定本 百鬼夜行 陽 (文春文庫 き 39-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167902735

作品紹介・あらすじ

名作『百鬼夜行 陰』続篇、待望の初文庫京極堂シリーズを彩る男たち、女たち。彼らの過去と因縁を「妖しのもの」として物語るスピンオフ・ストーリーズ第二弾。初の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 本編で語られなかった物語、第2弾。
    という感じですねこれは。

    前作の方は姑獲鳥の夏から塗仏くらいまでだったけれど、今回収録されているのはその頃の人もいるしそれより後の人もいるっていう結構バラエティに富んだラインナップ。
    魍魎の匣のあの人や狂骨の夢のあの人なんかもいたりして途端に懐かしくなったなぁ、こうやってバックボーンを読んで知ってしまうとまた本編を読み返したい気持ちが強くなってしまう。
    そして江藤の話は人間の怖さが凝縮されてて読むの辛かった……そんなに長い話じゃなかったと思うのに長編読み終わったくらい疲れてしまったもの。
    彼と大鷹は自分の中で共有できる感覚がないからなのか全く感情移入出来なかった……やっぱり妖怪より人間が怖い。

    あと意外だったのが榎木津。
    私正直言って榎木津のあの能力って何やかんやで便利な能力なんだろうなとずっと思ってたんだけど、あんなにちっちゃい頃から苦労して習得していたのね……あれなら答えをくれた京極堂に一目置いてるのも納得というか。
    そして実際に彼の目にはそういう風に見えてるのか…!という発見もあったりしつつ。
    ていうか順風満帆に見えて榎木津って実は結構な苦労人だよね?
    邪魅の雫の時にも思ったけど割と不幸多めの人なのでは???


    今回の話の中にチラチラ出てきていたまだ出会ってない人達がどうやら鵺に出てくる人達ってことなんだろうと(勝手に)思っているので一体本編の方でどういう役で登場してくれるのか今から楽しみ。

  • 「変わりないのだ。五十歩百歩だ。いいか平田。平田君。儂は悔いのない生き方をして来たつもりだよ。神懸けて世間様に恥じ入らにゃならんようなこともしておらん。でもな、悔いるつもりになれび悔いばかりだし、恥じようと思えば恥ばかりだ。そんなものだよ平田君」
    これは、結構グサリときた。
    簡単に言えば心の持ちよう、ということなんだろうけど言語化されることで改めて意識しなおすきっかけになる。悔いるにしても悔いないにしても漫然とその道を生きては人間として成長することはないのだろう。何故悔いるのか、何故悔いないのか一度立ち止まることも大切かも。

  • 『鵼の碑』を読み終わったので再読。
    百鬼夜行シリーズのスピンオフであるものの、主要キャラクターの登場は限られ(「目競」は除く)、蘊蓄も少ないので、著者の文章そのものをより味わえる。登場人物の心の裡をメインにつづられているので妖しく幻想的でありあがら、覗き見ているような後ろめたさも相まって、退廃的ですらある。
    とはいえ、シリーズを読んでいる者としてはスピンオフとして楽しめた。シリーズを読み返すと、ちゃんと繋がっている記述に出くわしたりして、その確立した世界観に慄く。実はそういうパラレルワールドがあって、京極さんは行き来できちゃってるんじゃないかと思ってしまう。

  • 百鬼夜行シリーズ最新作に不足していたエピソードが補完されている。
    由良奉賛会の平田さんの直面する古書の売り買い、よく分かります。価値を見出す人にとっては高価な本も、興味がない人にとってはただのゴミ。処分したい、ひたすら邪魔なもの。どんなに説明しても分かってはもらえないし、処理が面倒で置いていってしまう。
    日光に注目しておられるよし。寒川さんは病の方はどうだったのだろう?気にしていないし、婚約者の名前も1ミリも出てこんな。登和子さんのお話も知れて良かった。
    瞠目したのは探偵の語る物語があったこと。スピンオフはあまり読んでないし、どっかにはあったのかも知れないけれど、私は初めて榎木津の内面描写を読んだので眠気が覚醒した。他人が視る世界が視えたらどんなだろうって考えることあるけど実際に視えたら辛いだろうな。個人的にはこれが一番好き。

    薄気味悪く誇張されていても身に覚えがある感覚ばかり。どんな鬱屈も一人の中にあるもので、どれを自分の中心に据え、何に縋り付くのかで人格が出来てゆく。それが社会性とあまりに乖離すると、狂うという状態になる。あるいはそう評される。当人のなかでは一貫性がある。
    本当は狂いへ墜ちる際をいつでも歩いているのかもしれない。

  • 鵺の前に色々読んでおかないと!!
    と思いまして。読みました。
    次につながるあれこれありましたね!あとやっぱり私は陰摩羅鬼が切なくて…思い出してちょっとしんみりしました。

    最後の榎さんがとりあえず最高です。
    なんでしょうね。彼の魅力たるや凄まじいですよね。名前が出てきた瞬間に『ひゃっほーぅ!!!』って拳を突き上げたくなるんですよね。そのくらい大好き。そんな彼の前日譚が読めて嬉しかったです。彼にかかれば京極堂とて馬鹿である笑。
    そうなるとそりゃ関くんは…ねぇ…笑
    いや、私は大好きなんですよ関くん。えぇ。ほんとに。

    さーて次は今昔百鬼拾遺。楽しみ。

  • 文庫本化で再読。流石に何度も読んでいるので話は分かっているのではあるが、肝心の本筋の方を忘れてしまっているので、この脇役たる本作の主人公たちはどういう立ち位置だったの?って感じで読んでいるこちらが悪いのであるが、良くも悪くも百鬼夜行シリーズあっての本シリーズである。

  • 魍魎の匣、狂骨の夢、絡新婦の理、陰摩羅鬼の瑕、邪魅の雫、鵺の碑を彩る人々の心に、闇が、棲む

    という帯の説明通り。

    鵺の碑に出てくる人の話は2つ。

    この本を先に読んでたら
    誰の話?ってなってたと思う。

    最後の榎木津の話は興味深い。

    人の記憶が見える。そんな榎木津の子供の頃から探偵を始めるまでの話。

  • 新刊に続く?短編も入ってるということで、『鵼の碑』を読む前に読んでおきたくて読んでみた。
    榎木津のサイドストーリーは、彼の以外の一面が見えて好きだった。
    最近読んだ長編だからだと思うけど、『邪魅の雫』の3人は印象に残った。江藤は怖かった。大鷹はなんかイライラした。赤木はなんか辛かった。

  • 鵼の碑刊行記念に再読。
    『墓の火』『蛇帯』を読んでからどれほど待ち侘びたか。『目競』は初めての榎木津視点。こんなにまともな事を…と読んでいて戸惑う。

  • 「意味などない。そんなものは後から僕が作るのだ」
                     ――榎木津礼次郎

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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