ソクラテスの妻 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167902490

作品紹介・あらすじ

神話と思索と謎解きが、人間の真理を描き出すロジックと数理に生きた「最初の哲学者」がたどりついた境地とは。ギリシアの神々と哲人たちに材を取る哲学的ショートストーリーズ。

感想・レビュー・書評

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  • ギリシャにまつわる神話・逸話の掌編集。ソクラテスの妻は悪妻かもしれないが、どうしても責める気になれない。家庭に欲しいのは偉大な哲学者じゃないんだよ……。「恋」「亡牛嘆」「ダイダロスの息子」は続き物っぽい。心の闇が垣間見えるアリアドネに魅力を感じた。「オリュンポスの醜聞」に登場するヘファイストスは、鍛治神としての素晴らしさに溢れており、最後の「ヒストリエ」も総括にふさわしい話で良かった。

  • クレタ島に伝わるミノス王とその息子・牛頭人身の怪物ミノタウロスの伝説について。ミノタウロスを閉じ込めた迷宮を作ったダイダロスの息子イカロスについて。父親を殺し、母親と性的関係を持つという忌まわしい神託から逃れられなかった、オイディプス王の悲劇について。夫イアソンと共に故郷を捨てたコルキスの王女メディアの、激情の結末について。
    12の掌編はそれぞれの登場人物たちが微妙に絡みあい繋がっていき、最後の書下ろし作品「ヒストリエ」にて、歴史の父と呼ばれるヘロトドスが各地を転々と旅しながら見聞きし、書き記した物語として大成する。

    本書のタイトルにもなっている『ソクラテスの妻』は、作曲家モーツァルトの妻コンスタンツェ、文豪トルストイの妻ソフィアと並んで「世界三大悪妻」と名を馳せるソクラテスの妻クサンティッペが語り部。

    「皆さんがおっしゃるほど、わたしはあの人にとって“悪い妻”だったのでしょうか?」

    と、ソクラテスの死後に、クサンティッペから見た亡夫の実像を語る。
    よく知られる物語も、語り部を変え角度を変えて見れば全く違う印象に。哲人ソクラテスと悪妻クサンティッペも、よくあるだらしない夫としっかり者の妻になる。なまじソクラテスが哲学者として絶大な評価を得ていたがために、実像とかけ離れて理想像が独り歩きした。そんなありがちな過程と顛末、本当にあったかもしれないと考えてしまう一篇。

  • 『最初の哲学者』(幻冬舎2010刊)の文庫化なのに、タイトルが変わっていたため気づかなかった。が、読んでみたら殆ど覚えていなかった…。
    ギリシャ(主に神話)に関する掌編12編に、単行本化するときに付けた額縁の小話(ヘロドトスの話)、という成り立ちを文庫あとがきで記している。
    掌編はサラサラ読めて、特にひねったりはしていない。ヘロドトスについての「ヒストリエ」が、短いながら、記録することの意義を痛感させる(記録が蔑ろにされる社会にいるので)。

  • 「ソクラテスの妻」
    表紙がジョジョに出てきそう。


    ソクラテスの妻であるクサンティッペ(Xanthippe)は、歴史上の逸話の中では、かなりの悪妻として描かれている。Xanthippeは、口やかましい女性、口の悪い五月蝿い女のことを指す名詞としても使われている。ある時、クサンティッペはソクラテスに対して激しくまくしたて、彼が動じないので水を頭から浴びせた。それがクサンティッペだ!


    Xanthippeの代名詞として語り継がれている時点で当時は相当な厄介具合だったに違いないと思ったが、こんな逸話が言い伝えられてきた時点で察するべきである。怖すぎる!逆に噂が噂を呼んで真実ぽく語られ、受け継がれたならば、不幸なことこの上ない。


    表題は、クサンティッペは本当に厄介女で悪い妻だったのか?と言う疑問を持って読みたい短編だ。そう、バイアスは捨て去って読みましょう。きっとクサンティッペは悪い妻じゃないかも知れない。ソクラテスだって偏屈が行きすぎた天才偏屈なのだから気が荒すぎるくらいが丁度良いかも知れないのだ。


    そして、分かっちゃう。そりゃ水をぶっかけたくもなるし、あんた何を言ってるんだと言いたくもなる。夫婦喧嘩が為されないもやもやがクサンティッペにはあったのだ。これって現代人も共感できますよ!クサンティッペ!と言ってあげたい。


    因みに、当時の古代ギリシア社会では、女性は15歳前後で30代くらいの年長の男性と結婚することが通例。ソクラテスが70歳辺りで死んだ時、彼には三人の子がいて内、10歳位年齢が離れていた兄弟もあったようだ。


    すると、大体ソクラテスが50代の時に15歳前後のクサンティッペと結婚したことになる。しかし、ソクラテスを調べながら超ロリコン結婚か、ありえないな、とか思っていたら、今だって法律上では女子は16歳から結婚出来ることを思い出す。つまり、古代ギリシアから法は全然発展していないのだ。こんな時代をソクラテスはどう思うんだろう。こんなもんさと言うのだろうね。

  • ギリシャ神話を題材にした短編集でした。ソクラテスの妻は悪妻として有名ですが、ソクラテスの様な突拍子も無い行動を取る夫を持つと文句も言いたくなるだろうなと感じさせられた。

  • 平明と言えば聞こえはいいけど、アッサリし過ぎて物足りない。なんかデジャブだなあ、阿刀田高とかぶるからかしらん…と思ってたら、「最初の哲学者」改題、とあとがきにあった。版も題名も違う本で中身一緒って、どうしたら事前に知れるんでしょう?身銭切って買ってたら怒るぞ。出版社の良心問題だよな。

  • 名前と何となくこんな事したよね?という程度は知っているギリシャの神々のショートショート。実際の伝承を調べて比べると初めて皮肉が理解出来る。
    軽く読めるけど違和感を感じるという面白い作品。

  • ギリシャの歴史や神話をベースとした短編集です。一話一話が短いため、無理なく読めます。知識ゼロでも楽しめます。

  • お馴染みのギリシャ世界の話を少しだけ視点をずらして語り直すという趣向。そこそこお気楽に楽しめますよ。あっという間に読み終わるけどっ

  • ギリシア神話の本を傍らに置いて読むべき本です。

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著者プロフィール

1967年生まれ。2001年、『黄金の灰』でデビュー。同年、『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞受賞。『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。他著に「ジョーカー・ゲーム」シリーズの『ダブル・ジョーカー』『パラダイス・ロスト』『ラスト・ワルツ』や、『新世界』『トーキョー・プリズン』など。

「2021年 『ゴーストタウン 冥界のホームズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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