待の傷を持ち、刑事の男は妻の死に際に仕事を選んだ悔恨がある。
    死が近い命が選んだ生きる使命。
    余命の短さを知ったら誰しも何を選択するかわからないのかな

    2019年ドラマ化

    • きたごやたろうさん
      「いいね」ありがとうございます。

      朝井リョウさんの「正欲」みたいな、読みの音だけ聞くと「おっ」と思わせるタイトルですね!
      「いいね」ありがとうございます。

      朝井リョウさんの「正欲」みたいな、読みの音だけ聞くと「おっ」と思わせるタイトルですね!
      2025/04/09
    • おびのりさん
      薬丸さんのタイトルは、意味深なものがありますね
      薬丸さんのタイトルは、意味深なものがありますね
      2025/04/09
    • きたごやたろうさん
      おびのりさんへ

      薬丸さん、オイラまだ未体験なんです。
      いつか読みたいです!
      おびのりさんへ

      薬丸さん、オイラまだ未体験なんです。
      いつか読みたいです!
      2025/04/09
  • 澄乃がなぜそこまで榊を好きになるのかわからなかった。
    余命宣告を嬉々として受け入れ、衝動のままに次々と人を殺めてしまう。
    残りの人生を好き放題に過ごす榊。やってることは最悪だけど分からなくもないなと思ってしまった。
    死ぬのが怖くないなんて、まさに怖いものなし。
    だから最後に蒼井のついた嘘がうまいなと思った。
    ただでは死なせないよねー。

  • 最近ハマってる作者の作品!これも面白い!まだまだ、5、6冊はキープしてるので楽しみ!
    さて、本作は、余命宣告を受けた善悪の2人の終わりまでを描いてる
    残り少ない日々を抑えていた欲望を解放する榊、最後まで犯人を追い自身の職務を全うする蒼井。
    自身の欲望解放はええけど、人様に迷惑掛けるのは…まぁ、そんな生易しいレベルではないけど。
    子供をほったらかしにして、仕事に…も考えものやけど、妻との話を聞くと納得。
    ラストは、うるうる(T . T)

    もし自分が余命宣告なんかされたら、どうなるんかな…
    この小説のように、
    最後まで、仕事に?
    ひたすら自身の欲望?(ここでは殺人やけど)
    多分、私は後者やな!でも、殺人とかの欲望はない!多分、1日中、家に籠って、本と映画やな!
    …なんとお手軽な欲望なん(−_−;)

  • 死を目前に控えた人間の生き方を問う作品。
    死病に侵され余命宣告を受けた連続殺人鬼を、奇しくも同じ病に侵され余命僅かな刑事が追う“命がけの追走劇”

    自分の命が残り少ないと知った時からこれまで抑えていた快楽殺人を実行していく男と、自分の命があるうちに必ず犯人を逮捕するという間逆の二人の執念が凄い。重厚な内容と飽きさせない展開でページを捲る手が止まらなかった。
    “命とは何か、生きるとはどういうことか”を読者に問いかける哲学的なミステリー、傑作です。

  • この作品を読んで思い出した。
    若い時に付き合った彼氏が私だけに語ってくれた。「人を殺したい願望がある」のだと。
    イケメンでクラスの人気者で明るい性格の彼の暗い一面を知り、若い私には受け止められず、いつか殺されるのではないかと怖れて、別れたけれど。
    事件を起こしてないだけで、彼はいまだにその欲望を抑えて生きているのだと思う。

    そんな「人を殺したい願望」がある男性が、末期癌で余命宣告を受けてから、残りの人生を自分の欲望の赴くまま、連続殺人を繰り返していく。

    同じく余命宣告を受けた刑事が、その連続殺人鬼を追う。

    快楽殺人でありながらも苦悩している描写が多々あり、さすが薬丸岳さんだなと思った。

  • 凄い設定の本があったものだ。
    余命宣告をされて殺人に走る男と、その犯人を追っている内に余命宣告される男。

    薬丸さんの作品はまだ2作目だがどうもじっくりと物語を紡いでいく作家さんのようだ。丁寧に描写をされている。
    中々物語が進まないと感じる読者もおられるだろうが、重たいテーマが多い作者のようなのでいっそこの位のペースで物語が進行する方がじわじわと迫ってくるようで良い。

    しかし何故こんなに殺人衝動に駆られるのかと疑問に思っていたが、過去の話が出てきた時点で得心がいった。
    かなり歪んでいる。
    榊の異常な性癖の理由はここにあり、被害者とも言えるのかも知れない。
    だからと言って許されるものでも無いのだが。

    自身の命を犠牲にしてでもやりたい事は何なのか。それを命ある間に見つけられた人間は恐らく幸せなのだろう。
    そんな事まで考えてしまうミステリーだった。

    • yukimisakeさん
      って、なんで僕が妊娠する事になっとんだ!せめてアツに産んでもらいたい!それもどうなんだ…混乱して来た笑
      って、なんで僕が妊娠する事になっとんだ!せめてアツに産んでもらいたい!それもどうなんだ…混乱して来た笑
      2025/04/23
    • ultraman719さん
      ユッキーさん

      少子化対策として、完璧やん!
      テレビでも紹介されるで!www
      紅白出れるチャンス!
      ユッキーさん

      少子化対策として、完璧やん!
      テレビでも紹介されるで!www
      紅白出れるチャンス!
      2025/04/23
    • yukimisakeさん
      えぇ…( ;∀;)
      確かに少子化問題には貢献できますけども…
      それよりも肝心な問題が!僕には1Qさんが…!!
      紅白に爪痕を残す事になりますね...
      えぇ…( ;∀;)
      確かに少子化問題には貢献できますけども…
      それよりも肝心な問題が!僕には1Qさんが…!!
      紅白に爪痕を残す事になりますね笑
      2025/04/23
  • 夏目信人シリーズとはまた一味違った重厚な作品だが、信一、澄乃、蒼井、矢部の視点の切り替えがテンポ良く、読む手が止まらない。信一の過去が明らかになってからの展開は圧巻。ラストは救いがあって好み。矢部を主人公にして続編如何でしょうか?

  • 余命宣告された二人が病気が進行するにつれ現れる症状や体力の衰えとか、一方で各々の使命にたいしての焦燥感とか、各々に鬼気迫るものがあった。

    その二人と関わる人たちの、失望やら焦りやら無力感やら…

    連続殺人事件の話だったけど、登場人物の機微がたまらなく良くて、ほんと面白かった。

  • 一気読みでした。犯人の殺人衝動は何から来てるのか気になりテンポ良く読めた。
    ある意味これだけ使命を感じられる人生はなかなかなさそうだし、羨ましくもあった。
    人生最後の時間自分はどんな風に過ごしてるのかな…なんてふと考えたりもしました。

  • 耳が不自由ながらもデイトレードで財を築いた榊信一。癌を宣告され、自分の欲望のまま生きることにする。榊の欲望、それは性行中に首を締めて殺すことであった。連続殺人に手をそめる。榊の元恋人・澄乃は榊の小学生時代を知っているだけにより一層心配する。一方。事件を追う刑事・蒼井凌も癌の宣告を受けていた。命の限り犯人を追う。
    追う者と追われる者の命をかけた物語。それぞれに過去があり、深い物語であった。少々オーバーというかどうかなと思うところもあったが、最後まで引き付ける内容であり、一気に読んでしまった。蒼井の執念には唸る。人のトラウマ、心の傷によってもたらされる性癖、怖さを感じた一冊です。

  • 面白かった
    命をかけて果たす使命、そして死命
    余命わずかとわかった時に取る行動は?
    刑事と犯罪者の立場から描かれてきます。

    ストーリは
    末期癌と診断され、余命わずかとわかった信一は自分の殺人衝動に従って、連続殺人を起こしていきます。
    同様に癌と診断され、余命わずかとなった刑事の蒼井は連続殺人の犯人を追いつめることに命を使います。

    そんな信一に元恋人の澄乃との再会。自分のことを大切に思う澄乃と殺人衝動の葛藤。
    二人の過去に何があったのか?
    信一の過去に何があったのか?
    信一の使命とは?

    一方、刑事の蒼井は家族をも顧みず、犯人を追いかけます。
    過去、奥さんの臨終にも立ち会わず、仕事をしていた蒼井をそこまで突き動かすもの。そして、今、癌で体が動かない状態になりながらも、犯人を追いかける執念。
    そこには何があったのか?

    蒼井は信一を捕まえることが出来るのか?
    そして、その先にあるものは?

    後半、「刑事のカン」であまりにとんとん拍子で信一の足取りを追っかけて行くところが、都合いいなぁって思いましたが、それはおいておきましょう。

    これはお勧め!!

  • 薬丸岳の作品を読むのは、この「死命」が2つ目か。
    読みやすいのが気に入っている。

    「天使のナイフ」も読んでみたいと思う。

  • 命に期限があると分かった時、人はどういった行動を取るのだろうか。
    やり残した事はないか。
    先延ばしにした事はないか。
    会っておきたい人はいないか。
    死を受け入れ、欲望のままに天寿を全うしようとする者。
    死に抗い、無念を晴らすまで職を全うしようとする者。
    相反する2人の死命と使命。
    分厚い本ではあるが、長さを感じさせない一冊だった。

  • 余命数ヵ月と診断された2人の男性。
    1人は殺人衝動を抱える榊信一。
    もう1人は刑事の蒼井。
    榊は余命が僅かとわかってから、自分の中にある女性を殺したいという衝動を押さえることをやめた。
    自分の欲望に忠実に生きることにしたのだ。
    そして、刑事の蒼井は連続殺人犯の逮捕に自分の命を掛ける。
    家族との時間よりもそれを優先させる理由がある。
    自分の余命に掛けたそれぞれの想いと執念が交差する。
    その先に待っている2人の最期。
    様々な衝撃と哀しみが溢れている。

    2024.10.25

  • 久しぶりに薬丸岳さん読んだ。さすが!おもしろ(連続猟奇殺人なんで、面白いっていうのなんか違うんだけど)すぎて、一気読み。仕事が手につかず困った。
    ネタバレなので、まだ読んでいない人はこの先読まないでくださいね↓

    主人公は、過去にトラウマを持つ青年「榊」と、その恋人「澄乃」。そして榊を追うことになる熱血刑事「蒼井」と、部下の新米刑事「矢部」。
    榊と澄乃は過去に新潟の田舎で出会った。榊はヒドい虐待を受けて育った。澄乃もそれを知っていたが、どうすることもできず、榊を見捨ててしまった、という想いをもっている。そのせいか、榊は肝心な部分の記憶がない。東京で再会した二人は、今度こそ二人で寄り添って生きたいと思うが、澄乃は榊の記憶が戻ることをおそれる。榊は自分がどうしてそんな衝動を抱えるかもわからないまま、女性(特に性行中や、淫靡な雰囲気を出してくる女性)に対して異常な殺意を抱いてしまう。愛しているはずの澄乃に対しても、突然殺意を抱いてしまう。澄乃は榊をおそれる。
    そして、自分が末期の癌だと知ったそのとき、榊は自分の欲求を抑えられなくなる。最初は衝動的に、徐々に計画的に連続殺人を犯していく。
    同時進行で描かれるのは刑事の蒼井のストーリー。蒼井は妻を亡くし、子どもたちにも見限られ、仕事にだけ情熱を燃やす。こちらも末期の癌だ。最期まで命を燃やして犯人を追い詰める。そこまでする理由は、亡き妻が、救えなかった殺人被害者に対して自責の念を抱えていたからだ。妻との約束を果たすため、最後まで力を振り絞る。
    榊と、自分の夢を追っている娘とのやりとり、それをそばで見ていた部下の矢部が、実家のパン屋に行って父親と会話を交わす場面とかが、ほんの少ししか描かれていないけどスパイスが効いていて泣けた…。矢部の父親は数行分しか出てこないのに、その姿が目に浮かぶようで心が震えた。
    蒼井刑事の執念はすごいけど…子ども二人を残して死ぬんだから、そんなわやくちゃしないで、もうちょっと自分が死んだあとの保険の手続きとか(!)子どもが困らないように現実的になんかしてよね、とか小説の本筋と関係ないことをもやもやと考えながら読んでしまった(笑)。

  • 余命わずかと知って己の欲望を解放した者と、
    己の使命と向き合う事で恐怖と戦う者
    ふたりの運命が交錯し、最後を迎えるとき
    どちらがどれだけしあわせだったのか?
    どちらの勝利といえるのか?

    死を迎えるラストは最初から見えているのに
    最後までふたりの生き様を知らずにいられなくなってあっとゆうまに一気読みだ。
    山口澄乃のやりきれない最後も衝撃だった。
    病魔に蝕まれて苦しみながらも欲望に抗えない
    犯人と、犯人逮捕に突き動かされる刑事の執念。

    色んな角度から楽しめる人間のミステリー作品。

  • 薬丸岳さんの本は【刑事の約束】に次いで2冊目。
    長編の【死命】ですが、気が付けば一気読み!
    胸の中にずっし~んと重い物を投げ入れられたかのような、しんどさを感じつつもグイグイと物語に引き込まれていきました。

    榊新一は末期癌の余命宣告を受け、殺人を犯す。
    連続殺人犯を追う警視庁捜査一課刑事の蒼井。
    彼もまた余命宣告を受けた身。
    犯人と刑事。
    二人はそれぞれ命をかけた使命のため、残りの時間を費やす。
    榊の使命、蒼井の使命。
    どちらも辛い…

  •  胃がんにより余命わずかと知った榊信一は、残りの人生を自身の殺人衝動に正直に生きることを決意し女性たちを絞殺していく。
    その事件の捜査を担当することになる蒼井だが、彼も胃がんの再発が発見され、余命わずかの二人が事件を通して交差する。

     単に連続殺人を捜査するというだけの話ではなく、余命わずかの中、娘と息子を持つ蒼井はどう生きるか、殺人を犯しながらも自分を大切に思ってくれる女性のいる榊はどう生きるか、
    というそれぞれの生き方と選択という点に迫ってる点が単なるサスペンス小説とこの小説が違っている点だと思います。

     自分自身はまだ親も元気で死に対する実感はなかなかわかないのですが、この小説に出てくる蒼井親子の話は読んでいて非常に切なくなりました。

     個人的な読みどころは蒼井と榊の最後の対決の場面でしょうか。余命わずかなため罰を恐れず罪の意識を見せない榊を蒼井はどう罰するのか。

     薬丸さんは現代の社会における犯罪の罪と罰というものを真摯に描き切っている作家さんだと思います。今回の作品も描きたかったのは、死を間近にした人の生き方だけでなく、
    罰を恐れない者を罰することはできるのか、という問いだったと個人的には思うのです。

     最後の二人の対話の場面の蒼井の言葉、榊の叫びはこれまでの話の流れからするととても自然というか、そうすることでしか罰は与えられないよな、と納得のいくものだったのですが、
    それだけにその場面のページ数が少なかったのがちょっと物足りなく思いました。

     ただサスペンスとしてはオーソドックスな話でも、こうして「罪と罰」という薬丸さんが他の作品でも問い続けているテーマをしっかりと結び付けられていて、
    薬丸ファンである自分としては「やっぱり薬丸さんの作品なんだな」と感銘を受けました。

     これからも薬丸さんが問い続けるテーマを読者である自分自身も一緒に考えていけたらな、と改めて思いました。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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